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区切りが良いので短め。



「ちょっとやりすぎた?」

「これは……殺りすぎたかもしれません」


思わず戦利品を見ながら二人でつぶやく。

手に持っているのは、数えきれないほどのカード群。

そして燦然と輝くレアカード、オークカード。


「しかもレアカードまで出てるとか……ありえないのです」

「ははは……」


ターゲットを取れ、回避も火力も伴った実力完璧な前衛と。

索敵出来、回復も使え、一撃で倒せる火力も持っている後衛による、ソロオークの討伐。

考えてみたらそりゃあ……らくらくなんてものじゃなかったよね!?

一回一回の戦闘があまりにもサクサク終わるので、うっかり気づけば森の半数のオークを殲滅していたとか、マジ笑えないよね!?


「ちなみに確認したいんだけど、オークってどれくらいの難易度だっけ……?」

「単体ではCランク程度ですが、まず探すのにも少し手間取りますしPTで日に3匹も倒せれば御の字ではないか、と思うのです」

「ペアでは?」

「そもそも戦闘タイムがおかしいかと」


ですよねー!!

まあ、うん。

槍で一撃でぬっ殺したときから気づいてはいたんだよ?

ティナちゃんが魔法じゃなくて……槍?

とかさらに口を開いてたのも気になってはいたんだよ?

でもペアになるとはねあがって殺傷能力高いとか、そこまでは想定外だったよね!


はい。

俺、まだ、Eランク。


「というかサレスさんがEランクって明らかに詐欺だと思うのですが……」

「そ、そう? いや、ほら、えっと……登録したばっかりだし?」

「それでも1週間たてばDくらいになっててもおかしくはないと思うのです。それ以上は審査が入るのですぐにとはいかないと思うのですが……」


そもそもそんな勢いでランクなんてあげたくないからそれでいいんだけどね。

微妙な顔するティナちゃんは、俺が意図的にランクを上げていなかったことに気づいたらしくしきりに不思議そうに首をかしげている。


「いやーほらさー」

「はい?」

「オレの強さってぶっちゃけ……めっちゃ異常だよね?」

「そうですね?」


とりあえず森の中で留まっているのはあまり見晴らしも良くないため危ない、と草原へ歩き出す。

いやまぁ森の中の敵なんてほとんど倒しちゃったけど、そこはそれね。

そこまでは伝えてないしね。


「めっちゃ異常ってことはさ、目立つって事じゃん?」

「はい」

「俺、目立ちたくないんだよね」

「え? どうしてなのです?」


冒険者という職業ゆえか、それともS級冒険者である父を見ていたゆえか。

目立ちたくないという言葉にさらに首を傾げるティナちゃんに、俺は苦笑しながら先を促す。


「冒険者で目立つと、どうなると思う?」

「ええと……勧誘が増えるのです」

「ティナちゃんは増えたんだ?」

「私の場合は……父が、見ていたので。勧誘という形にはならなかったのですが……」

「ですが?」


先を口ごもるティナちゃんに、今度は俺の方が首を傾げる。

ティナちゃんの場合あの親父がいたわけだから、大事になることはなかったと思う。

だが、彼女自身が把握している範囲でも何かがあったということは間違いないようで、微妙そうな顔をしている。


「なんとなく、わかったのです」

「う?」

「サレスさんが目立ちたくないと言った理由が」

「……」


一人で納得してしまったティナちゃんは、先を急ぐように歩いていく。

その反応が何故か気になって急いで追いかければ、ティナちゃんは唐突にその場で立ち止まった。


「うわっ、危ないよ!」

「……サレスはきっと賢いのです」

「?」


おかしな反応にさすがに不安になり彼女の前に回り込めば、彼女の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

悔しそうな、それでいて自分の無力を嘆くようなそんな表情に絶句すると、彼女は俺の顔を見上げてきた。


「この国で獣人は生きづらいのです」

「……ティナちゃん?」

「同じようにきっと、強い人も生きづらいのです。お父さんも、サレスも」

「……」


話の筋が見えなくて困惑する俺を置いて、ティナちゃんが元のように歩き始める。

すり抜けられた横を眺め、俺は嘆息すると。

そっと彼女を刺激しないように街へ戻る道をついていったのだった。


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