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異世界街生活14日目、あの日から3日後。


「……ひまだ」


あの後白ネコちゃん改めティナちゃんは、右へ左へと奔走していた、らしい。

らしいというのは噂しか聞かないからだったりする。

その噂もなんとなくというか、ある金持ちが冒険者の不興を買って没落したとかそんな内容でティナちゃんと関係あるかは不明である。

まぁタイミング的にどうかんがえてもそれっぽいけど。


で、俺はと言えば、治療代もらえばよかったかなー、とかぼんやり思っていた。

いやぶっちゃけ金欠なんだよ。

赤字にはならないけど黒字にもならない。

いい加減ソロ狩から抜け出す方法を考えなきゃなんだよなー。


しかも、しかもですよ。

名前ゲットに浮かれてて色々忘れてたんだけど、俺、口止め忘れたんだよね。

ティナちゃんにイイトコ見せようとかちらっと思ってたのは事実なんだけど、聖属性Lv5をほいほいと使ったのはやっぱりまずかったんじゃないかなあ。口止めも頭をよぎったのに名乗られたことに浮かれてし忘れたし、そのあとは音沙汰がないしで実はさんざんだったりする。


間違っても俺が回復したとか言わないで欲しいんだが……事情を考えるに無理、かなあ…。

ムリだろうなぁ……。

慎重にしてたつもりが女関係でボロ出すとか笑えなーい。

笑えないけどまあ、自分らしくていっか。


俺は欲望に生きる男だ。

ドストライクの好みの子に会う方が少ないから忘れてたが、俺は割と好きな女の子には優しいのだ。

被害届出さないとかもだもだ言っていた俺が、どの口でそれを言うかとも思うが割とどうでもいいだろう。

かわいいは正義である。

別に受付嬢がそれほど好みじゃなかったとかそういう事は多分ない。げふんげふん。


そう言えばあの後MPK野郎どもはどうなったんだろうな。

まだ3日しかたってないし、他の被害者とかは出ていないんだろうけど、こうギルドに行くたびに会ったら面倒だなーってするのが面倒になってきた。

そのうちティナちゃんがやってくるとは思うんだけど、それまで何してようかな。

まさか忘れ去られるとかそんなことは……。


「おい」


あれ? でも忘れられた方がいいのか?

面倒なことに巻き込まれるのは嫌だし。

ティナちゃんとラブラブになるならまぁいいけど。


「おい、そこのひょろ男!」


しかし昼間のギルドってホント人いないよなー。

採集とFランクの狩しかしてないから受注もこの時間でも全然問題ないんだけどさー。

ところで後ろでなんか喚いている男がいるんだがどうしよう。


「てめぇきいてんのかっ…ってうおおお!?」


手をつかまれそうになったので面倒になって振り向きざまに死角から足をひっかけてやった。

ずっぺーんと綺麗な形で滑り落ちる男を一瞥する。

うん、知らない男だ。


「くそてめえ……」

「なんで何もないところでこけてんだ?」


ひっかけたことなど忘れた素振りで一応言ってみるが、真っ赤な顔の男は聞いていない。

なんということだ。

テンプレ展開がこんなところでやってきた!


「てめぇがひっかけたんだろ!?」

「え? しらないよ? 言いがかりとか酷い」

「な……!?」

「受付のおねーさんー、なんかこの人勝手に転んだのに人のせいにしてたかろうとしてるんだけどこれって規約違反にならないのー?」


すたすたと逃げながら受付嬢の元へ行くと、受付嬢は一部始終を見ていたのかあきれ顔でこちらを見ていた。

足を引っかけたのは見えなかったはずなんだけどな?

バランスを崩させたようには見えたのだろう、しかし男の方が悪いのは目に見えていたのでなんとも言えない反応だ。


「私にはあの冒険者さんがあなたに話しかけていたように見えましたが」

「俺の名前は『おい』でも『ひょろ男』でもないんだけど?」

「……」

「いきなり手をつかまれそうになったから躱しただけど、なんか問題あるの?」


まさに礼儀って何? レベルの問題だ。

それを糾弾されたらギルドのレベルも低いな、と思いながら受付嬢を見ると苦笑しながら、『では私の勘違いです、問題ありません』と答えてくれた。

ナイスアシストだ受付嬢。

あんなひどい対応した俺でもちゃんと公平に判断してくれているぞ。


「……」


男はぶぜんとした表情でこちらに寄ってきたが、敵意はなかったようで睨み付けては来ない。

あれ? テンプレ違う?

むしろ受付嬢の反応からして割と高位の冒険者っぽい?

そう疑問に思っていると、ちょっとそこの酒場で話を聞かせてくれ、と今度は丁寧な対応をしてきた。


あーれー??


「俺別に話なんてありませんけど?」

「オレの方にはあんだよ!」

「ゴルムさん、顔が怖いです。初級冒険者さんを脅かさないでください」

「ぐっ……。わ、わーったよ! 呼び方が悪かったお詫びに一杯おごってやる! すこしだけでいいんだ、ちょっと話をさせてくれ!」


初級冒険者いじりのテンプレかと思ったらそうじゃなかったようだ。

受付嬢の反応から断らなくても良いか、と判断して俺はギルド付属の酒場まで移動。

酒場と言ってもフロア的には繋がっているのでいつでもギルドへ逃げられる安全さ。

まあ、悪い話じゃなさそうだ。


「で? 俺に訊きたいこととは?」


昼間だし狩に出る予定だからと酒はことわり、席についた。

ってかまあ、酒とか飲まないけどね!

酒飲んだことないんだよ。興味なかったし。

これからも酔っぱらって何かしたら危険そうなので飲む気はとりあえずない。


「あー、ちっとな。今調べてる規約違反のやつらについてな」

「ああ……」

「被害届自体は集まったんだがな。メンバーがどうも入れ替わりが激しいらしいのと、実際に死亡してる人数の方が多くてリーダーの特定が出来ねーんだわ。あんたには悪いんだが、冒険者の雑談の中で聴いた、ぐらいに報告しとくから覚えてる限りのことを教えてほしいんだ」


被害届は出していないし名前も残ってはいない。

受付嬢から直接聞いたから安心してほしいと前置きしたうえでの質問。

ふむ。

見た感じ悪い人には見えんが、どうだろうなー。

声はさっきの大仰にやっていたのが嘘みたいな静かな声で、喧騒から行って周りに聞き取られる感じはない。

それだけ狙ってやってるって事は、結構上位の冒険者なのかもなこのひと。


まぁ実際、MPKのことは気になり始めたところではあるし、話に乗るかなあ。

俺の要求自体は受付嬢も守っててくれたみたいだし、何故被害届を出さなかったかもどうやら把握してるっぽいしなこの人。


「……面倒くさいんだけど?」

「まあ、そういうなよ」

「リーダーは多分、斧持った剣士だとは思うけどね」

「おう? いきなり直球で来たな」


ふと思い返す数日前の出来事。

俺に声をかけてきたのは斥候っぽい男で、いかにもバカっぽい感じだった。

あれがリーダーって事はないだろう、たぶん。


「その根拠は?」

「実行犯がリーダーでつかまってないってーのがそもそもおかしいから」

「?」

「あんなモンスター引き連れるの繰り返してるって事は、被害は味方にも出てる可能性がある。そもそもリーダー一人でトレイン出来るなら群れずに一人で襲うだろ。さらに特定できないって事は、実行犯が死んでも繰り返せてるって事だから、どうせあんなかで一番評判良さそうな男が裏の顔持ってるパターンでしょ」


テンプレ☆ばんざーいな推理だけど割と間違ってない自信がある。

鑑定してみればわかるだろうけど、そこまでする義務も義理もないので好き勝手に喋ることにした。

大体あの3人組は割と力関係も一瞬で一目瞭然だったのだ。


「斥候もどきは被害者に声かける馬鹿」

「……」

「その前に走ってた剣士は必死過ぎて俺を見てもいない」

「……」

「まあリーダーは斧だろ。どう考えても。後は知らずにPT入ったかそもそも嵌められて一緒に殺されたかしたんでしょ」


馬鹿の方がリーダーだったら捕まらないのがおかしいって話だった。

俺の話を聞いた後、そのゴレムさん曰くだと、あの斥候もどきと必死剣士はすでに死んでるらしい。

じゃあどっちにしろひとりしかいないわな。


またえらいあくどいことしてんなぁ。


「で? お前は被害届は出してくれないんだよな?」

「言った筈だけど?」

「まあ、な。そんだけ頭が切れるならなおのこと、こういった力に頼った厄介ごとには手を貸したくないか……」


そこまで御大層なことは思っていなかったが勝手に納得したゴレムさんは、助かったと言って普通に去って行った。

うーむ、去り際までスマートとはやるな上級冒険者(仮)。

でも頭が切れるとかかいかぶりすぎだよ、というかどんだけ頭悪い奴多いのよ冒険者……。




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