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異世界街生活11日目、夕方。


私の家じゃなくて父が見たいの? と首を傾げた少女についていき、たどり着いたのは民家だった。

ボロ家というほどではないが、年季の入った家。

病院にいるんじゃないんだ? と問いかけるとあんな高いところに置いていけませんとの返答が帰ってきた。


家に入れるのは防犯的にどうなんだろうと思いつつも、ここに来るまでにご近所さんらしい人に、何人もじろじろ見られるのでぶっちゃけろくなことは出来そうにない。

そもそも父がいる家に行くって時点でまあ、危機感は薄れたんだろうな。

狙い通りです。―――いやまあ、将を射んとする者はまず馬を射よっていうしね?


「お父さん」

「おう。――なんだ? ソイツ」


入り口付近の部屋に寝転んでいたのは、病気になっていなければそれこそ一瞬で首をひねり取られそうな感じの大男だった。

っていうか、でっか!? 超でっか!?

こんなのが家にいるんだったらそりゃあ、危機感も何もないね! 当たり前だね!

顔色は悪いが、動けないようには見えない。


「……彼が私の父ですが……診る、とは一体?」

「んー……ちょっと確認したくてさ」


俺と彼女のやり取りに首を傾げる大男に、俺はそっと鑑定眼を起動する。

いやさ、この鑑定眼さん結構働き者だからさ。

病名とか出てこないかなーって思ったんだよね。

って事でステータス覗き!



-

Name -ディクソン・ヘルディン- 

Age 56

Lv 42

Job -上級冒険者Lv6-

Status -閉-

Skill -閉-

Unique Skill 武神の斧

Bless 武神の加護


status ailment:積毒症


-


おおお、出たじゃん! ってか父ちゃん見た目通り強いな!

ステータス異常の項目に何か書いてある。

っていうか、どう見てもこれ毒っぽくね……?


更に鑑定スキルを深く発動!



積毒症

-何度も毒を含んでいた場合起きる症状。

解毒が効ききれず、体内に毒が蓄積され、さらなる状態異常を引き起こす。

体内の毒素をすべて解毒した後安静にしていれば治る。

重い症状の場合は体力回復剤・対処療法が有効。

有効スキル:解毒(神聖) ヒール(神聖)


ふむふむ。

解毒スキルは神聖魔法Lv5で覚えてるし、それ以外の状態異常は見当たらない。

とすれば、解毒使って様子見れば治るんじゃないかなーこれ。


「……スキル発動のブレ……? 何か、したのですか?」

「まあ一応、病名はわかったな」

「!?」


大男に近づき、手を差し出してみる。

首を傾げられたが、娘に手出しされなければ基本は気にしない男なのだろう、素直に手を出してきたのでその手に解毒スキルをかけた。

ぽん、と光った光球がゆっくりと身体にまとわりついて消失する。


うん、もっかいステータスオープン。


 →status ailment:過労


お、ただの過労に変化した。

もう一度握った手からヒールを施して、施術はかんりょーう。

俺でも対処できるような内容で良かったな、うんうん。


「……この光……神聖魔法?」

「まぁ一応?」


神聖魔法自体は結構ギルド内で見る位にはポピュラーな魔法属性だ。

ただ、Lv自体は上がりにくいのか、そもそも室内で使うような魔法でもないためか、解毒してるのは見たことない。

まあなんとでも誤魔化せるだろうと判断して使用したんだが、案外驚かれて俺が吃驚である。

Lv5って実は高いんかな……。


「……お兄さん、治療師、だったのですか?」

「いやー、ただの冒険者だよ」


実際人の治療とか初めてだし、治療師とか言えるほど御大層なもんでもないと思うんだ。

まぁできるんじゃないかな、とは思ったけどね。

神聖魔法は手持ちのスキルの中で一番レベルが高いし。


「冒険者……」

「ちなみに病名は積毒症っていう、中毒の悪化版だな。何で摂取したかはわからんけど、体内に毒素がたまって吐き出せない状態だったって事だよ」

「……毒……!?」


どうやら言われていた病名と違うらしく、白ネコちゃんの顔がはっとなり、そして徐々に怒りに染まる。

なにごとだ、と思っていると彼女は何か薬の袋らしきものを持ってきて俺に見せてきた。


「もしかして、これなんじゃ……!?」

「これ、って……」


どう見ても薬なのだが、白ネコちゃんは何かを疑っているようだ。

一応鑑定してみよう、と鑑定眼を発動させる。

すると出てきた結果は何とも言えないもの。

しかし鑑定眼ってユニークスキルだし、使えるって言わない方がいいよな?

そう思い、薬を割っていいか確認し、そして中身を3人で覗いてみる。


「……これは?

「ああ、これは知ってんな。解毒草だ。まぁ薬のポピュラーな材料だし入っててもおかしくない」

「あとは……薬草……これは私でもわかるのです。でもこれは?」


俺の視界には、体力回復剤、体力増強剤、持続回復薬、ラコニドの解毒薬、ラコニドの毒薬の表示が出ている。

どうやらこの紫の物体だけ毒っぽい。

っていうか、なにこれ。毒と回復薬混ざって突っ込まれてるし明らかにおかしいだろ。解毒薬より毒の方が量が多く入ってる薬もある。

あー……もう。

もしかして、っていうかもしかしなくてもあれだろ。

どう見ても嵌められてるやないか……。


「紫……見たことない」

「毒だろうなあコレ……恐らくラコニドだ」

「ラコニド……。猛毒草なのです。やっぱり……おかしかったのです!!!」


白猫ちゃんの剣幕にポカーンと取り残されていた大男が、何故か俺と彼女を交互に見る。

そうして薬を見る。



痛い位の沈黙。



「……完全にはめられてたって事、なのです……」

「まあ、薬の中にこっそり毒薬まで混ざってるとかは、普通は思わない、かな。うん」

「おー……」


1個ずつ飲むタイプっぽいので、なんかランダムだし。

普通に解毒剤だけ、ってパターンもあれば毒と回復薬混じりとか言うわけわかんないのも存在する。

これじゃあ回復しては毒を盛られのパターンで、体力だけが削れていく状態だったに違いない。

一度回復するからこそ気づかない、そんな盲点の物体が確かにそこにあった。

たぶんあの男は、このお父ちゃんが死んでも良かったんだろう。

じゃなきゃあ、こんな無茶な毒の盛り方はしない気がする。

耐性が出来るたびに量を増やしていたか、それとも毒の種類を変えていたか…カプセル状なので遅延で効果を出すとかそういう実験もかねてたかねぇ? 病名的に。


「……感謝するのです」


ぎり、と歯ぎしりする表情が美人台無しで怖い。

怖いけどちょっと、別意味で扉をあけちゃいそうです。凛々しくて。


「このお礼はいずれするのです。――お兄さん」

「えーと、ハイ?」

「名前、教えてくださいなのです」


白ネコちゃんの目が、俺を見据える。


「私の名前はレイティムナ・ヘルディンというのです。ティナと呼んでくださいなのです」

「あ、はい。サレスだ。よろしくな?」

「サレスさん。……はいなのです。よろしくなのです」


こうして俺は好みの少女の名前をゲットしたのだった。

……若干の恐怖と興奮の元に。



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