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8話【一次試験】

7話での剣術Lvアップ時の体感表現を少し改稿しております。

7話投稿直後に読まれた方は気が向いた時にチラリとどうぞ。


試験官さん、良いキャラになってくれそうです。

 ――どうやら、ここに集まった六人が今回の昇格試験に挑戦するメンバーらしい。


「それでは……」


 ――今から皆さんに殺し合いをしてもらいます。

 という展開をふと思い出したが、そうはならないようだ。


「ランクDへの昇格試験受験者はこの六人ですね。僕はここメルベイルのギルド職員でベイスといいます。今回の試験官を務めさせてもらいます」


 鐘七つが響き、こちらへとやってきた男性は柔和な顔でそう皆へと挨拶をした。

 眼鏡をかけた眼鏡紳士である。


「失礼ですが、皆さんに一つ理解しておいてほしいことがあります。ご存じの通りランクDからは魔物の討伐や、困難な依頼が多くなってきます。ランクEの範囲内でも弱い魔物と戦う機会はあったかもしれませんが……それ以上にランクD以上の依頼は危険が増すと考えてください」


 当初から感じていた転生による心境の変化は、やはりある。

 割と人に近い姿のスモゴブを殺った後でも、あまり忌避感がないのが良い証拠だ。

 それに小さいながらも刃物を持った魔物相手に戦うなんてことは、以前の俺には出来なかっただろう。


 だけども、自分を危険に晒すことが平気なわけでは決してない。


 ベイスさんの言葉の意味をゆっくりと咀嚼するように理解する。

 この世界で生きる――特に冒険者として生活していく上での心構え。

 スキルを盗ることで浮かれていた自分を少しだけ戒めることにしよう。


 やや厳しめの表情でそう言い放ったベイスさんは、すぐさま元の柔らかさを取り戻した。


「とまあ、偉そうなことを言ってしまいましたが、これは冒険者として第一関門を越えようとする人達に半ば恒例のように贈られる言葉です。かく言う自分も昔同じことを言われましたからね」


 なるほど、これで試験をやめるなんてことを言う人はいないんだろうが、気を引き締めろみたいな感じだな。

 ん……ベイスさんも言われた?


「僕も昔は冒険者でした。元ランクBでしたが今もそこそこ鍛えてはいます。僕のように冒険者がギルド職員に転職することはままあることで、このように試験官を任されることもあるんですよ」


 もしかして誰も受けなかった期限切れ寸前の依頼処理とかを担当することになるんだろうか。


 試験は、腕を確かめるものだとシエーナさんが言っていた。

 ということは試験官も当然それなりの力量を持った人が担当するんだろう。


「高ランクの昇格試験についてはそれこそ凄腕の冒険者に試験官の依頼を出したり、時々によって試験方式も異なるのですが、今回はランクDへの昇格試験ですからね」


 ベイスさんのスキルは……《槍術Lv2(45/50)》か。

 熟練度も高い。


「さて、前置きはこのくらいにして、試験についての説明を開始しましょう」


 クイッと眼鏡を押し上げる姿が様になっているベイスさんは、なかなかに格好良い。

 悔しす。

 鍛えていると言ったのも嘘ではなく、無駄なくそれでいて引き締まった筋肉が防具の隙間から見え隠れしている。


「試験は、まず一次試験……そして二次試験となります」


 なんか、ちょっと大学受験を思い出した。お腹痛いょ。


「一次試験はそこまで時間はかかりません。僕と手合わせをしてもらうことになります」


 周りが一瞬ザワッ……としたかと思うと、俺より最初に来ていた三人の内の一人……園芸さんが質問をする。


「あの、ベイスさんって元ランクBの冒険者なんですよね。そんな人と手合わせなんて……」

「大丈夫です。僕に勝つことが合格基準ではありません。ランクDとして依頼をこなせるかの力量を見させていただきます。ああ……勿論勝てば試験通過ですよ。ただ僕はこう見えて負けず嫌いなので、簡単に負けるつもりはありませんが」


 それを聞いて安心したのか、ホッと息をつく園芸さん、そしてナシさんに火魔法さん。

 獣人の二人は黙って頷いているだけだ。


「それでは、一次試験はこちらで行いますので、皆さんついて来てください」


 歩き出すベイスさんが向かう先は、ギルド一階の奥にある扉だった。


 そういえば前から気になってたけど、この先って何があるんだろうか?

 が、この状況でそこへ向かうってことはきっと……。


 俺の予想は正解だった。

 ギルドは立派な石造りの建物だったけど、外から見たでっかい奥行きはこういうことだったんですね。


 扉を開けた先には、広々とした訓練場が存在していた。

 なんていうか、少し、こう、運動部の部室みたいな汗のすえたような匂いがする。

 でも、立派です。


 正方形の室内は一辺の長さが30mはあるだろうか。

 十分に動き回ることができそうだ。

 壁際には、様々な武器が木箱の中に置かれている。


「一次試験には、そこにある訓練用の武器を使用してもらいます。刃は潰してありますから、大怪我をすることはないでしょう。ちなみに僕は槍で相手をさせてもらいますね。皆さんは自分の得意な武器を選んでください」


 せっかくバゼラードを研いでもらったのに。

 ……しゅん。


 が、人間相手に刃物で斬り合うのは、さすがにちょっと気持ちが引くので助かる。

 俺はそこまで人間をやめたつもりはない。

 いつかそんなこともあり得るんだろうかと思うと、ブルリと身体が震えた。


「それでは……そうですね。試験を行う順番は、今朝ギルドに到着した順にしましょうか。一番の方、準備が出来たら前に出てください」


 俺が来た時には既に三人が座っていた。

 その三人が顔を見合わし、一人が進み出る。


「じ、じゃあ、俺が一番です」


 園芸さんだ。

 武器は剣。少し緊張しているのが分かる。


「分かりました。それでは構えてくださいね……始めます」


 ベイスさんの温かな笑みが、まるで潮が引くように消えていく。

 眼鏡の奥に潜む双眸は、とてもさっきまで穏やかに話していた人のものとは思えない。

 温度が一段、下がったようである。


 やだ、この人怖い。


 その圧力にのまれたのか、委縮してしまった園芸さんが一歩を踏み出せないでいる。


「どうしました? 来ないのなら……こちらか――」

「う、うおぉぉっ!」


 踏み切った。

 剣を上段に構えたまま、ベイスさんへと距離を詰めていく。

 別段、適正なスキルがなくても武器を扱うことは出来るのだ。

 そこまで悪い動きではない。


 が――


 空気を薙ぐような一瞬の高音。

 試合う二人以外に音を立てる者はおらず、それゆえ、両者の一動作は室内に響き渡る。


 園芸さんの剣が、ベイスさんの槍の柄によって弾き飛ばされる。

 振りきった反動を重心を低くすることで抑えこみ、さらに反対側から容赦のない追撃が加えられた。


 肩へとまともに柄の一撃を受けた園芸さんは、そのまま床へと転がされる。


「……う……ぐぅ」

「残念ですが失格です。両者が使用した武器の違いや元々の実力差はありますが、相手の力量を測り損なうことはないつもりですよ」


 なんとも。手加減なしか。

 いや、柄の部分で殴っているために手加減しているといえる。


「不満に思うかもしれませんが、ギルド側として依頼を達成できる適性を持つ方々に受託してもらわなければ困りますので、ご理解いただければと思います」


 厳しす。


「ですが、これは冒険者を大切に育てたいというギルド側の意向でもあります。実力にあった依頼を適切にこなし、冒険者が命を失う危険は極力減らすべきですからね。ですから……焦ることはありません。ゆっくりと、確かな実力を身に付けてから、再挑戦してください」


 ふたたび穏やかな顔で笑みを見せるベイスさん。


 惚れてまうやろ~~。

 ……飴と鞭、恐るべしやでぇ。


 ――次に挑むのはナシさんだ。

 手に持っているのは、槍。

 ただ、ベイスさんの持つ槍は自らの身長――180cm程度――よりやや短い短槍だ。

 ナシさんのは長槍ともいえる代物である。


 間合いの広さというのは、非常に重要だ。

 槍の利点は何といってもその圧倒的なリーチだろう。

 さっきの園芸さんの試合を見て痛感したが、槍に対して剣で勝負を挑むのはなかなかに厄介だ。

 そのリーチという点では、長槍のナシさんに分がある。


 俺だってこの世界に転生した際に所持していたのは、特別サービスのスキル一つだけだ。

 ちょっとショックだっただけに、応援したい気持ちが湧いてくる。


 ナシさん、がん――


 試合開始直後、ナシさんが繰り出した槍が空を突いた。

 やすやすと回避されてしまった後、ベイスさんは長槍が引き戻されるよりも速く相手の懐へと侵入する。

 隙だらけの横腹へと一撃が加えられ、ナシさんは床に崩れ落ちた。


「……残念ですが」


 横に頭を振るベイスさん。やや鞭多めである。

 がん――ばったよ、ナシさんは。


 ……俺は、色々と甘く見てたかもしれない。

 まあ、俺に剣以外で勝負する手段はないのだが。


 次は……火魔法さんか。

 魔法ってぐらいだから遠距離からベイスさんを――


 ってっ! なんでやねんっ!

 火魔法さんの武器――斧。


 ……魔法は?


 ああ、これってもしかして……もしかするのか。

 火魔法さんの火魔法Lvは1で、しかも熟練度が(0/10)である。


 皆、自分に合っている武器を選んで鍛えていくんだろうが、魔法使える人って少ないから、そもそも自分が火魔法スキルを持っていることに気付いてない?


 勿体ない。

 宝の持ち腐れだ。いや、腐ってはないが。


 まあ、結果は火を見るよりも明らかなわけで。

 お疲れ様でした。



 ――ついに俺の順番が来た。

 床に項垂れている火魔法さんにボディタッチしたいが、結局火魔法見させてもらってない。

 使ってないなら俺にくれ……と思うのだが。

 まあ、彼はまだ若い。俺と一緒ぐらいなんだからこれから……


「……自分にどんな戦闘スタイルが合うか、もう一度考えても良いんじゃないでしょうか」


 もんの凄く偉そうな言い方になってしまったが俺に言えるのはギリギリこれぐらいである。



「さて、次は…………随分とお若いですね」


 あのさぁ……なんか、皆してそんなこと言うよね。


「俺はこれでも1……「――8歳でしょう? 試験を受ける冒険者については、登録時の情報程度ですが確認させてもらいました」


 わざと!? しかもカブせる……だと。

 この人、Sだ。間違いない。


「同僚のシエーナからも少し話を聞いています。かなり有望……と」


 あれ、なんだか凄く嬉しいのですが。


「手加減はしませんよ。しっかりと、実力を僕に見せてください」


 ゆらりと、手に持った短槍がこちらへと向けられる。

 相対する俺が選んだ武器は、いつも使用するバゼラードよりは長めのロングソード。

 長さは80cm程度だ。

 ある程度は小回りも効き、バゼラードよりも間合いは広い。

 先程から何度も素振りをして、延長された感覚を手に馴染ませた。


「それでは、始めましょうか……」


 ベイスさんの笑顔が、もう何度目になるかの変化を見せる。

 この人、やっぱり――


 いいでしょうとも。

 見せてやりますよっ! 


 ――俺の……トータルエクスペリエンスをなっ!

 

 やだ恥ずかしい。もう二度と言わない。


次回は戦闘描写だと思われますが、

剣と槍だとこうなる、実際こんな場合は……という感想は心にしまっていただければと思います。


これはファンタジー小説ですので、雰囲気……そう、雰囲気で読んでやってください。


今回は獣人が空気すぎる。

次回ですね。

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[良い点] 初めてじゃないですけど、やっぱり読みやすくて面白いですね。クスッと笑えるところが好きです。 [気になる点] 今回は完結済みなので楽しみに読ませていただきます。
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