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3話【流体生物】

 五月の三週光の日。


「――魔法を使用する魔物の討伐依頼……ですか?」


 俺の問いに答えてくれているのは、メルベイルのギルド受付嬢シエーナさんである。

 整った目鼻立ちに色白な肌――美人という言葉が相応しい容姿を持つ女性だ。


「ええ、魔物がどんな魔法を使うのか興味がありまして」

「セイジさんだと……ランクDの範囲内で、ということですよね?」


 俺はそれに頷きを返す。


 基本的に、俺は自分の冒険者ランクに従って依頼を受けていくつもりだ。強力な魔物は有用なスキルを持っている場合が多いだろうとは思うが、そこまで生き急ぐこともない。


 俺の今の実力ならブラッドオーガぐらいは単独で倒せる。

 が、自分の力を過信し、スキルを盗るためだけに強力な魔物が生息している地域に突っ込んで行けば、死に急ぐことになるだろう。


 ブラッドオーガの集団に囲まれる、もしくは俺が敵わない魔物と遭遇することも多分にあり得る。


 せっかくギルド側が冒険者の命を無駄に散らさないようにランク制限というシステムを導入してくれているのだ。

 ならばその安全マージンが確保された中で依頼を受け、スキルを磨いていくことが妥当だと思う。


 ……やむを得ない場合を除いて、だが。


 そんなわけでランクDの範囲で依頼を探していたのだが、魔物についての知識が足りない俺にはどいつが魔法を使うかなんて分かるはずもなく、大人しくシエーナ嬢に尋ねる結果となったのだ。


「少々お待ち下さい……確か……」


 そう言ってシエーナさんは受付から出てくると、依頼書が貼られている掲示板へと向かう。

 俺はその後ろに付いていくのだが、フワリと漂う良い香りに『ポニテ可愛いよ、ポニテ』などというアホなことを至極真面目な顔で考えていたことは誰にも言えないことである。


「――こちらはランクD+の依頼となりますが、わずかながら魔法を使用する魔物が相手となります。セイジさんが腕の立つ方だということはベイスから聞いておりますが、油断なさらぬようお気をつけください」


 差し出された依頼書は……


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

メルベイル南東のパウダル湿地帯に生息するスライムの核玉を収集。

依頼達成条件:核玉2000ダラ相当の納品。

依頼主:ヘルムート商会

期限:なし

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「あの……スライムってジェル状のムニョッとした奴らでは……?」

「あ、ご存じだったんですか?」

「いえ、スライムって魔法使うんです?」

「はい。パウダル湿地帯は自然溢れる場所なのですが、普通よりも大気のマナが濃いとされる――マナスポットらしいんです」


 マナスポット……マナが密集するような場所ってことかな……?


「そこに引き寄せられるように湧くのが依頼にあるスライムとなります。南へ向かう街道からは外れているため、あまり人が近づく場所でもないのですが……」


 なるほど。この依頼は討伐が目的じゃなくて、この……核玉とやらを集めるのが目的なんだな。

 討伐証明部位も必要なし……というか、核玉さえあれば文句はないのだろう。


「核玉は微量ながらもマナが結晶化したものですので需要があるようです。こちらの依頼をお受けになりますか?」


 念のため、俺はパウダル湿地帯の場所を手持ちの地図で教えてもらう。

 結構遠いな……歩きだと日帰りはシンドイ距離だ。


「もし必要なら、門付近で足を調達すればよろしいのでは?」


 その手もあるか。

 今までは必要性を感じなかったが、遠出する時には便利だろう。

 でも、上手く乗ることができるだろうか?

 騎乗スキルとかは……見たことないし。


 が、せっかくシエーナさんが勧めてくれたんだ。断るのも野暮ってもんだろう。

 俺は依頼を受ける手続きを済ませた後、南門へと向かった。




 街から街へと移動する場合ならば護衛付き乗合馬車などを利用するという手もあるのだが、目的地のパウダル湿地帯は街道から外れた場所にある。しかも馬車の速度は結構遅い。

 単独で騎獣を借りて向かうのがベストだろう。


 門付近には騎獣を貸し出すことを商売としている店がちらほらとあるため、俺は適当な店へと入り、尋ねてみることにした。


「あの、馬とかって借りれますか?」

「ああ、一日200ダラで貸し出してるよ。あんたは……冒険者か。どこに行く予定だい?」

「パウダル湿地帯なんですが」

「あの辺りか……だとすると馬が危険だな。値は上がるが他の騎獣にしてくれないか?」


 基本的に、イーリスで最も活用されている徒歩以外の移動手段というのは馬である。馬車然り、単騎にしろ、一番数多く見られるものだ。

 が、たまに馬以外の何がしかに乗っている人を見ることもあった。

 毛むくじゃらの牛みたいな奴とか、猫科の……虎? みたいな奴とかだ。


「最低でも自分の身を守れる騎獣でないとな……まあ鱗竜とまでは言わないが……」


 なん……だと。

 竜?


「もっと詳しく」

「……いきなりどうしたんだ。鱗竜に興味があるのかい?」

「詳しく」


 店員さんの顔に商売人らしい笑みが貼り付けられる。


「そうかい、いや実は当店の一番のお勧めは鱗竜なんだよ。奥にいるんだが、見るかい?」


 俺は言われるがまま店の奥へと案内された。

 仕切り板の向こうからは様々な騎獣の鳴き声が聞こえてくる。


 おおっ……

 いたよ。


 寝転んで丸くなっている姿はどこか愛おしい。

 全身を覆う硬質そうな鱗。その一枚一枚は黒であるが、明かり窓からの陽光で照らされることにより、翡翠色の煌めきが混じって美しい色合いを見せている。


 店員さん曰く。


 猛々しくも雄々しい後ろ脚は、他の騎獣の追随を許さぬ健脚であり、一夜にして千里を駆け抜ける。

 長く太い尻尾は身体全体のバランスを保つ働きを有しており、乗り心地も最高級。

 また、水陸両用のために湿地帯でも活躍すること間違いなし。


 やや誇張表現もあるかもしれないが、俺の心はもう鷲掴みである。

 角があるところもいい。


 ついついスキル構成も探ってしまう。

 持っているのは

《火属性耐性Lv2》

《水属性耐性Lv2》

 か。

 戦闘に特化したスキルはないが、鋭い爪や牙は十分脅威だ。

 ふむふむ……ひょっとすると竜種は様々な耐性を持っているのかもしれない。


「この鱗竜は一日いくらで?」

「一日1000ダラだよ」


 ……高っ! 馬の五倍じゃんか。


 依頼達成報酬額は確か2000ダラ……半分が足代で消し飛ぶわけか。

 が、この依頼は核玉を集めれば集めるほど報酬が増えるし、依頼達成回数も加算される。

 湿地帯を縦横無尽に駆け回れることで効率良く依頼をこなせると考えれば……。


 というか、何より俺はコイツに乗ってみたい。




「――――毎度あり。基本的な乗り方はさっき教えた通りだ。大丈夫、初心者でもすぐ乗れるようにちゃんと調教されてるからな」


 その言葉に俺は店員さんを注視してみたが、別段《調教》とか《ビーストテイム》みたいなスキルはなかった。


「こういう騎獣って、誰かが馴らしたりするんですか?」

「ん? ああ、鱗竜もそうだが、一部の騎獣は捕えて調教するのを生業にしてる奴らから買い取るんだよ。馬と違って生殖管理が困難だからな」


 なるほど……それも興味あるなぁ……っと、今は魔法魔法。


 横から鱗竜の鼻息を感じて顔を向けると、つぶらな瞳がこちらを見据えていた。

 そろりと頭を撫でてやろうと手を伸ばすと――


 バクリッ


 ――ああ、そうきましたか。分かります。



 ……ほらね、怖くない。ね? 怯えていただけなん……

 って、痛い……ちょっとなんか……痛いんだけどぉぉっ。



「おいおい、甘噛みでも下手すりゃ怪我するからな。そういう時は早く手を引っこ抜くんだ」


 結局、鱗竜は噛んだ手を舐めてはくれなかった。

 クスン。

 こんくらいはすぐ治るからいいんだけどね。



 さて、気を取り直して俺は鱗竜に跨り、南門から街外へと向かう。

 その凛々しい姿を見て声を掛けてきたのは、たまに挨拶を交わす衛兵ニコラスさんだった。


「おう、セイジじゃないか。そんな仰々しいモンに乗ってどこにいくんだ?」

「いえ、ちょっとパウダル湿地帯まで」

「結構遠くまで行くんだな。冒険者として頑張るのはいいが、無茶し過ぎるなよ」

「危なくなったら逃げ帰りますよ。それより……どうですか?」

「……何がだ?」


 不思議な顔をするニコラスさんに、俺は鱗竜に跨る自分の姿を強調する。


「ああ……なんていうか、竜の巣に運ばれる餌みたいな……?」

「違いますよっ! もういいです」


 ニコラスさんに別れを告げてから、鱗竜の手綱を握り直す。

 目指すは南東にあるパウダル湿地帯だ。


 ドラゴンライダー…………格好良いと思うんだけどなぁ。




 ――強靭な脚が地面をしっかと掴んで駆ける振動が、微かに跨っている背中から伝わってくる。

 乗ってみた感想としては……文句の付けようがない、だ。

 速度的には馬とあまり変わらないと思うが、乗り心地が抜群に良い。

 揺れによる疲労感がほとんどないのである。

 おまけに体力もかなりのものらしく、太陽の位置からして一時間近く走り続けているというのに、一向に速度が落ちる様子はない。


 だが念のため小川のほとりで小休止をとり、水を飲んでもらってから歩みを再開した。

 途中までは街道に従って進み、地図を確認しながら進路を東寄りに変更する。

 人里から離れていく雰囲気に一抹の不安がよぎるが、自分を乗せて躍動する鱗竜の鼓動がそれを打ち消してくれた。


 借りてきて……本当に良かったかもしれないなぁ。



 太陽が頭上に達するよりも随分と早く、俺はパウダル湿地帯に到着した。


「なんていうか、思っていたのと違うな。もっとこう……湿地帯って泥沼みたいなドロッとしてジメッとしたイメージだったんだけど……」


 全然、そんなことはない。

 晴れ渡る青い空の下。

 遠くから見ると透き通るほど美しい水が形成しているのは沼というより湖のようだ。

 だがその水深は浅く、背の低い水草が淡い緑の絨毯として装飾を施している。

 まばらに立っている灌木はどれも陽の光を遮るものではなく、雄大な景色が広がっていた。


「湿地帯って、こんな場所だったんだ……」


 遠くに見える山々の稜線……あれはレーべ山脈だろうか。

 南東の方角に走ってきたわけだから、多分そうだろう。

 となると、あの向こう側はスーヴェン帝国なわけか。

 別の国にも余裕ができれば行ってみたい……確かリムが暮らしてた村は帝国のずっとずっと南の方だったっけな。

 魔族……か。今は無理だな。



 俺は鱗竜とともに、湿地帯へと足を踏み入れた。

 道など何もないので、慎重に進んでいく。

 注意すべきなのは、地面だと思って踏み出したら実は沼でしたというパターンだ。

 水草の絨毯で錯覚してしまいそうになるが、よくよく見ればそこは地面ではないというのが分かる。

 鱗竜が泳げるといっても、不意に水中へ落ちるのはいただけない。


 が、その辺は鱗竜も承知の上らしく、特にこちらが指示せずともしっかりと地面を踏みしめて歩いて行くではないか。

 やだ、この子ったらできる子。


 湿地帯を進むことしばらく、マナスポットというだけあって大気に満ちる濃密なマナを肌で感じ……ることもなく、目的のスライムを探す。



 ――――いたっ。



 浅い水面に浮かぶようにしている……白く輝く発光体の姿を捉えた。

 俺は軽い興奮を覚えながら鱗竜から飛び降りると同時に抜剣し、湿り気を帯びた地面を確かめながら、ゆっくりと相手に近づいて行く。


《ライトスライム》――所持しているのは光魔法Lv1(2/10)か。


 さて、わざわざこんな遠出したんだ。

 ――しっかりと、元は盗らせてもらおう。



 俺の接近に気づいた相手は、一瞬身体をグニャリと変形させてから勢いよくこちらへと向かってきた。

 不定形な……流体生物といったところか。サイズとしては人間の半分に満たない程度。

 身体の中心辺りに小石ほどの物体が浮遊している……あれが核玉だろう。


 魔法を使用するかと思ったのだが、その流動性のある身体をぶつけるように飛びかかってきたため、片手に構えたノワールで剣撃を放つ。

 切り離されたスライムの身体三分の一程度が地面へと落ちた。

 分裂でもするかと注視するが……核玉を含む残り三分の二の個体しか動く様子は見られない。

 どうやら核玉が残っている方が本体となるらしい。


「どうした? 魔法を使わないのか?」


 その言葉に反応するかのように、核玉がわずかに煌めいたかと思うと、スライムの前に小さな光球のようなものが形成されていく。

 俺はその様子を観察するとともに、水草に足をとられないよう足場を再確認することに努めた。


 ――掌に収まる程度の大きさの光球が、こちらへと放たれる。


 速度はそこそこ。わざわざ当たってやる必要はない。

 躱してから、それがどの程度の威力なのかを把握するため油断なく視線を割いた。


 光球は灌木へと衝突し、微かな破裂音とともに幹を軽く焦がす。

 まあ、Lv1の(2/10)ならこの程度だろう。


 俺は一気に間合いを詰め、相手の身体を半分に断ち切ると同時に盗賊の神技を発動させた。

 が……結果は失敗。

 合計成功確率は31%なのでしょうがない。

 

 ワクワクしていただけにちょっと悔しいが。

 まあ、次を探すべきだな。


 ……と、その前にこいつの核玉は回収しとかないと。

 魔法も大事だが、お金だって大切なのだ。

 俺はサイズ的にかなり小さくなったスライムにトドメを刺すべく向き直る。


 なん……だと。


 スライムが一目散に逃げていくではないか。

 プルプルと身体を震わせて意外に速い。


「逃がすかっ」


 後方に下げていた鱗竜の背に跨り、俺は逃げたスライムの後を追った。

 もし俺が徒歩だったなら逃げられていたかもしれないが、鱗竜の脚は無慈悲に両者の距離を縮めていく。


「――あっはっはっは、どこへ行こうというのかね?」


 ……なんというか完全に悪者みたいだな、俺。

 スライムの行く先に回り込み、逃げ道を塞ぐ。


「さて、鬼ごっこは終わりだ」

「…………」


 観念するかと思いきや……スライムが横っ跳びした先には――もう一匹のライトスライムがいやがった。


「しまっ――」


 とか言ってみたものの、状況が分からない。

 何、こいつら合体とかすんの?


 とりあえず成り行きを見守ることにして、その光景を眺める。

 ウニョウニョと動く敵の身体が、次第と落ち着きを取り戻すかのように一つの物体となっていく。


 サイズ的には……最初より大きくなった。中心にある核玉についても同様である。

 が、一番驚くべきところはそこではない。


《ライトスライム》――光魔法Lv1(4/10)


 思わず笑みがこぼれそうになってしまう。

 これは……もしかしてそういうことか。

 そういうことなのか。



 合体したと思われるスライムの光魔法を視認してから、俺はふたたびスキルを発動――しようとしたが……何故か発動しなかった。


 どういうことだ?


 考えられる原因としては、合体した二匹のうち……一匹は既に強奪失敗しているから……だろうか。


 とすると、盗れるチャンスは一回ということに……?

 それにあまり合体させ過ぎると危険かもしれないな。強奪失敗となれば面倒になる。

 現状の成功確率と発動回数のことを考えると、Lv1の範囲で熟練度を合体させた奴を複数作り出し、奪っていく方が効率的だろう。


 俺は目の前のスライムへと意識を戻し、瞬時にその身体を切り刻む。

 大部分を削り取り、残った流体の中へとグボリッと手を刺し込むことで核玉を引き抜くと、スライムはその原形を失くして地面へと溶けて消えていった。


 ――時間も限られてるし、早速検証してみることにしよう。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 パウダル湿地帯からの帰路――鱗竜の背の上で俺は今日の成果を確認する。


 光魔法Lv1(8/10)


 上々の結果だと思う。

 スライムとの遭遇率が思ったよりも低く、そう都合良く合体を繰り返させることができない。

 水中に逃げだすスライムもおり、さすがの水陸両用鱗竜でも見失ってしまうことがあったのだ。

 ……あれには歯噛みした。


 それを踏まえれば、上々だ。

 魔法スキルを初めて習得した俺は、はしゃいで光球や光弾を撃ちまくり、鱗竜の真摯な瞳に見つめられて我に返ったのだった。


 にしても、出現したスライムは――ライトスライム、ダークスライム、フレイムスライムの三種類。

 名前の通り、ダークスライムは闇魔法スキル、フレイムスライムは火魔法スキルを所持していた。

 が……とりわけライトスライムが多かった。

 何か理由があるのか……?


 ――あ……



 一つの仮説が頭に浮かぶ。


 今日は確か……光の日である。

 火、水、風、土、闇、光、元という七つの日は、そもそも精霊に由来していると聞いた。

 もしかすると、それと関係しているのだろうか。マナスポットに集まるマナの質が日によって異なり、湧くスライムも変わってくる、とか……?


 光魔法を使用可能になった俺は、確かにマナスポットであるパウダル湿地帯の濃いマナを感じることはできたが、別段それが光属性に偏っているとかは認識できなかった。

 というか、大気中のマナは魔法の源となる塊であり、それ自身に属性は存在しないとイモムシ教本に書いてあったはずだ。


 しかし、何らかの関連があるとすれば、光の日に近い闇と火に属するスライムが出現したのも頷ける。


 もしこの仮説が正しいのであれば……明日は何を置いてもパウダル湿地帯に赴かなければならないだろう。

 なにせ一番期待していた元魔法を所持しているスライムは全く確認できなかったのだ。


 そして明日は――元の日なのだから。




 メルベイルの街へ到着した俺は、鱗竜を返す際に明日も借りる予定のため、代金を前払いしておいた。


 その足でギルドへと向かい、収集した核玉を渡して報酬を受け取る。

 核玉の数は八個。合体したスライムの核玉は通常のものよりも大きい。

 依頼は2000ダラ相当の核玉を集めることだったが、鑑定結果は4800ダラ。


 鱗竜の借り代を差し引いても悪くない稼ぎである。

 依頼達成回数も二回加算されたので、言うことなし。



 さすがに遠出をして汗を多く掻いたため、満腹オヤジ亭に戻る前に風呂付きの高級宿で風呂だけ使わせてもらい、サッパリしてから自分の部屋へと帰り着いた。


 ……満腹オヤジ亭に風呂があれば最強だと思うのだが、贅沢はいかんよなぁ。

 もしアレなら援助ぐらいしたいが、ダリオさんが素直にお金を受け取るとも思えない。


 むぅ……。


 そう、金といえば、あの騎獣を扱ってた店員め。

 俺が鱗竜をいたく気に入ったのを知って、もし良かったら借りるのではなく購入しませんか? ときたもんだ。

 勿論乗り気で応えた。

 いくらだ? と。


 ――30万ダラってお前。

 お前ぇぇっ。

 どんだけやねん。


 つっても、欲しいなぁ……。

 いやはや、人間の欲望は果てしないですな。

 もっと強くなってランク上げて、依頼をバシバシとこなしていかないと。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 翌日――五月の四週元の日。


 俺はパウダル湿地帯にて遭遇した魔物に歓喜の声を上げた。


《プリズムスライム》――元魔法Lv1(2/50)


 きたぁぁぁぁぁぁっ!


 熟練度はLv1なのに上限が50。やはり習熟に時間がかかるのか。

 だがスキル枠のことを考えると、それ以上の価値はある。


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