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17話【大罪VS大罪】

 戦いの火蓋は、俺とリムが同時に駆け出したことによって切られた。


 ――先手必勝。

 戦闘を長引かせるつもりはない。

 俺がヘラの大罪スキルを奪い取れば、それで全て終わりなのだ。


 双剣の刀身を鞘から滑らせるようにして抜き放ち、一直線に駆ける。

 周りの風景が飛び去るように後方に流れていき、目標との距離が刻一刻と縮まっていく――そのとき、ヘラの姿が一瞬だけ陽炎のように歪んだ。


 ――次の瞬間そこに立っていたのは、ローブを身にまとった……老人のような男。

 そいつが手を上空に掲げると、瞬時に巨大な光の槍のようなものが出現する。

 あれは……おそらく光魔法による攻撃だろう。

 その馬鹿でかい光槍は、どこかで見た覚えがある気もするが……いや、今はそんなのどうでもいい。


 迎撃するならば、こちらも最大級の一撃を以ってして対応しなければならない――そう感じさせられる大型魔法。

 《多重属性極剣波(シンフォニックレイヴ)》で迎撃したいところだが、六属性の魔法合成はこの一瞬では不可能。


 ならば――と、俺は元魔法によって数個の属性を組み合わせ、疑似的に雷を発生させた。

 ヂヂヂヂヂッ――という空気を強制的に震わせるような音が響き、蛇のようにうねる紫電の光をすぐさま剣にまとわせる。

 そうして大きく剣を最上段に構え、


 ――《雷蛇豪破斬(ボアブレイク)!!》


 一気に振り下ろした。

 バヂバヂバヂと小気味良い声で雄叫びを上げた極太の雷蛇が、大型の光槍を呑み込むようにして衝突し、耳をつんざくような轟音とともに互いに消滅する。


「……ふぅ」


 ホッと胸を撫で下ろす暇もなく、ヘラはさらに二撃目を放とうと、その手を上空へとかざしたではないか。


「やべっ……」

「……させない!」


 並走していたリムが、タイミングを見計らって《魔喰武装闘衣(フィアフルロンド)》を発動させた。

 周囲のマナを喰らいつくし、ヘラが放とうとしていた大型魔法が瞬時に霧散して消え失せる。

 味方の魔法も使えなくなってしまうため、混戦においては使い所が難しい能力かもしれないが、今のはリムに感謝である。


「はぁぁぁぁぁぁっ!!」


 超大型の光魔法を迎撃したことで、俺はリムに一歩遅れるかたちとなり、開戦初めの一撃(※物理)は彼女に譲ることとなった。

 その全力の一撃は、地面を大きく抉り取るほどに強力だ。

 直撃すれば、いかに大罪スキルを宿すヘラといえどもミンチ肉になること請け合い……いや、スキルを奪う前にそんなことになったら困るけども。


「なるほど……力比べというわけね」


 にやりとつぶやいたヘラは、またもやその姿をグニャリと歪ませて変化させた。

 魔法使いといった風貌の老爺から――巨漢の姿へと。


 なん……だ? あれは、獣人……?

 耳や尻尾があることを考えれば、たしかに獣人なのだが……半端なく巨大な背丈に、超大型の斧までその手に持っているではないか。


「ぐぅおおおおおおおおおおおおおお!!」


 獣の咆哮のような雄叫びとともに、鉄塊のような斧が一直線に振り下ろされた。

 ――ドゴォォォンッ! という大型トラック同士が衝突したかのような轟音に少し遅れて、風が土煙を上げながら吹き抜けていく。


 リムの一撃を止めた……だと!?


「このっ……!」


 渾身の一撃を受け止められたリムであるが、彼女は怯むことなく続けて攻撃を打ち込んだ。

 小さな身体をくるりと回転させるようにした回し蹴り――それさえも、馬鹿でかい斧によって阻まれてしまう。


 ――力と力のせめぎ合いだ。


 そんな状況を打破すべく、一歩遅れてしまったが、俺はあとちょっとで剣が届くであろう距離まで詰め寄る。

 それを視界の端で捉えたのか、ヘラはリムを力任せに弾き飛ばした。

 俺の剣が届く直前には、またもや別の姿へと変わっているのだから、その変わり身の速度は尋常ではない。


 ガキンッと剣を交えたのは、美しい女性剣士だった。

 柄に精緻な細工が施された細身のレイピアで、俺の双剣を見事に受け流していく。

 所持していた剣術スキルが《剣聖術(ソードドクトゥス)》へと進化した今、その剣撃は針の穴を通すほど正確に打ち込まれているというのに、決定的な一撃を叩き込むことができない。


 それでも双剣による連撃を間髪いれずに叩き込み、徐々にこちらが優勢になってきたかと思った瞬間――ヘラは渾身の反撃を繰り出した。

 目を突き刺そうとする正確な軌道は、確実に俺を仕留めようとする一撃。


「う……ぉっ」


 それを紙一重で躱し、なんとか体勢を立て直しながら、突き出された相手の腕を断ち切らんとばかりに剣を振り切った。

 しかしながら、骨を断ち切るまでには至らず、わずかに薄皮を切った程度の手応えしか返ってこない。

 女剣士姿のヘラは、そこでわずかに距離を取った。


「ふぅん、さっきのを避けるんだ……すごいわね」


 ピリッとした痛みを感じて自分の頬に触れてみると、指にぬるりとした感触、嗅ぐと独特な鉄の匂いが鼻腔を抜けていく。


 ……さっきの刺突攻撃のときか。

 っていうか、紙一重で躱せてないし!

 くそぅ……劣勢とはいわないまでも、いまいち押しきれない感じだ。

 大罪スキルを奪うためには、もっと大きな隙を作らないと。


「あっはは……驚いた? ラハルは相手の姿を真似るぐらいしかできないけど、わたしは違うの。姿形だけじゃなく、相手の強さや、武器に至るまでを完全に再現できる。かつては帝国最強といわれた宮廷魔術師や、世界に数えるほどしかいないとされているランクS級の冒険者を相手にして、ここまで戦えるのは……大罪の力を宿しているあなたたちぐらいだと思うわよ」


 はは、道理で……強いわけだ。

 さっきの、魔法使いの出で立ちをした老爺や、巨漢の獣人に女性剣士は……そういう人物たちってわけか。

 ヘラと戦うことになった場合は、俺とリムで対処するよう皆であらかじめ決めておいて正解だったかもしれない。

 こんな桁外れの化け物を相手にするのは、同じく常識の範囲外にある存在の俺たちだけでいい。


 レイやレンも、真正面から戦う場合はこちらに任せると言ってくれていた。

 ヘラを痛い目に遭わせてやると息巻いていたのは、あくまで暗殺などを手段として用いた場合であって、正面から戦いを挑んでどうにかできるとは彼らも思っていない。


「ふふ、まだまだ色んなものに変われるわよ? 槍の達人? それとも弓の名手?」

「……ずいぶんとお喋りなんだな。あんまり余裕をかましてると、後悔することになるかもしれないぞ」

「へぇ……強気ね。どう後悔するのか、ぜひ教えてほしいものだわ」

「……お望みとあらば」


 俺は、傍にいるリムをちらりと窺う。

 さきほどは巨大な獣人の一撃で弾き飛ばされてしまったものの、どうやら無傷のようだ。


「リム」

「うん、わかった」


 彼女はこくりと頷き、即座に行動を開始する。

 目と目で通じ合う……というのは俺の勝手な妄想だが、リムと一緒に修行をしているとき、連係して攻撃する練習もしていたわけで、こちらの意をすぐさま汲み取ってくれたのは正直嬉しい。


 リムの猛攻がふたたび相手に襲いかかるも、ヘラはそれを器用にさばいていく。

 女性剣士から槍使いへと姿を変えて、懐への侵入を許そうとしない。

 俺はといえば、そんなリムを支援するようにして、少しだけ距離を空けて様子を窺っていた。

 もちろん、隙あらばいつでも斬り込める状態である。


「あっはは! どうしたの? もっと二人で攻めてきなさいよ!」


 ……言われずとも――


 リムが猫のように機敏な動きで身体を捻り、槍の一撃をすれすれで躱しながら相手の動きを封じようと強烈な下段蹴りを繰り出す。

 まともに喰らえば下半身ごと持っていかれそうな一撃を、ヘラは身体を大きく仰け反らせるようにして回避した。

 だが……そこでわずかにバランスを崩す。


 ――攻めてやるさ!


 俺は双剣を一つに組み合わせ、神速の踏み込みで一気に距離を詰める。

 相手を薙ぎ払う渾身の一撃――……しかし、それさえもヘラは槍で受けきってみせた。

 まったく……どんな槍の達人なんだよ。

 完全に八つ当たりだが、どこかで本人に会うことがあったなら、一言文句でも言ってやりたい気分だ。


 が……その一撃は無駄ではなかったようだ。

 長柄の武器がしなるようにして、防御が手薄になる。


「くっ……」


 そこへすかさず、リムの拳が炸裂した。

 文字通り、至近距離で散弾銃が炸裂したかのような音が響き、その衝撃たるや相当なものと思われる。

 完全にはガードできなかったのか、ヘラは数メートルほど吹き飛んで体勢を崩した。


 今のはかなり効いただろうが……まだまだ、連係攻撃はここで終わりじゃないぞ。

 俺は道具袋から白魔水晶を取り出し、すぐさま内包されている魔法を解き放った。

 火と水、風と土、闇と光――相反する六つの属性を全て融合させた魔法球が姿を現し、それを剣にまとわせ、引き絞るようにして構える。


 この一帯は、リムが大気中のマナを《魔喰武装闘衣(フィアフルロンド)》で喰らったことで、一時的に魔法が使用できなくなっているのだが、魔法を封じておける特殊な宝石――白魔水晶にあらかじめ内包されている魔法だけは使用可能なのだ。

 それについては修行のときに実証済みである。

 相手にとっては、魔法で迎撃することもできない厄介な状況。


「あっはは――……なにそれ? ちょっと怖いわ」


 ……これを喰らっても、まだ余裕でいられるか?


 ――――《多重属性極剣波(シンフォニックレイヴ)!!》


 まばゆいほどに輝く剣閃が、一直線に向かっていく。

 剣と魔法の威力を最大限に引き出した渾身の一撃がヘラを呑み込み――轟音とともに大爆発を引き起こした。

 爆炎が勢いよく立ち昇り、すさまじい爆発の風圧によって巻き上げられた石がゴロゴロと空から礫のように降り注ぐ。


「まだだ!」


 こんな程度で、相手が死ぬはずはない。

 俺は間髪入れずに爆発の中心地へと駆け出し、煙をかきわけながらヘラの姿を視界に捉えた。

 どうやら直撃だけは避けたらしいが、手に持っていた槍は取り落とし、額からは血が流れ出ている。

 相手もこちらを視認し、すぐさま別の姿へと変化しようとしたのか、周囲の空間がグニャリと歪んだところへ――


「おおおおおぉぉぉぉぉっ!!」


 ――勢いよく、全力で手を伸ばした。

 ……ラハルさんの変化した姿は《盗賊の眼(ライオットアイズ)》で見破ることができたものの、ヘラの変身した姿を凝視しても、依然として靄がかかったようにしか見えない。

 姿を真似るだけではなく、完全な形で再現できると豪語していたヘラの言葉から察するに、彼女のほうがより強大な力を有しているのだろう。


 ……だが、ここで退くわけにはいかない。

 足りないと思うのなら、引き出せばいいのだ。



 ――もっと力が欲しい。



 その湧き上がる強い欲求を否定せずに、自分のものとして爆発させろ。

 脳内に木霊する声に従い、相手から何もかも奪い尽くすべく――乱暴に掴み取ればいい!


「はあぁぁぁぁぁ!!」

 ヘラが姿を変える直前で、俺はその顔面を覆うように掴み取った。

「っぐ……な、なにを」


 そのまま握り潰してしまいたい衝動に駆られたが、それでは当初の目的を果たせない。

 際限なく膨れ上がっていく欲求を無理やり抑え込むと、心臓が破裂しそうに痛んだ。


「はぁ……ハァ……」


 俺は――《盗賊の神技(ライオットグラスパー)》を発動させた。

 これさえ……これさえ上手くいけば、全てが終わる。

 そうだ、なにも命まで奪う必要は――――


「……甘い、わね」


 ――だがしかし、大罪スキルを発動させた俺の手が、不思議な力によってパァンッと弾かれた。

 それを見たヘラは口元を歪ませながら、すかさず俺の喉元へと手を伸ばす。

 これでは……さっきとまるで逆の状態だ。


「ふふ……あはは、あはははははは! 何をしようとしたのか知らないけど、どうやら、わたしのほうが大罪の力と同調して使いこなせているようね。だから言ったじゃない……正義漢ぶって首を突っ込まずに、あなたたちは自分の心配をしていればよかったのよ」


「使いこなす……? あんたの場合は――振り回されてるの間違いだろ?」

「ふふ……言ってなさい」


 ヘラの姿が、またもや歪んで変化する。

 次はいったい誰に姿を変えるのかと思ったが、目の前に出現した男の風貌は、俺の身体を一瞬硬直させるに十分な衝撃を与えてくれた。


 髪の毛から瞳の色、装備に至るまでの全身が――黒一色。

 唯一白いのは、黒と白で対になっている双剣の一本ぐらいだ。

 マジ……かよ。


 ――次の瞬間、目にも留まらぬ白銀の一閃が振り下ろされる。


「くっ……!」


 喉元を掴んでいる相手の手を振り払い、身体を両断されるような事態だけは回避したが、それでも肩から腹部にかけて鋭い痛みが走った。

 瞬時に斬られた部分が燃え上がり、傷口が火で炙られる激痛が襲いかかってくる。


 水魔法で鎮火しようとしたが、大気中のマナが少ないせいか上手く発動できず、地面に身体を擦りつけるようにしてなんとか事なきを得た。


「ふふ……どう? 自分の剣で斬りつけられた気分は?」


 白銀剣ブランシュ……正式名称は《炎皇白銀牙(ブレイズ・ブランシュ)》――斬りつけた対象を炎で優しく包み込む、稀代の名剣。

 優しく包み込むとかいうわりには、滅茶苦茶痛かった。


 そう――あれは俺の剣だ。

 そして、その使い手も俺のはずである。


「皆から信頼されて期待を背負っているあなたって……とっても眩しくて羨ましいわよ?」


 こいつ……俺に化けやがった。

 冗談じゃ……ないぞ。


「セイジ! 大丈夫!?」


 爆発による煙がやや薄れてきたところで、リムもこちらに駆け寄ってきた。

 だが――俺が二人いるという奇妙な現実に、動きを止める。


「えっ……」

「お、落ち着いて、リム。俺が本物のセイジで、ようやくこいつに一太刀浴びせて動きを止めたところなんだよ。もう安心だから……そんなふうに構えなくて大丈夫だよ」

「リム! ちがっ――」


「そう――これで全て終わりだからさぁ!」


 リムなら、ちょっと時間をかければそれが偽物と判別できただろう。

 しかし、わずかに戸惑ったことで一瞬の隙が生まれた。

 身体能力強化スキルを限界近くまで高めた神速の踏み込みは、リムとて容易に躱せるものではない。


「痛っ――……セイ、……ジ?」

 彼女の腹部に突き刺さった剣は、そのまま大きな炎をまとって燃え上がる。

「きゃあぁぁぁぁ!」


 そうして乱暴に剣を引き抜いた後、ヘラは実に面白そうに笑ってみせた。


「ふふっ……あっはははは! この身体はなかなか素晴らしいわ。強気になっちゃうのも仕方ないかもしれないわね。そうだ、良い機会だからそっちの子も――」

「――ふっざけんな! このクソ野郎が!」


 倒れ伏したリムにまで手を伸ばそうとしていたヘラに、傷の痛みを強引に無視して斬りかかる。

 ……だが、当たらない。

 常人とは思えない速度で回避してみせた相手は、油断なく双剣を構えてこちらと距離を取った。

 くそっ……我ながら腹の立つほど機敏な動きだ。


「リム、おい……大丈夫か!?」


 まずいな……リムに治癒魔法を使おうとしたが、やはり大気中のマナが少ないせいか、ほとんど治癒効果が得られない。


「ずいぶんと頑張るのね。まあいいわ……あなたの姿を手に入れただけで満足するとして……それじゃあ、そろそろ死んでもらおうかしら――……なっ!?」


 俺たちにトドメを刺そうと、双剣を真っ直ぐとこちらに向けていたヘラに、どこからかナイフが飛んできた。

 同時に何本も飛来したナイフに、ヘラはわずかに焦燥の色を浮かべてそれらを叩き落としていく。

 そのうち、一本だけが頬をすれすれで掠めていった。


 赤い一筋の流れが頬をつたい、球体となって地面へポタリと落下する。

 当然ながら、助け船を出してくれたのはレイたちだ。

 ラハルさんも、ナイフの扱いには自信があると言っていた。


「……ふふふ、どうやら……あっちのほうが先に死にたいらしいわね。どうせ最後には全員殺すんだから、大人しくしてればいいのに」


 そう言って、ヘラは四人めがけて一気に駆けていく。

 レイやレン、それにリクさんやラハルさんも、かなりの手練れだ。

 しかしながら、自分で言うのもなんだが、今のヘラが相手では長くは保たないだろう。

 皆が作ってくれたわずかな時間で、俺は自分とリムの傷を可能な限り回復させるよう努める。


 ――時間にすれば、ほんの十秒程度。


 効果の薄い治癒魔法でも、なんとかリムの傷口を塞ぐことには成功した。

 俺のほうは、生命力強化スキルのおかげでずいぶんと楽になってきている。

 どうにか戦える状態にまで回復した後、すぐさま皆を助けようと駆け出した。




「――あら? もう来ちゃったの? もうちょっとゆっくり休憩していればいいのに」

「……怪我の治りは、早いほうなんだよ」


 ちらりと、皆の様子を窺う。

 どうやらルークやライムも一緒になって戦ってくれていたようだが、それら全員が地面に倒れ伏している。

 かろうじて息はあるようだが、あまり楽観視できる状態ではない。


「あっはは。この身体って本当に動きやすいわ。これだけの数を相手にしても、ほぼ無傷で勝てちゃったもの。ああ……でもね、こんなに手応えがなかったのには、もう一つ理由があるの」


 そう言って、ヘラは倒れているレンの頭を踏みつけた。


「――知りたい?」

「……その足を、どけろ」

「ふふ。この人たち、わたしがこんな姿だったせいで本気を出せなかったみたい。特に……この双子の姉弟なんて、わかりやすいったらなかったわ。これで元特務部隊だなんて、あはっ、笑っちゃう。ねえねえ、大切な仲間が自分の姿をしたやつに傷つけられたときって……どんな気持ち? 悔しい? それとも悲しい?」


 はは……人間っていうのは、感情が吹っ切れたとき、逆に冷静になるらしいけど……あれって本当なんだな。

 ……たしかに、俺が甘かったのかもしれない。


 無理やり抑えつけようとして、大罪スキルと同調だなんて笑わせる。

 だけど今なら、俺の頭に響く声と歩調を合わせていけそうな気がした。

 さっきから、痛いぐらいに頭で反響している……声。



 ――さあ、相手の全てを奪い尽くそう。

読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 強欲に変身できるようにしちゃダメでしょ… 強欲は人のスキル奪って強くなるってのがウリなのに、人のスキル奪った状態の強欲に変身できちゃうんじゃ、実質的に嫉妬の能力の方が上になりますよね?
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