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白銀の竜

作者: 反逆の猫
掲載日:2026/06/25



 一匹の竜が雪に閉ざされた山の上にいる。


 その雪山に住む竜は、かつては真っ黒な鱗を持っていた。

 しかし、いつからはそれは白く染まってしまったのだ。


 それは、以前の竜を知るものが見れば、驚くだろう変化。 

 なのに竜は、自分の変化に無頓着だった。


 体のどの部分がどう変化してもどうでもいいというように。

 家ごと吹き飛ぶような風が吹いても、鼓膜を破るような雷が落ちても、竜は動揺しない。


 なぜなら竜は、冷たい雪山に住んでいるうちに、感情を凍らせてしまっていたからだ。


 少し前までは過去の事を思い出し、心を動かすこともあったけれど。

 今はもう、少しもない。


 竜はどうしてそうなってしまったのか。

 それは、竜が当たり前に生きていた数千年前まで時を遡らなければならない。





 その頃、世界はあたたかく、様々な生命に溢れていた。

 しかし、突然空から大きな岩が降ってきて、地上をたちまち燃やし尽くした。

 そして、その後はたくさんの雲が空を満たしたせいで、太陽の光が地上に届かない世界になってしまった。


 太陽の光で温まれない者達は、熱を奪われて次々に死んでいった。

 氷のように冷たい大地で、吹雪くばかりの白銀の空気で、凍てつきながら。


 人間という生き物がつくった建物などもあったが、全て雪の中。


 生きとし生けるものは、命を奪われた。


 それは、自然界の頂点と言われた竜も例外ではない。


 竜たちも、一匹、また一匹と白い世界の中で命尽きていった。


 そうして最後に生き残った竜は、触れ合うものも、言葉をかわせるもののいない世界で、孤独にならざるをえなくなった。


 一匹だけのさびしい世界は、竜の中に満ちていた感情や思い出を真っ白に染め上げ、そしてそんな心の痛みに応じて体も真っ白にしてしまった。


 ーーやがて自分も熱を奪われて死ぬだろう。


 ーー真っ白な雪に覆われ、心ごと凍てついていく。

 

 迫る死に怯える心すらなくなってしまったのは、竜にとって救いだったのか、それとも絶望だったのか。



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