感動!歴史を超えた恋に寿司を添えて〜
ハンカチ必須です!!
「寿司ーーそれは、日本人が生み出した奇跡の食べ物!」
そこには杉本という男が織りなす、時代を超えた感動の恋物語があった。
むか~し昔、奈良時代のこと。ある漁師が、どうしようもない悩みを抱えていた。
その名は杉本。彼には好きな子がいた。名前は、かぐや。
上品で笑顔が可愛くて、ちょっぴり気が強い。
杉本は毎朝、夜明け前から舟を漕ぎ、川へ出る。波が荒れようが魚に顔を叩かれようが気にしない。
「今日はもっと良い魚を!」
ぬるぬるの鱗まみれになりながらも、彼は新鮮な魚を選び抜いていた。杉本が魚を届けるたび、かぐやは元気に駆け寄ってくる。
「魚、好きなんです。とっても。」
その無邪気な姿を見るたび、杉本の胸には熱いものがこみ上げてきた。
けれど、悩みは尽きない。
魚はすぐに腐ってしまう。いくら朝獲っても、昼には匂いが出る。奈良の都まで運ぶには距離も時間もかかりすぎる。
「魚ってすぐ腐るし、なんとかならんのか?」
杉本は、かぐやのために魚と真剣に向き合い始めた。
まずは塩。
塩をこれでもかと擦り込みすぎ、魚が”即席ミイラに。味見した舌も干からび、高血圧待ったなし。
次に干物。
干した時点で、なんだか「死んだ魚の目」みたいでやめた。
茹でてみる。
グラグラ湯にくぐらせた結果、出来上がったのはただの水煮。湯気だけ立派で、口に入れれば給食の残り物の記憶がよみがえった。
埋めてみた。
これはもう、供養だった。
迷い、悩み、時に腐った魚に泣かされながら、杉本は考え続けた。
ある日、杉本はふと思いつく。
「米と一緒に漬けておけば、魚も長持ちするんじゃないか?」
家で炊くために毎日、研いでいた米。余ったご飯や米の汁に、魚を漬けてみた。
すると数日経っても腐らないどころか、魚の匂いが柔らかくなり、深い香りが立ちのぼった。
腐るどころか、旨さが育っている!
杉本は、魚を活かすための超ワイルドな保存法を編み出した!
これが「なれずし」の誕生である!
数日後、杉本は意を決してかぐやのもとへ向かう。
「かぐや。君の好きな魚だよ。とても新鮮な魚だ。」
苦労の末に生み出した、発酵という奇跡の保存法。
杉本は片膝をつき、両手で魚を掲げる。その姿は、まるで忠義に生きる”物部の武人"のようだった。
「かぐや。俺と結婚してくれ!!」
静まり返るその場。かぐやがそっと歩み寄り、杉本を見つめる。
「杉本さん。」
そしてーー
「ごめんなさい!!」
「え?」
杉本は衝撃で魚を落とす。
「な、なんで!?魚、好きって!」
「私、魚を持って告白する男とは結婚したくないの!」
「えぇ!?めちゃくちゃ頑張って発酵させたのに!!」
かぐやは眉をひそめ、怒ったように叫ぶ。
「魚!?いや、普通は布とか鏡とかだろ!奈良なめんな!!」
杉本、奈良時代の恋愛文化に完敗。そのまま、かぐやの護衛に出て行かされる。
「かぐや、どうか忘れないでくれ!!なれずしより長持ちする愛なんだ!!」
かぐやは振り向かず、涙を流していた。
「私は、お月様に帰る運命なの」
失恋の発酵は止まらない。
そして遠い未来、“寿司”が生まれるとは、月の使者たちでさえ知る由もなかった。
「なんて、なんて素晴らしい話なんだ!」
客のひとりが、涙をぽろぽろこぼしながら寿司を頬張る。
「店長、早く続きを教えてくれ!異国の歴史を、もっと知りたいんだ!!」
「どっちも報われないのは辛すぎるぞ!!どうなるんだよこれから!!」
武蔵も涙を浮かべながら頷いた。
しかし、女性店員は忙しそうに外で台を運び、魚の掃除に追われている。
店長は涙を拭いながら、外で働いている店員に目をやった。
「ルージェちゃん、片付けは後でいいから、こっちに座って話を聞きなさい」
「え。」
ルージェは不満げな顔をしつつも、しぶしぶカウンター席に腰を下ろす。
店長はカウンターの内側で、こみ上げる涙をこらえながら、静かに話を続けた。
最初のなれずしは、発酵させた”保存食”で、魚を食べるために使った米はなんと捨てられていた。
だが時は流れ、室町時代ー。
ある日、町中に響く声があった。
「どうして、どうして捨てるの!?米だって、米だって生きてるんだよ!」
そう叫んでいたのは、一人の少女・千鶴。
彼女は、魚を食べたあとに米を捨ててしまう人々を見るたびに、どうしても胸が痛くなってしまうのだった。
今日もまた川辺で捨てられた米を前に、膝を抱えて悲しんでいた。
そこへ、一人の男が現れる。
「泣くなよ。」
彼は無言で千鶴の頭に手を置いた。
その男の名は、杉本。
かつて、魚で恋に敗れた男の血を引く料理人である。
そして今、彼はこう誓う。
「腐りきった運命を俺が発酵させてやる!!」
杉本の挑戦が、再び始まるーー!
だが、そんな杉本も以前は米を捨てていた。いつも通り川辺で発酵後の米をぽいっと投げ捨てようとした時だった。
「なんで捨てるの?」
背後から、透き通る声が響いた。
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