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(6) - 大会前日 -

その後もなんやかんやあったが、いよいよ明日は大会だ。

本日は試合前日という事で軽めの調整だけで終わりとなる予定だ。


しかし……。


「監督ぅーやっぱり私も出なきゃだめですかぁ……」


羽衣ちゃんは当日でもないのに人見知りを発動していた。うーん、練習試合の時は大丈夫だったのにな。


いや、むしろ前日の方が不安なのかな?


「んーちょっとグラウンドいこうかー」


そう言って羽衣ちゃんをグラウンドに誘うと、彼女は素直についてきた。そして則夫もついてきた。


「監督!我と一緒に筋トレをしようではないか!!」

「いや……筋トレはしないけど……まあいいや、ゴールお願いね」


とりあえず則夫には、キーパーについてもらって、羽衣ちゃんにボールを軽く蹴りだした。


「1対1で勝負しよう。僕がディフェンスするから、好きにシュート打っていいよ」

「えっ、監督、足は大丈夫なんですか?」

「うん、軽く動く分には問題ないよ」

「えっと……はい……」


羽衣ちゃんは少し戸惑っていたようだが、気合を入れなおすとドリブルを開始した。いつもながら流れるようなスムーズなドリブルだ。

僕の目の前まで来ると、足の裏で転がすように華麗ステップで抜き去る。凄い近くで見るとまるで視界から消えるように見える。そして彼女はそのままシュートを放とうとした。


しかし……。


「甘い!」


僕は彼女の動きを読み切ると、ボールに足を引っかけ奪い取ってしまった。


「え?え?あれ?」


羽衣ちゃんは何が起こったのか理解できていない様子だ。僕は苦笑しながら言った。


「僕の勝ちだね」


そう言うと、彼女は少し悔しそうな顔をした後……すぐに笑顔になった。


「はい!でもびっくりしました!いきなり取られたのは初めてです!」


そんな彼女の姿に思わず笑みがこぼれるのだった。


「プレーはしてなかったけど、ずっと見てきたからね。このくらいはしないと」

「そ、そうなんですか……」


羽衣ちゃんは少し照れた様子だった。「ずっと見てきた」という部分が嬉しかったのかもしれない。


「試合となれば、色んな人と対戦することになる。きっと見たこともないテクニックも見られる。それは楽しいことじゃないかな」

「楽しいこと……」

「うん、フットサルってね。ボールを奪って点を決めるだけじゃないんだよ」

「……」


羽衣ちゃんは黙って僕の目を見て聞いている。


「ドリブルで相手をかわして抜き去るのもいいけど……パスを出すのもいいし、味方にアシストするのも楽しいんだ。相手を交わしてシュートを決めた瞬間は最高だね!試合をすれば、きっともっともっとフットサルが好きになるよ」


羽衣ちゃんは何か考え込むような仕草をした。


「そっか……うーん……」

「なんだなんだ!!緊張しているのか!!!」


まだ悩んでいる様子の羽衣ちゃんに則夫が声をかける。


「うーん……いや、ちょっと違うけど……」

「はっはっはっ!良いことを教えよう。人を茄子だと思って接してみよ!」

「え?あ、はい?」

「もしくはカボチャでも可だ!!」


よくわからない助言を受け困惑している羽衣ちゃんだったが……。


「わ、わかりました!私やってみます!!」っと決意を固めたようだった。


僕の回りくどいやり方よりも則夫のストレート(?)な言葉の方が彼女には合っていたのかもしれない。

「則夫くん!いいじゃないか!!ナイスアドバイスだよ!」っと綾姉さんが笑いながら褒めていると梓さんもそれに続き笑い声を上げたのだった。

そんな光景を見て僕も思わず笑ってしまった。すると羽衣ちゃんも恥ずかしそうにしながらも笑顔を見せてくれるのだった。そんな様子に僕は少し安堵するのだった……。


そんな僕に瑞希さんが話しかけてくる。


「やれやれ……羽衣ちゃんの方はなんとかなりそうだね」

「そうですね。今は不安なようですけど、試合になれば問題ないと思います」


試合外は知らないけど……。そんなことを考えていたら瑞希さんは少しばかり不安そうな顔をして聞いてきた。


「それで、あなたの足は本当に大丈夫なの?」


ん?ああ……練習とはいえプレーしたことを心配してくれてるのか


「ええ、あのくらいなら問題ないですよ」


瑞希さんが心配してくれたが、大丈夫だ問題ない。そもそも普通には生活できているのだ。あのくらいは問題ない……はず……。


「足を切られても知らないわよ」

「気を付けます……」


”足を切る”は、僕が主治医に言われたことだ。「これ以上悪化すると本気で足を切らないとだめだぞ」っと……。


かなり必要に念を押されているので、僕も若干ビビりまくっている。


「よし!大丈夫ならこれ持って!」


そう言ってダンボールを渡してきた。


「なんですか?これ?」

「ふふふ……いいモノよ」


瑞希さんはそう言うとみんなを集合させた。


「みんなー!明日の試合はこれ着けてねー!」


そう言って箱の中身を見せてくれた。


「えっと、これは……ユニフォームですか?」


瑞希さんはニヤリと笑った。


「そう!エル・ブレイズのユニフォームだよ!!もう買っておいたからねー」

「え?これって高いんじゃないですか?」

「そこそこだよー。年長組でお金出し合ったんだー」


梓さんが説明してくれた。

羽衣ちゃんは「わぁー」っと目を輝かせて喜んでいる。


濃い目のブルーのユニフォームだ。かっこいいデザインで、いつの間に作ったのだろうかエル・ブレイズのエンブレムも入っている。


「監督ー!かっこいいですね!」


羽衣ちゃんが嬉しそうに言った。


「んじゃ、監督配って配って」

「はい!」


僕はみんなにユニフォームを配っていく。


「じゃあ、背番号1は則夫」

「お!我か!!我が1番とは見る目があるではないか!!」

「いや、フットサルのキーパーは背番号1と決まってるから……」

「我だけ黄色とは目立つじゃないか!!」


と言った則夫は上機嫌な様子で「任せておけ!!」と胸を叩いていた。


「じゃあ、2番は梓さんで!」

「はーい!わかった」

「3番は綾姉さんね」

「OK!よろしく!」

「4番は瑞希さんです」

「了解ー!」


っと敬礼する瑞希さん。

最後に5番が羽衣ちゃんだ。


「フットサルだと5番がエースなんて言われることもある番号なんだ」

「ええええ!私がエースなんですか!!」

「うん!羽衣ちゃんが背負ってほしいんだ」


そう言うと彼女は満面の笑みで答えてくれた。


「はい!!頑張ります!!!」


こうして、僕たちはユニフォームに着替えると軽く練習を行いその日は解散となった。

そして……いよいよ大会を迎えるのだった。

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