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第1章 5

 僕がのそのそしている間に、佐伯さんが「動いた」。FMAの部長の柳瀬さんに、班の変更を依頼したのだ。表向きは、増尾班のファッションではなく後藤田班のコンテンツビジネスがやりたいというものだったけれど、おそらく佐伯さんは、同じ女性でもある柳瀬さんには全部ありのままに話したに違いない。佐伯さんの希望は受け入れられ、彼女は後藤田班へと移って行った。増尾班は、ついに増尾と僕の二人になった。

 次のフィールド調査もその後の飲みも二人だけで、当然の流れというか、酒の入った増尾は絡んできた。

「おまえ、知ってたんだろ、俺の気持ちも、佐伯の気持ちも。何でもっと早く、俺に言ってくれなかったんだよ」

 言って聞く耳など持つものか。

 とはいえここで反論しても仕方がないので、まあまあと宥め役を続けた。内心では、めんどくせえ、何これ、マジ、あり得ない、と罵り続けながらだ。いくら宥めても増尾は納得せず、ねちねちと絡み続ける。

 僕は心を込めずにさらに慰め続け、代わりに全然違うことを考える。

 どうしてこうも面倒なことばかりが起きるのだろう。これは何の罰ゲームだというのだろう。増尾、てめえの顔と頭と身長と思いやりの無さと空気の読めなさと、そういう全部としっかり向き合い、理解してから誰かを好きになりやがれ。おまえのバカはおまえ一人で始末しろ。俺に絡むな。

「だいたい、お前はさあ、陰険なんだよ。陰険で、いつも上から目線なんだよ」

 増尾が僕の胸倉をつかんで揺すろうとする。

 まあまあと僕はその手を掴んで押さえる。

 死ね。

 増尾、お前なんか、死ね。

 死んでしまえ。

 生きている価値などない。

 勘違い野郎。

 俺に近づくな。視界に入るな。実家に帰れ。

 死ね、死ね。

 ――あー、と僕は思う。

 これって、杏が高校の時に僕を主人公にして描いたマンガそのままだ。僕の中身は、今になってもちっとも成長していない。

 成長? ウザい。

 本当に人は成長するのか?

 するものか。

 僕はたぶん、一生ずっとこんなだ。


 三日後、T食品流通から返事が来た。インターンシップにまた落ちた。


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