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第10章 1

 ボンに「会いに行く」機会が、翌日、思いもかけないところからもたらされた。瑠奈からLINEが来たのだ。

「ボンの墓参りに行きたいのだけれど、亮ちゃん、一緒に来てくれないかな」

 僕から誘えずにいた。瑠奈が誘ってくれた。ボンにも会いたかった。

 ボン、僕はまたやってしまったのかな。きっと、ボンだったら、自分からうまく誘っただろう? 瑠奈に誘わせるようなことは無かっただろう?

 勿論、僕はすぐに、OKのスタンプを送った。


 瑠奈が提案してきた大晦日の日。

 僕たちは、都心から小一時間かかる墓の最寄り駅の改札で待ち合わせをした。瑠奈はいつも通りに見えた。そう振る舞っているのだろう。

「ここのお花、安いね」

 通り沿い、駅から少し離れた花屋で、張り込んで大きめの花束を二つ買った。僕がそれを持ち、そのまま、駅の反対側のバス乗り場までアーケードを並んで歩く。明日に正月を控えて人が多い。

「亮ちゃん、忙しかったんじゃない?」

「いや全然」

「そうなの? あ、そうか。杏の引越し、手伝ってあげたんでしょ?」

「そ。暇だから」

 へへへ、と瑠奈は笑った。それから。

「私も、まあ暇だよ」

「そうなのか?」

「今年は高校のみんなでのクリスマスも無かったしね」

「杏が忙しかったから」

「私が声掛ければよかったなあ。来年は東京じゃないしな」

 名物の肉屋に行列が出来ている。四人で、このアーケードを歩いたこともある。肉屋に並んで、メンチカツを買って食べながら歩いた。高架線をくぐり、坂を降りて、公園へ。葉桜が綺麗だった。その光景、みんなが歩いていた姿も覚えている。

 今、こうして見る瑠奈の横顔も、何年経ってもきっと覚えている。それに、寒さの少し緩んだ大晦日の昼前の、この街のさざめき、気配、匂いのようなものも。


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