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料理
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「料理、できるのか」
最近できた『弟』が持つエコバッグ――そこから飛び出た葱を凝視し、茫然と呟く。
「簡単なもんならね」
バッグから続々と出される生鮮食品を眺める俺は内心、焦っていた。
(料理、俺も習わねば)
『弟』に食わせてもらうのは、流石にマズい。
◇
(……また怪我してる)
『兄貴』の指にまた増えた絆創膏に、一拍、思考が止まる。
その手指の怪我に思い当たる節はあるんだ。
『兄貴』、夜にゴソゴソなんかやってるんだけど、たぶんソレが原因。コッソリ夜食作ってんだろうなってのは、翌朝の台所のゴミを見て察した。
そういや、『兄貴』が料理する姿を見たことがないな。
俺が『兄貴』と合流してからしばらくは、慌ただしくて外食と出来合いばかりだったし。俺が飯作り出したのも、つい最近のことだ。
(ふむ、つまり、そーゆーこと?)
初心者向け料理本、さり気に出しとくか。