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大雨の日に
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「『兄貴』」
大雨の夜、自室にいた『弟』が珍しく居間に来た。
「その、平気か、雨」
戸惑いと不安、気恥ずかしさをない交ぜにした顔に察する。
施設ではあまり一人でいることはなかったろう。
「助かる。来てくれるか」
やはり、ひとりは不安だものな。
◇
外は大雨だ。施設ではこんな時、チビ共が怯えるからあやすのが大変だった。
(あの人は平気かな)
最近できたひと回りは年の離れた肉親は、居間で一人、どうしてるだろう?
「『兄貴』」
振り向いた相手の姿を見て安心した瞬間、気付いちまった。
――大雨で不安がってたのは、他ならぬ俺の方だ。今も、そして施設にいた時だって。