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ひとりじゃなくふたり  作者: 三山 千日
最期とはじまり
2/48

思い出がないのなら

 ◆


 『弟』はどうにも不味そうな食べ方で、魚を実に旨そうに食べる。俺とは逆だ。

 俺は魚を旨いとは思えんが、『弟』がそう思うのなら、魚の身をひと欠片も無駄にすることのない食べ方を教えよう。……クソ親父が教えなかった代わりに。



 ◇


 『兄貴』はよく道を間違える。

「いずれ着けばいいし、そのまま着かなくてもいい。その時は近場の飯屋で旨いものを食おう」

「そうはいかねーって」

 暢気な『兄貴』の腕を引き、見覚えのある道を行く。クソ親父だとしても墓までの道くらいは覚えてやらんと。



 ◆◆


 『弟』が丁寧に墓掃除する様に感心した。同時に()()()子にのうのうと清められている墓石に虫唾が走る。


「父親との思い出はあるか?」

「ない。けど、『兄貴』に会わせてくれたから感謝してる」


 それはそう。

 この繋がりに気付けたのはアイツの最後の善行だな。



 ◇◇


 墓にホオズキを供える。

「造花でもいいんだが」

 墓に刻まれた字を睨む『兄貴』の声は酷く冷たい。それに気付かぬふりをするのにはもう慣れた。


「『兄貴』、二人で旨いもん食い行こう」

 いい思い出のないクソ親父は墓の中。俺達は俺達の思い出を作りゃいい。

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