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妖精姫は赤獅子将軍に嫁ぎたい  作者: 一理。


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事件の決着


 テレンス王太子は視察に向かうと言って王都を出た行進路を隣国トッカーニ王国に変えた。国境に軍を待機させると密書を隣国の第一王子に送った。トッカーニ王国の国王は敵か味方かわからないが第二王子の政敵である第一王子はアルヌルフとの企みに参加していないと考えられたからだ。


 密かに第一王子と対面するとソマリエ王国の王弟アルヌルフとトッカーニ王国の第二王子が戦争を企んでいるらしいことを打ち明けた。

 もちろん今まで調査した資料もすべて見せた。第一王子は急ぎ王宮に帰り国王に相談し、第二王子の宮を急襲。第二王子とそこに滞在していたジュスティを捕えた。


 第二王子は二日後には軍の演習のために王宮を離れるとの届け出が出されていたので急ぎ身柄を押さえたのである。


 第二王子や後ろ盾のチャルディーニ侯爵から抗議の声が上がったが第二王子の部屋からアルヌルフの密書が発見された。

 そのうえ演習の名を借りて軍を集結させることをチャルディーニ侯爵はごり押しで議会に認めさせていた。


 講和条約を王族自らが破ることは重大な犯罪である。第二王子、チャルディーニ侯爵共に牢に入れられソマリエ王国と情報を共有し二人の刑を確定することとなった。


 


 次にトッカーニ王国の国王と第一王子は第二王子と共に捕えられたジュスティと牢屋の格子越しに面会した。


 第二王子はジュスティの顔を知らなかったがソルヴィーノ侯爵と長らく戦場で共に過ごした第一王子はソルヴィーノ侯爵家騎士団長の彼の顔を知っていた。

 ゆえに此度の企みが誰の指図であるかも予測がついた。


 ジュスティは国王と第一王子に唾を吐きかけ言った。


「ソルヴィーノ侯爵家の犠牲の上の安泰を喜ぶがいい。王家を支えた忠義者やうら若い新妻、まだたった一歳の幼児を殺してまで守りたかった王座の椅子はさぞ座り心地がいいだろう」


 そうして二人に背を向けて座り込みその後は一言も喋らなかった。






 テレンス王太子は数人の騎士と共にトッカーニ王国の王宮に非公式で滞在しそれらの顛末を見届けた後ソマリエ王国に戻ってきた。

 隣国の国王は包み隠さずテレンス王太子に見せることにより、軍を動かそうとしたのはトッカーニ王国の意志ではなく第二王子とチャルディーニ侯爵の陰謀であることを理解してもらうしかなかった。


 後日アルヌルフの宮からトッカーニ王国の第二王子の密書が発見され、これにより第二王子は毒杯を賜りチャルディーニ侯爵は処刑されることが確定した。





 ソマリエ王国では王弟アルヌルフが毒杯を賜ることが決定した。

 ラヴィニアは夜会での醜態に加え身元の調査もせず自らの侍従や使用人に襲撃者たちを雇っていたことがわかり王族籍だけでなく貴族籍も剥奪されることとなった。


 アルヌルフは観念したようにおとなしいがラヴィニアは未だに毎日泣き叫び「お父様に合わせて!お父様が可愛い娘にこんな仕打ちをするはずがないわ!」と言っているらしい。


 ギルバートとスティーブだけでなくラヴィニア付きの者たちはもう一度実力を試されることとなり、実力が伴わない者たちは相応しい身分に落とされることとなった。







 建国祭間際でようやく襲撃事件の全貌がわかり犯人たちの処遇もあらかた決まった。


 そして建国祭当日———


 王都の街中はお祭りムードに包まれていた。広場では様々な屋台が軒を連ね大道芸人や吟遊詩人が芸や歌を披露する中を笑顔で溢れた人々が大勢行き交っている。


 侯爵邸のエントランスホールに姿を現したレオナルドは礼装用の黒の軍服を身にまとっていた。金のモールの肩章は将軍を表し金ボタンに詰襟や袖口にも金の刺繍があしらわれている。腰に巻いたサッシュは先日アーシャから贈られたものだ。

 その堂々たる姿を見てアーシャはポーっとなってしまった。


「レオ様素敵過ぎますぅ……」


 頬を染めため息をつく。


 夜会の襲撃事件以来レオナルドは休暇返上で毎日王宮に出かけ事後処理に忙しかった。

 それは父、グレンワース公爵やテレンス王太子も同じでにぎやかだったシュヴァリエ侯爵邸の朝食会はすっかり寂しくなってしまった。


 レオナルドだけはアーシャと朝食を共にしていたが朝食後は慌ただしく王宮に出かけていく。毎日王宮に出かけるレオナルドを見送ることがアーシャの新しい日課だった。



 二人は馬車に乗り式典の行われる王宮に向かった。


 王宮の一番大きなホールは式典に相応しく厳粛に飾り付けられ既に大勢の貴族が集まっていた。程なく外国からの賓客も入場し、最後に王族が入場して式典が始まった。


 既に王族の席に王弟アルヌルフと王女ラヴィニアの姿は無かったが一か月前の夜会での事件は衆人の知るところであった為特に動揺は無かった。


 襲撃事件に関しては王弟アルヌルフが王位を簒奪しようとして刺客を雇い王族を襲撃したと発表され隣国トッカーニ王国の関与は発表されなかった。

 同じ頃トッカーニ王国でも第二王子とチャルディーニ侯爵が軍を私的に率いて戦争を起こそうと企んだことが発表されたがソマリエ王国の王弟アルヌルフに関しては発表されなかった。


 二つの事件を結び付けて考える者もいるだろうが公的には無関係だとされた。


 式典の最後にレオナルドの騎士団総団長の任命式があった。


 ホール中央の赤絨毯を歩き国王の前に進み出たレオナルドはとても堂々として威厳があって、アーシャは両手を握りしめて食い入るように見つめていた。

 そのアーシャの姿が目に入ったのかレオナルドの顔がふとほころんだ。

 柔和な表情を浮かべるレオナルドを見て、もう無闇に怯える女性はいなかった。


 国王の前に跪き騎士の礼をする。任命の書状を受け取りレオナルドの休暇は終わりを告げた。





 建国祭の夜会が始まる前、レオナルドは王宮のある一室にいた。その部屋には国王と宰相、テレンス王太子、ウィスラン第二王子、グレンワース公爵、それにトッカーニ王国からの招待客である第一王子が居た。

 トッカーニ王国の第一王子はソマリエ王国の王族に対し深く謝罪の意を示した。

 トッカーニ王国の者が王族を襲い講和条約を王族が自ら破ろうとした。それを不問に付してくれたソマリエ王国に対し今後長きに渡り友好国であり続けることを誓った。


 会談が終わり皆が引き上げる中トッカーニ王国の第一王子がレオナルドに話しかけた。

 エルベルトの最後を教えて欲しいというものだった。


 レオナルドは多くを語らずただ素晴らしい剣の使い手だったということだけを言った。


 痩せこけて疲れた表情の第一王子はポツンと言った。


「私は王位を引き継ぐ資格などないことはわかっている。だけど私が継承権を放棄すればまた国が荒れる。今後はソルヴィーノ侯爵家のような犠牲を出さないように頑張っていく道しか私には残されていない……」


 そういった後ハッと我に返り「いや、今言ったことは忘れてくれ」と言って部屋を後にした。




 やつれていたのはソマリエ王国の国王も同じでアルヌルフに殺したいほど憎まれていたことにショックをうけ、更に可愛がっていたラヴィニアがあまりに愚かなことに気づき平民落ちさせたことでがっくりと気力を失っていた。


 国王はテレンス王太子に王位を譲ろうと今準備しているらしい。



 事件の後、アーシャがグレンワース公爵に質問したことをレオナルドは思い出した。


「お父様、賢王と呼ばれたお爺様はなぜエイブラハム国王陛下に王位を譲ったのですか?若い頃はアルヌルフ殿下の方が優秀だと言われていたのでしょう?」


「エイブラハムは凡庸で優柔不断だ。それを本人も知っていた。だからだよ」


 先代国王は息子が二人とも王の器ではないと考えていた。一度は弟であるグレンワース公爵に王位を譲ろうと考えたがグレンワース公爵は断った。


 それで長男であるエイブラハムに王位を譲ることにした。


 次男のアルヌルフは物事を一方向からしか見ることができない。己の考えばかりに固執して他の者を馬鹿にする。勉強だけはできたアルヌルフは兄のことを馬鹿にしきっていた。アルヌルフを王にすれば臣下の意見を聞かない独裁者になる恐れがあった。


 兄のエイブラハムは自分が凡庸であると知っていた。だから先代国王は王位を譲る際に臣下の意見をよく聞くようにと再三言い聞かせて王位を譲った。


 おかげてエイブラハムの治世は何も画期的なこともない代わり致命的な失敗もせずに済んだ。


 隣国と戦争が起きたことは想定外だった。戦争に負けていたらエイブラハムでは立て直しは無理だっただろうがレオナルドたちのおかげで勝利することができ、エイブラハムの治世は平凡に終わりを迎えることが出来そうだった。

 





 お読みくださりありがとうございます。

 あと二話で完結です。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


 もし気に入っていただけたら評価やブクマしていただけるとモチベーションがめっちゃ上がります。

 よろしくお願いします。

 

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