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妖精姫は赤獅子将軍に嫁ぎたい  作者: 一理。


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夜会での襲撃事件


 王宮の馬車止めに馬車が停まり中からレオナルドがぬっと姿を現すとエントランス付近にいた貴族たちはギョッと足を止めた。

 そしてアーシャが姿を現すとざわざわと小声で噂話を始める。


 今日のアーシャの装いはレオナルドの髪色の真っ赤なエンパイアラインのドレスだ。淡い色合いの可愛らしいドレスが多かったアーシャにしては落ち着いた大人っぽいデザインだがアップにした髪もルビーのアクセサリーもよく似合っていてアーシャの新しい魅力を引き出していた。


 アーシャがレオナルドにぴったりくっついて仲睦まじく会場に入っていく姿は人々の注目を集めた。


 人々が「噂は本当だったのか」とか「仲がよさそうに見える」と囁きあっているのが聞こえてアーシャは手に持った扇の下でにんまりした。


 会場に入るとお茶会で知り合った令嬢が婚約者と一緒に声をかけてくれた。

 レオナルドと一緒に談笑する。アーシャの楽しそうな様子とレオナルドが今まで見たこともないような柔和な顔つきで談笑しているのを見て今まで遠巻きにしていた人々も認識を改めたようで何人かは話に加わりたいそぶりを見せていた。


(うんうん、二人のラブラブを見せつけよう作戦はひとまず成功ね)アーシャは次はどうやってもっとラブラブを見せつけようかと思案していた。




 ファンファーレが響き渡る。王族の入場である。

 皆が壇上に注目した。


 まずは国王と王妃の入場である。

 凡庸、優柔不断と言われている国王だが、王妃も地味なおとなしい女性である。自分の宮に閉じこもって絵をかいたり刺繍をしたりするのが好きらしい。ある意味似合いの夫婦といえる。


 お次はウィスラン第二王子とアリス王子妃。

 テレンス王太子がいれば王太子夫妻が次であるがテレンス王太子は視察に出かけており不在である。

 ウィスラン王子はお気楽でやや軽薄な面もあったが兄を非常に慕っており初恋のアリス王子妃と結婚してからは雰囲気も落ち着きテレンス王太子のよき補佐役に成長しつつある。


 最後にラヴィニア王女。

 彼女が入場すると会場が一気に華やかになる。彼女自身の美貌や衣装の豪華さに加え彼女に付き従う近衛騎士や侍従がすべて美形ぞろいだからである。一部の男女は彼女や彼女の周囲に熱狂的なまなざしを向けるが、眉を顰める者も多い。



 国王は皆の前に立ち定例の挨拶をした後続けて言った。


「今宵はもう一人、我が弟が怪我もようやく癒えて復帰する。

 弟アルヌルフは先の戦争で深手を負い断腸の思いで戦線離脱を余儀なくされたがようやく療養生活を終え今宵から復帰することとなった。これで来月の建国祭を王族揃って迎えることができ余は嬉しく思う」



 国王が入場口を指し示すと数人の供を従えた王弟アルヌルフが入場してきた。


 アーシャは隣のレオナルドが緊張したのを感じた。傍目にはわからないだろうがレオナルドは緊張してアルヌルフを見つめている。考えてみればレオナルドの父はアルヌルフのせいで大怪我を負ったし彼も戦場で何年も苦労したのである。

 そう考えながらアルヌルフを見たが、アーシャは彼の暗い瞳が気にかかった。


 国王の挨拶も終え場に和やかな空気が戻った。

 第二王子夫妻がファーストダンスを踊り、少し砕けた雰囲気になる。

 ダンスに興じる者、数人で固まって談笑する者、料理の盛られたテーブルの近くで料理に舌鼓を打つ者など皆が思い思いに楽しんでいた。


 アーシャとレオナルドの周りにも恐る恐るではあるが数人の男女が集まり歓談をしている。



 アルヌルフが何か用事でもあるのか国王に話しかけに行くのが見えた。



 次の瞬間、「失礼」——レオナルドはアーシャの扇を取り上げるとアルヌルフに向かって投げた。



 扇は歓談する人々の間をすり抜け見事アルヌルフの手に命中した。

 アルヌルフは思わず手に持っていた物を落としてしまった。


 人々は一瞬ポカンとし、次にアルヌルフが落とした物がナイフだとわかり唖然とする。その時数名の人間がどこに隠し持っていたのか剣を抜き王族に一斉に切りかかった。



 会場は阿鼻叫喚の渦に包まれた。


 しかし異例の速さで事態は収束を迎える。

 近衛騎士たちの素早い働きで国王や第二王子、そして王の叔父にあたるグレンワース公爵に向かった刃は弾かれ賊は一人また一人と切り伏せられ捕らえられていった。


 無様だったのはラヴィニア王女を守る近衛だけだった。


 ギルバートとスティーブはへっぴり腰ながらも抜剣して襲い掛かる賊——エルベルトに向かって構えた。

 エルベルトは鼻で笑い無造作に剣を振った。スティーブが腕を切られ床に転がる。ギルバートの顔から血しぶきが上がった。

 ギルバートは頬を押さえその場に蹲る。

 その二人を一顧だにせずエルベルトはラヴィニアに向かって剣を振り上げた。


 ガキッ!!


 受け止めたのはレオナルドの剣だ。

 夜会では場内警備の兵や近衛騎士以外の帯剣は許されていないが、例外で将軍であるレオナルドは帯剣が許されていた。


「〝赤獅子〟か。わが生涯の最後に相応しい相手だ」


 にやりと笑ってエルベルトはレオナルドに剣を突き出した。剣筋は鋭くエルベルトはかなりの使い手であった。レオナルドは生け捕りを諦めた。二合三合と打ち合うたびにレオナルドの優位は増していき、ついにレオナルドの剣がエルベルトの肩から腰までを切り下げた。


 エルベルトは笑って自身の血だまりの中に沈んだ。




 その頃にはほかの賊たちは全て捕えられるか切り捨てられており、王弟ともども会場から引っ立てられていった。



 華やかだった夜会の会場は静まり返りその中にギルバートの情けない声が響いた。


「痛い……痛い……僕の顔が……美しい顔が……」


 頬を押さえた手の隙間から溢れ出す血を見てラヴィニアは急いでギルバートに駆け寄った。


「ああ……ギルバート……美しい顔にこんな傷がついてしまうなんて……」


 ラヴィニアはキッとレオナルドを振り返り鋭い口調で言った。


「野獣!お前のせいよ!お前が助けに来るのが遅いから私のギルバートの美しい顔に傷がついてしまったではないの!どう責任を取るつもり!?」


 これには呆れた。会場中のすべての人が呆れた。


 詰られてなお静かに立つレオナルドの横を小さな影がすり抜けていった。


 パアン!


 それはアーシャがラヴィニアの頬を張り飛ばした音だった。




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