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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== アルテーラテルト編 == 【物語進行:夜空サイド】
95/238

88話 その争い 局面変化につき!

 

「何故諦めないんだい?」

 イスカルは次の攻撃の準備をしながら、再び夜空に語り掛け始める。 言葉一つ一つに、さっきの頭痛の件を調べたいような...そんな隠れた意思がある気がする。


 イスカルは『グラビ・スクラフト』を生成し、夜空に向けて容赦なく発射しながら会話を続ける。 夜空はシールドや、物陰に隠れながら懸命にやり過ごす。


「....諦めて、どうにかなるのかよ!」

 遮蔽物が崩れる音の中、夜空は叫ぶ。


「普通なら心が折れる。 国に追われるなんて尋常じゃないしね....ましてや、この世界は君達の居た世界じゃない。 常識だって通用しなかっただろう」

 折れちゃいけない理由があった。

 だから、前に進むしか無かった...ただそれだけだ。


(クソッ、瓦礫がッ!)

 遮蔽物が削り取られ、この場所は危険だと判断した夜空が飛び出して。 別の厚みのある遮蔽物に身を隠す。 イスカルも、痛みに耐えながらゆっくりとこちらに近づいてくる。


「イスカルお前、人の事あれこれ言うがな! お前は大丈夫なのかよ、一応ここは国の首都...それに王宮だぞ!? お前は王宮を木端微塵にしたんだ!」


「身元でも特定しようと? 無駄だね、性別も違う、それに僕は国に秘匿されているから。 だから、僕の母国がシラを切ればいいだけの話だよ。 それとも...この世界において発言力も何もない君が、この国を、世界を動かしてみるかい?」

 なんだこの違和感。 この言葉がイスカルの言葉であって、イスカルの言葉では無い気がする。 この厭味ったらしい言い回しは.....恐らく。


「その胸糞悪い考え方するのは宰相だな! いい加減にしろよ、人を舐め腐りやがってあのジジイッ!!」

 しかしどうするか....思った以上にイスカルが元気だ。

 いや、大怪我はしてるのだが....拘束するにせよ、無力化するにせよ。 俺には遠距離の攻撃手段が存在しない。 だからこそ、近づくしか無いのだが....あの黒い玉に一発でも当たればまた転ばされる。 


 転んだ場所にスキルを集中砲火されれば、流石にあの威力でも死ぬ。

 じゃあ、麻痺ポーションでも投げてみるか? 



 いや、当たる訳が無い。



 しかも、俺が持っている麻痺ポーションはあと一本。 これを失えば、簡易的に敵を無力化する術が無くなってしまう。 .....銃を使う選択肢を考えなければ、の話だが。


 ....持ちうる最終手段、銃を使って応戦するしか無い。

 大丈夫、今まで銃なら何回も使ってきた....大丈夫だ。



「頼む神様ッ、ここだけはッ!!」

 後方から瓦礫が潰されるような音が聞こえ、この遮蔽物が長く持たない事を悟る。 音のタイミングを見計らって、夜空が銃を構えながら瓦礫から飛び出るッ!





 その次の瞬間....。




「女神は、君に、微笑まない!!」

 イスカルが夜空が飛び出た場所に、ピンポイントに『覚醒型、グラビタイツクォーン』と呼ばれるスキルを使用し、引力の波を夜空に直撃させた。 先ほどの会話と、怪我の具合で完全に油断していた夜空は、思いっきり引力の波に当てられ後方に吹っ飛ばされる。 衝撃で悲鳴を上げる暇すら無く後方の瓦礫に思いっきり突っ込む。


 背中に細かい瓦礫が刺さり、激痛が走る!!


「アアアアアッッッ!!!!!!」

 悶絶するほどの痛みが夜空を襲い、それと同時に背中から血が出始める。 雨で滲んだ血液が、体を伝う雨水と共に地面に零れ落ちる。 あっという間に自分の真下を赤く染めていく。 


 夜空は、最後の回復ポーションを即座に背中にかける。 回復ポーションの効果で傷は塞がったが、激痛までは消える事は無く、そのまま夜空はうつ伏せで悲鳴を上げ続ける。



「宰相様を馬鹿にするのは許せない。 楽しいお喋りはここまで、仕事をこなして帰還するよ....我らが愛すべきオニキス帝国へ届けよう。 今、悪魔勇者の罪を清算する」

 イスカルが、うつ伏せの状態で雨に打ち付けられている夜空の首根っこを掴んで持ち上げる。 ....いつぞやの列車の上と同じような状態になってしまった。


「......こう..なるって....分かってた」

 夜空は今にも消えそうな程小さな声で呟く。


「なら、何故来たんだ...逃げる選択もあったはずだ」


「.....深手を負わせて...国へ帰す為だ...。 お前は、必ず....俺を殺しに来るから....チャンスは....逃しちゃぁ...いけないんだ....っ」


「君じゃ無理だ」

 イスカルの拳が夜空へと向かう。 が、その拳が、イスカルに与えられた命令とは無関係の別の意思が裏で働いていたかのように止められた。



(また体の動きがッ、何かに阻まれてッ!?!?)

 イスカルの耳元で、自分の真意(しんい)が『ダメだよ』と囁いた気がした。



「やって...やるのさ...ッ!」

 だが、前と違う所が一つだけ...夜空の目はまだ死んでいなかった。

 夜空は胸のポーションホルダーに手を突っ込み、自分でも驚くほど素早くポーションを投擲する。 間近にいたイスカルにその攻撃が避けられるはずも無く、麻痺ポーションを腹部から下にかけて浴びてしまった。


「し、しまっ..たっ...!?」

 とたんにイスカルの力が抜け、その場に膝をつく。 と同時に夜空はフルパワーで拘束から抜け出し、3m程距離をとった。


「スキル『シールド』!!!!」

 夜空の前方に小型のシールドが生成される。 




 力で勝てないのなら、応用力で....!

 地頭の良さで(まさ)れ、強者に噛みつけ星原夜空!!!!



+(プラス)ッ!!! スキルッッ『スパイク』―――ッ!!!」


「一体...何をッ!?」

 イスカルが意味不明の行動に動揺する。 だが、夜空は一瞬も意識を散らすことなく、スキルの同時使用を成功させ....生成したスパイクを、生成したシールドの前に投げて....。


 スパイクがシールドの前を通り過ぎる瞬間にッ!


「終わりだイスカルッ!!!!」

 シールドを前方...イスカルの顔面へと押し出す。 そのスピードにスパイクを乗せるように投擲して、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 木の板並みでも、スパイクありきなら話が違う。

 言ってしまえば、釘バットと同じ原理だ...ただのバットに釘を刺すだけで、攻撃力が5割増しになるように....スキルとスキルの組み合わせは、予想外の攻撃力を生む。


 顔面に凄まじい速度でスパイクを()()()()()()()イスカルが後方にぶっ倒れる。 後頭部を強打し、イスカルの意識が落ちかける。


 瞼の辺りに一発刺さったのか、失明こそしていないが目の辺りから血を流す。 それに追加して、麻痺がイスカルの体を襲い...痛みが倍増したように感じる。


「ガァァァァァッーーーーー!!!」

 イスカルは悲鳴に近い叫びをあげる。 顔を抑えたいのに、麻痺のせいで手が動かせず...痛みを抑え込むような動作が出来ない。


 まさに地獄。 

 イスカルは痛みで片方の目に涙をにじませる。 


「く、くそ...俺も背中が....ッ」

 先ほど瓦礫に強打した背中が痛む。 恐らくあばら骨が折れている、骨折は自分のポーションでは治せなかったようだ。 とにかく、素早くイスカルを気絶させ....拘束しないと!!!


 夜空は、目いっぱいの力を振り絞って立ち上がり、麻痺で動けないイスカルの元へと歩き出す。 もう自分がどんな顔で迫っているのか分かりたくなかった。


 近場に落ちていた縄を拾い上げ、イスカルを拘束しようと手を伸ばした時.....。 いつもいつも、なんでこんな魔の悪いタイミングで登場するんだとばかりに、イェーガーが外壁をぶち壊して王宮内部へと入ってきた。


「夜空ちゃあああああああんッッッ―――――!! 匂いだァッ、匂いがする...好敵手が放つ臭くて芳しい香りがよォォォォ!!!」

 狂ったような絶叫が聞こえる。 イェーガーの位置から夜空は見えないが、確実にここに居るという戦闘狂ならでは探知能力が......イェーガーの勘を冴えわたらせる。


「な、なんで...。 少し、くらい...ご都合主義が働いたって....バチは当たらんだろ...! 無理だ、もう無理だ....流石に、この状態で戦闘は...無理だ!」

 だがイェーガーは止まることはない。 イェーガー独自の移動法、スキル『フルボディTNT』で自分自身を吹き飛ばして瓦礫の山の上に移動。 その場所から索敵を開始する。



(拘束か!?)


(いや、それとも逃走か!?)


(いや、ダメだ...どっちも間に合わなッ!!)

 夜空に大量の情報が流れ込み、一瞬だけ脳がフリーズを起こした。 痛みが冷静さを吹き飛ばし、焦りが命の危機による恐怖を呼び起こす。


「みぃ~つけたァ! 夜空ちゃぁぁぁぁん!!!」

 瓦礫の山の上に立ち....イェーガーがこちらを振り向きながら嬉しそうに口を開く。 イェーガーのいかつい筋肉がミチミチと音を出す。 イェーガーが自身が着ていた服を引き千切り、豪雨の中に自らの勇ましい肉体美を晒す。


 体表にある無数のウロコと、戦闘によって付けられた細かな傷が...夜空の恐怖の感情を煽りに煽る。 夜空は背中に痛みが増して、もう動くことが出来ない。


 アドレナリンも、ポーションの影響で止まってしまった。


「んだよォ。 死にかけじゃんかつまんねぇなァァ!!!」

 イェーガーが倒れるイスカルと、恐怖で呆然とする夜空の前に歩みを進める。 想定していた最悪のさらに上があるとは思わなかった。


(自分は怪我した上に、イスカルは拘束できず...おまけに、どっかのハゲは今、自分を殺そうと目の前まで迫ってきている。 死にたくない、死にたくないが....これは....流石に....!)

 夜空が悔しそうに目を瞑る。

 必死に頭を働かせ、何か一手を打とうと模索するが。


(せい)にしがみついてる所嬉しいが、逃がさねぇぜ何があってもよォ。 明日どころか5分後の雨雲すらお前には拝ませねェ。 川に流された俺様がよォ、どんな目にあったか知ってるかァ!?」

 セブン国で突き落とした激流の事を言ってるのだろうか?

 くそッ、痛みで頭が回らない!


「名前もよく分らんデカい魚に食われそうになったし、ケツに赤色の玉っころを付けた犬の餌にもなりかけた。 あぁ勘違いすんじゃねェぞ、俺様は別にそのことを恨んじゃいねぇ...むしろ、俺様は夜空ちゃんとあの剣士の嬢ちゃんに感謝すらシてんだ」


「か、感謝?」

 嫌な予感がする。


「テメェらは、俺様におニューのスキルをプレゼントしてくれたんだろ!? 『衝撃耐性』ってスキル名を見た時、真っ先に誰の顔が浮かんだと思う!? お前だよ好敵手ッ、夜空ちゃんのムカつく『ハイパーウェーブ』とかいうチンケなスキルと一緒に思い浮かんだんだよ!!!!」


「...しょ、衝撃耐性?」

 もし、ハイパーウェーブによる近距離反発が衝撃に数えられるなら。 俺の攻撃はもう直接イェーガーには届かないって事になる。 いや、きっとそうなるのだろう。



 打つ手が消えた....音がした。



「あの時...あの時ィィ吹っ飛ばされなきゃ、夜空ちゃんもあの銀髪のクソガキも...全員あの場でぶっ殺せてた!!! 惜しいぜ、本当に惜しい、そして俺様の才能にも涎が出る!! あぁ、もういい、説明はもう良いよなァ!」

 イェーガーがスキル『フルボディTNT』を発動しながら拳を強く強く握り込む。 筋肉が締まり、ミチミチと言う音が夜空にまで届くほど聞こえてくる。


「あ...あぁ...あ....ああぁ..」

 言葉が出ない、思考が...乱れる。





 絶望が.....。





「お預けはもう要らねぇ! ささっと死んで、過去の男になりやがれ!!! お前のレベルはもう超えたッ、何が言いてぇか分かるだろッ!? 用済み消えろって事だァァァァ!!!!!」

 放たれた拳がスローモーションに見えた。

 夜空は迷わず、自分の右手を自らの腰に当てて...『ハイパーウェーブ』を思いっきり発動した。 拳をギリギリで回避し、夜空が【パァン】という炸裂音と共に血反吐を吐きながら宙を舞う。


 夜空は、そのまま中庭の茂みに突っ込んで動かなくなった。

 いや、スタミナの消費と痛み...反動による怪我で動けなくなったが正しい。


「しぶといッ、しぶとい!!! しぶテェんだよォォォォ!!!」

 堪忍袋の緒が切れたように、イェーガーが叫び散らかす。 そんなことをイェーガーがしている横で、イスカルがよろめきながら立ち上がり、イェーガーへ重力の重さを上乗せしたケリを腹に叩き込んだ。 重そうな【ズドン】という音が響き、イェーガーがその後方にあった瓦礫の山へと突っ込む。


「グフッ!?」

イェーガーが苦しそうな声を上げ、立ち上がる。 衝撃により内臓がダメージを受けたのか、口から軽く血を流す。


「夜空君....君は....僕の....獲物だ....」

 よろめくイスカルの片目は...まだ任務達成に燃えていた。



==☆次回予告☆==


88話の閲覧お疲れさまでした。


本当にギリギリの戦闘ですね。 一度選択肢を間違えれば死ぬ死地に夜空は立っています。 イスカル、イェーガー.....満身創痍の夜空。


これからどうなっちゃうんでしょうね。





次回、89話......その窮地 女神は微笑んで!?


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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