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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== アルテーラテルト編 == 【物語進行:夜空サイド】
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84話 かつての友 王宮を潰して!

 

「君が夜空君かい? ()()()()()僕はイスカル、要件なら分かっているだろう?」

 はじめまして、とイスカルは言った、言い切った。 記憶の一切(いっさい)合切(がっさい)を書き換えられているかのように...彼の目に夜空との思い出は映らない。


「イ、イスッ、....カルッ?」

 夜空は後ろに下がりながら冷や汗を垂らす。 眼前まで迫った死に遅れて体が震えだす。 目の前に居るイスカルは、知っているイスカルの形をしていなかったが....口調や圧倒的な圧ですぐに分かった。


 イスカルの首元には禍々しい隷属の首輪が装着され起動されている。 かつて首輪に抗った姿は何処にもなく、今はただ忠義ある奴隷兵として罪人()の前に立つ。


「任務をこなそう、スキル『グラビ・スクラフト』」

 イスカルは自分の周囲に無数の黒い玉を【ギュンッ】という効果音と共に生成し、それを夜空に向けて一斉に投げつける!!! 



 その玉を目視した時、夜空は....


 死を見た。



「『シールド』+(プラス)『シールド』ッ!!!」

 夜空は、反射的にシールドを2枚、自分の頭上に生成してから、王宮の入り口に向かって逃げるように走り出す。 地面や、中庭の壁、夜空のシールドへと着弾した黒い玉は、まるで小型のブラックホールのように周囲の空間をいびつに湾曲(わんきょく)させ、全てをひねりつぶした。


 夜空のシールドも崩壊し、破片ごと飲み込まれて消えた。



(じょ、冗談じゃない! シャレにならんっ、一発でも食らったら骨すら残らずあの世行きだ!!! 絶対に絶対に回避しなきゃ。 攻勢になんて出たら...終わる!!!)

 夜空は懸命に中庭の入口へと向かうが.....。


「スキル『覚醒型、グラビタイツクォーン』!!」

 イスカルが折れ曲がった鋼鉄搭の周囲の引力を掴み、その引力を夜空の逃げている方向に向かって全力で投擲する。 投げつけられた引力は大波となって、夜空を巻き込み中庭の壁を(えぐ)って爆発音とともに崩壊させた!


「うわあああああああああッッッッ!!!!!!」

 中庭の壁が消え、王宮の内装が外からでも丸見えになる。 吹っ飛ばされた夜空は、土埃で汚れたカーペットの上で痛みに悶える。


「ふっ、ざけろっ...。 覚醒型って進化型の上位じゃねぇか....」

 逃げ切れるかもと一瞬考えた淡い望みを一つずつ潰していく。 夜空が倒れる間にも、イスカルは無慈悲に次の攻撃用の黒い玉を生成する。



 この世界を知れば知るほど、イスカルの凄さが分かってくるとは皮肉な話だ。



 夜空は素早く回復ポーションを一瓶開け、赤い液体を口に流し込む。 壁に叩きつけられた際に負った怪我が治り、体内の骨のヒビが消えるように回復する。 しかしこの世界の回復薬は、傷は消せても痛みまでは消せない。


 夜空は、痛む体を無理矢理動かしながら、黒い玉が届かない場所まで逃げようと屋内へと入っていく。 イスカルの発射準備が整うまでに屋内へと逃げ込んだ夜空は、次どうしようかと思考を全力で回す。 このまま逃げても死、戦っても死、やり過ごしても死....。



 どの考えも全て最終的に死に至る結果しか見えない。

 スキルの応用を用いた戦闘法も、イスカルのように、素の戦闘能力が馬鹿げた人間には通用しないだろう。 応用は、1に1や2を足して数を増やすが、それでも元々の性能が10ある奴には遠く及ばない。 この状況ではイスカルだって油断などしないだろう。 弱者が強者に勝てる方法を無し。 


 そうこう考えている間に、夜空の隠れた辺りに黒い玉が数十回発射されていく。 空間が湾曲し、捻りつぶされ、徐々に攻撃が夜空が身をひそめる場所へと近づいていく。


「...考えろ、地頭の良さしか良いところねぇんだからッ!」


 その時.....。

『野生の勘』が全身に危険信号を発してきた。


 その直後、夜空の居る付近の天井部分から1階にかけて...まるで高重力で押しつぶされるかのように、建物全体に負荷がかかる。 建物の柱がミチミチと音を立てて折れ曲がり、2階の床部分が夜空めがけて落下してくる。 夜空はスタミナの消費度外視で『シールド』を強固にして張り、その場から直ぐに離脱を開始するが...。 降ってきた瓦礫に廊下を塞がれ退避が出来ない!!


「無茶苦茶だッ! 王宮をなんだと思ってるんだ!?」

 王宮の約4分の1が一瞬で瓦礫の山へと変貌した。


「スキル『グラビ・スクラフト』」

 いつの間にか、上空に浮遊していたイスカルが黒い玉を無数に生成し、瓦礫の山めがけて叩き落とす。 瓦礫の山がミニブラックホールの余波で潰されていき、徐々に夜空の姿があらわになる。


「.....逃がさねぇってか、はぁ...はぁ....」

夜空は頭から血を軽く流しながら立ち上がる。


「あぁ、そういえば、宰相様から伝言があったんだっけ。 ...討ち取る際に、是非ともこの言葉を夜空殿に伝えてくれとね」


「あのタヌキジジイから? どうせロクな事じゃねぇだろ」


「オニキスに墓の用意はできている....と」

 ふざけた事を...。 何処まで人をコケにすれば気が済むんだ!

 俺はこんなくそったれな世界の土に埋まる気はねぇッ!!!


「逃げば無し...。 戦闘挑んでもお先真っ暗...か。 本当に俺が何したって言うんだ、俺はただ妹に会って、この世界から出たいだけなのに!」


「赤印の勇者は世界に混乱をもたらす。 人々が勇者に疑問を持つこと....ひいては、赤印という宗教文化に、君という存在は亀裂を生みかねないんだ」

 イスカルは攻撃を止めて瓦礫の山の上に降り立つ。


「だから始末するって!?」


「それが僕の祖国の....王の望みだからね」


「お前ッ、王への忠義(ちゅうぎ)なんて無いって言ってたろうが!?」

 夜空は激怒しながらイスカルへ向かって叫ぶ。

 しかし、イスカルは動じず...ただ黙って聞いている。


「仮にもし君と会話したとしても、そんな事...言う訳無いよ」


「...しらばっくれんな。 ()()()()()お前の()()も、()()()()()()()()()()()()()

 夜空は、イスカルの首につけられた禍々しい隷属の首輪へ指をさす。 あの時、列車の上でイスカルはこの首輪の力に確かに抗っていた。 それは確かに覚えている。


「酷いな。 宰相様から貰った、僕の...一番の宝物なのに」


「.......は?」

 違うだろ。



 違うだろ...イスカル...。



 お前の首に....あるべき物はッッッッ!!!


 夜空はあの時見た、イスカルに見せてもらったロケットペンダントの内容を思い出す。 それは仲のいい家族の集合写真.....イスカルと、イスカルの妻、そして赤ん坊2人の写真。




 イスカルの首にあるべき物は―――――ッ。




「そんなモンが宝物の訳ねぇんだよ馬鹿野郎が!!!!」

 夜空の渾身の叫びに...一瞬、イスカルの脳裏に家族の姿が蘇る。 しかし残酷かな、イスカルに施された記憶編集が記憶の蘇りを阻害する。 まさしく呪いのように....イスカルの記憶を鎖でつないで封印する。


「.....君とは初めて会う筈なのに、どうして...だろうね」

 イスカルの頬に涙が伝った。 イスカル自身も、何故涙が出てくるのか分からないといった表情で、指で涙を拭き上げた。


「君の言葉の一つ一つが....心の奥に刺さるんだ」

 イスカルの右手が後方の引力を掴んだ! まるで、もう僕の心を揺らすのは止めろと言っているかのように....夜空を黙らせるために、逃がさない為にッ!


「ヤベェッ!!!」

 突然の動作に、夜空の判断が一瞬遅れた。



 その遅れは...命の危機へと直結した。



「お別れだ夜空君ッ、スキル『覚醒型、グラビタイツクォーン』!!!」

 イスカルは思い切り夜空に向かって引力を投げつける。 引力の波が迫る僅かな時間が、夜空にはとても長く感じた。 刹那、今までの人生が走馬灯のように夜空の目の前を駆けていった。


(春....リリス....ッ)


(テルテル...ごめん....)

 切り捨てようとした友人の顔を思い出し、夜空は自覚する。



 俺は誰にも、ありがとうを言えていないと....。

 夜空は自分の死を覚悟して目を強く閉じた! その次の瞬間、夜空の脇腹に強い衝撃が加わると共に、小さな体が夜空を持ち上げて大空へ上昇した。


「うぉぉぉぉッ!?」


「少し目を離したらこれよね! ホント使えない奴!」

 夜空の目線の先には、夜空を抱えて大空に飛び上がった.....妖精のような羽を背中に生やしたコレムの姿があった。



 地上では、放たれた引力の波が王宮を横断し破壊しつくしていた。 幸い、鋼鉄搭の方向へ横断することは無く、リリスと3番姫は無事だ。 しかし、ビュアインパクトの地上待機メンバーに負傷者を出すほどの被害に発展していた。 黒煙が上がる中、イスカルが大空を見上げて呟く。


「.....竜人族の子供とは珍しいね、何故ここに?」



 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


【アルテーラテルト首都アラブレイ上空では....】


「お、お前なんで来たんだ!? 死ぬぞ戻れ!!」


「今放せば落下死するけど?」

 夜空はコレムの言葉を聞いて下を見る。 遠くなった大地、空ならではの風の音が恐怖を煽ってくる。 決して高所恐怖症とかでは無いが、自然とコレムの細い腕を掴んでしまう。


 夜空の普段は見ない情けない姿に、コレムは母性を煽られたのか大変うれしそうににんまりと笑う。 慣れない環境に余裕のない夜空は、それどころでは無く、なるべくコレムが墜落しないようにバランスを一定にするように心がけている。 傍から見れば、幼い女の子にしがみつくヤバい奴にしか見えないが、離れたらそのまま落下するのでしょうがない。


「なっさけないなー。 だっさいなー」


「やかましいッ! ていうかなんでお前ッ...飛ばないんじゃないのかよ!」


「う、うるさい....」 

 何故かコレムは目をそらす。 

 だがまぁ、大体予想は出来る。 鋼鉄搭の内部でリリスが俺を見て、コレムに『竜人族なら飛んで助けにいけませんかっ!?』みたいな事を切羽詰まった表情で言ったんだろう。


 コレムはリリスの言う事は聞くからな。


「リリスに心労かけたな...ってなんだよその顔」

 コレムが何故かムッとした表情を浮かべる。


「助けたのアタシなんだけど?」


「どうせリリスに言われて渋々だろうに....」

 そこまで言うと、コレムは全てを理解したようにため息をついた後、夜空を凄い形相で睨む。 その目は『ふざけんじゃないわ、クズ空め』みたいな事を暗に伝えるような目をしてた。


「じゃあ、今すぐ落とすわね」


「なんでだよッ!!」

 コレムが冗談半分で手を放そうとして、夜空は落とされまいと必死な形相でしがみつく。 その表情や仕草が滑稽なのか、コレムは少し楽しそうだ。 



 この幼女、Sの気があるのか?



 それとも、図星を付かれて怒っているのだろうか?

 正直、コレムは何考えてるかわからん節が多いので全然真意が見えない。 嫌われている上に、睨まれるし、暴言言われるしで二人きりだと会話するのも一苦労だ。


「言いたくない!!」


「言わなきゃわかんねぇーよッ!!」

 命を狙われてるのに俺は何をしているのだろう。 コレムが移動しながら飛行しているとはいえ、あの空を移動するスキルでいつ狙われても不思議じゃないのに。


「うぅぅぅぅぅぅッ....バカ空ッ、アホ空死ね!! アンタに死なれると困るから助けたのよッ!! まだアタシッ、ありがとう言ってない!!!」

 ヤケクソのようにコレムが叫び...夜空の思考が止まった。


 その瞬間、ふと....アルテーラテルトに入ったばかりの頃、初めてコレムと出会い。 仕方ねぇと鍵を渡した、あの宿屋の件を思い出した。


「まさかとは思うが....そのために旅についてきたのか?」


「...そ、そうよ。 わ、悪いッ!?」

 コレムが恥ずかしそうにしながらヤケクソ気味に叫ぶ。




 ずっと()()()嫌われてると思っていた、いや..好かれてはいないと思うけど。

 睨みつけられるし、殴られるし、蹴られるし、嚙まれるし...


 だから、なんで旅に同行するのか。 その理由が掴めなくて怖かった。


「全て杞憂だったな」

 どんなに生意気でも、様々な経験をしてきたにせよ。


 コレムはまだ子供....子供なのだ。



 生意気な心情の中に何処か甘えたがりがあって。

 言葉の裏側に、様々な感情が渦巻いている。 


 俺は、それを見抜けなかった。 いや、初めからコイツもどうせ自分の敵だと決めつけて....見ようとすらしなかった。 めんどくさいと自分の心を無理矢理納得させて。



「あの()来るわよ?」

 コレムが下を見ながら指示を仰ぐ。



 信用した今、コレムにかける言葉はなんだろう?

 すまないも、ありがとうも全部全部俺らしくない。 星原夜空という男は素直じゃ無い事を、俺自身が一番よく分っている。 素直になりたいとも思わない。



 だから俺は言うんだ。



「コレム、俺を助けろ」


「まったくしょうがない奴ね! これで宿の事はチャラだからッ!」

 村の宿を譲ってもらった事を理由に出しながら、コレムは私に任せなさいとばかりに夜空を強く抱きしめて上昇する。 地上では、女性になったイスカルが夜空とコレムに向けて眼光を光らせていた。

==☆次回予告☆==


84話の閲覧お疲れさまでした。

複雑な戦闘描写が続きますが、なるべくわかりやすいように書いていきたいと思っています。 それはさておき、イスカルヤバいですね。


勇者の天賦よりチートチートしてる気がします。

......この作品書き始めて、日本から来た召喚者がチートチートしてる場面なんて書いたことあったか?と疑問が浮かびましたが、それはいいんです(笑)


次回はコレムと夜空vs女性イスカル戦です。

幼女とはいえ竜人族である彼女をどう生かすのか、夜空の発想力にご注目頂ければ幸いです。 



次回、85話......その空 戦場につき!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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