83話 その反乱 始まって!
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
芸術大祭のイベントスケジュール...
1日目、一般参加型大会
2日目、一般参加型大会・芸術家枠大会
3日目、芸術家枠大会
4日目、各地方領主による品評など
5日目、完成された作品の展覧のみ
6日目、王と二人の姫による街巡り・ビュアインパクト行動開始 ★今ココ!★
7日目、完成された作品の販売
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
様々な思想が交差する。
芸術家たちは、自分の作品が評価されるかもしれないとソワソワしながらストリートで待機する。 一般平民たちは野次を飛ばしたり、頭が使える平民は街の雰囲気の違いに敏感に気付き外に出ない。 武装した平民風のビュアインパクト構成員が各地で一斉に動き出す!
「いってらっしゃいませー!」
「お気をつけて姫様ぁー!」
王宮前の正門では、衛兵たちに見守れながら豪華な馬車でストリートに向けて出発した王様と2人の姫、そしてそれを警護する数多くの衛兵の姿があった。 教育の賜物なのか、姫様はにこやかに手を振り、王様は民に対して威厳を示す。
夜空達、王宮襲撃部隊は隠し施設で計画の最終確認を行う。
今日、家族に会えるかも知れないという緊張感が、夜空にだって伝わるほど部屋中に張っていた。 夜空自身も、絶対にリリスを助け出すという意思の元、決行のタイミングを今か今かと待ち望む。
「んぁー。 以上が計画の概要だァ、心しろよお前らー」
ゴーストが計画を全て確認し終え、各自装備の最終チェックに入る。 夜空も自身の持ち物と、支給された持ち物を合わせて持っていくものを吟味し始める。
夜空は.....。
・中古のフリントロックピストル(弾は少なめ)
・ショートソード
・G1の麻痺ポーションを2瓶
・G3の回復ポーションを2瓶
そして....。
「前も思ったけど....重ッ!」
蒼脚光の剣を背中に背負った。 いざという時には、リリスには申し訳ないが投げ捨てて戦闘を行うようにしようと心に決める。
いくら大切なモノであれ、それを守る為に傷ついてはリリスが悲しむと感じてしまったからだ。 リリスは俺を大切になんて思ってないかもしれない、この考えは思い上がりかもしれないけれど.....。 セブン国でイェーガーと最後に戦う前、リリスを【友達】と定めたからには、せめて俺だけはリリスのことを信じるべきだ。
ちなみに、コレムにはゴーストが行かせるのをかなり渋ったが、コレムが『仲間を助けたいの、邪魔よ!』と強引に押し切り今に至る。 ゴーストが『しょうがねぇ嬢ちゃんだなぁ』と、コレムの手に怪我をしないようにグローブを付けてあげていた。
なんというか、やさしいおじさんとその孫みたいな構図だ。
「んぁー。 本来ならお前が気遣ってやるべきなんだぞー?」
ゴーストが何故か急に夜空の方を見ながら口を開いた。
「? あぁ、俺に言ってる?」
「お前以外にいねぇーだろーがぁ?」
...気遣うもクソも。
正直、まだ俺はコレムを完全に信用しているわけじゃ無い。
テルテルとかの件に関しては感謝はしている。 が、感謝しているだけ、コイツが今後それを誰かに喋らない保証なんて無い。 それはリリスも同じだが、リリスは何故か自分の中で納得できる。
コレムを信用するにはもう少しだけ時間が居る。
コレムに限らず、俺はそうやって生きてきた。 信用に値する人間を見つける手段、俺なりの処世術みたいなモンだ。
「......あぁ、そうだな」
夜空はゴーストを見る事なくそう返した。
時間は静かに流れる。
ビュアインパクトの面々は、王宮の正門前に秘密裏に借りた部屋に集まり始める。 突入まであと残り、10分。
王宮内でも、肌勘で異変を感じ取った者も居るが、その者は『人が斬れる....血濡れ芸術のチャンスじゃん』と舌なめずりをしながら剣を磨く。 ある踊り子は、王宮内から彼らを支援するように秘密裏に動く。
小型時計を見ていたゴーストが言葉を紡ぐ。
「決起の時間だ」
.....国中で一気に騒ぎが起こり始める。
武装をしたビュアインパクトの面々が一斉に王宮へと詰め寄る!! ただ観光に来ていただけの他国民が悲鳴を上げ、その場から蜘蛛の子を散らすように逃げ始める。
「と、止まれッ!! ここは王宮、何用か!?」
「んあー。 王族への忠義なんて期待すんなよなぁ?全てを返せ....俺たちの望みはそれだけ、それだけだぞぉ?」
ゴーストの言葉に賛同するように怒れる声が上がる。
「息子を返せ!!」
「芸術の良し悪しをお前らが決めるな!!」
「止まるなァァァッ、進め、進み続けろ!! テーマに反旗を翻せ!!」
「「「「「俺たちはただッッ、誰にも縛られること無く、自由に....ただ自由に生きたいだけだッッッ!!!」」」」
衛兵たちが怒りに気圧されるが、直ぐに立ち直り他の衛兵たちを連れて攻勢に出る。 幾人かの衛兵たちの手のひらには既に『ファイヤーボール』や『アイスボール』、『魔法弾』のような魔法系統スキルを生成している。
「それ以上王宮へ近づけば撃つ! 止まれェェェッ!!」
衛兵たちが叫びながら剣を構えるが....。
「んぁー5年間、5年間だぞ? お前らのせいでどれほどの奴が壊された? 中には夢を思い描いていた奴も居ただろうよ、それを芸術という概念で塗りつぶして逃げ場を無くした。 ....相応の報いは受けてももらうぞぉ?」
だが、ビュアインパクトの面々は怯まない!
スキル『シールド』を前面に押し出して猪突猛進する。 放たれたスキルたちがシールドに接触し爆発を引き起こすが、それでも衛兵を倒して前に前に歩みを進めていく。
銃声や爆発音、斬撃音が王宮内へと響き始める。
夜空やコレム、プラスもその後に追従するようについて行く。 近くに王宮の衛兵が攻撃を仕掛けて来ないか最新の注意を払いながら前に進んでいく。
王宮城内へ侵入した人たちが、警備に当たっていた衛兵たちと戦闘を始める中、夜空とコレムは団体からこっそりと抜け出し、コレム案内の元鋼鉄搭を目指し始める。
途中の衛兵に関しては、怒るコレムが倒したりしていた。 夜空が戦闘に参加しないのは、純粋に戦闘能力に乏しいというのもあるのだが、背中に青脚光の剣という重い物を背負っている為、機敏に動けない動きづらいという理由もある。
「しっかし、すげぇ怒ってんな。 結構離れたのにまだ罵声が聞こえるぞ」
「クズ空早く来なさいッ! このノロマッ!」
「分かってるって、クソッ、なんだってリリスは、あんな華奢な体でこんな重いモン振り回せるんだ。 少し背負っただけで腰が痛いんだが」
迷路のように入り組んだ王宮内を、コレムの感覚で鋼鉄搭の方に進んでいく。 コレムの通った道には死屍累々と気絶した衛兵が転がっている。 勿論というかなんと言うか、メイドや執事、使用人といったただ働いているだけの人には危害を加えない辺り、怒っている中にも冷静さを感じさせる。
「し、侵入者だッァ――――!!!」
「目の前に立たたないでッ、気分が悪いのよ!!!」
大の大人が、自分よりはるかに小さい小娘にぶん殴られて吹っ飛んでいく様は、日本ではアニメぐらいでしか見たことない光景だった。 実に痛快である、俺の木の板バリアが破壊させられたのも頷ける。
王宮内の廊下で何度も何度も爆発が繰り返される。 衝撃によって付近の窓が全て木っ端みじんになり、庭の木々から落ちた枯れ葉が、風と共に廊下に入り込んでくる。 夜空は常に『野生の勘』を発動しながら鋼鉄搭に向けて進んでいく。 王宮内を走り回り、何度か衛兵たちとの戦闘を行って(コレムが)夜空達は中庭へとたどり着いた。
「ついた....」
「あとはあの搭の前に居る衛兵2人倒して終わりだな」
目線の先には、硬そうな鉄鎧を着込んだ二人の衛兵の姿があり、こちらを見るや否や警戒を始める。 見た感じ、鋼鉄搭を守る専門の兵のようだ。
夜空はそこら辺に青脚光の剣を投げ捨てる。 左手に『スパイク』生成して、右手にショートソードを抜いて臨戦態勢を取る。 コレムは『ニトロレーザー』を撃とうとしているが.....
「おいコレム、搭がぶっ壊れてリリスが死ぬかもしれないから止めとけ。 お前なら別に素手でぶん殴っても勝てるだろ」
「ふんっ、分かってるわよそんな事!」
クソ生意気なコレムを放置して夜空は衛兵たちに睨みを効かせる。 衛兵たちも、ここを守る使命みたいなモノがあるのか鞘から剣を引き抜いた。
衛兵たちの剣に炎がまとわりつく。
どうやら物体に炎を纏わせるスキルを発動しているらしい。
....落ち着け。
今まで戦闘なんて何度もやってきたじゃないか。 イスカルやイェーガーとの対人戦闘を思い出せ、どうすれば敵を制圧できるかを考えろ。
夜空が頭を回す中、コレムが勢いよく前へと飛び出す!!
「リリスッ、助けに来てやったわ感謝しなさいッ!」
「させるものか!」
衛兵二人がかりで掴みかかるが、コレムは俊敏に動いて後ろに回り込み.....鉄鎧が凹むほどの力で衛兵の一人をぶん殴った。 殴られた衛兵が宙を舞い、中庭の外周を囲う壁に叩きつけられる。
「このチビッ!」
「もう、どけぇ!!!」
コレムのパンチがもう一人の衛兵の股間に炸裂した。 コレムは、一応年頃の女の子のハズなのにやたら男の急所を狙うのが好きだ。 いや、戦闘面で急所を狙うのは間違ってはいないのだが、なんだか腑に落ちない感じが否めない。
「おぶゥッ!!!」
衛兵が涙をにじませながら気絶した。
なんというか、男として可哀想だ。
それに、これ俺要らなかったんじゃなかろうかと夜空は思う。 今の所、戦闘を行っているのは全部コレムだ。 警備の大部分がビュアインパクトたち、地下の警備に回っているとはいえ...相当の人数を相手にさせている。 しかし、流石のコレムにも疲れが見え始めていた。
「く、クソッ....」
壁に叩きつけられた衛兵が痛そうにしながらも起き上がろうとする。 が、それを見越した夜空が、左手に生成していたスパイクを衛兵の周囲にばらまく。
「スキル『進化型スパイク』だ、鉄を貫通するぞぉ? 足の裏に穴を開けたくなければ、立ち上がらない事を推奨するが......お前らはどっちを選択するかな? 保身かな、それとも仕事かな? ハハハッ、ハハハハハ!!!」
夜空はクスクスと性格が悪そうに笑いながら衛兵を見る。
進化型も、鉄を貫通するのも全部ブラフだ。 進化なんてしてないし、ガキ大将のケツに当てて『イテェ』程度で済むようなトゲトゲボールが、鉄を貫通なんて出来るわけが無い。 せいぜい革製のブーツで踏んづけて若干痛い程度だろう。
「こッ、このガキがッ....!」
しかし、悔しそうに衛兵は立ち上がるのを止めた。 進化型をつけただけで信憑性は飛躍的に上がるだろ? 時には嘘も使いようという訳だ。
夜空は銃を取り出し、銃口を座り続ける衛兵へと向ける。
「ま、待てッ! 撃つなッ、頼む撃つんじゃ無い!!」
「帰りたい場所があるんだったら大人しくしとけ」
「わ、分かった。 大人しくする、動かないから撃つな...頼む妻と子供が居るんだ」
「剣を投げて捨てろ、こっちに投げたら撃つ」
「わ、分かった....言う通りにする」
衛兵は剣を明後日の方向へと投げ捨てる。
地面に投げ落ちた剣が中庭の隅に突き刺ささる。
「いいなお前、物分かりがいい奴は好きだよ」
もうどっちが悪党なのか分からない。 コレムはこっちを見ながら、夜空に聞こえるぐらいの小さな声で『もう何処までも最低ね、嘘空、クズ空...』と連続で呟いた。
お前...う、うるせぇよ。
戦えないんだから卑怯な手を使うしかないだろうが...。
「いいから、お前はさっさとリリスを外に連れ出せ。 どのみちここにも増援が来る、早めにトンズラこくぞ」
「分かりきったことばっかり言わないで!」
「全く、いつもいつも生意気なヤローだ」
コレムは、ぶつくさ文句を言いながら搭の扉をこじ開け中へと入っていった。 夜空は衛兵が不審な動きをしないか見張りながらコレムの帰りを待っていると......。
【ドォン....ッ】
遠くから何かが炸裂?するような音が聞こえてきた。 その音は、何処かで聞いたことあるような....ないような...?そんな気がする音だった。
思えば、その時逃げるべきだったんだろう。
夜空は、自分自身のスキルに引っかかっていない事を理由にして、直感を無視してしまった。 そう、無視してしまったのだ。
【ドォン..ッ!】
再び聞こえた。
そしてッ!!!
【ドカァ―――――ンッッッ!!!!】
鋼鉄搭に、3階部分から折れ曲がるほどの衝撃が外部から加わった! 鋼鉄搭が折れ、見るも無残な状態へと変化した...。
「な、なんだ?」
「目標.....目視で確認だね」
「...ッ!?」
声を聞いた時、聞き覚えの無いその女性の声が....何故かとても聞き覚えのある声に感じた。 オニキスで親切にしてもらい、友になって、逃がしてくれて....そして最後に戦った。
かつての友人の声に...とても似ていた。
全身の感覚が.....恐怖を訴える。
「君が夜空君かい? 初めまして僕はイスカル、要件なら分かっているだろう?」
「イ、イスッ、....カルッ?」
夜空は冷や汗を流しながら身震いした。
==☆次回予告☆==
83話の閲覧お疲れさまでした。
....イスカルの再登場回でした。 約10話で登場し、再登場までに70話ほどかかってしまいましたが、ようやく、ようやく戦闘シーンが書けそうです。
前よりかはマシというだけの弱者が、強者に全力で噛みつく様を書けたらいいなぁ。 かつての師弟(笑)バトルに入るのかな..コレ。
次回、84話......かつての友 王宮を潰して!
次回の更新は、作者のリアル都合で一回おやすみです。
※ 次の更新は火曜になります ※
是非次回もご朗読下さい!
ではでは~




