表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== オニキス帝国編 == 【物語進行:夜空サイド】
9/238

9話 その不安 現実へ!

「この世界に来て初めてだな....。 こんなに朝が憂鬱なのは.....」

 夜中、何度もあの少年が囲まれた情景を思い出して目が覚めて、その度に全て夢であってほしいと願いながら目を瞑る。 そんなことを繰り返していたらいつの間にか朝になっていた。


 日本に居た頃も、アメリカで黒人が~とか、欧米の方で~とかで迫害や人種差別問題については耳にはしていた。 だけどニュースで知識として蓄えることと、実際に目にして知ることでは意味が全く違うことを改めて分からされた。 .......人という生き物の闇の深さを垣間見た気がしていた。



「大義名分ってやつなんだろうな......はぁ、くだらね」



 夜空は自分の部屋を出て食堂へ向かい、食堂の隅に置いてあったジャガイモやら人参やらを使って、軽い朝食を自分で作り、朝の準備を諸々済ませてから使用人寮を出る。 こういう所も、城側に寝泊まりしていたら経験できなかったことだろう、主にかまどの使い方とかそういうこと。


 夜空は、壊れかけの銃・銃用の火薬と弾・ノートやらペンやら...その他にも昼飯用のパンなどが入ったカバンを背負って出かける。



 今日は一日かけて訓練をやる気満々である。



 道行く執事やメイドに軽い会釈をしながら修練場に向かっていると、道のそばで大庭先生が朝日を浴びて体を伸ばしていた。


「おはようございます、大庭先生」


「あわっっあわわ! はぁ..星原君でしたか、おはようございます」

 いや、慌てすぎだろ先生...変わらないなぁ。 宰相と話すことは、結構な根性療法だと思ったんだけどダメだったか。 


 夜空は、先生をグループのリーダーに無理やり指名したことを思い出し、もう結構前の懐かしさで少し顔が柔らかい表情になった。


「星原君こそ、こんな朝早くからどうしたんですか?」

 太陽?の位置を見るに、時間帯的には午前6時前後...といったところだろうか。 葉日学園への登校時間で考えてもまだ結構早い時間帯だ。


「最近、騎士の人間に仲良くできる人を見つけまして、その人に朝稽古をつけてもらってるんですよ」


「結構真面目ですよね~星原君...先生としては関心ですよ」

 真面目か...やらないと死ぬだけだからやってるだけなんだけど、物は言いようだな。


「他の連中はまだ寝てます?」


「ん~そうですね...寝てる方起きてる方半々といった感じですかね?」


「先生は何してたんですか?」

 城内の芝生に革製のマットを広げている所を見るに、ストレッチでもしていたのだろうか?


「私はこんな頼りなくても先生ですから、皆さんを守れる...いいえ、せめて足手まといにならない位には動けるようにならないと」


「アイツらは幸せモンですね、こんなふざけた世界に飛ばされて...見捨ててもおかしくないのに、それでも先生やってる貴方を尊敬しますよ」

 夜空は、素直に本音を漏らし...照れくさいとばかりに顔を赤らめる。


「フレイムバッドとの戦いで...つ、痛感したんです。 なにもできなかったなって」


「......」

確かにあの時、俺が指示を出していなければただ震えてるだけだっただろう。 大庭先生は、大庭先生で足手まといだったことは自覚していたらしい。


「結果として私は星原君...あ、貴方にも傷を負わせてしまった」

 もしかしたら自分が攻撃を受けるべきだったとか思ってるんだろうか?


「あ...あの時、私の頭は真っ白になっていました。 目の前で行われることについていけなくて...その後の、天賦を使ったあの行動も自分の意思で...という訳では無かったですから」

擁護はできないな。 全て事実だ。


「これじゃ...引率として失格って、先生は考えてる訳ですね?」


「え、えぇ...その通りです」

 大庭先生は思い出したかのように落ち込んでしまった。 


「大庭先生、戦いにおいて絶対なんてないと思います。 まぁ、俺も人の事言えない程弱いんで偉そうな事言えないですけどね」


「えっ...?」


「命のやり取り、舐めてませんか? あのコウモリだって死なないよう必死なんです...その上で戦場に立つ、立たせるというのなら....」

 先生の役目は戦闘する前にある、と言おうとして止めた。


 この答えは自分で見つけなきゃいけないと思うから...。


「あの星原君?」

 黙っていた夜空に声をかけてきた。


「この先の答えに関しては、自分で見つけた方がいいでしょうね」


「星原君はイジワルですね...」


「それが自慢なんで」

 夜空はそこまで言うと、背を向けて歩き始めた。  

 何も戦いというのは、剣を持って敵と戦うことが全てじゃない...それを騎士たちの訓練を見て知った。 大庭先生には是非とも司令塔のような人になってもらいたいものだ。

 



「俺も頑張らなきゃな、あの人の頑張りに答えられるように」

 気合を入れなおした夜空は修練場に向かい、イスカルを探しに向かった。 

 イスカル自身も嫌われていると話してはいたが、まさかこれほど露骨だとは思ってなかった。 やっぱりこんな腐った国の貴族上がりの騎士も当然腐ってるのだろうか?


 いや、腐ってるのだろう。 そうでなければ、あれほど貧民街の人間たちが王国の一挙手一投におびえる意味が無い。


 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


 一方その頃、修練場では...


 その場には既に、騎士が数名朝の修練を行っていたが、そのどの騎士も奥に居るイスカルをまるで居ない者のように扱っていた。 イスカルはそれがまるで当たり前のように、木材で作られたカカシに向かって剣技の訓練を行っていると...。


「イスカルさん~私にも剣技をご教授して頂いてもいいですかぁ~。 最近ここに来てる、あのガキんちょ見てるみたいにさぁー」

 軍隊長であるイスカルを、まるで小物を煽るのように舐めた口調で喋る騎士が、数名の取り巻きを連れ近づいてきた。 


「いえいえ必要ないかと、貴族上がりの騎士様の剣技には遠く及ばぬ剣技であります故..」

 イスカルは不満そうな顔を完璧に隠しながら、応答を行う...そんな様子を、ニヤニヤと取り巻きと共に笑いながら見続ける。


「そうであるよなぁ...そんなにご自身の剣技に自信がおありでないなら、不肖ながらこの『ログ・リオ・フォローム』が軍隊長を務めてもいいのだが?」


「ご配慮痛み入りますログ殿、しかしご心配には及びません。 軍隊長の座は、私にしか務まらないと自負しております」

 あるいは侮辱ともとれるその言葉に、ログが激昂する。


「貴様ッ私が弱いと愚弄するつもりか!?」

 ログが腰に下げた剣の柄に手をかける...と同時にイスカルがスキルを発動する。 イスカルの目が青色に光って、ログの剣を引き抜く動作を停止させる。


「くっ鬱陶しい! 重力スキルか!」


「礼節を重んじる貴族殿が、そのような短絡的な行動に出ては品性を疑われます。 どうかこの場は、寛大な慈悲で怒りを収めていただきたい...」


「...くっ、覚えていろ! お前たち行くぞ!」


「慈悲に感謝致します、ログ殿」

 ふてくされたようにその場を後にする、ログ一行の背を見て、イスカルがため息をつく。


(...機嫌が良くないのかな。 いつもはこんな()()()()()()()()()()んだけど...)


 そんなことを考えているイスカルの背をポンポンと夜空が叩く。


「あぁ夜空君、見ていたのかい?」


「途中からな、話には聞いてたけどなんだアイツ...よく胃に穴が開かないもんだな」


「ハハハ、ストレスには慣れてるからね。 前も言ったかも知れないけど、貴族上がりの騎士はみんな僕を嫌ってるからね」

 夜空はフッと笑い『嫌われ者はお互い様だな』と言った。


 夜空とイスカルは、そのまま訓練に入る。 訓練を始めた頃、イスカルに様々な武器を持たせてもらったのだが...ほとんどの武器にまるでセンスが無く、結果的にショートソードが一番マシという結果になったのだが。


「もっと重心を落とすんだ! 剣が短い分、体で衝撃を緩和しなきゃ簡単に持っていかれるよ!」

 イスカルの剣に吹き飛ばされ、尻もちをつく。 周りでは、そんな様子をみていた貴族上がりの騎士どもがケラケラと笑っていた。


「はー最高...アンタに剣が届く気がしねぇ」


「始めなんてみんなそんなモンだろう...それにしても初めて聞いたときは驚いたよ。 勇者たちが全員まともな戦闘経験が無かっただなんて」


「俺たちの常識で考えたら、こっちの世界の方が訳わかんないぞ」

 イスカルは夜空の手を引っ張って立たせて、転んだ拍子に床に突き刺さったショートソードを、床らか引き抜いて渡す。


「さぁくるんだ夜空君!」


「あぁ、行くぞ!」

 夜空はイスカルに向けて思いっきり剣を振った。


 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=

「ハァ、ハァ、ハァ...つ、強すぎ...無理死ぬ、死んじゃう」

 3時間ほどの訓練を終え、昼休憩に入ろうとしていた。 夜空はイスカルに遊ぶようにあしらわれて、心身ともにボロボロになっていた。


「うん、でも動きはいいね、磨けば光るものを感じるよ。 夜空君は何か武術でもやってたのかい?」


「んぁ...昔、少しな...もともと運動神経はそこまで悪くは無いんだけど、いかんせん勇者側の世界で暮らしてた頃にはあんまり動いてなかったもんでね」

 オタクなので日本ではゲームとアニメ三昧だった...いや、しっかり勉強はしてたよ? 


 ホントだよ?


「昼休憩にしよう...夜空君は何か持ってきているかい?」

 夜空は修練場の隅に置いてあったカバンから、朝入れてきたパンを取り出して見せる。 イスカルはこっちにおいでと手招きして夜空を呼び、その手にジャムを乗せて手渡してきた。


「ありがとイスカル」


「いいんだ...なんだか息子が大きくなった気分だよ」


「息子...あぁ、4.5歳の子供が二人居るんだっけ。 いいよなぁ家庭を持ってるって、あったかい感じがして」


「...想い人でも居るのかい?」

 突然出てきた気恥ずかしい質問に、夜空は少し耳を赤くしながら視線をそらして。


「い、居るよ...俺だって思春期だし、普通だろ? ...わ、笑うなよオイ!」


「ハハハ、いいじゃないか青春だね。 その恋が実るよう応援しているよ」

 やっぱりイスカルはとてもいい奴だと思う、この世界にきて良かったと思える理由の一つになり始めてる。


「そういえばさ~聞いてくれよイスカル」


「ん? なんだい?」

 二人は口を昼飯でモグモグさせながら、会話を続けていく。 先ほど、イスカルにいちゃもんつけてきた『ログ・リオ・フォローム』とかいう騎士が、憎たらしそうにこちらを睨みつけていること以外はいたって平和である。


「他の勇者には、召喚された時からスキル持ってたらしいんだよね...なんで俺だけこんな...」


「そうだね。 夜空君は手引書が使えなかったりと、結構不思議な特徴を持っているからね...まぁめげずに頑張るしかないよ、僕も手伝うからさ」


「今にして思えば色々変だったんだよな~初めからさ...」


「変とはどういうことだい?」

 イスカルが首を傾げてきた。


「あぁ、元々のスキル枠が異様に少なかったり、色々と天賦のせいでスキル習得に制限がかかってたり...安全なハズのスキル使って反動で頭痛起きたり...散々だよホント」


「んー...僕は勇者じゃないからね、それが前言った()()()に当たるのかはよくわからないな」


「まぁ気長に色々試してみるさ、後は...あっ、1個あったな違う所」

 そう言った夜空は、いつものノリでその一言を言い放った。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 思えば一番初めに気づいた変な所ってそこかもしれないな」

 その一言を言い放った瞬間に、一気に場の空気が凍り付くのを感じた。 イスカルが目を見開きこちらを驚いたような目で見つめている。




「....? おい、イスカルどうした?」




「よ、夜空君...今の話は本当か?」




「へぁ? うん、別に嘘つくような内容でもないし...」

 その直後、夜空を叩き切るように【ログ・リオ・フォローム】が斬りかかってきて、その太刀筋をイスカルが剣で鍔迫り合いを起こして停止させる。


「うわっあぶねぇッ何しやがっ...!」

 夜空は、一瞬イスカルに文句を言おうとするが、自身に迫ってきていた刃を見て息を呑む。 ログはその顔を『しめしめ』と言わんばかりの憎たらしい顔で歪ませていた。 殺意、浴びたことの無い自分自身への殺意を感じ取れるほどの。


 キンッという音を剣が互いに立ててお互いに距離を取る。 夜空は、イスカルに引っ張られるような形で後ろに下がらされた。


 状況が全く飲み込めていない夜空に、ログは口を開き言い放った。


「いけませんねぇ! いけませんよぉイスカル! ()()()()()()を庇うなど、国を裏切るおつもりかァァァッ!?」

 その言葉をきっかけに、周りで休んでいた鍛錬中の騎士も剣を抜き、イスカルと夜空を囲むように取り囲む。


「ログ殿、待ってくれないだろうか! 彼は勇者で、この世界の人間ではないのです!」


「...それがどうしたというのだ、彼の居た世界に魔物が居なかったことは、大庭殿の話を聞いて理解しているぞ?」


「ならば何故!?」


「だがそれだけで事実という訳にはなるまいよ? 大庭殿が大嘘をついていれば(しま)いよ」


「.........そういう建前の元....という事かい.....」

イスカルの額に冷や汗が流れ落ちる。


「...なぁオイ、イスカル何が起こっているんだ」

 夜空に言葉を返す前に、イスカルはいつでもスキルを起動できるよう準備をする。 準備が終わると目が青く輝きだした。


「長い時間は話せない。 単刀直入に言う、たった今この東の大陸においてキミの居場所は無くなったよ。 生きたければ逃げてくれ、頼む」


「!?」

 夜空は流石に動揺する、その言葉は実質的な国外追放宣言よりもタチの悪いものだった。


「イスカル、剣を引いてその小僧の首を落せ...さすれば家族もお前も助かるぞ?」

 イスカルがその言葉に一瞬戸惑いの色を見せるが...その刹那、イスカルの脳裏に妻の声が流れ込んできた。



 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=




【数年前.......】




「あの子たちはもう寝たかい?」


「えぇ子供たちならもう既に夢の中ですよ、あなた」

 その言葉を聞いて、少し素を出し始めるイスカル...事情を知っている妻は椅子に座るイスカルを、抱きしめるように後ろから手を回す。


「たまに思うんだ...もしあの時と似たような状況になったら僕はどうするんだろうって」


「......」

 妻は黙ってイスカルの声を聞いている。 たまにこういう話をするのか...またですか...みたいな『やれやれ』とした顔をしながらも、少し頼られることを嬉しそうにしていた。


「僕はまた切り捨てて、後悔するんだろう.......何も変わっていない、何も」


「貴方なら...きっと見つけられますよ。 全てに手を差し伸べられる方法が」


「でももしダメだったら? キミや子供たちに辛い思いをさせてしまうかもしれない...そう考えると、怖くて震えが止まらないんだ」


「その時は、貴方がなんとかしてくれるのでしょう? だって貴方は...」

 その時、隣の寝室で寝ていた子供のうちの男の子の方が寝言で呟く。


「パパは...かっこいい...ヒーロー....むにゃむにゃ...ぁスースーzz...」


「フフ、だそうよあなた、困難を経験しない暮らしなんてないのよ....私たちも貴方のワガママを聞けるくらいの度量はあるわ...」


「いいのかい?」


「えぇ、貴方は私が愛した人だもの......」

 ..................。



 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



 すまない。




「....僕にも色々あるんだよ、あんな出来事でもう二度と後悔したくないんだ!」

 何かを覚悟したように目を瞑り、改めてログたちに向けて剣を向ける。


「愚かにもそれが貴様の答えだな...イスカルッ!」

 場の緊張状態が一気に高まり、もはや一触即発の状態になってしまった。


「夜空君行けッ、行くんだ! ここの騎士達は僕が止める、キミは頭がいいのだからどこに逃げればいいのか大体検討つくだろう!?」

 イスカルが柄にもなく大声で『行くんだ夜空君』という言葉に、一気に現実に引き戻された夜空が走り出す。 カバンを背負って、大急ぎで窓から修練場を飛び出す。


 そんな夜空の様子を見て、逃げられると判断したのか、ログが城中に聞こえるように大声で叫ぶ。


「赤印の警鐘を鳴らせェェェェー---ッ!!!!」


()()()()()()()()! 然るべき裁きを!!」

 ログが叫び、周りの騎士が呼応する。


 そんな様子を気にも留めず、イスカルは修練場の扉を重力操作スキルを使用する。 同時に窓がしまり鉄格子が重力操作によって落とされる。 


「イスカルゥ、これは国への反逆と捉えていいんだろうなァ!?」


「反逆とは失礼だね。 一体何の罪だと言うのだろう、僕はただ友に手を貸すだけだよ」


「とぼけるなイスカル、通用するわけ無いだろうよッ! 赤印を庇い、その上で()()()()()しようとした騎士の妨害、これが反逆とみなされず何という!」

 イスカルは『ハハハ』と笑い、騎士連中を睨みつける。 


「そもそも、この国への愛国心なんてものは僕には無いよ。 ログ殿...貴方ならその理由を、どうせ知っているハズだろう?」


「かつての赤印だった友人を国に売り、ぬけぬけと生き残った件だろう? 当然知っているさ、貴様の弱みだ...軍隊長から貴様を蹴落とすために、貴様の過去や家族のことは一通り調べがついているぞ?」

 イスカルの動きに警戒しながら、ログはもう隠しもせず怒鳴り散らすが、そんな様子をイスカルは冷静に見続けている。


「なら分かるだろう。 僕はね、あの日から夜が来るたびに後悔に苛まれてきたんだよ」

イスカルは続ける


「家族以外の大切なモノを、全て切り捨てて行くのは正しいことなのだろうか...と」


「当然だけど、家族は大切さ...何よりもね。 でもそれと同じくらい、大切にしなきゃいけないモノだってこの世界にはあると、私は学習したんだよ...昔、友人を対価として支払ってね」


「酷く愚かで滑稽だな、貴様も赤印に肩入れなんてしなければ.......その力、もっと有効に扱えただろうにィ!」

 イスカルの話にログが茶々を入れるが、イスカルは一切動揺せずに黙る。 そんなイスカルに追い打ちのごとく続ける


「貴様の裏切りは、貴様以外の大切な者の首さえも絞めるぞ!」


「この戦いが終わったら、全てに手を差し伸べる方法を直ぐに考えるさ」


「そんなことができると思ってr...」

 ログの言葉を遮るようにイスカルは呟く。


「帝国が平民であった僕を軍隊長という地位にまで登らせたのは、ひとえに僕の力の強さ故なんだよ。 この中に、帝国側からわざわざヘッドハンティングされた騎士は居るかい?」

 貴族上がりの騎士たちがその言葉に少し士気が下がり始める。 イスカルは依然として、騎士連中を睨みつけている。


 半端ないプレッシャーに、既に逃げ出したそうにしている騎士まで居る始末だった。


「平民風情が.....ふざ...けるなよッ! 上からの指示が入る前に、ここでぶち殺してやる!」

その言葉に、付近にたログの取り巻きがギョッとする。


「ログ様マズいです! それじゃあの計画が破綻しますって!」

計画とはなんのことなのだろうか? 出てきた計画の言葉は、軍隊長であるイスカルですら全く身に覚えのない話だった。


「さぁ少しキツめに修練しようか、胸を貸してあげるからかかっておいで」


「私を舐めるなァァー--ッ!!」

 取り巻きの静止も聞かず、ログは突撃系のスキルを使ってイスカルにカッとんでいく。 床が踏み込みで壊れ、『バキッ』という音を立てる。 イスカルは体制を少し落とし、スキルを使わずに剣を使って攻撃をいなすと同時に、ログの腹を蹴り上げて天井に叩きつける。 


 ログの持っていた剣が床に突き刺さり、その後にログが床に音を立てて落下する。


「グハッ!」


「よくもログ様を...イスカル覚悟!」

 襲い掛かってくる騎士たちを見事な剣技でさばき切りながら、イスカルはスキル発動の用意をする。


「スキル『()()()、グラビタイツクォーン』!!!」

 イスカルは叫びながら、空中にある引力を引っ張るように掴み騎士に投げつける。 投げつけられた引力は、彼らが付けている鎧すら変形させるほど硬度を持ち、その場にいるほぼ全員に大ダメージを与えた。


()()()だとッ...そんなモンをポンポンと.......この化け物がッ」

 死屍累々と横たわる騎士たちを避けながら、イスカルはログの前に仁王立ちする。


「僕は力だけで軍隊長の地位まで上り詰めたんだ、キミ達のように実家の威光に頼って昇進した偽物じゃない.....実力が無いわけでは無いよ」

 その直後、外から警鐘音がイスカルの耳に入ってきた。 イスカルは驚きながら修練場の扉を開けて、外に飛び出すとそこには...


「ハハハハッ! イスカルゥ、()()()()()()()()()は私たちの勝ちのようだなァ!!」

 ログがその光景を見て、高笑いしながらイスカルを笑い飛ばす。


「...動くのが早すぎるだろう、いくらなんでも」

 何故か眼前には騒ぎを聞きつけてきた王様や宰相を含む...王城を守る多くの騎士がイスカルに銃や剣...スキルを発動して取り囲んでいた。

==☆次回予告☆==


はい、9話の閲覧お疲れさまでした。 

タイトル回収っすね、このタイトルにした時からこの展開がずっとやりたかったんです(笑) それ以外にも色々考えていることはありますがね、勘が鋭い方はもしかしたら気づいてた...かも? 


見返して頂ければ分かるかもですが、初めて人生回廊を確認した時に....っと。

もし万が一、あとがきから見てる方が居た場合の為にこれ以上の言及は避けておきます。 



過去の後悔から帝国に牙をむいた番犬が今後どうなるかにも注目です!




次回、10話......その涙 謝罪のために!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ