82話 その芸術 朝陽に照らされよう!
そして....翌朝。
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芸術大祭のイベントスケジュール...
1日目、一般参加型大会
2日目、一般参加型大会・芸術家枠大会
3日目、芸術家枠大会
4日目、各地方領主による品評など
5日目、完成された作品の展覧のみ ★今ココ!★
6日目、王と二人の姫による街巡り・ビュアインパクト行動開始
7日目、完成された作品の販売
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クーデターが予定されている前日となった。
街は平和の中に何処かピリついた雰囲気があった。
夜空は朝から『シールド』の発動訓練を行っていた。 コレムはどうせ一人でビュアインパクトの所に行っても暇な為、夜空の近くで『シールド』についてのダメ出しをしていた。
「スキル『シールド』!」
夜空の前方1m手前にエネルギーで作られた盾が生成される。 それと同時に、少しだけスタミナが持っていかれた気がした。 シールドは自分が移動すると一緒に移動してくれる。 自身から半径1m~3mの間は自由に盾の移動が出来る。
「いつの間に『シールド』なんて覚えたのよ」
「昨日、プラスに参考書もらってな。 いいね、シンプルで使いやすい」
見たとこ反動も無いしとても良いスキルだ。
いや、そもそも反動があるのがおかしいんだよ。 『火種』とか『超音波』とか『ハイパーウェーブ』とか......。 なんで自分の力で傷つかなきゃならないんだ。
「アタシも初めて見たけど、それって触れるわけ?」
「知らん。 俺が移動すると盾も移動するから確かめる手段が無い、障害物に当たると盾の方が崩壊するしな」
夜空は、そう言いながら壁の近くに立って盾を発射する。 壁に接触した盾がガラスの割れるような音がして崩壊した。 崩壊した盾の破片は直ぐに消滅した。
「盾出して」
「あぁ? ...スキル『シールド』」
コレムが盾をペタペタと触り、意外と硬さがあることに驚いていた。
逆に、コンニャクみたいに柔らかかったら盾の意味が無いし当たり前だけど。 人も触れられるなら、このスキルは盾としてだけでは無い使い方も出来るかも知れない。
色々思いついたこともある。
「消し方は?」
「それは任意解除っぽいな。 スキル『シールド』....で、ほいっとな」
夜空は盾を適当に生成した後、割れろ、割れろと心で念じて破壊する。 自分で解除する場合でも、同じように音が出て崩壊するみたいだ。
「じゃあ『ニトロレーザー』撃つわよ?」
「待て待て待てッ!! もし盾が割れたら死ぬんだけど!?」
「.....チッ、勘のいい男」
コレムが小声で呟いた。
この小娘、俺より最低だ。 今確実に舌打ちしたろ。
「人の事クズだクズだというけどお前も大概だからな」
「黙れクズ空!」
コレムが夜空を殴ろうと駆け寄ってくる。
夜空はこれはチャンスとばりに....手を前に伸ばして.....
「効かねーよバーカ! スキル『シールド』!」
「おりゃ!」
コレムは相手がシールドということもあり、全力のパンチを行った。 すると、【パリ―ン】という情けない音が鳴って、盾は完全崩壊し拳が夜空にヒットする。
.....グェッ!?!?!?
「えっ、あっ? ご、ごめん....」
まさか割れるとは思っていなかったのか、コレムが素で謝ってくるがそういう反応が一番傷つくとこの少女は知らんのだろう。
.....盾、割れた。
竜人族とはいえ、たかが小娘のパンチひとつで。
これには流石のコレムも哀みの目を向ける。
「お、思った以上にしょうもないスキルね! 元気出しなさいな!」
「なんでいつもいつもこうなるんだ!!!」
仰向けに倒れながら夜空は目にほんのり涙を浮かべた。
夜空は落胆しながらそれ以外の要素もコレムと調べた。
★ 盾が半径1m~3mの範囲を移動できる小規模のモノであること。
★ ある程度(コレムのパンチ程度)のダメージを受けると崩壊。
★ 無機物、有機物、物理と魔法系統スキルを防げるが...建物や地面などに強く接触すると崩壊。 恐らく耐久限界だと思われる。
★ スタミナは盾を召喚した時に持っていかれる。
★ 自分が移動すると盾も移動する。
★ 盾生成時に、その場所に障害物があるとそれを避けるように生成される。 また、障害物を外しても欠損した部分は修復されず、元に戻すには盾を再生成するしかない。
以上が『シールド』の概要だ。
夜空は調べたことを忘れないようノートに書き留めた。
「性能が木の板レベルなんて雑魚ね」
き、木の板.....。
「ぐぅッ! 反論できねぇ....」
どうしたもんかな...。 防げるとは書いたが、木の板レベルじゃ大抵のスキルが防げない。 スキル習得の際に聞いたのだが、この『シールド』というスキルは冒険者や兵士なんかでも好まれて使われているそうだ。 もしかしたら盾自体の耐久性を強化する方法でもあるのかもしれない。
じゃなきゃこんな木の板、誰も使わん。
「どちらにせよ、もうお前に噛まれ殴られ蹴られするのは懲りた。 このままだと決戦前に俺が沈むことになりそうだ」
「アタシは日頃の嫌な気持ちを発散出来て良かったけど?」
「おい、どさくさに紛れて鬱憤晴らしてんじゃねーよッ! もう、リリスもお前もなんでこう暴力的な奴ばっか俺の周りには集まってくるんだ! 温井さんだ、温井さんをよこせ!」
イェーガーといい、カイルといい....今まで出会ったまともな異世界人なんて、オニキス帝国で親切にしてくれたお爺さん。 クル爺くらいしか居ないんじゃねーかと錯覚しそうになる。
「温井って誰?」
何故かコレムの目が少し険しくなる。
「少なくとも、お前らより優しい人だよ」
「なるほどね、全部終わったら宣言した通りにするから覚悟しなさい?」
夜空は宣言なんかされたっけなと頭を捻る。 コレムはぷんすか怒りながら宿屋の部屋へと戻って行ってしまった。 ....本当に宣言ってなんの話だろうか?
「さてと、俺もビュアインパクト行くか」
気分は完全に職場のソレだろう。 俺は15歳だし、当然バイトも未経験なので職場の雰囲気というモノを理解しているわけでは無いが、少なくとも憂鬱になるこの感じだけは同じだろう。
今日はいつもに比べ人通りが少ない道を急ぎ足で進む。 イベントのスケジュール的に考え、いつもは街で買い物している連中は根こそぎ王城へと向かっているのだろう。 完成された作品とやらの展示だ、芸術にうるさい輩には絶対に見逃せないイベントだろう。
かくいう俺は興味すら湧かない。
日本でアニメや漫画、娯楽小説なんかに鍛えられた手前、変な古臭い絵とかに夜空は興味が湧いていなかった。 音楽に関してもクラシックは音楽の授業で聞いただけで満足するレベルだ。
「なんていうか...とことん芸術と相性悪いな」
夜空は、なんでこんな国来てしまったんだと今更後悔しながら、ビュアインパクトの隠し施設に辿り着く。 夜空はドアの前に立ち、『芸術の帳は朝陽に晴らされん』と合言葉を唱えると、いかつい門番によって扉が開かれた。
「おつかれさん」
「どーも、いつも門番ご苦労さん」
いつものように適当に挨拶をかわして中へと進んでいく。 ビュアインパクトの隠し施設内部では、大勢の人間が明日に備え色々準備を進めていた。 装備の数を数えたり、印刷したポスターを箱に詰めて地上の隠し施設へ移動させたり....作戦の概要を再度確認し合ったりしていた。
「あっ、プラス」
「いそがしい、いそがしい....ん?」
慌ただしく動くプラスに夜空は声を掛けた。 プラスの両手には、木箱が抱えられており、その中には大量の医療物資が入っていた。
「あー、今忙しい感じ?」
「うん、かなりね。 みんなもボクもそうだけど、明日はようやく家族に....ママに会えるんだよ。 ずっとこの時の為に、この時の為に....ッ!」
.....プラスも能天気に見えて考えてるんだな。
「悪いんだけどこっちも急ぎでさ、少しだけ教えてくれ。 昨日教えてもらった『シールド』って耐久値を強化する方法無いのか? 壊れやすすぎて実戦で使えそうにないんだけど」
夜空が質問すると、『ボクが居ないとダメだねぇ』とかふざけたことをぬかしてから、落ち着いて質問に答えるために木箱を廊下に置いた。 木箱は結構な重さがあったのか、プラスは疲れたように腰を叩く。
「...うーん。 使う時により多くのスキルエネルギーを込めれば若干の強化はできると思うんだよ? でも、【才能】でも無い上に不器用だとある程度とは思っとくといいかも」
「いや待て、スキルエネルギーってなんだ」
「知らないなんておかしいねぇ? 魔力を体内で変換した際に出るエネルギーの名称だよぉ、ボク物知り博士なんだよ?」
「はいはい博士博士...」
魔力? 体内変換? エネルギー?
よく分らないんだけど、今はもうどうでもいいや...。
名前からしてスキルを動かすための燃料みたいなものだろうし、そんな事は後で本屋にでもよって本でも買って読めばいいだけだ。 今はそんなことより『シールド』だ。
「で、どうすればいい? スキルを全力で使えって解釈でいいのか?」
「まぁ、うん。 そうなんだよ」
「なら初めからそう言えよ...」
「素直にありがとうって、キミの口から聞いたこと無い気がするんだよぉ」
プラスは少し不満げに呟いた。 しかし夜空はどうでもいいような顔をして
「昨日の件でお礼言われてないしとんとんだろ」
「むぅ」
痛い所を突かれたのか、プラスが何とも言えないような微妙な顔をしながら黙った。 その顔を見ていると、喋って居なくても『ひねくれものめ』という声が聞こえてくる気がする。
計画では、明日の王や姫が出発した1時間後....午前10時に国中で暴動がおこる手筈となっている。 首都アラブレイに居るビュアインパクトの部隊は、午前10時に王宮に一斉に乗り入れ占拠。 地下の衛兵全てを倒し、地下に捕らわれた全てを解放する。
それと同時に、告発を兼ねたプロパガンダを国中にばらまき世直しを訴える。 被害者たちが騒ぎを拡大させ、現王族は事実的な崩壊を果たす...というのがシナリオらしい。 ちなみに、これもゴーストから聞いた話だが、様々な事柄から国を守る為の技術【国防技術】と呼ばれる代物はこの国には存在しないそうだ。
実際、俺は国防技術とやらをこの目で見たことが無いので、よく分らないっていうのが正直な感想だ。 今の所、なんか強い力くらいの解釈しか持ち合わせていない。
「......やること無さそうだし、帰るか」
帰って、明日の準備をしよう。
お姫様を迎えに行く.....準備を。
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【同時刻、東大陸大陸線付近では...】
「報告します!」
「なんだ、監視役がこんな所まで...」
上司と部下と思わしき二人の兵士が事務室で会話を行っていた。 ここは大陸線の検問所...一度夜空もトニールと共にここを通り、検問所を越えたところにある小さな港町で一泊した。
夜空が作ったネズミの墓がある港街だ。
「それで要件はなんだ。 随分慌てているようだが...」
「それが、望遠鏡で確認しただけですので確かな事は言えませんが....信じがたい物を確認してッ!! 人が空を....女性が空を飛んでこちらに真っ直ぐ向かってきているのです!」
「は? 寝ぼけてるのか?顔でも洗ってこい」
しかし上司として、部下の言葉を『くだらねぇ』と一蹴することが出来ず、上司は渋々といった具合に監視塔に昇り望遠鏡を手に取った。
部下の指さす方向を望遠鏡で覗くと。
確かにそこには....平民姿の女性が空を超高速で飛行する姿があった。
「なんだ...? スキル、なのか? 魔法系統スキルには間違いないと思うが」
「一応進行方向がこちらだったので、お耳に入れておくべきだと思いまして」
「あの方角は帝都だろう? あの王がまた何かやらかしてるのか?」
上司と信用に値する検問官には既に【悪魔勇者】の存在が通達されていた。 もし万が一、奴が検問所を通り東大陸を出入りしようものなら即刻捕えよ。 そう帝都側から秘密裏な通達があったのだ。
「うーん。 対応....したくても間に合わないしなぁ」
「せめて避難を呼びかけては!?」
あわてて階段を降りようとする部下の手を掴んで止める。
「待て待て待て! そんな事すればあの長蛇の列がパニックになるだろうよ、そのそもあの空飛ぶ女がここに攻撃を仕掛けてくるかも怪しいんだ。 それに、どうせ一人じゃ何も出来ないさ」
「じゃあどうすれば...! 放置もできませんよ!?」
「少し落ち着け! 念のため、戦闘できる人間を事務室へ呼び戻しておく、お前はそのままここで見張れ。 奴が通り過ぎればそれでよし、もし何かしてくるようなら....その時は直ちに俺に知らせろ」
「りょ、了解です!!」
検問所がバタバタと動き始める中、スキル『スカイバンパー』を使用して女性は空を飛ぶ。 目的地は、現在位置から遥か西に位置するアルテーラテルト首都アラブレイ。 そこにいるであろう赤印の勇者を討伐すべく、彼が動き出したのだ。
==☆次回予告☆==
82話の閲覧お疲れさまでした。
夜空とコレムの掛け合いは書いてて楽しいですね。 思わず書きすぎて消すハメになったのを覚えています。 そんな事はさておき、スキル『シールド』については少し分かりにくい事もあったかもしれません。
完結に言うと、一定範囲内で操作できる板を出す。 みたいな解釈で大丈夫です、その操作機能を使って防御範囲の微調整を行ったりします。
だから兵士に人気のスキルなんですね。
次回、83話......その反乱 始まって!
是非次回もご朗読下さい!
ではでは~




