81話 運送の国 絶望を派遣して!
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*取得成功* 新たなスキル、『シールド』を習得しました。
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プレートが出現した後に、上に重なるように新たなプレートが直ぐに目の前に出現した。 どうやら、勉強でスキルを取得した際には、天賦の不可項目には引っかからないらしい。
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*警告* スキル枠不足.....スキルを削除して下さい。
・アクアショット
・スパイク
・ハイパーウェーブ
・野生の勘
・シールド
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夜空は今まで使ってきた中で、一番使えないと思った『アクアショット』を削除して『シールド』を入れ替えで習得する。 体が一瞬【ズンッ】と重くなるいつもの感覚に晒される。
....俺の天賦の一番の強みって、スキルをその場で、すぐに入れ替えられ、作戦をその場その場で切り替えられる点にあると思うのだけれど、勉強して習得するのは何と言うか、多分そこまで方法的に良くないのかもしれない。
天賦のデザインにあってない気がする。
数時間の勉強とテスト、そしてイメージ練習の末やっと夜空は『シールド』を入手していた。 勉強の途中、何度も何度も自分が何やっているか分からなくなるような錯乱を覚えたが、何とか....辛うじて習得できた。
「でも意外と早く習得できたな。 才能あるのか?」
しかし、救出作戦まで残り1日しか無いのに作戦すら考えられていない。 これは非常にマズイ、早々に対策を練らないといけない。
「満足してる所がっかりだけど、平均より少し早いくらいだよぉ。 スキルの『シールド』は、そこまで複雑なスキルじゃぁないから、習得自体にはさほど時間はかからない筈なんだよぉ」
「習得自体? あぁ、どっかのハゲも言ってたな...」
どっかの竜人族のハゲこと、イェーガーも戦闘中に言っていた。 スキルは、使うと使いこなすでは意味が違うと.....スキルとしてはこれからが本番なのだろう。 どうやってこのスキルを応用していくか、そこが使える者と使いこなす者の差に繋がっていく。
スパイク同様、寝る前に色々試してみるかね。
「ハゲ?」
「なんでもない、こっちの話だ気にすんな」
教えろ教えろと五月蠅いプラスを無視して、夜空は再びポスターの手動印刷とかいう地獄作業を始める。
結局、深夜12時近くまで作業させられた夜空は、作業を一区切りで終わらせて即帰宅する。 やべぇやべぇと路地を早足で駆け抜け、安宿に着くころにはなんだかんだで1時を回っていた。
一つしか借りられなかった安宿の部屋に入ると、既にコレムが夜空のベッドの上で寝ていた。 夜空はすやすやと眠るコレムを見て少し途方に暮れる。
「.....なんで自分のベッドあるのに」
嫌いな奴が寝ていたベッドの上で寝るもんかね普通。 コレムが俺の事を嫌ってるのは知ってる。 ただその嫌いは、嫌悪というよりも警戒による敵対心の方が近い気がしていた。 葉日学園では、周りから相手にされなかったり嫌われたり....そういう事が結構多かった。
別段それで困った事も無かったが、弊害...というと少し変だが、自然と『あぁコイツ俺のこと嫌ってんな』とかが分かるようになっていたし、そう思ったらすぐにソイツとの関係性を切っていた。 勿論その嫌いは、嫌悪の方だ。 警戒の方ならこっちも様子を見るようにしていたから。
「リリスといいコレムといい....なんで俺なんかと旅したがるんだ。 リリスは幼馴染の男の子が居たし、コレムに関しては旅に出るような歳でも無いだろ」
実年齢は24歳だが、コレムの中身は6歳だ。 人間で言うなら幼稚園、保育園の年長だ。 俺が6歳の頃は、トミカとかプラレールとか...日曜特番のライダー系を見ていた気がする。
(アタシの人生はアタシが決めるの)
...大人ならともかく、子供にそんな事を言わせるなんて
酷い親だ。
「さてと、リリスと名前も知らん王族の奴助けるために何か考えるか」
そう言って夜空は、パクってきた地図と、昼の内に街を見回った時の王宮周辺の簡単な手書き地図を広げて考え始めた。
そもそもの話、ビュアインパクトは王宮に捕らわれてる拉致被害者たちを救出した後、どうする考えなんだろうか? そこら辺の話をゴーストに詰めても、下っ端だから信用できないという理由で話してもらえなかった。 唯一手に入った情報は、ビュアインパクトは首都以外の3つの街にもかなりの人数が居る....という事だ。
クーデターを起こした連中が大人しく交渉のテーブルに着くとも思えない。 だとするなら、王族の殺害と新王族を据えるという考え方が一番濃厚だろう。
で、そうなった場合が最悪だ。
新王族を据えるうえで血を根絶やしにすることは必至。 下手に血を残せば、現王族を崇拝しているような連中から反撃を貰うことになる。 今、ビュアインパクトが少数で国に牙をむこうとしているように。 リリスが助けたがってる王族の奴がいかなる立場でも.....。
だが、いくつか妙な点も存在する。
リリスは現在、鋼鉄搭と呼ばれる周囲が鋼鉄で補強された搭に軟禁されているそうだ。 その中に、リリスが入れられているのはまぁ分かる。 だが、何故王族もそこに一緒に軟禁されているのだろうか?
それに、ゴーストはアラブレイ王家の正統な血筋は王と娘2名しか居ないとも言っていた。 妻....王女に関しては、娘を産んだ際に命を落としているそうだ。 では、リリスと共にいる王族は誰だ?
正統な血筋では無い分家の人間だろうか? それとも....。
夜空はバッグからノートを取り出し、一目で自分が分かりやすいように表にまとめ始める。 そして約小一時間ほど悩み書き続け...。 自分の中の考えを整理していく。
俺の簡単に考えた作戦はこうだ。
リリスを助けるために王宮に便乗突撃、鋼鉄搭のカギを開けリリスと王族の奴を助け出す。 その後、リリス自身に王族の奴を警護して貰って、俺は王族関係の書類が保管しているであろう部屋【資料保管室】に向かう。
ビュアインパクトの面々が向かってくる前に、捕らわれていた王族に関係するデータを全て処分して関係をクリアにする。 最悪、あとでバレても国外まで連れ出せる時間さえあればいい。 国外まで逃亡すれば、流石に追ってはこないだろう。
後は国を出る。 おしまい。
適当で粗だらけの作戦だが、急すぎてこれ以上の作戦立案が出来ない。 準備する時間だってほとんど設ける事が出来なかった。 明日一日でどうしろってんだ全く...。
.....自分で作戦立てといてなんだが、複雑な心情だ。
自分がオニキスとかいう場所に追われてるのに、どうして名も知らぬ王族のボンボンを助けにゃならんのか。 しかし、リリスの頼みならばしょうがねぇと割り切るしか無い。
「あとはなるようになれだな。 どうせ作戦通りになんか行かないし悩むだけ時間の無駄だな.....。 うっわ、もう1時じゃん」
夜空は短針が1を指している時計を見てため息を吐く。 新規習得した『シールド』の性能テストも今夜終わらせようと思っていたのだが、明日はビュアインパクトに行くのを少し遅らせて、朝に少し練習してから行くべきだろう。
「眠いし寝よ。 コレムのベッド使うか...」
自分のベッドが占領されてるのでどうしようもない。 流石に、スヤスヤと眠る6歳児を叩き起こしてまで自分のベッドで寝たいとは思わない。 俺と春は両親に常々言われているのだ、子供には優しくしなさいと。
夜空は寝る前の準備を軽く済ませてからベッドに飛び込んだ。 疲れがたまっていたのか、目を閉じるや否やランタンを消すのも忘れて眠りについてしまった。
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【同時刻、オニキス帝国にて......】
「宰相よ、悪魔勇者の件はどうなった?」
「はい、手筈は整っております故....」
「流石の手際だ」
オニキス王と宰相は、夜間....他の勇者たちが寝静まった頃を見計らって会議を行っていた。 議題は勿論、夜空の逃亡の件......彼らは夜空を秘匿名称【悪魔勇者】と呼んでいた。 ここ最近行っている捜索に関しても、もし万が一生きて発見出来たらその場で処理。 勇者達には、遺体となって見つかったと後から報告する手筈だった。
しかし、見つからんと業を煮やしたタイミングで。
一羽の鳩が帝国に飛んできた。 その鳩が抱えた報告書は、とある金にがめつい商人からの物。 トニールと呼ばれた商人が、音越様達と共に旅に出発した際に連絡手段として渡した物。
ここは運送の国、伝書バトの教育もお手の物。
報告書に書かれていた内容は、宰相にとあることを決断させた。
「して、どうするつもりだ?」
「.....簡潔に申しますと、イスカルを使います」
宰相は淡々と、まるで道具を使うような言いぐさでそう言った。
「しかし、前は他国に派遣するのは...と渋っておったろう。 何故、今になってそれを是とするかを聞こうでは無いか」
「はい、では僭越ながら。 他国に兵を無断で派遣するというのは国際的な問題になりかねない、という意見に関しては曲げるつもりはございません。 しかしながら、東大陸と南大陸は文化の性質上、あまり国家間の間柄よろしくないのも事実なのでございます」
「赤印文化だな?」
「えぇ」
宰相が王の目を見ながら頷く。
「奴が、南大陸のどの国に居るのか判明していなかったというのが一番のネックでしたが。 この報告書で、大まかではありますが居場所を補足することができました」
宰相は表情こそ変わっていないが、どこか嬉しそうにそう言った。
「してその国は?」
「....芸術の国アルテーラテルトの首都アラブレイにございます」
宰相は部屋に飾られた絵画を見ながらそう言った。
「アルテーラテルトならイスカルを使うのか? 違いが良く分からないのだが」
「いくつか理由はございますが、隣国の【ザドラ】や【セブン国】とは違い。 アルテーラテルトには国防技術がございません。 歴史上、国防技術の存在を無視して攻め込んだ国が、国防技術の反撃を受けて逆に滅ぼされた例があります」
「我々オニキス帝国の隠し国防技術。 奴隷騎士イスカルのようにか」
「はい、セブン国の国防技術【アルカナセブン】に至っては理不尽の領域ですから...相手取るのは愚策でしょう。 ザドラの国防技術【ダンジョンコア】に関しては情報が多すぎて対策が思いつきません」
「しかし、しかしだな...アルテーラテルトの芸術は別の国の貴族なども好んでいる物だ。 安易に敵に回すのは良くないのでは無いか?」
「無論、立場を隠す努力はさせましょう。 隣国、ザドラの国境線付近では戦闘を行わないという条件も付け加えましょう。 いかがですか?」
王は立場上慎重にならざる得ないのか、意見を飲むか飲まないかでかなり悩んでいる様子だ。 しかし、宰相はそうなることが分かっていたかのように、ただ黙って王の様子を見ている。
....数分後、王が決断したように
「奴隷騎士イスカルの使用を許可する。 必ず悪魔勇者の始末を完遂せよ」
「ご英断に心からの感謝を。 その命、謹んで着任いたします」
全て思い通りのような笑みを浮かべた宰相は、その足で奴隷騎士イスカルが居る部屋へと向かう。 部屋の扉をノックすることなく開け、中でソファーに座って眠る男に声をかける。
「起きるのだイスカル。 仕事の時間ぞ」
「....はい、宰相様。 依頼書をお願いします」
目を開いたイスカルは機械のように淡々とそう言った。 宰相は、手に持っていた依頼書をイスカルに渡して、その依頼内容をイスカルに把握させる。
「夜空と言う男を殺せ、ただし目立つな」
「....衣装の方は何とかしますが、他国の聡明な方々は僕のチカラを把握しているのでは? 消去法でオニキス帝国の仕業だと把握されてしまう恐れも」
「その点に関してはこの宰相に考えがある。 この手引書を使い、覚えるのだ」
宰相は懐から一冊の手引書を出す。
スキル『マルチクローン』と表紙にかかれた手引書。 スキル『マルチクローン』とは、自身のクローンを生み出す能力だが、自身の性別とは逆の性別としてクローンが生成されるという特徴もある。 男が使えば女のクローンが、女が使えば男のクローンが生成される。
「性別と衣装...2重の偽装ですか。 流石は宰相様です」
イスカルは、新規のスキルを取得することに異を唱えることなく手引書を開いて習得した。 彼の首には大切にしていたペンダントは無く、代わりに禍々しい首輪が付けられている。
「時にイスカルよ。 夜空という名を覚えているか?」
「先ほどおっしゃっていたじゃないですか」
「よろしい」
イスカルは気付かない、気付けない。
今の質問に別の意図があったことなど....気付ける筈も無かったのだ。
==☆次回予告☆==
81話の閲覧お疲れさまでした。
マルチクローンの伏線回収ですね。 12話だか13話の時、ちゃっかり説明だけ出していたのですが......絶対誰も覚えてない。 作者も資料確認してなきゃ忘れてるレベルでした。
しかーし、その設定のおかげでこれからカオスになりそうです、よくやった過去の私。 最強のバケモン、イスカルの参戦により...夜空の立てた作戦がどうなっていくのかにも注目です。
しかし、夜空の立てた作戦には...ひとつ大事な見落としが?
次回、82話......その芸術 朝陽に照らされよう!
是非次回もご朗読下さい!
ではでは~




