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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== アルテーラテルト編 == 【物語進行:夜空サイド】
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79話 その孤独 再開を!

 

 ネイディアは額から血を流して倒れる。 衛兵たちは、踊り子少女を確保する為、無礼にも女性の寝室へとずかずかと入っていく。 衛兵も王宮の、それも最高位に位置する姫の命令には逆らえないのだ。


「止めて! 離して!!!」

 叩き起こされた少女は悲鳴のような叫びを上げながら連れられて行く。 必死に抵抗する少女を取り押さえようと、衛兵たちが命令の上で大人気なく掴みかかる。


「「すまん許せ!!」」

 二人の衛兵が苦悩な表情をしながら命令を遂行する。


「嫌ッ、嫌ッ!! ネイディアー、ネイディアーーッ!!」

 ネイディアは立ち上がり、二人の姫の内の1人目の姫の方に掴みかかる。 



「渡さないわッ、使い捨てるだけの道具にはさせたくないの!!」


「黙りなさい!!」

 横から二人目の姫のビンタが飛んできて、か弱い3番姫は再び床に倒れる。 衛兵を追加で呼んできて、ネイディアを取り押さえさせる。


「暴れないで下さい3番姫。 これ以上の手荒はしたくありません」


「うぅぅぅっ―――....!!」

 ネイディアは大粒の涙を床に落とす。 しかしその涙を二人の姫は見ることなく、互いに顔や体への傷が無いかを必死に確認していた。




「ふ、ふざけないでよ3番姫! 貴方みたいな落ちこぼれのせいで、芸術家人生に終焉がもたらされたらどうしてくれるつもりなのよ!!!」


「そうよ、そうよ! 責任取れる訳!?」

 二人の姫はヒステリックに喚き散らす。 一番目の姫は、怒りのままに3番姫の髪に靴をこすりつける。 日頃から従者が手入れしているとはいえ、中庭を歩いてきた為土が靴についていた。 土が3番姫の長い髪の毛について汚れる。



「踊れぬ民にはお似合いの姿よ。 アハハハハハハ!!」

 二人の姫は3番姫の無様を見て、胸糞悪く笑う。 その後、怒りが収まったのか、2にんの姫は衛兵を全員鋼鉄搭から引き上げさせ、鋼鉄搭の扉に鍵がかかった。



【ガチャン!!!!】

 反響する鍵の閉まる音の後、昔からずっと経験してきた孤独を感じた。 一度は慣れてしまったその感覚が、友達と過ごした月日のせいでとても寂しく感じる。


 3番姫は髪に付着した汚れを払うことなく、放心したようにピアノのある部屋へと向かう。 ピアノ椅子へと腰を掛け、鍵盤を悔しさで思いっきり叩く。 様々な音階の合わさった汚い音が、搭の中だけに響いてから.........静まる。



 その静寂で


 始めて自分が友を失ったことを自覚した。




 そして時間は進み.....踊り子の少女がこの王宮へ連れ去られてから約3年が経過した。 ネイディアの元を友達が搭を去って2年が経過し、孤独の悲しみはもはや過去の記憶となり始めていた。


 そんないつもと変わらぬある日の夜。

 鋼鉄搭に誰かがコッソリと侵入してきた。




 夜風に当たるために5階いたネイディアの元にその人物は現れた。 額に大きな傷をつけ、手やひざは擦り剥いていた。 踊り子として育てられているなら、決して傷ついてはいけない顔を怪我した踊り子な彼女は夜風を受けるネイディアに対して微笑んだ。 彼女の姿は、少女では無く立派な女性になっていた。


「......あぁ、あぁ。 嘘っ、どうしてここに? その怪我は何!?」


「ネイディア、お久しぶり。 もう少しで王宮を出て、しばらく外で活動しなきゃいけないから.....少し許可をもらって会いに来たの。 迷惑だった?」


「迷惑なんてありえない!」


「そっか」

 その言葉に、踊り子女性は嬉しそうに笑った。


「まず聞きたいわ、その傷は何!?」

 ネイディアが心配そうに近づきながら、踊り子の前髪を触り優しく持ち上げる。 持ち上げる際に傷跡に触れない様、ネイディアは最新の注意を払う。


「色々あってね。 簡単に言うと、私よりも踊りが上手い子がやってきてね....俗にいう用済み状態になったんだよ。 でも、王宮としても処理に困ってたみたいで.....最悪殺されるかもしれなかったから。 だから、()()()()()()()()()()()()()


「別の仕事?」


「うん、言い方はあれなんだけどさ。 人さらいの手伝い」

 ネイディアは友達に掴みかかる。 肩を捕まえて、必死な表情で『なんでそんなことをするの!?』と訴えかける。



「ネイディア....痛いよ」


「ご、ごめんなさい」

 ネイディアは掴んでいた肩を離して少し距離を取る。


「私、人生回廊の【才能】が『アクロバット』っていうスキルなんだけど。 そのアクロバットが、閉所の多いアルテーラテルトで拉致を行うのに最適なスキルだったんだよ。 だから王宮側に、自分の有用性を示してみたんだよ。 納得させるまでに結構苦労したけどね....あはは」


「だからって! 自分だって拉致された時の悲しみくらい覚えてませんの!?」

 ネイディアは激昂する。 しかし踊り子の女性は何も言わず、ネイディアの言葉を最後まで聞いた後、静かに言葉を紡ぐ。


.....。


「怪我をさせられた老人がいたの、痛い痛いって言って」


「えっ....」

 ネイディアの怒りが止まった。


「王宮に目をつけられた時点で、誰であろうと逃げられない。 それに、やり方が酷過ぎる...今のままじゃいつか死人が出る。 踊り子や歌手の拉致はケガをさせないよう行うけど、彫刻家や絵描きは違う....手さえ傷つかなきゃ何してもいいと思ってる。 この数年間で、大怪我させられた拉致被害者をこの目で何人も見てきた。 足を折られれて、車椅子のまま生活している人だって居る」

 踊り子女性の目は静かに決意していた。

 誰かが動かなきゃいけないと....、そんな正義の目をしてた。


「だから自分がやると?」

 声を震わせながらネイディアが問う。


「....王宮でまだ踊り子をしていた時に稼いだお金で、沢山の麻痺ポーションを入手したの。 あれを使えば、怪我させること無く拉致ができる」


「拉致を無くすことはできないの?」


「出来る事ならやってるよ、でも私じゃ出来なかった。 だからせめて、拉致を受けた被害者たちがいつか救われた時に、後遺症を残さない為に....。 また幸せに暮らしていけるように」


「......!!」

 そしてネイディアは理解した。 

 彼女の考えていることは、救う救わないの先にある未来。 自分が出来る、精一杯の正しい在り方というモノを貫いているという事を。


「訓練で少し怪我もしちゃったし。 今から自分がやろうとしてる事が、両親を悲しませる行為だってよく分ってるつもり。 出来る事ならやりたくないけど、私は神様なんかじゃない.....万人を救える()()()()()()()()()()()()()。 私は私に出来るやり方でしか、私は人を守れない!」

 額の古傷を触りながらネイディアに向かってそう宣言した。



 ネイディアは少し悩んでから....



「その想いに敬意と応援を。 私の友達が...そう望むなら」


「ありがとうネイディア」

 二人の女性は抱きしめ合いながら辛そうに目を瞑った。 そして抱きしめ合いながら、ネイディアは踊り子女性に向かってとあることを提案することにした。


「ねぇ、外で活動する偽名はあるの?」


「な、無いよ? 本名ってマズいかな」


「私が嫌よ。 ねぇ....だから、せめて.....」

 この日、3番姫は名前を失った。 新しく作った名前を使わなかったのは、彼女がこれから行く茨の道で受ける傷を少しでも自分が肩代わりしたかったから。 



 ネイディアという名前を呼んでくれるのは、彼女だけだったから。



 この名前が、友達の役に立つのなら。

 この名前が汚れた道を歩いても惜しくは無い。





 名前の無くなった姫は搭に残り、ネイディアという名前はとある踊り子の女性に引き継がれた。 街中を俊敏に飛び回りながら、踊りのレッスンと戦いの訓練で鍛えた戦闘法で対象を怪我無く素早く拘束する。 いつしか彼女は同じ意思を持つ人間達で活動し始め、その人間たちは外部で構成された抵抗組織【ビュアインパクト】から皮肉交じりに【キュレーター】と呼ばれるようになった。


 拉致は全てキュレーターの仕事となり、大怪我するような事態も無くなった。 






 こうして時間は今に巻き戻る....。



 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



「時折キュレーターの方が落ち着いたら、こうして鋼鉄搭に来てくれるの。 長々と話してしまってごめんなさいね、リリスさん」


「正直、被害者としては複雑です。 いつか救われるときって他人事みたいですし」

 リリスは不満そうな表情を浮かべながら、()()()()()に向かって視線を送る。 その視線に気づいたネイディアが、お詫びをしようと少し考えて....


「んー、手紙とかは流石にここから持ち出せないけど....言伝なら、あの竜人族の子に伝えられるかも? 部下が竜人族の子供の事を覚えてて、その子が王宮を見張るために高い場所に昇ってるのを見たそうなの。 その場所に部下を派遣すれば接触くらいなら...」


「竜人族ってコレムちゃんのことですか?」


「名前は分からないけど、竜人族なんて滅多にお目にかかれないし多分そうよ」

 言伝....。 何を伝えたらいいだろう。


「じゃ、じゃあ...ひとつお願いしてもいいですかっ?」

 リリスは伝えて欲しい事をネイディアにお願いした。 その内容は『夕方4時ちょうどに搭を見てください』とだけ伝える事にした。


「そ、それだけでいいの?」


「正直、まだキュレーター?さんの言う事は信用できません。 例え3番姫さんの友達だったとしても、過去にそう言ったやり取りがあったとしても、夜空さんやコレムちゃんに酷い事をした事実に変わりはありませんっ」


「返す言葉も無いし、返せないね。 分かりました、それだけ必ず伝えるね」


「......」

 リリスは何も言わずその場から黙って立ち去った。 3番姫にだって積もる話ぐらいあるだろう、そこに部外者が居ては話づらいと思ったからだ。 リリスは搭の内部を探索し、明日の正午に向けて準備を始める事にした。




 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



【一方その頃....。 ホワイトタウン周辺の街道では】



「「「いけーロビンソン! 分からせてやれ!!!」」」


「任せろ! ウォォォォォッ!!!」

 大勢の冒険者が見守る中、イェーガーとロビンソンと呼ばれたコレムと腕相撲して負けた大男が戦っていた。 お互いに『衝撃耐性』を発動し、スキル同時発動でイェーガーは『フルボディTNT』を、ロビンソンは『アクロバット』と呼ばれる運動神経向上系のスキルを使って打撃による攻撃を行う。


(このデケェ男は強い! 強いがァ、少し強すぎやしねェかァァァァ!!!)

 最初こそ殴り合いになっていたが、ロビンソンが一切怯まず殴り続けた為に徐々にイェーガーが詰められていく。 最終的にただ一方的に殴られるだけになってしまっていた。


「スキル『進化型、魔法弾』! アーハッッハッハァ!!このロビンソンの相手にはならなかったようだな!」

 勝ち誇ったロビンソンがおでこに手を当てて笑う。 イェーガーの肉体に直接当てられた『魔法弾』が炸裂し、イェーガーが自身のスキルの爆発と共に後方へと吹き飛ばされる。


「あぁ、痛ェ! たまんねぇぜ、冒険者(ワンコ)共」

イェーガーが起き上がり、再び拳を構える。


「一応ホワイトタウンの冒険者の顔だ。 ホワイトタウンのツラ潰した落とし前ぐらいつけてけや、竜人族のハゲがよォ」

 ロビンソンが、先日イェーガーに痛めつけられた冒険者を見ながら怒る。 わざわざ、かたき討ちの為に、イェーガーの元に馬車を出して追いかけてきたのだ。


(好敵手を求めてた筈なのに。 強すぎても涎が出ないなんて...難儀だァ、やっぱり俺にはあの男と戦い腕を上げる事以外に道はねェようだ)


「んじゃ、ボロ(きれ)にしたらァ」

 ロビンソンは『進化型、魔法弾』を右手に生成し、構える。 イェーガーはとっさの判断で、攻撃対象を目の前のロビンソンから → 近くに居た冒険者の集団に切り替える。 口に『ニトロレーザー』を作り、射出用意を行う!!!


「あ、テメ! ざっけんな、こっち見ろ!」

ロビンソンが怒り心頭に叫ぶ。


「焦土に変えてやらァ!!」


「させるか!!!」

 ロビンソンは、直接『魔法弾』を口に突っ込ませて暴発を狙うが一足遅く! 射出された極太の赤いレーザーは冒険者の周辺に着弾して爆発を引き起こす。 と同時に、魔法弾がイェーガーの顔面に当たり炸裂する。 スキルを切り替えようとしたが、脳の処理能力が足りずタイムラグが起こる。



「「「「「ぐああああああッーーーー!!」」」」」

 イェーガーとスキル『シールド』を張り損ねた冒険者たちが悲鳴を上げる。 イェーガーは逃げるために、地面をフルボディTNTを発動した状態で殴り起爆させる。


【ドカ――ン!!】

 爆発が起こり粉塵が舞う!!



「魔導士! 風を送れッ、決して逃がすな!!」

 ロビンソンの叫び声に答えるように、シールドで自分と仲間を守っていた魔導士たちがスキルを解除し、風系統のスキルを使用して粉塵を飛ばす。 粉塵が飛ばされ、傷ついたイェーガーの姿があらわになる。 ロビンソンはトドメを刺すために走り出しながら拳を振りかぶる。



(思い出せ!!! セブン国で戦った剣士の...動きを!!!)

 イェーガーの体が、まるで熟練の剣士が繰り出す受け流しのような動作を行った。 ロビンソンの振り下ろした拳が上に弾き飛ばされ、隙だらけになった体にケリを入れて()()させる。 ロビンソンが吹き飛び、近場の坂へと突っ込んだ!


 考えなしに敵の攻撃を受けて戦っていた脳筋が、初めて戦闘中に体術を編み出して使用した瞬間だった。 セブン国での戦いの経験が、イェーガーを成長させ始めていた。


「....動きが変わっただと!?」


「ありがとうなァ。 追い込まれて進化するのは人種(ひとしゅ)だけじゃねェんだよォ!」

イェーガーはニヤリと顔を歪ませる。


「少しは、骨がありそうだな」

 突っ込んできたロビンソンに再びイェーガーが立ち向かう。 始めは仇討ちだったこの勝負が、いつの間にか両者を称えるような名勝負になったのは....また別の話である。 




 ちなみにイェーガーは怪我した。

 首都アラブレイ到着まで...残り2日だったハズなのが



 怪我と宴のせいで3()()に伸びた。







==☆次回予告☆==


79話の閲覧お疲れさまでした。

3番姫とネイディアの複雑な出会いでした。 友が歩く茨の道に、名前だけしか罪を背負ってあげられない歯がゆさを感じて頂けていたら幸いです。


今回のプチ話は【キュレーター】の意味についてです。


作中に出てきた【キュレーター】という言葉は、博物館や美術館などで資料収集、保管、展示、調査研究などに携わる専門職員のこと....を指します。 今のアルテーラテルトの状況でこの言葉は、これでもかというぐらいの皮肉言葉ですね。 こういう性根の悪い言い回し大好きです by作者


次回、80話......銀髪少女 文字を掲げて!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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