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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== アルテーラテルト編 == 【物語進行:夜空サイド】
85/238

78話 その最底辺 3番姫と!

 

【※※ 芸術大祭3日目 夜空サイド ※※】


(名前を聞いても?)


(ネイディア....私の名前はネイディア)

 3番姫はバッとベッドから飛び起きる。 そしてすぐに、先ほどの光景が自分の過去の光景であり、夢であると認識する。 ベッドの近くに置かれたエンドテーブルにあるハンカチで汗を拭く。 時刻は、まだ太陽が昇らぬ早朝。



「ネイディア....。 今も貴方は....」

 姫は窓が無いのに正確に街の方を向きながら、踊り子姿の彼女を想った。 その胸の内に秘めるは、友情か軽蔑か....はたまた。






 アラブレイに朝日が昇り、待ってましたとばかりに観光客や芸術家たちが通り道やら店やら大会やらに集い始める。 今日は芸術大祭3日目....1週間ある芸術大祭ももうじき半分が終わろうとしていた。



 芸術大祭のイベントスケジュールは...


 1日目、一般参加型大会


 2日目、一般参加型大会・芸術家枠大会


 3日目、芸術家枠大会  ★今ココ!★


 4日目、各地方領主による品評など


 5日目、完成された作品の展覧のみ


 6日目、王と二人の姫による直接品評(街巡り)


 7日目、完成された作品の販売


 となっている。 ビュアインパクトの構成員達は....


「6日目の直接品評のタイミングで王宮に潜入するんだよ、警備が薄くなるからねぇ」


「本当に警戒度下がるのか? あとから違いますってオチは無しだぞ」

 疑惑の目を向けるが、プラスは真っ直ぐ言い返す。


「この日の情報を、ビュアインパクトがどれだけ長い時間かけて集めたと思っているのかな? 数年前の芸術大祭では準備が間に合わず失敗したけど、今回は全部準備が整ってるんだよ。 今度こそ失敗しない、次こそボクは...次こそママに会うんだよ」


「......互いに努力しよう。 望みを叶えるために」

 数日の働きで信頼を勝ち取った夜空は、プラスから作戦の概要を教えられていた。 6日目の日は、王様と姫様が王宮を離れて活動する。 そのため、王宮内の守りが手薄になる....ビュアインパクトはこの時の為に、拉致が始まったこの数年間を必死に抵抗して耐えてきたのだ。 


 ビュアインパクトの構成員の中には、数年前に攫われて今なお家族を探し続けている奴もいる。 そしてそういう連中は口々にこう言う。 『今の芸術の在り方は...嫌いだ』と。


 本来、生まれた国のテーマが肌に合わなければ、別のテーマの国へと移住するのがこの世界の常識(セオリー)らしい。 確かに思い出してみれば、剣技の国(セブン国)で出会った動くアイテムボックスこと、二人の剣士見習いのチンピラは他国から移住してきた人だった。



「ボクとキミは今日もキュレーターから人を守るよぉ? でも、今日は一般参加枠の大会が無い分少し昨日よりかは楽だし、多分だけど昼ちょいすぎ位には終われると思うよぉ」


「....分かった、準備していくぞ」


「むぅぅ、リーダーはボクだよ」


「昨日キュレーターを見逃したような奴がよく言うよ」


「そんなの知らないんだよ」

 この野郎ッ、しらばっくれやがって!



 ちなみに...コレムは少しやりたい事があるからと朝っぱらから出かけて行ってしまった。 少しだけ不安だが、コレムは俺よりも遥かに強いのでそっち方面(※いざこざ)を心配するだけ無駄だ。 どっちかというと、あのクソ生意気な性格で周りに敵作って帰ってこないかっていう別方面の心配が先に来る。


 第一、俺はコレムをまだそこまで信用していない。 コレムが俺たちの旅についてくる意味も、正直まだ良く分かって無い節がある。 自分の事を語っていないという点では俺も一緒なので、絶対に口には出さない、自分が苦しくなるし。



 今日もまた、街を駆けまわる日々が始まった。 芸術家を保護し、次の会場に向かってまた保護し、本日最後の会場に向かう道中....夜空は興味深い物を見た。


 親子連れが手に持っていたその絵は、夜空にとって....いや、日本人にとってとても見覚えのある物だった。 その絵の内容は.....



「あれって...『魔法少女ちゃちゃ』とかいうアニメのキャラ絵か? なんでこんな場所に?」

 いや、少し考えれば分かる。 そして恐らく、この絵を買っていった親子づれの軌跡を辿れば結論へとたどり着くはずだ。


 夜空は、プラスに『一旦飲み物買ってくる』と言ってその場を離れ、人混みを抜けてとある販売ブースを見れる位置に辿り着いた。 販売ブースには長蛇の列が形成され、販売ブースの告知用垂れ幕には【勇者の世界の人気な絵! 芸術大祭に爆誕!!】と大々的に告知されていた。



「あの顔....どっかで」

 夜空は隠れながら物販を行う勇者達の顔を見る。 

 しばらく悩み、そして思い出す。




 あぁ、美術部の連中だ...と。



「美術部で芸術がテーマの国に召喚とか....いいなぁ人生(らく)そうで」

 自分のろくでもない過去を思い返すと涙が出てくる。 それと同時に、この国に春は居ないと結論が出る。 リリスが言うには、アルテーラテルトには6名しか召喚されていないらしい。 物販を行っているのは数えれるだけでも6名...。 一応後で、プラスやゴーストに確認はしてみようとは思うが、これ以上は居ないと思う。 数も事前の情報と一致しているしな。


「居て欲しかったと落胆するべきか、居なくて良かったと喜ぶべきか分からんな」

 できるだけ安全な国で過ごしていて欲しい。 兄貴なりの心配だ。


 夜空は気になっていた事を確認できたのでその場を後にする。 別に面識も無いし、何か話しても互いの間に微妙な空気が流れるだけだ。 それに、来るかもしれないオニキスの追手には、出来る限り情報を与えたくない。 テルテルはともかくとしても、銭ゲバトニールやあの後輩女子は間違いなく宰相が仕向けた者だろうし。 


 それはつまり、まだあの宰相は俺を始末することを諦めてないという事。 今は昔に比べてなんとか戦えるようにはなったが、圧倒的に足りない。 もし万が一、イスカルがオニキスからカッ飛んできたらそれだけで全てが終わる状況に変化が無い。 リリスやコレムでもイスカルの相手にはならないだろう。 俺は次こそ殺される、あんな奇跡みたいな脱出はそう何度も出来る物では無い。




 居るかも知らない神様はシカトが大好きだ。

 俺を助けてはくれないだろう。


 (もっと)も、神頼みなんてクソくらえだとは思う。 




「....春に会えても、ゴールじゃ無くなってきてるな」

 ずっと逃亡しなきゃいけないのかといつも何処かで不安に思う。 考えてはいけないと思いながらも、テルテルのあの目がその記憶を想起させる。 忘れさせないぞと言わんばかりに夜空を苦しめるのだ。



「今はリリスを助ける事に集中しよう。 あと3日、あと3日で状況は動く...それまでは今、俺が出来るだけの事をしよう。 大切なモンを守るんだ、気張れよ俺...!」

 喝を入れるように頬を叩き、目を覚ました夜空はプラスの待っている場所へと走っていった。 プラスに勘繰られない様、ちゃんと飲み物も二人分買っていった。





 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



【※※ 芸術大祭3日目 リリスサイド ※※】

 【一方その頃....鋼鉄搭、リリスは】 



 リリスと3番姫が昼ごはんの片付けをしていると、突然この場所に一つしか無い鉄扉が叩かれた。 叩かれた後に男の声が搭の中に響く。


「3番姫、週一のやつです。 どうされますか?」


「....扉から離れていますから中へどうぞとお伝えください」

 3番姫はそう言うと、リリスへ『出てはいけませんよ』とだけ伝えて扉から離れる。 しばらくすると、人が一人鋼鉄搭の中へと入ってきて扉が閉められる。 鍵がかかる音がすると、3番姫がその〔入ってきた人〕を迎えに行くために移動する。


 リリスも恐る恐る入ってきた人を見に行くと.....そこには何処かで見た踊り子姿の女性【ネイディア】が3番姫の前に立っていた。 ネイディアはリリスに気づくと少し声を上げ、申し訳なさそうに下を向いた。


「なんで...人さらいがここに来るんですかっ」

 リリスは近場にあったホウキを手に取り剣技の構えを作る。 そんなリリスの前に3番姫は立ちふさがり、両手を広げ、ジェスチャーで攻撃をしないように求めてきた。


「攻撃しないで、リリスさん」

 リリスの額に冷や汗が流れる。


「3番姫さんは知らないんですっ! この人が外で何をしているか!!」


「知ってますわ! 知った上で止めています、彼女も被害者です!!」

 被害者という言葉にリリスが動きを止める。 3番姫の目は友達を守ると決意したような目をしていた。 その目にリリスが気づき、ホウキを廊下に置いた。


「3番姫ちゃん。 このお嬢ちゃんには恨まれてもしょうがないの」


「ダメ、ダメよ! 誰もが褒めるやり方でなくとも、ネイディアは立派に自分の正義を貫いているじゃない! 私にできる事は少ないけれど、私の目の届く範囲では貴方を悪く言わせない!」

 3番姫の勢いにリリスは疑問を浮かべ、ネイディアは何度も何度も頷きながら嬉しそうにほほ笑んだ。 しかしその笑みは、リリスを攫った時の悲しそうな顔を何処か思わせる。


「.....説明お願いできますか?」








 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



【これは数年前の、とある一人の若き踊り子に起こった話】





「作品に飽きましたわ。 お父様、次の作品はいつですか?」


「うーむぅ。 完成された作品はそう易々とは....、しかしそうであるなぁ?」

 今から約5年前、王宮でそんな話があがった。


 始めは、いつも同じ作品ばかりで見飽きた....くらいのものだった。 しかし、不満を一度口にしてから、二人の姫や王様は欲望を理性で抑え込めなくなっていった。



 飽きは欲求へ変化し、未知なる物を追い求め始める。



 国中の街を回り、自信家な芸術家たちを集めて作品を見ても、それら作品が天賦に認められるのはごくわずか。 そんな不満を抱えた王様は、とある劇団の支配人に品評の為に招待され、いつものように劇を見に行くことになった。



崇敬(すうけい)なる芸術の王よ、あの娘がウチの劇団の期待の星です。 どうぞ、ごゆるりとご覧お楽しみ下さいませ....」

 支配人が指をさした先に居たのは....可憐な踊り子の少女。 演劇の情景を見事に錯覚させるような美しい舞は....王様と王様の天賦を【()()()()()】。


「あの娘が欲しい...。 なんとしても、なんとしても欲しいッ! あの美しい踊りを、狂うほどこの目に焼き付けたい! 我が天賦がそう在れと耳元で囁くのだ!」



 その数日後....少女は劇団から消えた。

 王宮の手の者に攫われた少女は鋼鉄搭へと入れられる事となった。 5年前の当時、まだ王宮には攫ってきた金の卵たちを収容する巨大な地下施設は存在せず、王宮内で情報をシャットアウトできて、それで尚堅牢な場所というと例の搭しか無かった為だ。


「入れ」


「痛い! 止めてッ引っ張らないで!!」

 少女の抵抗も意味なく、薄暗い鋼鉄搭の中へと入れられて扉が閉まる。 重々しい鍵のかかる音の後、後ろから恐る恐るといった感じの足音が聞こえてくる。


「誰ッ!?」


「.....あ、あの。 この搭に住んでいる者ですわ」


「こ、ここに....住んでる? 名前を聞いても?」


「ネイディア....私の名前はネイディアと申しますわ」

 5年前の3番姫は、目の前の踊り子な少女に向かってそう名乗った。


「ネイディア....?」


「えぇ貴方の名前は....?」

 ネイディアと呼ばれた3番姫が少女に対して問いかける


「わ、わたしは.........」



 こうして、踊り子の少女と落ちこぼれ姫の奇妙な共同生活が始まった。 最初の約半年は、少女がなんとかこの搭から外に出ようと頑張った。 しかし、この搭は非力な少女一人や二人の力で抜け出せるほどヤワには作られていなかった。


 次第に踊り子の少女は生活に順応していき、今のこの生活が日常へと変化していった。 落ちこぼれ姫が歌を歌い、それに合わせて踊り子な少女が踊る。 観客も居ない、二人だけの芸術がこの搭の中にはあった。


「子猫のワルツって引ける?」


「ふふふ、引くのは自信無いですけど....歌えはしますよ」


「じゃあ...一曲いきますか!」


「えぇ、はい、ワンツー!」

 歌声に合わせて少女が踊る。 

 拙いピアノの旋律と美しい歌声が、可憐な少女の踊りを彩る。



「楽しいねっ、ネイディア! 貴方と友達になれてよかった!」


「同感よ? 私の初めてのお友達」

 二人は笑いあい、子猫のワルツが再開された。



 しかしそんなある日....


「地下施設が出来ました。 今日からそこに移動してもらうわ?」

 二人の姫が衛兵を引き連れて鋼鉄搭の中へとやってきた。 連日のハードなレッスンのせいで、未だに疲れて眠りこける少女を庇うようにネイディアが前に立つ。


「おどきなさい3()()()。 芸術性のカケラも無い、貴方には興味が無いの。 同じ血が流れていることにすら嫌悪感を覚えるのよ」


「そうよそうよ、どきなさい落ちこぼれ!」

 嫌だ。 もう一人は嫌だ!



 初めてできた私の友達を奪わないで!!!

 ネイディアは自然と...両手を広げて守っていた。



「私からこれ以上奪わないで!!!」


「「これ以上、がっかりさせないで下さいな!!」」

 2人の姫に指示されて衛兵の拳が飛んでくるまで....。 ネイディアは、決して二人の姫の圧に屈することなく前に立ち続けていた!!


==☆次回予告☆==


78話閲覧お疲れさまでした。

次回はネイディア過去回想回になります。 過去もっと深掘りした方がいいとは思うんですが、主要キャラクター以外を深掘りするとテンポががががっ。 難しい塩梅ですね....。


どうして今の3番姫に名前が無いのか....そこにご注目を。


次回、79話......その孤独 再開を!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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