73話 その領主 絶対美眼につき!
「ボクの家族が信じるモノは芸術ってことだよぉ。 王宮は、無限に続く迷路のような美の探求にゴールを示してくれる、そういうチカラを持ってるんだよぉ」
美の探求とゴール? 芸術作品の美的価値を正確に見定められるってことでいいのか? ホワイトタウンで描けぬ民宣告された青年も似たような事を言っていた気がする。
「神の視覚...とかなんとかってホワイトタウンで聞いたな」
「知っていたみたいでボクは嬉しいよぉ。 そう呼ばれることもあるねぇ、王家アラブレイの王【アルテ・ルゥ・アラブレイ】は天賦の所有者なんだよぉ」
プラスがさらりとすげぇことを言った。
「天賦だって!?」
そのチカラは、俺と同じ....いや、勇者と同じ力。 そのチカラを、世界移動してきたわけでも無いこの世界の人間が持ってるって事か!?
「だっさ、クズ空は無知ね」
コレムが常識を問うように鼻で笑う。
「待て待て、普通はだって【才能】だろ? なんで天賦が?」
「生まれてくる子が、神に見初められると天賦を持ちて生れ落ちる。 どっかの学者さんの言葉だけど、実際本当に稀に、ごく稀に生まれてくるのも事実なんだよぉ」
「じゃ、じゃあ勇者召喚なんてそもそもやる意味ないんじゃ...」
その天賦持ちを勇者として持ち上げればいい話だろう。 巻き込まれた身としては、後でやっぱりそうすればよかったとか言われたらキレる自信がある。
「勇者様は天賦沢山持ってるからねぇ」
言っている意味が分からない??? 天賦は一つしか持ってないが...
「分かんないみたいだねぇ。 知らない?500年前に居たとされる2人の勇者のおとぎ話...その物語は勇者様が沢山の凄い力で魔王を倒すって話なんだけど...知らないのは凄く残念なことなんだよぉ」
その凄い力が天賦って事か。
火のない所に煙は立たぬ。 つまり脚色.......そのおとぎ話がすべて真実を語ってるとも思えないが、実際に500年前、この世界には召喚された勇者と言う存在が居て、俺たちとは違って多くの天賦を所有していた。 ....その力を使って、何かしらの功績を叩きだしたってとこだろうか?
それなら、この世界の住人の勇者への理解の速さも頷ける。
「本来なら...こんなに大勢が来るべき場所じゃないって事か」
夜空は誰にも聞こえない程小さな声で、自分を納得させるように呟いた。
そして話は戻り、何故王家や領主がそこまで信じ込まれているのか...という話に戻る。 結論から言うと、王家の一番トップ。 【アルテ・ルゥ・アラブレイ】は天賦【絶対美観】の持ち主。 彼は世界の視点から美を語る。
素人でも分かるが、芸術の探求と言うのは終わりの無いもの。 しかし、彼が首を縦に振れば、それは芸術家にとっての長い道のり...そのゴールを意味する。 誰にも示せないゴールを示せる彼に人は忠義を誓う。
世界に決定された完成した作品は、このアルテーラテルトにおいて絶対的な物なのだろう。 それがテーマ、この世界の光でもあり、闇の部分でもある。 それを俺は、ずっとこの目で見てきたはずだ。
「とりあえず、この国の品評の持つ意味は分かった。 でも、それとリリス...人が攫われることになんの関係があるんだ?」
「ボクがこの話で言いたいのは正にそこなんだよぉ。 キミは、芸術作品とかをよく見たりしちゃうかな?」
「いや、見ないな。 興味ないし、この国だってただの中継地点のハズだったんだ」
「聞き方が良くなかったねぇ。 同じ物を見続けていたら人はどうなるかな?」
プラスはクイズみたいな感じで聞いてくる。 面倒なので早く結論を言って欲しいが、オブラートに包まず言うとまた面倒そうだったので黙って考える。
「飽きるって話か?」
「そう、そうなんだよぉ。 で、王宮のアラブレイ家は考えたんだよぉ...どうすれば完成された作品を心行くまで楽しむことが出来るのかを」
嫌な予感がする。 直感で感じる嫌な感覚を。
「....続けろ」
「王家はねぇ、腕のいい芸術家を雇って作品を生み出させる。 その中で素晴らしい作品だけを抽出して、王家でそれを楽しむ....まぁ、ここまでは良いんだよぉ。 この国の芸術家にとっても、王家に見初められ、完成された作品を生み出せるチャンスがあるからねぇ」
世捨て人みたいに、常にキャンバスに向かい続ける人からしてみたら宝くじが当たったみたいな幸運だろう。 ゴールに近づくチャンスが、向こうの方からやってくるのだから。
プラスは話を続ける。
「でも、悲しくなっちゃうことに、王家はそれだけで満足しなかったんだよぉ。 王家や各地の領主は、才能がある一般人までも自分たちの欲求に付き合わせるようになったんだよぉ。 この数年間で凄く大勢の人が行方不明になっちゃったんだよ」
「は!? そんなくだらない理由の為にリリスは攫われたのか!?」
夜空が怒りでいきり立つ! コレムが再び夜空に拳骨を落とすか迷っていると...
「でもテーマってそんなもんだよぉ」
「そうだな、テーマなんてそんなもんだったな。 いつも幸せになるのは一部の人間で、その他大勢はその概念の犠牲になっていくんだ....。 そして上はそれを見て見ぬフリをする」
テーマ遂行という大義名分があるから尚タチが悪い。 せめて双方合意の上でやれと思ってしまう...だからこそ、王宮のやり方を批判するようなグループが生まれるのだろうけど。
夜空はため息をつきながら椅子に座った。 敵の規模が想像以上に大きく、流石の夜空もどう動けばいいのか分からず戸惑う。
はっきり言って、国を敵に回せば、膝にかじりつくことすら叶わず死ぬだけだ。 だからといって、リリスを見捨てるなんて選択肢は俺には無い。 アイツが俺のパートナーである限り、俺はアイツと無事に旅をしていく義務と責任がある。 カイルにもそう約束したのだから。
「んぁー、....終わったぁー?」
プラスに起こされたゴーストが寝ぼけた様子でやってきた。 そしてそのままゴーストは、夜空に右手を手を差し出した。
「....?」
「夜空...だったけなぁ。 お前さえよければ、ビュアインパクトはお前さんらを歓迎する準備が出来ているぞ。 王宮から仲間を取り返すなら、近道はここしかないぞー?」
夜空は悩む。 このグループの危険性への懸念が払拭できないからだ。
だから聞いてみる事にした
「最後にひとつ聞かせてくれ、このグループはこの国をどうしたいんだ?」
「....んぁー、救出と、芸術の解放。 誰かに縛られることも強制されることも無く、愛しい人と楽しく芸術出来る国を作るために、俺達はここに居るんだぁ」
夜空とコレムは顔を見合わせて....頷きあった後
その数分後、胸にアートチックなワシのワッペンが付けられた。
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【一方その頃、リリスは....】
縄でぐるぐる巻きにされて拘束されたリリスは、椅子に座らされて何故か音楽を聞かされていた。 リリスの周りには、首都内部で行われていた【芸術歌部門一般参加枠】の大会にて、優勝した大人や子供が同様に拘束されて音楽を聞かされていた。 その数、リリスを含めて5人。
大人たちは皆抵抗した傷が体に残っていた。
「んぅ、ぐぐぅっ!」
リリスは必至にもがいて縄を緩めようとするが、椅子にがっちりと固定された縄は簡単に緩むことは無かった。 部屋に流れ続ける音楽の演奏が終わりを迎えるころ、一人の身分の高そうな女性が入ってきた。 その女性は、先ほど開会式であいさつを行っていた姫様だった。
「ようこそ、未来の天才歌手様方...アラブレイ王宮へようこそ」
とても攫って拘束した相手にかける言葉ではない言葉をかける。 5人全員は姫様を恨むような目を浮かべながら、何故自分がここに連れてこられたか分からない顔をしていた。
(....やっぱり私覚えています。 姫様は3人いたはずなんですっ)
リリスは口には出さず、じっと観察するように姫様を見つめる。
「さて、貴方様方にはこれから、完成された作品を生み出すお仕事をしていただきたいと思っていますわ」
「「「「「!?」」」」」
「戸惑われるのも無理ありませんわ。 しかし、安心して下さいませ...私共王家が最後までみっちりとサポートさせて頂きますわよ」
驚きで一瞬全員の思考が停止したが、直ぐに驚きは怒りへ変わった! 攫われてきた大人の男性が、椅子ごと立ち上がり激昂する。
「ふ、ふざけんなッ!! 妻の元に帰せ!!」
「あらあら...野蛮だこと...」
姫様に怒鳴りつけた男が直ぐに衛兵に取り押さえられる。 そしてそのまま、溝に一発いい拳を貰って倒れる。 衛兵は『申し訳ありません』と姫様に頭を下げると、殴った男の首元を持ち上げて再び所定の位置へと座らせる。
「姫様になんて口を...平民風情が調子に乗るなよ」
「うぅぅ...」
そんな光景を見て、リリスは怒りながら懸命に縄を抜け出そうと努力するが....それに気づいた衛兵がリリスの座っていた椅子を蹴り飛ばして倒す!
「キャアッ!」
倒れたリリスに向かって、姫様は吐き捨てるように....
「拒否権なんてありませんわ...さぁ創作活動を始めましょう!」
そう言い放った。
「どうして、どうして王族なのに人の気持ちが分からないのですかっ!? こんな事をして、民の皆様が許すとは思えませんっ!!」
元王族であるリリスに思う所でもあったのか、リリスは倒れたまま部屋を去ろうとする姫様に向かって叫んだ。 しかし、姫様は大層不思議そうな顔をして...
「あら、あなたに王族の何が分かるというのです? それに、この国で芸術を極める事は幸せに直結するのです...王家から直々に才を見初められたというのに異を唱える方が愚かでは?」
「私は芸術になんて興味ありませんっ!」
姫様が衛兵に目線を送った。 衛兵の一人がスキル『アクアショット』を生成してリリスの胴体に発射した。 水鉄砲が当たり、リリスの服装と綺麗な銀髪が水に濡れた。 水圧でリリスが床に倒れる。
「あらあら、そんなもの...とは、この国を嘲笑うおつもりですか? もし、そうならば容赦は致しませんわ」
笑顔を浮かべながら、どこか殺意のようなものを姫様は出していた。
「いずれ貴方は人の前に立ち美しく歌う女性になります。 未来ある歌手の顔に傷をつけるのはいただけませんから....あまり面倒をおっしゃらないで下さいな」
そこまで姫様は言うと、衛兵を連れて部屋を後にしていった。 再び部屋には音楽が流れ始め、しばらくして...発声の講師陣が部屋に入ってきた。
そして音楽の流れる部屋から、防音性のある地下室に連れられて行き.......そこで乗り気ではない、歌のレッスンが半ば強制的に始めさせられた。
衛兵が近場で睨みつけている為、脱走も不可能な状態のままレッスンは続く。 そして、約3時間ほど歌わされた後、リリスたち5人はそれぞれのスイートルームのような部屋に連れて行かれた。 しかしその部屋は、内装こそ豪勢だが窓が一切なく。 あるのは、外に直接通じている空気を取り込むための小さな通気口ぐらいしか無かった。
「こんなの...ただの牢屋じゃないですかっ」
リリスは離れ離れになった夜空とコレムを思い出して、目にうっすらと涙を浮かべた。 自分の目頭に涙があることを知り、直ぐにそれを袖で拭いて意味も無く強がる。
が、本心は隠せない。
「夜空さんに会いたいです.....」
声が反響する部屋の中でリリスは静かに呟いた。
==☆次回予告☆==
73話の閲覧お疲れさまでした。
異世界モノの王道っちゃあ王道ですね。 ヒロイン拉致られちゃったどうしようってパターンです。 ここだけの話...書き直す前は、夜空が掴まる役になる予定でした。 アルテーラテルト内でテルテルと対面するような形で...っていう。
ですが、却下されました。
理由は、テルテルはそんな友達すぐ捨てるような真似しないだろってだけです。
さぁ、これから夜空はリリスを助け出す為に国内騒動に巻き込まれていきます。 (セブン国やスピールト編みたいに....) 分かってます、でも展開上必要なので...また国がらみの騒動かよとか言わないで....すいません。 次の編は、国がらみの騒動にはならないと思います。
次回、74話......その搭 歌声響いて!
是非次回もご朗読下さい!
ではでは~




