表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== アルテーラテルト編 == 【物語進行:夜空サイド】
79/238

72話 その少年 怒りに燃えて! 

 

(守る者が少ないからこそ、自分が大事だと思ったものは死んでも守る!)

 そんな意思を持った少年は今、自分には手が届かない困難に直面していた。 捕えられたリリスは剣を路地の端に捨てられ無防備な状態に....。


「セブンティア流『七式剣技 4番 パワーパウンド』!!」

 リリスが、赤いエフェクトのような物を自分の拳に纏わせ、その拳を捕まえてこようとしてくる男の横っ腹に叩き込んだ。 リリスが事前に発動していた『パワーアップ』の効果も相まって、男の脇腹の骨にヒビが入るほどの威力になっていた。 殴られた衝撃で男は宙を舞い、民家の壁に叩きつけられて失神する!



「はぁっ、はぁっ......っ、剣を使わない防衛手段位っ、ありますよっ!!」

 しかし、『パワーパウンド』とかいうスキルは相当消費が大きいのか、リリスは冷や汗を流す程疲労していた。 攫おうとしている一人が倒された男に駆け寄り、慣れた手つきでG3とラベルに書かれた回復ポーションを投げつける。 



「しっかりしろ、あんな10歳前後の子供に負けるなって!」


「ゲホッゲホッ、はぁっ、痛ェ。 助かった......。 あの女、想定以上に強いぞ、多分セブン国の階級持ちだ...警戒しろ!」

 回復ポーションが効いたのか、骨のヒビが治り立ち上がる。 しかし、痛みは即座には消えないようでまだ苦痛に歪んだ表情をしている。



 ふたたび四対一の状況に持ち込まれる。 



 しかし、先ほどは対応できていたリリスもスキルの影響で過度の疲労。 とても継戦できるようには見えない、連中の一人がリリスも麻痺させようとポーションを懐から取り出し、リリスに投げつけようと構える。


「しまっ!!!」

 疲労により、構えられた瓶にリリスの反応が一瞬遅れた。 その時、リリスの後方.....夜空とコレムが倒れていた辺りで何かが炸裂するような【パァン!!!】という音が路地に響いた。



「「「なんだッ!?」」」


「ッッッんんんん!!!!」

 夜空が言葉にならない言葉を発しながら脱力した体で空を舞う!!!

 ハイパーウェーブの反発効果で、倒れた夜空が飛んで宙を舞い、投げつけようとしたポーションごと男を自身の体と共に壁に叩きつけた!!!



 夜空の手のひらは反動で結構出血していた。 .....それもそのはず、自分の担当した敵への対応に全力一発、そしてリリスのピンチを助けるために、もう一発。 




 割れた麻痺ポーションが、夜空と敵にかかり麻痺を受ける。 その効果は夜空により効果が表れ、夜空はとうとう指先一本動かせなくなってしまった。 




「夜空さんっ!?」


「あのガキッ、スキルをそんな異次元な使い方しやがって!!」

 倒れた仲間を無視するようにリリスの捕獲に動き出す二人。 リリスは何故か、クスッと笑みを浮かべて捨てられた剣を素早く拾う。


「私たちの夜空さんは凄いんですっ!」


「やかましいッ!!」

 リリスと敵の男が鍔迫り合いの状態になる。



 鈍い金属音と鉄を打ち付けた火花が路地に鳴り響く。 もう一人の女が後ろから回り込もうとするが、リリスは左足に少し力を入れて石レンガの道を割る。 そしてそのまま、石レンガのカケラを左足で後ろに蹴り飛ばして女の肩に直撃させた。 女は痛みで悶えて倒れる。



「く、くそッ!! おいお前ら、ふざけんな寝てんじゃねぇっ、帰りたくはねぇのか!!!! 愛する者の場所に......帰りたくはねェのか!! 立て、今立たなきゃ後悔するぞ!!」

 とても襲ってる側とは思えないセリフを吐き捨てた。 その言葉に、一瞬だけリリスの剣に迷いが生じた。



 その時.....屋根から新手が数人降りてきた。 その中には踊り子のような風貌の女性が居た。 踊り子のような女性の額には大きな傷があった。 彼女は屋根から降りる際、配置などの指示を的確に出していた。 そのことから、リリスは剣士の本能的に彼女がこのグループのリーダー格だと把握する。



「随分と.....やられましたね」

 踊り子な彼女は周囲を見渡した後、背中に背負ったランスを手に取り構える。 ランス全体には、禍々しい絵の装飾が施されていた。


「そんな....あっ、新手っ...!?」


「非常に悪いとは思っています。 貴方にも、そして貴方のお友達にも」

 睨みつける夜空とコレムに謝罪をしてから頭を下げた。 そして続ける




「ここに居る全員を恨んでもらって構いませんわ。 えぇ構いませんとも.....それでも私は、私の後ろに控える皆の為に仕事をせねばなりませんから.......」

 リリスは危険を感じ、残り少ない体力で敵の剣を弾いて距離を取る。





 絶体絶命という言葉がよく似合う状況だ。





「はぁっ、はぁっ、貴方はなんなんですかっ?」



()()()()()と、そう呼ばれていますわ。 ごめんなさい、才あるお嬢ちゃん?」

 リリスの呼びかけに、そう答えた彼女は()()()『進化型、ヘイスト』を付与.....移動速度を上昇させる。 そしてそのまま突撃し、刃先をリリスのガードした青脚光の鍔に叩きつけ.....リリスを10m近く後方へと吹き飛ばした!!





 剣が手元を離れ、リリスは石レンガを転がりながら気絶した。





「「...........!!!!!」」

 夜空とコレムが必死に駆けつけようとするが、麻痺で声も出せず、動けもしない。 




((リリスッ....!!!))

 伸ばそうとした手は伸びず、かけようとした声は届かず。

 人さらいの連中は全員辛そうな顔をしながらリリスを捕えて何処かに攫って行った。 コレムが苦し紛れにニトロレーザーを撃とうとするが、夜空が目線で『リリスに当たるから止めろ』と送り。 それが届いたのかコレムは悔しそうにしながらスキルをキャンセルした。





 静かになった路地に少女と少年だけが身動き取れずに転がっていた。

 麻痺は足の先から徐々に解除されていき.......やっと声を出せ、動けるようになったころには、既に攫われてから2時間が経過していて追跡は出来なかった。





「うわあああああああんっ.......」

 コレムが年相応に泣き叫ぶ。 夜空は、いつもは生意気なコレムがここまで泣くとは思っていなかったと、正直びっくいしながら現場に残された蒼脚光の剣を鞘に戻す。



 剣の重さが、カイルの言葉を想起させる。



「まだだ、まだ.....俺は諦めねぇ!」

 俺はずっと何処かでリリスに助けられてきた。 一人じゃ辛く寂しい旅の道のりを、アイツは元気づけるように照らしてくれた。 人さらいが今更なんだというのだ、俺はあいつのパートナーだ....今動かなくていつ動くんだ!!!



「コレム、涙をしまって立て。 迷子を回収しに行くぞ」

 コレムは一瞬戸惑うが、覚悟を決めた夜空の目を見て、初めて一緒に野宿した湖での夜の出来事を思い出した。 『最低だけど最低じゃ無い』、『私たちの夜空さんは凄いんですっ!』というリリスの言葉がフラッシュバックした。



 涙を抑えるように堪えてコレムは何度も頷いた。

 夜空とコレムは立ち上がり、リリスが連れ去られた方角に走り出そうとした。 その時、屋根の上からくたびれたコートを着込んだオッサンが夜空達の目の前に降り立った。 コートの胸には【アートチックなワシ】のワッペンが付けられていた。


 武器のようなものは何も持っておらず、酒場で酔いつぶれている仕事帰りのオッサンという言い表し方が一番しっくりくる感じの人。 そんなオッサンは細目で現場の様子を確認した後



「んぁー、間に合わなかったか」

 夜空が聞こえない程、小さな声でそう呟いた。











「お前誰だよ」


「んぁー、敵意ムンムンだぁ。 気持ちは分かるが抑えろ抑えろ、なぁ抑えろ....」

 小さい子をあやすようなジェスチャーを取りながら、こっちに向けて歩いてくる。 夜空は臨戦態勢を取り、オッサンに対して相対する。


「アイツらの仲間なのか!?」


「違う違う、もし仲間なら攫った場所に戻ったりしないでしょ」

 煙草に()()()()()使()()()火をつけながら臨戦態勢の夜空の手を下げさせる。 夜空は何か恐れのようなものを本能で悟り、麻痺がかけられ時より自分の体が動かなくなる。


「.......」


「んぁー。 お前デキるなぁ、瞬時に悟ったろ、おじさんとの力量の差」


「コレム、絶対手を出すな。 このオッサンは勝てない」

 コレムが困惑するが無理もない。 初見じゃ俺も分からなかっただろう、だけど俺は知っている.....この世界の強者が放つ独特の異質さを。 俺はイスカルからその事を学んだのだ。




「見たとこ仲間が攫われたってトコだろぉ? 攫われたのは、あの歌大会の優勝者の銀髪嬢ちゃんって所か」


「知ってんのか!?」


「んぁー、いや? キュレーター共に目を付けられてたのを知ってるだけだ」

 キュレーター共に目をつけられた? リリスが、なんで?



 ていうかキュレーターってなんだよ。




 リリスは他国の貴族だからか? だけどそれなら別にリリスを狙う必要性は無い、他にも買い物で無防備になってる貴族の子供はいくらでもいる筈だ。 だって今は、芸術大祭の真っ只中なのだから。



「お前一体.....」


「自己紹介はひつよーだなぁー。 俺の名はゴースト、ビュアインパクトという芸術運動を行っているグループに入ってる一般人なオッサンだ」



 オッサンが目線を飛ばして夜空にも同様に自己紹介を求めてきた。



「...名乗られて尚名乗らないのはダメだな。 俺の名は夜空、そしてこっちの小さいのが」


「小さい言うなクズ空ッ! アタシはコレムよ、舐めたら痛い目みせるから!」

 コレムは威勢よく叫ぶ。 オッサンは甲高い声が苦手なのか少し顔を歪ませた。


「んぁー、面倒だしそんな事しない。 お前たち、どう動けばいいのか分からないならおじさんについてきなぁ。 まずは、自分たちに何が起こったのか、それを知らなきゃならねぇよ」





 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


 夜空達は言われるがままオッサンの後をついて行く。 人混みを抜け、裏路地を抜けて地下水道に入る。 地下水道の入り口の方は、カモフラージュの為か明かりがついていなかったが、しばらく進むとそれなりに明かりが灯った場所に出た。


 そこにはオッサンと同じようなローブを着込んだ歳まばらの男女、約15名以上が作戦会議などを行っていた。 作戦会議用のボードに張り出された地図には、この街全体の見取り図と王宮への侵入経路....秘密の隠し通路などの位置までもが明確に示されていた。


 するとゴーストの元へ、夜空と同い年位の女子がやってきた。


「ゴーストお疲れさまだよぉ。 ....それで任務は成功したのかい?」

 ゴーストはくたびれたように手を横に振る。 話しかけてきた女子は、いつもの事なのか残念そうな顔をしながら夜空達へ向き直る。


「ごめんねぇ。 君達にも悪い事を聞いたかな」

女の子は同情しながら夜空に手を伸ばすが、夜空は警戒するようにその手を跳ね除け、オッサンに少しだけ詰め寄った。 女の子は若干不服そうな顔をしてた。


「....それよりもオッサン、置かれてる状況って何の話だ」

 しかし問いかけに返事は無く。 オッサンはただ一言『んぁ、プラス任せた』と言って小部屋に入っていき...そのまま眠りについてしまった。


「いつもあんな感じなんだよぉ? だから、悪いようには思わないで欲しいかな...ボクが代わりに話させてもらうんだよぉ」

 プラスと呼ばれた女の子は怒ってないのか、無邪気に笑った。





「じゃあ、何から聞きたいのかな?」


「俺たちの仲間は何処にいる。 場所を教えろ」


「うーん、教えてもいいんだよぉ? でも、殴りこむとかは()めて貰いたいかな」

 それは場所次第だな。 最悪、位置さえ分かれば遠方からコレム爆撃でも構わないしな。 ニトロレーザーは大砲として使えるのはもう知ってる。


「いいから言え」

 リリスが攫われたことであからさまに機嫌が悪くなった夜空が、周りに当たり散らすように口調強めに問い詰める。 いつもなら、そんな夜空を抑制するのはリリスの役目だが今は居ない。


「気が立っているねぇ。 ボク悲しくなっちゃうんだよ」


「うるせぇ! いいからさっさと...ッ!!」

 苛立ちで、プラスの胸倉へ掴みかかろうとした夜空の頭へ拳骨が落とされる。 拳骨を落としたコレムは、夜空を少し睨みつけながら


「クズ空ッ! ...頭冷やして、怒る相手が違うでしょ情けない」


「....悪い」

 頭が冷えた夜空が勢いを無くすように謝罪した。


「良いんだよぉ。 ボクもママが居なくなって悲しかった時に、同じように誰かに当たってしまったことがあったからねぇ。 気持ちはすっごく分かるんだよ」


「.......お前、母親を」


「気を滅入らせたかったわけじゃぁないんだよぉ。 でも、ボクの昔話を知れば、少しは共感意識みたいなの持てたりしないかい?」

 プラスなりの気遣いだった。 ここに居る連中は、ほとんどが身内とかを攫われていたりするんだろうか?


「....攫ったのは、王宮か?」


「あれ? ゴーストから聞いてたんだねぇ」

 聞いては居ないが、なんとなくそんな気がした。 攫われるとき、あの人さらいの女が『才あるお嬢ちゃん』とか言ってたしな。 今までの情報から、王宮が関与している気がしたってだけだ。


「でも分からねぇな。 なんで国が無実の人を攫う? そんなの、国への信頼って奴が揺らぎかねない程の事件だろ」


「....この国の、アルテーラテルトの全体テーマを知っているねぇ? 芸術...芸術なんだよ、芸術の追及こそが....ボクの()()()()()だったんだよぉ」

 まるで自分はそう願っていないような言い方をしている。 まぁ、国に自分の母親を攫われても尚、芸術を追求しようする方がイカレてるのかも知れないけど。


「待て、話が見えねぇ。 何が言いたい」


「ボクの家族が信じるモノは芸術ってことだよぉ。 王宮は、無限に続く迷路のような美の探求にゴールを示してくれる、そういうチカラを持ってるんだよぉ」

 美の探求とゴール? 芸術作品の美的価値を正確に見定められるってことでいいのか? ホワイトタウンで描けぬ民宣告された青年も似たような事を言っていた気がする。


==☆次回予告☆==


72話の閲覧お疲れさまでした。

次回は今回ラストに出てきた『美の追求、ゴール』という言葉の答えが分かると思います。 矛盾は生まれないように設定を組んでいる筈.....ハズなので、多分『あーなるほどね』という感じになってくれると信じたいと思います。



次回、73話......その領主 絶対美眼につき!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ