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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== アルテーラテルト編 == 【物語進行:夜空サイド】
72/238

65話 その少女 種族チートにつき!

 

 暇になった夜空は、昼飯を食べるためにそこら辺の定食屋に足を踏み入れた。 中に入り、席に座りメニューの中から一番安い定食を注文する。


 しばらくすると、安い定食ですって感じの定食が出てきてそれを平らげる。 特別美味しい訳でも無く、だからと言ってマズイ訳でも無く。 ザ、平凡定食って感じの定食。


「近所のスーパーの惣菜コーナーに並んでる弁当思い出したな」

調理が面倒なとき.....夕方ごろに割引がかかった弁当に何度も助けられたものだ。 あの美味しくも無く不味くも無く、冷めてしっとりとしたコロッケですら懐かしく感じてしまうのは何故なのか。


 夜空は食い終わった後、食後のゆったりとした時間を少しだけ楽しんでいると....店の壁に貼られた一枚の紙が目に入ってきた。


【近々首都アラブレイにて、数年ぶりに堂々開催ッ! 世界の芸術祭典...芸術大祭に是非お越しあれ! 芸術家たちには、大領主様からの品評の権利が与えられるチャンスがございます!】


 品評(ひんぴょう)? 領主自らが作品を評価するのか?

 でも、芸術作品の評価とかって大勢の人数で無いと意味が無いんじゃ...?



「お客さん、食い終わったんならとっとと出てってもらえやせんか? 洗い物、出来ないんですわ」

なんて不愛想な店主だろうか。 .....カフェじゃ無いんだし長く居座るつもりも無かったが、食後に少しのんびりするくらいは許せよ。


「え、あ、はい。 すいません?」

 夜空は疑問を残しつつ定食屋を出る。 リリスから大きな祭りがあることは知ってたが、それが近々開催か.....。 まぁ、大丈夫か。


 夜空は、一瞬オニキス帝国の事を考えたがよくよく杞憂だと知る。

 赤印が居る南大陸に東大陸のお偉方が来るわけねぇ、一般人ぐらいだったらまだあり得るが、少なくともあの宰相は死んでも来ないと思う。 来るぐらいだったら国内の赤印の立場改善やってるだろ。



「へぇ、品評ね...」

 夜空はベンチのある公園に座りながら、ボケーっと暇つぶしがてらさっきの事について考えていた。 穏やかな公園には、いろんな場所でスケッチを行う人たちが居る。 



 芸術が分からない夜空は、風景なんて書いて何が楽しいのか理解不能だ。 



 芸術家たちには失礼だが、写真で良くね?と思ってしまう。

 誰にも迷惑なんてかけてないし、かけられてもいないのでわざわざ口に出すこともしないが....。 というか、芸術の国の絵の街にまで来てそんな事を言い放ったら街から叩き出されかねない。



 しばらくベンチに座ってぼんやりしていると、遠くから子供が走ってきて転ぶ。 それから少しして、後ろから走ってきたガキ大将のような子供数人が、転んだ子供を囲んでイジメ始める。 蹴ったり殴ったり、助けに行こうとも一瞬考えたが子供の喧嘩にやたらに介入するのもと思い、夜空は再びその場でぼんやりし始める。



 イジメの内容は両親の立場に関してっぽかった。 あくまで判断材料は、子供たちの会話だけだが『お前の父ちゃん()()()()じゃん!』とか『ハハハ、だっせー! お前も絵かけねぇんだろ、なんとか言えよ~!』とか言われていた。 その内、いじめられてた方がキレて反撃が始まる。 勇敢なのか、その子供は一歩も引くことなく複数人相手に立ち向かっていく。



「はぁ、全くのんびりもできない。 スキル『スパイク』.....ほいっとな飛んでけ~」

 夜空は、『スパイク』と呼ばれるまきびしの生成量をコントロールして指先に一個だけ生成し、それをイジメっ子側の一人のケツに向かって投げつけた。


【ブスリ】


 とげが少しだけ子供のケツに刺さり『痛てーッ』と声を張り上げる。 スパイクが刺さった子が、驚きでしりもちをつく前に、ケツに刺さったスパイクをスキル解除して消し、証拠を隠滅する。 昨日、宿屋の自室でこっそり練習したかいがあったなと自身の成長を内心喜ぶ夜空。 


 イジメられていた子は、突然騒ぎ出したガキ大将のスキをついて逃げ出した。 逃げた子を追うようにガキ大将達も追いかけていった。


(あんな子供の喧嘩見るの久しぶりだな)

 日本に居た頃、公園でごくたまに見かけてた位だ。 

 ああいう連中は、将来友達同士になったりするんだよな。



「でもまぁ、この『スパイク』はあくまでも設置型のトラップだな。 投擲武器として扱うには射出速度がまるで足らん、殺傷能力が無いのは致命的だ。 魔力酒でもあれば変わるんだろうけど.....正直、あのスタミナ消費のクソさとこのスキルは相性悪いだろ」

 ハイパーウェーブといい、スパイクといい。 どうして異世界セオリーの、ファイアーボールとか、アイスボールとか、サンダー!みたいなの俺に来ないのか謎だ。 来たところで天賦エラーによる反動のせいでまともに使えないとは思うけど。 



 .....そう改めて考えるとクソだなこの天賦。

 知ってたし、もう落ち込まないけど。



 宿に戻る途中、次から次にモデルになってくれとせがまれるリリスを回収した事以外は、特段面白い事も無く、俺達は無事に宿へとたどり着いた。


「夜空さん、あ、ありがとうございますっ...」

 走って逃げて息を切らした二人は、体力を回復させながら夜空の部屋のベッドに座り込む。 ....何故か狭い方の俺の部屋に来るの勘弁して欲しい。 何度か、女子部屋の方でやろうと打診したのだがロリコンを疑われたのでやむなく承諾したのだ。


「なんで断らねぇのお前、最後の奴なんか裸婦画描こうとしてたぞ....。 流石にお前の歳で裸婦画はダメだろ、倫理的に色々....」


「らっ、裸婦画は流石に無いですけど....なんか皆さんからの要求が断りづらくて....。 やっぱりテーマだからなんですかね、凄く一生懸命です」

 そりゃそうでしょうよ。


「じゃあ逆に、リリスはもし俺が今から剣を教えてくれって言ったらどういう反応する?」


「教えますよ、えぇ教えますっ! 何処で教えましょうか、今教えましょうか!?」

 リリスが興奮気味に顔を近づけてくる。 こんなことなら例に出さなきゃ良かった、個室でここまで密着されると汗が止まらん、この世界には便利な冷房なんて物は無いんだぞ!?


「うッ、うぜぇ、うぜぇッ!! 顔を近づけてくるなッ、ただでさえ南大陸は暑いんだから勘弁してくれ!! おい離れろ!!!!」

 夜空はリリスの肩を掴んで自分から引き離す。 教えを断られた鬼教官が、少し頬を膨らませながら残念そうにこちらを見ているが知ったことでは無い、俺だって命は惜しい。



「....コレムは?」


「そういえば見てませんね? 探しに行きましょうっ!」


「いいよ、外暑いし。 ......おい、なんでまた近づいてくるんだ? 待て待て止めろ、無言で体を密着させてくんなッ、暑い暑い暑苦しいッ!!」


「い、き、ま、す、よ、ね!?」


「分かったから、行くから行くからッ....」

 諦めたように項垂れた夜空からリリスは離れる。 夜空は、バッグの中から先日村で買った2枚セットのハンカチの一枚を使って汗を拭きとる。 汗を拭いたハンカチを宿の机の上に広げて乾かしておく。 


「洗ったらどうです?」


「洗濯苦手だけど....やるか」

 この世界の洗濯は当然手洗いなのだが、俺は家電製品に甘やかされた日本人....手洗いがいつまで立っても慣れないのだ。 村とか町とかの婦人は何であんなに洗濯が上手いんだと思ってしまう。


 ()()に限らず、()()とか()()とかでも同じ事が言えるけど.....そういう()()()()()()()()()()()ようなスキルがあったりするんだろうか? もしあるなら、それはさぞ主婦に人気だろう。




 あるわけ無いか。

 そんな馬鹿馬鹿しいスキル。



 リリスに手伝ってもらいながら洗濯を終えた夜空は再び外出する。 目的地は、ホワイトタウン内に唯一存在する冒険者ギルド。 その場所を看板や人に聞きながら向かい始める。 おうちキャンバスを見ながら歩き、夜空とリリスは冒険者ギルドへと到着した。 なんだかんだで冒険者ギルドに来るのもこれで二度目だと過去を思い返す。 一回目とは....大庭先生やテルテルを裏切った時の、抜群に冴えた俺の機転による名誉な一回の事だ。



 リリスやコレムに話したら大バッシングを受けそうではある。



「行くか」

 夜空は一緒にやってきたリリスに確認を取り、木のドアを押して中に入る。


「ですね」

 冒険者は、この世界の荒くれ者たちというイメージ。 鍛え上げられた肉体で金を稼ぎ、その日うちに酒に全てを投げて楽しく過ごす、夜空の中には確かにそういうイメージがあった。





 そう




 決して、子供に腕相撲で全滅させられるような男達では無い筈なのだ。




「うぉぉぉっ、コレム嬢ちゃんこれで15人抜きだァァァ!!!」


「クソ強いッ! このままじゃ賭け金総取りされちまうッ、おい誰かロビンソンを連れてこい!! あの、ホワイトタウン腕相撲ナンバーワンなら行けるぜ!!」


「ロビンソンが居ればあのガキを倒せる! 出てこいロビンソン」

 中に入った冒険者ギルドでは、冒険者たちが軽い騒ぎを起こしていた。 事態を把握しようとコレムに近づいた時、後ろから巨躯な男が夜空を強引にどかして前に出る。 巨躯な男は顔面に鉄仮面をつけており、いかにも荒くれ冒険者みたいな感じだった。


 鉄仮面には申し訳程度の芸術要素があった。


 夜空は、アニメで見るようなその容姿に少し感動した。


「テメェか? ギルドの男どもを倒したのは...やるな?」


「えぇそうよ! 全員雑魚だった、雑魚過ぎて話にならないわ!」

 コレムが調子乗ったようにイキる。 竜人族なんだから、そりゃパワーで勝負すれば勝つに決まってんだろというツッコミは胸の奥底にしまう。


「と、止めましょうよっ! コレムちゃん危ないですよ!?」

 リリスが心配そうに袖を引っ張ってくるが....


「いや、止めなくていい。 決して止めんなよ、ここはコレムの出番だ」

 夜空はリリスに念を押す。 


「「「ウオーッ! 行けロビンソンッ、分からせてやれ!!」」」


「任せろ兄弟!! オイガキんちょ、おしめの準備は出来たかァ!?」

 夜空ですらビビりそうな冒険者の迫力。 しかし、コレムは一切怯むことなく、逆にロビンソンとかいう巨躯な男に指を指して宣言する。


「いいわ、倒してあげる! 貴方は少し骨がありそうね!!」

 骨がありそうね、じゃないが....まぁ勝ってくれるならなんでもいいや。

 ...望むは賞金、賞金、賞金、賞金、賞金。 ついでに、賞金をもぎ取ってくれるとありがたいので、賞金をもぎ取れ。


「威勢のいいガキだ、行くぞォォォォ!!」


 コレムとロビンソンは腕相撲を開始する。 始め、コレムは少し押されていたが徐々に巻き返す....ロビンソンも必死に抵抗するが竜人族の力にやむなく....。


 コレムがロビンソンの手を叩きつけた!


「クッソォォォ!!!!!」


「ふんっ、口ほどにも無いわっ!」

 コレムが自慢げに赤いロングヘアーを手で軽くかき上げた。


「しょ、勝者コレム嬢ちゃん!!!!」

 冒険者ギルドの至る所から拍手喝采がコレムに向けられる中、進行役がコレムに、勝負の賭け金であった金を全額総取りで賞金として手渡そうとして。


 それを何故か夜空が代わりに受け取った。


「え?」

 進行役が困惑する。


「え?」

 コレムが困惑する。


「え?」

 夜空が困惑する。



 ...会場が敵を見るような目で夜空を睨みつける中



「いやっ、待ちなさいよクズ空ッ! そのお金はアタシが頑張って!!」


「うるせぇッ! 旅に同行するのは許可したが、金銭面は一人分多くなってんだよッ、いいからこの金を旅費用として俺によこせ!!! ついでにもっと腕相撲して来い!」


「だったらアンタが腕相撲で勝負しなさいよ!!」


「黙れ種族チートが!!!」

 24歳(自称6歳)と夜空は喧嘩を始めた。 大人げない夜空の様子に、周囲の目が敵を見る目からクズを見る目にシフトチェンジしていた。 



「も、もー....。 は、恥ずかしいですよぉっ!」

 身内の恥を責めるようにリリスが叫んだ。





 その後、喧嘩両成敗という感じでリリスから説教を受けた俺達は、冒険者ギルド中の笑い者になった。 あまり恥ずかしさにコレムと夜空が逃げ出し、コレムの選んだ依頼はまた後日達成するという形で終了となった。


「何も逃げなくてもいいじゃないですかっ! 冒険者ギルドに入るの(わたくし)だって初めてだったんですよ!? ....沢山失敗して受付の方に愛想笑いを浮かべられてしまいました」

 どうやら受理するまでにひと悶着あったらしい。 リリスの疲れ果てた顔を見て、夜空は少し申し訳なく思った。


「まぁまぁ、夕飯のおかず一品好きなの頼んでいいから....」


「...2品頼んでいいなら許します」

 リリスはちゃっかりしてるな。


 しかし思わぬ臨時収入だ。 ....流石に全部は心が痛むのである程度は返すとしても、この金で俺の着替えなり、コレムの着替えなりを手に入れておきたい。 今後旅をしていく上で、服が今着ているカーディガンとパジャマだけでは心もと無さ過ぎる。


「はぁ....本当にクズ空」


「う、うるさいな...必要なモン買ったら余剰分はちゃんと返すよ。 そんな目で俺を見るなよ、別に俺は守銭奴じゃないから....」

 ジト目になり疑うコレムを宥める夜空。 


嘘空(うそぞら)


「あだ名がヒデェな、リリスもそう思わない?」


「自業自得ですよ、全くっ!」

 そんな弱気になっている夜空を見ながら、リリスはぷりぷりと可愛く頬を膨らませて怒っていた。 そんなリリスの表情を見て、コレムは少し楽しそうに笑った。




 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


【その夜.....】


 夜空は暑い中、宿でサービス提供されるアイス枕を上手く使ってようやく浅い眠りに入った。 時刻はちょうど深夜を回り、時計のカチコチという針の音だけが静寂の中に響く。 


 そんな時間帯、夜空の部屋の扉が音を立てずに開いた。

 部屋に小さい人影が侵入してきて、夜空の荷物を静かに物色する。 ....小さい人影は、新品のハンカチをバックから取り出すが、どうやらそれはお目当ての物では無かったらしく、ハンカチを静かにバックの元あった場所へと戻した。



 かすかな物音に夜空が寝苦しそうに寝返りを打ち、その物音に小さな人影は少し驚くが.....寝ていることが分かると部屋の中を少しだけ探し始める。


 すると机の上に、昼間洗濯し乾かすために広げていたハンカチを小さな人影は見つけた。 そのハンカチを手に取り、少し匂いを嗅いだ後....それが気に入ったのか少し笑顔でそれを持ち出していった。 


 小さな人影は、夜空が二人用で借りたツインの部屋に戻る。 隣では、アイス枕を2つ借りたリリスが穏やかな寝息を立てて休んでいた。


 ....()()()は、夜空の匂いが付いたハンカチをお腹の辺りに置きながら眠りについた。 寝苦しい時、それを少しだけ胸元に寄せながら寝る。 夜空の匂いが心地よいのか、夜空の部屋に行く前の寝苦しさが嘘のように夢の世界へと出発した。


==☆次回予告☆==


65話の閲覧お疲れさまでした。


最後のコレム、結構ヤバいですね。 作者の性癖とかそういうのでは無いです、結構重要な?伏線だったり....しなかったり? 


今回のプチ話は、洗濯や掃除などに関連するスキルです。


作中で、夜空は無いと決めつけ笑ってましたが、正確には存在します。 スキル手引き~主婦のお上手シリーズ~と呼ばれる手引書のシリーズです。 『料理上手』、『掃除上手』、『洗濯上手』、『子守歌がお上手ね!』、『世間話がお上手に!』....などなど。 


覚えれば、プロほどでは無いですが生活に困らない程には上達します。 しかし、本来のやり方...掃除の場合は、掃除の基礎を知らないとスキルの効果が上手く上乗せされません。 結局、始めは努力ありきという事です。 知っていれば、掃除下手でも掃除上手になれます。


本屋でお手頃価格で販売してる手引書です。

(※夜空は買いません、なんのための設定だよコレ)



次回、66話......さあ少年 お金を稼いで!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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