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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== スピールト編 == 【物語進行:疾風サイド】
61/238

56話 その弾丸 国を貫いて!

 

 フィクシスとメイリスは約3分もの間、最上階の廊下という狭い空間で激しい戦闘を続けていた。 メイリスの周辺の壁や床には亀裂が走り、フィクシスの後方の壁にはいくつもの弾痕が残っていた。


 両者とも少しずつ傷を負い始めているが致命傷には至っていない。


【ドンッ!!!】

 マズルフラッシュと共に銃口から弾丸が放たれる。

 フィクシスは、メイリスが頭を狙い放った弾丸をギリギリで避けた。 その直後、メイリスの前から突如として姿をくらました。


「消えた!? まさか『ブリンク』ッ!?」

 その言葉よりも早く、フィクシスはメイリスの後方の天井付近から踏みつけるような体制で落下してきた。 メイリスはとっさに攻撃をガードするが、体格差と落下のコンボで仰け反らされる。


「うぐぐッ!!」

 メイリスは体制を戻そうと粘るが...


「砕けよ」

 フィクシスは自身に付与していた『覚醒型、シャドーダウン』を解除して『シャドーレーザー』を放つ。 メイリスはガードしようとするが、崩れた体制ではガードができない!!



 しかしメイリスは諦めず、転倒覚悟でさらに後方に移動し鼻に掠るほどのすれすれで攻撃を回避した後、通常弾を一発天井に向けて放つ。


 距離をつめてこようとしたフィクシスの足元に跳弾が着弾する。



「...実に見事...だがもう終いよ」


「ハァ、ハァ....」

 この数分間の工房の間に、既に10回以上『火種』を使用しているメイリスは体力の限界が着実に近づいていた。 頬を流れる冷や汗が疲労を顕著に感じさせる。


「ど、どうして魔族がこんな所に?」


「時間稼ぎは()()に不要ゆえ」

 フィクシスは『シャドーレーザー』を無慈悲に放つ。 メイリスは腹にシャドーレーザーを掠らせながら、無人である王子に部屋に逃げるように転がり込む。


 すぐさま高速リロードをし、マスケット銃でフィクシスのヘッドラインに合わせて待機する。 入り口から入ってきた瞬間にフィクシスを狙えるように。



 ....しかし5分待っても、10分待ってもフィクシスが部屋に入ってくることは無かった。 それどころか廊下に気配すら感じない。



 まさかッ!!


 嫌な予感がして部屋を飛び出したメイリス。 そんなメイリスを待つ男はもうそこには居なかった。 元よりフィクシスは最後まで戦う気なんて無かったのだ。


「ブリンクで逃げられた!! クソッ!!!」


【バサッ!!!】

 怒れるメイリスは、外から聞こえてくる大きな羽音に気づく。 すぐさま王子の部屋のバルコニーに飛び出し銃を構える。 外には、何処からやってきたのか小型の飛竜が大空を舞っており、その背にはフィクシスが乗っていた。


「せめて設計図だけは破壊する!」

 メイリスは飛竜が城からなるべく離れぬうちに発砲をと思い立ち。 すぐさまリロード、込める弾は青色の高速弾。


 飛び立ち城から離れ行く飛竜...狙うはフィクシス!!!

 メイリスは一呼吸入れてから目を見開き!



 トリガーを引き抜いた!!

 2回の小爆発の後に銃口から弾き飛ばされた弾丸は空を駆けながら加速し、遥か先に居るフィクシスの体を.....




 貫いた!!!!!




「...ま、まさか....狙ってこようとは、この体はもう持たぬ。 酒造の守り...手...侮っていた...」

 フィクシスは薄れゆく意識の中で、自身が乗っていた飛竜の脳の辺りに強く触れ。


 小さく言葉を紡ぐ。


「スキル『覚醒型、マインドコンバーション』」

 言葉の直後、スキルが発動され黒い闇のオーラがドラゴンを包む。 黒いオーラはまるで意識を移動させるように動くと、貴族の体に元の人格が戻ってくる。


 それを確認するや否や、フィクシスの意識が入っていると思わしきドラゴンが貴族の男を背から振り落とす。 貴族の男が、落下の最中に手放した設計図だけを口ではさんで奪い取りそのまま北の方角へと去って行った。






 貴族の男は、訳も分からず悲鳴を上げながら池の水面に叩きつけられて死んだ。

 飛び去って行く飛竜がメイリスの射程圏外に行くまで、メイリスは諦めずに何度も何度も発砲を続けていた。






「...フィクシスとやらは死んだのか? いや、最後の不可解な行動がどうも引っかかる....それにあのような男が、あんなマヌケな声を上げてくたばるとは思えん。 妙にいけ好かない奴だ」

 メイリスは、ため息をつきながら煙草を取り出し火をつける。


「まぁいい、当初の目的を達するだけだ」

 メイリスは下の階にいる兵士を迎えに行ってから、再び階段を上り最後の部屋の前へとたどり着いた。 中からは話し声が聞こえ、まだ王子たちがいる気配がした。



 ....今から起こることを想像すると正直憂鬱だ。

 メイリスは覚悟を決めて部屋の扉を部下に開かせた。



 しかし、メイリスたちを待っていたのは歓迎の鉛玉では無く。 そこにひっそり佇む婆さんと、やつれた顔でベッドに寝ている王女と思わしき女性。 そして、その隣で泣きつかれた様子で眠る王子・・・。



 ある意味感心するほどの覚悟の決まりっぷりに少し驚いた。



「スピールトの方々ですね」

 お婆さんは老人らしいか細い声で呟いた。


「何故、抵抗しない」


「抵抗なさってももう無意味でしょうから」

 王子はともかく婆さんの方は政治を理解している様子だった。 もう分かっているのだろう、この状況では王族根絶やしすらあり得ると。


「いくつか質問したい」

 メイリスは銃口を婆さんに向けながら威圧的になる。


「えぇ」


「何故スピールトを襲った。 戦闘中にお前らの国の兵士がボヤいていたぞ、反対側からも攻め込まれているのになんでこのタイミングで攻めてきたんだってな。 ....上層部は一体何を考えてこのタイミングでスピールトを襲った?」


「???」

 その問いに対し、婆さんは本当に何も分からないような顔を浮かべた。 メイリスは『とぼけるな!』と、言わんばかりに掴みかかろうとする兵士を抑える。


「まさか、何も聞いていないのか?」


「申し訳ございません。 軍を束ねる3人の公爵家の男どもからはそのような襲撃作戦の概要はおろか、そもそもこの数日の間、たった一人を除き行方が知れないのです」 



 もしその一人がフィクシスなのだとするなら....他の貴族は...もう。

 そして指揮系統の崩壊、軍隊基盤の瓦解。 なるほど、話が見えてきたぞ。


「婆さん、王子を起こせ」


「かしこまりました」

 婆さんは優しい手つきで王子を揺さぶり起こす。 しばらくして事態を把握しきれていない王子が目を開ける。


「お前が王子だな」


「いかにも、俺が王子だ! .....いや、誰だ?」


「スピールト軍最高司令官、メイリス・ラン・ニーデルだ。 貴殿らヘルカの王族に、今回の一件の始末をつけてもらうため参上した」


「始末? ...いや、やったのは軍の方だぞ?」

 何処まで頭が回らないんだこの王子は。


「軍といえども、お前の直下であることには変わりないだろう。 部下の失態は、上が命を賭けて責任を取れ、今回の場合文字通りな」

 鋭い眼光が王子に突き刺さり、王子は少しずつ焦り始める。


「命? 責任? 婆、どういうことだ?」


「....王子、つまりはそういう事でございますよ。 我らがヘルカは隣国のスピールトに戦争で敗北を(きっ)したのです」


「オイオイッそんなまさか、俺の兵器が負ける筈!!」

 王子は、婆の止める言葉も聞かずバルコニーへ向かって走ろうとする。 それを見たスピールトの兵士が、ここから逃がすまいと王子を背中からスキルで狙うが....!


「やめろ。 ()()、いい」

 メイリスからの鶴の一声で警戒を解く。



「そ、そんな.....」

 バルコニーから広場を一望した王子は膝をつく。 広場に掲げられていたヘルカの国旗はスピールトの物へと置き換わり、完全に制圧が完了してしまっていた。 スピールト軍の陣方面から広場を挟んで真反対...まだ、ヘルカの兵力が残っている方では納得のできないヘルカ兵たちが攻撃を行っているが、じきに国全体に通達がいき兵士たちの動きも止まるだろう。 どこの国も、軍人というものは上官命令にはすこぶる弱い。



「お、俺は何も知らなかったんだぞ!?」


「.....知ったことか。 お前は国の主君だろう」

 メイリスは追い詰めるように銃を構えバルコニーへと歩みを進める。 王子は大人の姿で怖がる子供のように尻もちをつき後ずさる。



「王子ッ!!!」


「動くなよ婆さん」

 駆け寄ろうとした婆を、スピールト兵が銃で脅して抑制する。


「....分かって....おります....」



「俺はただ設計図を書いていただけ! この(くらい)は借り物なのだぞ!?」

 王子は目に涙をにじませる。


「たとえそれが不運な事故だったとしても、主君が配下の統率を怠ったその責任は取ってもらう。 ....涙を流すな、泣きたいのはこっちだ」

 このことが終わればヘルカは上層の人間が壊滅する。 クーデターが起こるにしろ、他国から軍隊が侵攻してくるにせよヘルカの国家崩壊はもう避けられないのだろう。 この国には優れた指導者が存在しない。


「俺は...俺が、兵器を作ったのは...ただ、ただぁぁぁ.....」

 王子は藁にも縋る思いで辛そうに目を伏せる婆と、ベッドで横になる自分の母親を強く見る。 母親は必死に()()()()()()()()()()()()()


「最後は王家の人間らしく、潔く誠意を見せるべきだと私は思うぞ。 せめてもの優しさだ、この場で終わらせてやる。 公開処刑は無しだ」

 メイリスが銃口を震える王子の眉間に押し付けるような形で構える。 指がトリガーにかけられメイリスの操作一つで王子の命は消えそうになっていた。


「や、止め....ッ」


「お別れだ」








 数分後....。



【ドンッ!!!!】

 最上階で無慈悲な銃声が響いた。 

 広場ではそんな銃声をかき消すように広場では鐘が響く。 

 真っ赤に染まった夕焼けが戦場を兵士を優しく照らす。 吹き抜けるそよ風は、戦場に残った硝煙の匂いを徐々に散らしながらスピールト国旗をはためかせる。












【ヘルカ兵は即刻に武装解除せよ! ヘルカ兵は即刻に武装解除せよ! 繰り返す、ヘルカ兵は即刻に武装解除せよ! ヘルカ兵は即刻に武装解除せよ! 戦争は終結せりし、これ以上の戦闘行為は愚行である! ヘルカ兵は即刻に武装解除せよ! ヘルカ兵は即刻に武装解除せよ!】

 ヘルカ兵を納得させるために、スピールト兵の監修の元ヘルカ兵たちが各所で放送を行う。 スキルによって声量を上げた声が街に反響するほど響く。


 ヘルカ兵たちが諦めるように武器を投げ捨て座り込む。 落ち込む者も若干いたが、それ以上に家族に会えると喜んでいる者達も大量にいた。 




 戦争準備のせいでまともに家に帰っていなかったようだ。




 こうしてとても短い、短すぎる戦争は終結した。

 スピールト側にもヘルカ側にも多くの死者を出しながら




 その日のうちに、ヘルカの内政を担当する貴族達と、後日、戦後処理の話し合いの場を設ける旨を書面で互いに残した。 ヘルカとスピールトの戦争という事実、そして結末に関する情報は隣国や諸外国に早馬が出された。



 ヘルカ王族は全員がその場で銃殺されたと後に新聞で報じられた。

 処刑を執り行わなかった事に多少の批判はあったが、略奪国家に勝利したという事実と人々の喜びが宴となって批判を吹き飛ばした。 勇者達も大活躍したと報じられ、新聞の一面にデカデカと『勇者、軍の最前線を何度も救う、まさに神話で歌われた英雄の姿』とまで書かれていた。 


 またスピールト他民族国家では、今回の戦争の死者への集団葬儀が国主催で粛々と取り行われた。 集団葬儀には、勇者基地の生徒たちも正装で参加し勇敢にも国の為に散っていった、本物の勇者達へ黙祷を捧げた。 代表でファンキー先生が鼻を慰霊碑の前に捧げもした。



 それらの情報は他国に居る勇者達にまで届き、行く当てを失い始めていた一部の勇者達は目的を見つけたかのようにスピールトへと向かい始める。



 そして戦争から.....数日後

 スピールトの勇者基地では....。

==☆次回予告☆==


56話の閲覧お疲れさまでした。

はい、戦争終結です。 誰も死なずにハッピーエンドは、いささかご都合的すぎたかもしれません。 勇者が起こした奇跡って事で....(適当)。 実際、【ホットマン】ニキがいなければスピールト側に深刻な被害が出てましたし、今回の戦争のMVPかもしれませんね。


いや、モブじゃねーーか!! というツッコミはしまって下さい。

おまけなどを含まず、後2話ほどでスピールト編は完結です!



次回、57話......その勇者達 次に進み始めて!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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