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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== スピールト編 == 【物語進行:疾風サイド】
59/238

54話 その広場 戦場につき!

 

 斬撃音、銃声、スキル音....未だ決着がつかず広場前の道での戦場は完全に停滞していた。 ここだけは何としても侵入させまいとヘルカ兵は必死の抵抗を続ける。 ファンキー先生はというと、天賦使用による疲れが出てしまい後方で水を飲んで喉を休ませていた。


「クソッ、どうなってる! 裏から我が軍を回してもまるで空から見られてるように対応される、中々広場へ踏み込めない!!」

 メイリスが戦場の後方で全体指揮を執りながらボヤく。 アドニゴはその全体指揮のサポート役として最前線に情報を仕分ける役を取っていた。 いつの間にか火をつけた煙草を口に咥えながら。


「状況から推測するに、恐らく観測者がいるのでは? 人を数人送って捜索させますか?」

 確かにその可能性はあり得る。 だが....


「ヘルカ側の対応はかなりお粗末だ。 観測なんてこの状況で用意出来るとは思えん」

 メイリスは、煙草をそこら辺に吐き捨て足で踏みつぶす。 踏みつぶされた煙草の灰が爆風と共に空に舞い上がった。


「....確かに、ここまで見破られていると観測者何人いるんだって話にもなりますからね。 情報の伝達も人か鳥を使うのでタイムラグが発生するハズですから。 そんな事に余力を避ける戦力があるとは思えません。 もし用意出来たら戦力差で一気に押し出されているでしょうし」


「肝心のタイムラグはほぼ無いが。 本当にどうなっている!」

 悩む二人の元に汚れた兵士が走り寄ってくる。



「最前線から報告です!! ヘルカ兵器【衝撃破城槌】の投入、4台を目視で補足、それに伴いスピールト第一部隊の最前線の兵が怪我人多数です!!」

 兵士は敬礼をしながらメイリスの指示を待つ。


「ご苦労、継戦は可能か?」


「僭越ながら、最前線よりこのままでは後退やむなし...と」


「委細把握した。 ....また新しいタイプの兵器か、何と言うか流石に多芸だな。 だが、今度のは情報通りであればただの破城槌の強化版ってだけだろう? ならアドニゴ、いけるな?」


「問題ありません姉さん。 ぶっ壊してきますよ!」


「よろしい。 なら後方に居る人間を少し集めて前線に向かわせろ。 その際に、機動力のある兵士を数名制圧した区画の巡回に回してくれ」


「観測者を見つけるんですね? 発見次第どうしましょう」

 メイリスは、アドニゴの問いに指で首を斬るジェスチャーで答えた。 アドニゴはそれを見た瞬間、敬礼をし大きな声で『了解です!!』と言って前方へ走って行った。


「伝令役、負傷者を戦線から退避させ救護班で応急手当、後に後衛部隊のテントへ回せ。 一人でも多くの兵を死なせるなと伝えろ」


「....分かりました、その旨必ずやお伝えいたします。 では」


「武運を祈るぞ」

 兵士は敬礼をして情報を前線に伝えにいった。 メイリスは、自前のマスケット銃に弾丸を込めながら広場の方を見る。


 広場の前では爆発音が幾度となく上がり、その周辺の建物は見るも無残に崩壊していた。 もしここを占領出来たとしても苦労することは明白だろう。 ヘルカ側が白旗を上げようと上げまいと、王族である者達の首は必ず取らねば下の者に示しがつかない。


「兵力差は5000vs1000....歴然だったハズなのにどうしてここまでヘルカが押される? こっちの1000の内200は民間人、ド素人だぞ?」

 ヘルカ側に何かしらの異変があったことは密偵からの情報で察してはいた。 が、余りにも状況がスピールト側に有利過ぎることにメイリスは遅く不安を感じていた。


 突然の宣戦布告なしの攻撃、それによる襲撃....。 最高司令官としては言いたくは無いが、内々の当初の目的では突然の強襲によりヘルカ側に陣に兵を割かせ、薄くなった国内に機動力のある第一部隊の兵士を送り込み主要な兵器工場を爆破、兵器の生産を断ち危険性を理解させたところで撤退。 後日、文書によるお互いの意見の場を設ける....といった具合に収めようと思っていた。 勿論、すべてが上手くいくとは思ってはいないが。


 ヘルカも馬鹿では無い。 自国がトラブルの渦中にいるのにさらに火種を増やそうとは思うまい。 意見の場という提案には批判はあれど乗ってくるという確信があった。


 ヘルカの異変とそれによる兵士の負担。 突然の強襲と、国の統治を放棄した王子が居たからこそ実行できる半ば無謀ともいえる作戦。 .......本当なら攻撃なんてしたくは無かったが、GOサインを出さなけれな国内の過激派がクーデターを起こしかねなかったから仕方ない。


 元々、ヘルカは我々スピールトの仮想敵国であり...略奪国家であるがゆえに隣国や諸外国との関係性は劣悪。 それでも、スピールトが攻め込まれなかったのは、酒による他国との強固なコネクションを持ち合わせていたからだ。


 今は国の背景に感謝しかない。



「その背景を踏まえても、まるで誰かに手引されてると錯覚するぐらい上手く行き過ぎてる。 占領なんて作戦会議の時、リレイの書いた没案にあったぐらいだぞ...全く」

 メイリスは『ここまで来たら覚悟を決めよう』と呟き前線へと向かって行った。




 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=




 そんなことを考えるスピールトvsヘルカの裏側では.....ヘルカvs魔物の残存勢力が必死の交戦を続けていた。 スピールトが、国内に入り込んでいるという不安が戦線を揺るがせ、再び魔物の勢いがどんどん上がる。 飛竜を倒し切った朗報と、スピールトが最悪のタイミングで攻めてきた悲報が、現場に大混乱をもたらしていた。


 魔物側の戦線を放棄して広場に走っていく者も少なくない。

 そして、それを咎める司令塔役も死亡し、臨時司令官は経験が浅く全く頼りにならない。 こんな状況でも尚、貴族たちは城に籠って現場に出てくることを()()()()()()()()()



 状況は最悪、現場は混乱し情報は上手く届かず。 何処で何が起こっているのか、どんな対処が必要なのかという肝心な情報が全く届いていなかった。


 唯一動いていたのは、レーダー探知機による広場の防衛のみ。 裏手に回り込んでくる敵兵の位置を、旗信号によって現場に即時伝える。 これによってなんとか広場の防衛はできていた。


 耐えたところで士気も最低、物資も足りない状況ではいつまで続くか分からないが。



 全てにおいて頭を悩ませた副指令。 そんな時、ふと....門の近くに()()された人間兵器が目に入った。



「......今こそ起動の時です」

 臨時司令は人間兵器である召喚された勇者を見ながらほくそ笑んだ。




 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



【ヘルカ、広場周辺の戦場では.....】



「スキル『魔法弾』ッ!!」

 ヘルカ側が魔法弾で応戦し、次々にスピールト側の遮蔽物を破壊していく。


「スキル『シールド』!!」

 徐々にスピールト側の遮蔽物が減り、スピールト兵はスキル『シールド』で時間を稼ぎながら後退し、遮蔽物に隠れる。 新たな兵器【衝撃破城槌】の登場でスピールト兵は迂闊に近接戦闘をしかけられない状況に陥っていた。


 近づこうとすれば、波状槌が空気を叩くように起動し、その衝撃が空気を介して周囲に伝播し兵士を吹き飛ばす! そのせいで動けなくなっていた。


「スキル『進化型、ファイアーボール』」

 アドニゴは現場に駆けつけて直ぐにファイアーボールを波状槌に向かって投げる。 ヘルカ側の兵士一人がシールドで守ろうとするが....耐久限界のせいでシールドが崩壊し、ファイアーボールが波状槌直撃し爆発と共に炎上する。


「残り3台もぶっ壊すぞッ!!」


「あのスキル発動者を殺せ!! 集中砲火だ!!!」

 恐れをなしたヘルカ兵が一斉にアドニゴを狙い始めるが....


「スキル『進化型、シールド』+スキル『進化型、ファイアーボール』」

 進化したスキルの同時発動は、軍の上層を担う者の威厳があった。 ヘルカ兵たちの質の悪いスキルでは破ること叶わず、瞬く間に2台の【衝撃波状槌】がスクラップと化す。



「アドニゴ様こちらへ!! 流石にシールドの耐久限界ですッ!!」

 アドニゴが己のシールドを注視すると、既にシールドが耐久限界に近い事が分かった。


「はぁはぁ...助かる、見えてなかった!!」

 兵士の手引きで、アドニゴは疲労感をあらわにしながら滑り込む形で遮蔽物へと逃げ込む。




 .....交戦が続く広場から、少し離れたところでマジカルバリスタは鎮座し、...戦場の全てを破壊しつくさんと覚悟を決める。


「「「「マジカルバリスタ全機、装填及び発射準備完了しました!!」」」」


「.....今なお前線に張り続ける者達に、永遠の賞賛を」

 司令役がいない為、一番年配の兵士が辛そうに呟き続ける。


「マジカルバリスタを放て」

 全てのマジカルバリスタが起動し、矢が赤黒い光を纏いながら上空に打ち上げられる。 フレア並みの光を持ちながら打ち上げられたソレに戦場に居る全ての人間が一瞬それを見上げる。




 そしてすぐに察する。



 これは死んだと....。

 あのメイリスでさえ、一瞬だけそう思ってしまった。


 思考の揺らぎは、動き出しを遅らせる...。





 その刹那!!!


 巨大な光の刃が、ヘルカ城の中層階のバルコニーから戦場の上空を横断し!! 落下してくる矢を刃で受けるように全て防衛した!!



「「「「「「「なッッッッッ!!!!!!!!」」」」」」

 刃に矢が当たると同時に凄い量の炎が生成され、それがまるで綺麗な花火のように戦場へと降り注ぐ。 しばらくして光の刃は再びバルコニーへと収束していった。 ヘルカによる、自滅覚悟の一撃をいとも容易く粉砕した異様な光景に、戦場に居た全ての兵士が驚く!



「....いまの、は、疾風か?」

 ファンキー先生はその様子を見ながら....一番、混乱した。





=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



【※()()().....ヘルカ城内のダンスホール、バルコニーでは...】



 疾風がとった作戦は、バルコニーから光の剣のスキルである『フォトンストレイヤ』を、幅を犠牲に距離を最大まで伸ばして攻撃を撃墜する作戦だったのだが。 疾風自身も絶対距離が届かない事は分かっていた。



 しかしその考えを否定し、行動を補助するように春の天賦が作用した。

 結果、距離は従来(※100m)の5倍近い程の距離ととんでもない程の幅へと広がった。 それと同時に、疾風は出力されるスキルに体が持っていかれ、バルコニーから窓ガラスを粉砕しダンスホールの中央辺りで剣を押し出すように粘る。


「疾風っち!!」


「うぐぐッ、体が持ってかれるッ!」

 剣を離せばスキルは解除されてしまう。 

 そうなれば矢が防げず大量の死者が出る。



 .......この力を授かった時、怖かった。


 こんな危険なチカラを正しい事の為に使えるのかと。 また中途半端に偽善を働いて、軽蔑されるんじゃないかと怖くなった。


 でも、もし...俺のやっているこの行為が偽善なのだとしても



 今は、今だけはっ!



「誰も死なせたくないッ、それだけは嫌なんだ―――――ッッッ!!」

 疾風は気合を入れ直してスキルの出力を段階的に上げていく。 ダンスホールの床が衝撃でめくりあがり、天井から吊り下げられたシャンデリアが落下して壊れる。



 人を助けるために力を出し尽くす疾風の姿は勇者であり。

 そんな勇者な少年を()()()()()()()()()()()()()()()()



 そしてその5秒後....。


 バルコニーから赤い光が見えたと同時に、疲労で()()()()()()の床に膝から崩れ落ちて倒れ込む。 



「す、すごい、すごいすごい! 疾風っち凄い―――っ!!!」


「凄いのは....俺じゃなくて星原さんだよ。 まさか天賦の力をこれほど長い時間付けててくれてるなんて思わなかった。 俺のスキルだけじゃあの距離は絶対に届かなかったし....」

 疾風が持っていた剣は、流石の高出力に耐えきれなかったのか刀身が真っ二つに折れていた。 剣を見て、怒られそうだと苦笑した。


「あとで春っちにはお礼しなきゃね! 実感ないよ、防げたんだよ...あははッ、あははははははッ!!」


「はぁ、はぁ....う、うん!」

 疾風と温井は安心したように本気で笑いあった。




.......。



「....そのまま寝てたら頭痛いでしょ、膝枕しようか?」

 温井が自分の膝を【ポンポン】と叩きながら笑う。


「いや、大丈夫だよ...うん、本当に」

 温井は頼られなかったことに少し不満げな表情を浮かべながら、疾風が倒れてる近くに体育座りで座り込んだ。 ふわっとした花の香りが疾風に届いた。


「........えいっ」

 温井は疾風の頭を持ち自分の膝の上に置いた。 温井は自分の行動に少し照れている。


「ちょっ、温井さん! 大丈夫だから!」


「うるさいよ―疾風っち。 こういう時はされるべきだよ―」


「うぅ、恥ずかしいんだけど」

 顔を見せないように伏せる。 が、温井が無理やり覗き込みながら


「えへっ、今日は怒ったり、泣いたり、笑ったり、照れたり....疾風っちの知らない一面を沢山見れた日だ! 私ねー、疾風っちのそういうとこ見れて嬉しいよ!」

 無邪気に元気に笑いながらそう言った。




 その表情、仕草に疾風が【ドキッ】としたのは言うまでもなく....。


==☆次回予告☆==


54話の閲覧お疲れさまでした。

疾風の天賦がとんでもねぇ事が伝わりましたかね? なにぶん、作者の頭が良くないせいで誤解を生んでしまっているような気がして、気が気ではありません(笑)


個人的に温井さんが凄く可愛いことしてるなって回になりました。 あんまりシリアスシリアスしても、読者も作者も...作者も疲れるので。 隙あらば日常やラブコメぶち込んでいこうと思います。


夜空の想い人が向ける淡い恋心、その気持ちは誰のモノ?

そこら辺の人間関係にも、今後注目です!!


次回、55話......さあ先生 生徒の元へ!


スピールト編も残りあとわずか! 最後までお付き合いください!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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