表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== スピールト編 == 【物語進行:疾風サイド】
53/238

49話 そして疾風 地獄へ踏み入れて!

 

≪≪≪ ※ かなりの胸糞表現がございます。 苦手な方は49.1話の簡易あらすじを読めば理解できるようになっていますのでそちらをご覧ください≫≫≫


 P.S 簡易あらすじには会話は含まれません、やりとりなどを最大まで楽しみたい方は閲覧をお勧めします。     作者、ゼロ先輩より愛を込めて♡。


≪☆↓本編↓☆≫




(さむ)ッ! 何か急に寒ッ!」


「誰かが翔っちの噂してるとか」

 後衛部隊の窮地を知らない疾風一行は、ヘルカ兵に発見されることなく防壁に辿り着いた。 


 流石は略奪国家、戦争にも負けないよう城下町への出入り口は最低限に留めてあり、その他の場所は全て高い防壁で覆われている。 壁の上には兵器が余裕で置けるほどの幅があり、本来ならその上にヘルカ兵が立って警備をしているのだが。


 アドニゴの突撃の際、スピールトが陣を構える方角の壁は全て制圧されておりヘルカ兵一人たりとも警備についているものは居なかった。



「そんで疾風君、突破口を作るっていうのは?」


「あぁ、そうだったね。 ちょっと離れてて....」

 疾風はそう言いながら剣の先端を壁に軽く当てる。 


「スキル『フォトンストレイヤ』」

 疾風がそう言葉を紡ぐと、疾風の持つ剣の刀身が光でコーティングされて細く鋭くなる。 その光の刃は壁に使われている石を押すように切り込みをつける。  


 しばらく刺したままにして、貫通したのを確認したら剣を抜いて少し上でまた同じことをやる。 そうやって切り込みを徐々に穴の形に変えていき、全て貫通させたら壁の石を奥側に押し出して通る。


「この動作を繰り返して人が通れるくらいの穴を作るつもり」


「はぇー。 疾風君はすんげぇ使い方すんな」


「そ、そうかな? あ、ありがとう」

 疾風は少し照れながら作業を続けていき、わずか5分足らずで人一人が通れるくらいの穴を壁に開けた。


「疾風っち、聞こえた声はここから近い? なるべく早めに助けに行ってあげないと....きっと、その子、泣いてると思うから」


「遠くに見える城の近く、その下らへんから聞こえた気がするんだよね。 この穴から城下町を直線で走って行けばつくハズ」

 疾風が指さす方向には何やら大きめの建物が存在した。 ベランダに洗濯物が干されている所を見るに、何かの宿?のような雰囲気がある。


「もし敵と遭遇したら....どうすっべ」


「その時は、俺が....戦うよ。 大丈夫、殺しはしない....絶対に...絶対に...」

 疾風一行は決意を固めてヘルカ国内へと侵入した。 


 しかし張り切る彼らの背後に影あり。 







「.....正義と偽善を彷徨う子供に、この世の真実を露呈(ろてい)させて見よう」

 フィクシスは、名も知らぬ勇者が国に入っていく所を陰で歓迎しながら.....グループのリーダーである疾風を見て気づく。


(かんば)しい。 彼からは()い黒幕の香りが漂っているね」

 意味深にそう言った。





 銃声、爆発音、斬撃音、悲鳴、雄叫び...様々な音が飛び交う戦場から、かなり離れた場所にある裏路地を疾風たちは予定通り真っ直ぐ歩いていた。 時折、物音がしたら隠れたり、瞬間移動スキル持ちの疾風と春がこっそり確認したり。  戦場から離れている為、家の中に人がいるように感じるが全員巻き込まれたくないのか扉に鍵を閉めて出てこない。



 しかしまぁ、なんというか....。 スピールトに比べてこのヘルカ軍事国家はあまりにも寂れている。 地面の舗装はボロボロでもう数十年手入れをされていないことが想像つくレベルだった。


「私、国がこんなになってたなんて知りませんでした」


「春っち、顔色悪いよ...大丈夫?」


「止まりません、止まりたくないんです。 ....栗谷先輩と一緒に私たちだけ安全な場所に逃げてきて、私はこの国でまだ辛い思いをしていた勇者を忘れかけて...。 自分たちだけ....良い思いして...」

 春の中でくすぶっていた罪悪感。 それを空気でなんとなく察する。


「....春っち、がんばろっ! 絶対皆助けだすよ、そのために先生も皆も頑張ってるんだから!」


「温井先輩...。 はいっ!」

 そんなこんなあり、目的の建物と思わしき場所の近くまで接敵せずに接近できた。 建物は3階建ての石造りの宿舎のような形になっており、建物の一階部分とヘルカ城は内部通路で繋がっていた。


 アパートには、両開きの正面玄関一つと裏口一つ、内部の様子は窓からうっすらと確認できるがどの部屋にも明かりは灯っていない。 宿舎の周りには警備...というか人っ子一人として居ない。 どうやら全員、戦争の為出払っているらしい。



「疾風君、目的地ってココなん?」

 翔が小さな声で疾風に聞く。


「うん、ここから聞こえるよ。 ....ほらっ、今も助けて助けてって」


「いや、そう言われても俺らにはマジ聞こえんからね」

 とりあえず男だけで中に突入することにした。 誰にも見られていないとはいえ素早く裏口に回り込み、壁をくり抜いた時と同じように、ドアノブの部分をくり抜いてドアを開ける。


「行くべ」


「うん」

 冷や汗を流しながら建物内へと突入した。


 外側から確認していた通り、中には誰もおらず....宿舎ならではの生活感だけが残されていた。 食堂には食べかけの飯が残され、相当焦って出て行ったことが伺える。


 疾風と翔は、一通り建物の一階を見回った後、各個人の部屋がある2,3階のクリアリングを始める。 二人で一部屋一部屋確認していき、3階の最後の部屋に至った時、疾風は声の主がこの中に居ると直感する。 扉にはプレートが下げれていて、プレートには《満足の部屋》と書かれていた。 扉には、何故か()()()()()()()()()()()()()がつけられていた。


 疾風が目線で翔に合図し、翔が天賦【スリープハンド】を使用しながら拳を握る。 疾風も剣を鞘から抜き、スキル『フォトンストレイヤ』使用して、剣に薄く光の膜を張って攻撃力を上げる。


「俺っちが開ける、なんかあったら疾風君頼むわ」


「任せて池谷君」

 その《満足の部屋》とやらの扉を開けると、中から凄まじい悪臭がして二人が鼻をつまむ。 


「なんだこれ、クッセェ!」


「うぅ、鼻が曲がるッ....」

 それでも、時間をかけるわけにはいかないと判断した疾風が嫌な予感を押し殺して薄暗い部屋の中を進んでいく。 疾風の持つ剣から放たれる光が、6畳ほどの部屋を照らして初めて気づく。



 いや、気づいてしまった。



 部屋の中には、行為を行うために置かれたベッドと....引き裂かれた葉日学園の制服や日本製の下着。 部屋の床のあちこちに飛び散る、何かも考えたくもない臭い液体と.....散乱した食器。


 そしてベッドの上には、まるで壊れた機械のように寝そべる裸の女性が居た。 

 彼女の目元は赤く腫れており散々泣き喚いたことが伺える。 



 二人の中に様々な感情が渦巻く。 

 生理的嫌悪感、恐怖、憎悪、怒り、悲しみ....。 恐怖で叫び出しそうになる翔の口を抑えて部屋の外に飛び出す。 それでも二人の震えは止まることを知らない。



「は、は、はッ―――! 疾風君、疾風君、疾風君!!」

 過呼吸になる翔を宥めるように座らせ落ち着かせる。 落ち着かせるといっても、疾風自身も相当動揺しており...全く冷静では無いのだが。



「と、と、とととりあえず...。 ここまで来たんだ、出来ることはしなきゃ...えーと、えーと...。 そうだ、他の部屋から毛布を取ってきて彼女をくるんで保護しよう」


「わ、悪いんだけど...さ。 ホント悪いんだけどさ....俺っち、もうあの部屋入るの」


「分かってる、分かってるから。 彼女を部屋の外へと連れ出すのは俺がやるから」


「わりぃ、わりぃなぁ、疾風君ばっかり辛い事押し付けて」

 たまらず泣きだす翔。 彼もまだ上がりたての高校一年生である。



 翔は泣きながら、彼女をくるむための毛布を探しに行った。



「よ、よしっ!!」

 疾風も心を無理やり鎮めて、再びあの地獄へ進んでいった。

 部屋に入った疾風は自然と彼女の顔を見る。 焦点の合っていない目を薄く開けて口を半開きにし、か細く助けて助けてと消えそうなほど小さな声で呟き続けていた。 


 理性が徐々に絶望と快楽に壊されていく中、誰かの助けを求める事しか出来なかった....そんな事を考えるだけで再び吐き気がこみあげてくる。



 天賦かスキルかは不明だが彼女は何らかの手段で外部に信号を送っていた。



 疾風は、半開きになっている目を閉じさせてから、匂いを我慢して彼女をお姫様抱っこで抱え上げる。 彼女の汚された体を直視しない様にしながら。


「疾風君、毛布....」


「ありがとう」

 疾風は翔の持ってきた毛布を受け取り、いったん彼女を廊下に寝かせてから肌が露出しない様に、服代わりとして毛布を巻き付けた。


「行こう」


「疾風君、匂いだいぶ我慢してるだろ。 スピールトの陣までは流石に俺っちに持たせてくれ、せめてそれぐらいは...やらせてくれ、マジで」


「で、でも」


「頼むよ。 俺っちの為だと思って」

 翔にも考えがあると思った疾風は、手元の毛布にくるまれた女性を大切な宝物のように大事に大事に受け渡してから建物を出ることにした。




 来た道を戻り、壊した裏口から外に出ると....そこには....。


「は、疾風っち.....」


「うぅぅ、助けて先輩....」

 ()()姿()()()に捕えられた春と温井の姿があった。

==☆次回予告☆==


49話の閲覧お疲れさまでした。


いや、キッツ! 書いててドン引きですね、でも展開上仕方ないんだ...。 書いていた当初、ご都合展開で上手い事救ってしまおうか、とも考えましたが....止めました。 


無理がね、ありすぎたのよ。


直接的な描写は展開上書けなかったので(書きたくない)かなり間接的な物言いになってしまいましたが、上手い事おぞましい描写が伝わってれば幸いです。


何処かでコメディ入れて中和しなきゃ(義務感)



次回、50話......その少年 正義と偽善の境に!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ