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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== スピールト編 == 【物語進行:疾風サイド】
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46話 かの魔物 兵器と対峙し!

 

 ヘルカより西側数百キロの地点...大型のゴーレムのような魔物2体の後ろに、中型の人型魔物、その後ろからゴブリンのような小型人型、パニックウルフのような獣型の魔物が群れを成してヘルカに向けて侵攻する。 ゴーレムのような大型魔物の上空には小型の竜のような魔物も存在していた。


 ゴーレムが、一歩を踏み出すたびに地鳴りのような音が響き、乾燥地帯に生えている枯れた木々たちを踏みつぶし木端微塵に粉砕する。


 高度な知能を持たない彼らは、まるで誰かに仕組まれたようにその足を前へ前へと進めていく。 小型の魔物たちの一部には、手や牙に返り血が飛び散っており、その血の主は破壊された村の人間であることが容易に想像がつくほどのおぞましさがある。




 魔物軍団、ヘルカ到着まで残り8時間!!



 ヘルカの城の壁の上の一角にまるでレーダーと古臭いモニターのついた探知機のような、2台の無駄にデカい機械が置かれ兵士たちによってそれが起動されていた。


 レーダーは周り周囲にスキル『超音波』を広範囲で放つ。 そして、もう一つの機械がスキル『超音波探知』で正確な位置を探り続ける。


「魔物到着までは!?」


「推定8時間です!」


「各部隊は準備を急げ急げ! サボるんじゃないぞ―ッ!」

 司令塔役の男が吠える。




「貴族連中、戦場の指揮って絶対しねーよな」

 防衛用....外壁周囲に穴を掘る作業を行っている新人兵士2人が、吠える司令塔役の方をチラ見しながら愚痴を言い合う。 臨時で跳ね橋が設けられ、魔物侵攻側の外壁沿いには深めの穴が掘られていた。


「奴らは知識だけ齧ってる臆病者だ。 お貴族様の話をするなよ、気分悪くなるだろうが....。 とにかく掘ろうぜ、終わんねぇしさぁ」


「わ、わりぃ」



 そんな会話を、貴族姿のフィクシスは隠れて聞きながらほくそ笑む。


「故に異変を()ることができぬとは滑稽だね。 ()ることが出来ぬ脅威程、(おぞ)ましいモノは無いと言うのに。 上に立つものさえ聡明であったなら...」

 フィクシスは貴族の持ち物であった高そうな小型時計を手に持つ。


「残骸が残るか、全て散るか....それとも....」

 フィクシスはその場に独り言を残しながら立ち去っていった。









 城内が軽いパニックになる中、王子と婆はとある部屋に来ていた。 部屋の中には巨大な天蓋付きのベッドが置かれ、その上には病気と思われる美しい女性が眠っていた。


「母さん...」

 どこか寝苦しそうに目を閉じる女性の手を取りながら、王子が呟く。 そんな王子の姿を見て、婆が酷く悲しそうに目を伏せる。


「王子...本当にこのままでよろしいのですか?」


「前にも言っただろう。 俺に人の上に立つセンスなんて無い、俺は親父のようには慣れない」


「だからといって...」


「あの軍事のお爺共(じいども)が言っていたのだ! 俺が兵器を作り続ければ、いつか必ず母さんを治す手がかりを見つけると!」



 婆には分かっていた。 そんな手がかり簡単に見つかる訳が無い事を。 

 その話は、王子の才を便利に使おうとしているだけの話なのだと。



(言わなければ....し、真実を....) 

 婆が声を上げようとした瞬間、まだ幼い頃の王子の姿が脳裏を駆け巡った。



 両親に甘えたときの王子の顔。


 父親が病に伏せ、母親が王座についたときの心配そうな顔。


 そして過労により母までもが病に倒れた時の...王子の涙と絶望。



(言えない....言えるわけが無い。 この状況で、かすかに残った可愛い孫の希望の根を、非道にも摘み取るような真似が出来るわけが無い)



 私はなんて臆病で罪深いんでしょう。 

 王族としてこの世で生まれ育ち、祖国が存亡の危機に陥っても....まだ、この子に、孫に...嫌われたくないと思ってしまうなんて。



「えぇ、王子がやりたいようになさって下さい。 婆はそれにお供致しますよ」


「婆よ、感謝する!」

 ごめんなさい王子、ごめんなさい...ごめんなさいごめんなさい...。



 婆は、心の中で涙を流しながら内心を悟らせないよう微笑んだ。





 時計の短い針がゆっくりと進む。 時間は人によっては長く、ある者にとっては短く感じるだろう。 そしていつしか......来てほしくない時間は訪れる。 













 あっという間に8時間後......。




「魔物集団目視しましたッ!!! 距離推定1キロ先!! 検知できる範囲でも物凄い数です―――ッ!!」

 レーダーと探知機に張り付いている兵士が声を張り上げる。


「連射型魔道杖、目標合わせェ!!!」

 司令塔役の声に合わせ、人が魔法系統スキルを放つ際に使用する杖を兵器用に数倍大きくしたものが、専用の台座に乗せられて速やかに城外へ運び出される。 


 その数たったの3台だがデカい、とにかくデカい。 巨躯な兵士たちが束になって、やっとこさ移動できるぐらいの重さがある。



 この兵器は内部にスキル『進化型、魔法弾』が搭載されており、兵器に備え付けられた魔石からエネルギーを充填、スキルを発射し目標を撃破する兵器なのである。  この兵器最大の利点は、デカさ故に発生する圧倒的な火力と連射による火力の密度。 そのせいでコスパはダメダメなので長時間は使えないが。



 採算度外視で使えば、1キロ先のゴーレムごときデカい的.....撃ち沈めるのに10分と要らない。




「目標大型魔物! 400mまでに沈めろッ! 撃て撃てェッ!!!」

 連射型魔道杖の起動と同時に爆音が周囲に鳴りだす。 人が使うスキル『魔法弾』とは比べ物にならない程のサイズのモノが、マシンガン並みの速度でゴーレムに向かって飛んでいく!


 着弾すると次々にゴーレムの硬い装甲にダメージを与えていく。


 その間に司令塔役が外壁上に居るマジカルバリスタ担当兵に指示を出す。


「マジカルバリスタ、距離400、水射装填ヨォイ!!!」


「「「「「はっ!」」」」」

 兵士たちが慌ただしく城内と城外を移動する。 壁上では兵士たちがマジカルバリスタの機械的構造を水射に変更してから矢を装填する。 矢に水色のオーラが纏われる。



 ヘルカはどうやら前と同じ作戦で勝負を決めようとしているようだ。



「放てェ!!!!」

 マジカルバリスタに装填された矢が、【ガシャンッ】という音を立てて弾き飛ばされ。 青色のオーラを纏った矢が魔物の少し前方、城から400mの地点に大きな水たまりを作る。


「弾着確認、効果現れヨォ――――シ!!!! 次弾、氷射装填ヨォ...」



「マジカルバリスタ発射待って下さい! 敵の行動が妙です!!」

 レーダーに張り付いていた兵士が司令塔役に向けて声を荒げる。 レーダーで探知しモニターによって敵の行動は筒抜けなのだが...何故か大型の魔物の股の下から素早い小型の魔物が前方へ向けて走り出していた。



 司令塔役がその報告を聞き、手元にあった双眼鏡で水たまり周辺を見ていると....。



「あ、あれはッ! フロスだ!!」



 フロス....白い蟹のような見た目をした魔物。 水を検知すると、その水の中へ入り温度を急激に下げて凍り付かせる習性がある魔物。 本来なら寒い地域に生息する魔物であり、水の温度を下げるのは氷の中に身を隠す為だと言われているのだが...。



「クソったれの魔王領がッ! こっちの作戦が見抜かれてやがる!!」

 フロスは、水の中に入りできたばっかりの水たまりを次々に凍らせていく。 これではぬかるみにハメて凍らせる従来の作戦が決行できない! そんなヘルカ側の葛藤を嘲笑うように、凍らされた水たまりの上をゴーレムたちが歩き、ヘルカ城に向かって侵攻していく。



「マジカルバリスタッ次弾火射ヨォイ!!! 急げ急げッ、装填急げェ!」

 司令塔役は少し焦りながら火の矢をマジカルバリスタで撃つように命じる。 誰しも分かっている、ここでアドリブで作戦変更すれば現場に大混乱を招きかねない。 最小限の変更で作戦を通常通りに戻すことしか司令塔役の頭には無かった。



 装填を行っている間にも、ゴーレムはその足を着実に城に近づかせていく。 そしてゴーレムの距離が500mを切った時に装填が完了する。


「距離400! 氷を溶かせェ!!」

 放たれた赤色のオーラを纏った矢が、凍り付いた水たまりへ命中すると同時に辺り一帯に火をまき散らす。 瞬時に氷が解かれるが、それと時を同じくしてダメージを与え続けられたゴーレムが最後の力を振り絞って【前方向】に倒れる!


「「「「は!?」」」」

 火も水たまりも氷も、ヘルカのマジカルバリスタ戦法を嘲笑うかのように全てを無駄にしたゴーレム。 その残骸を踏み越え、中型の魔物たちが城に向かって一気に距離を詰めていく。


 作戦通りに事が運ばず、焦った地上部隊の司令塔役がスキル『魔法弾』と魔道大砲による攻撃を指示する。   いや、してしまったのだ。


 もう地上部隊には連射型魔道杖を動かす程の魔石は残っていない。 



「馬鹿者ッ、こんな距離から攻撃し始めれば体力が持たんぞ!!」

 マジカルバリスタの司令塔役の声は地上の人間には届かない。 


「クソッ、このままじゃ戦線が崩壊する! マジカルバリスタ次弾火射ヨォイ!!!」

 この瞬間、戦場に同時に別々の思想を持つ2人の司令塔が誕生してしまった。



「装填終わりました!!」


「距離200、放てェ!!!!」

 放たれた赤色のオーラを纏った矢が魔物の頭上へ降り注ぐ。 魔物が燃え、狂ったように暴れ血が飛ぶ地獄絵図....。



 そして距離100mを切った瞬間、地上に居た兵士たちが合図と共に一斉に飛び出し正面戦闘を行い始める。 減らしたとはいえ凄まじい数を食い止める激戦、乱戦が続く。


 しかし、段々とヘルカ側が押し始める。 やはり後方に兵器が控え、援護射撃を担っているのが大きかったようだ。



 この勝負我らの勝利だと、誰もがそう思った次の瞬間!



 先ほどの火矢のお返しとばかりに、両サイドから挟むように、遥か上空から急降下してきた計30体ほどの小型飛竜が、兵器とその横で操作を行っていた兵士たちをブレスで次々と焼き払っていく。


「嘘だろ飛竜だッ! ヤバいぞヤバい!!」


「なんでッ! こんなの防ぎようがッ!!」


「うわああああああああああああ!」


「とにかく魔物を倒せ、少しでも数を減らせェェェッ!!」

 兵器に取り付けられた機械が熱にやられ、次々に熱暴走を起こして爆発していく。 その爆発で生じた火の粉やオイルが、地上部隊付近にある木の柵やらテントやらを燃やす。


 この時、後方支援部隊は完全に機能が停止した。


 飛竜の半数が地上部隊へと攻撃目標を変更する。

 騒ぎに気を取られた前衛が押され始め、形成が一気に逆転する。


「消火だ―ッ! 消火を急げェ!!」


「ぜ、前衛が押されてるぞ、援軍に!!!」


「駄目だ行くな! 消火が先だッ!!!」


「うわあああああもうダメだあああああああああああ!!!!!」

 もはや現場のパニックは収集が付かない。 後方部隊には、飛竜を落とせるほどの実力者が居ない状況だった。 兵器を操作していた兵も、生き残りたいが為に独断でスキルを使用し、そのスキルを避けた数体の飛竜が居住区に突っ込み、突っ込んだ衝撃により建物が何十軒と一瞬で倒壊する。


「うわああああああああああああっ! 増援を!増援を!」


「とにかく飛竜を撃ち落とせ! 体制を立て直すんだ!」

 城外でパニックになる兵士たち。 そんな兵士たちをその場に置き去りにし、壁に取り付けられた跳ね橋が上げられていく。



【ガラガラガラッ!】

 引っ張られた跳ね橋のチェーンが、砦側の金具と擦れあう音が聞こえ、その音に続くように『入れてくれー!』や『見捨てるとかふざけんな―!』などの罵声が聞こえ始める。



「....砕けよ」

 閉められそうになっている跳ね橋、それを持ち上げるチェーンの一本に向けて、陰からフィクシスが闇の光線を放つ。 光線がチェーンに直撃し破壊されて跳ね橋が強制的に降ろされる。


混乱を加速させる、最悪の一手だった。



 【ドーンッ!!】という木材の扉が地面に叩きつけられる音が戦場に響く。



「跳ね橋が壊れただと!? こ、これはマズい!!」

 戦場を見ていた司令塔役の男が、外壁の内側から放たれた一発の黒い光線に気づくことは無かった。 そもそも気づいた所でその場にフィクシスは居ない上に、現在のヘルカに犯人捜しをさせるほどの余裕はないのだが。




「近づけるなァァ! 全勢力を持って魔物を排除しろ!!」

 大量の魔物たちが敗走する兵を追いかけるようにヘルカ城へ詰め寄る。 ヘルカ兵たちは外壁に近づけまいと、消火した魔道大砲やスキル、剣や弓を使って小型の魔物や飛竜を撃退していく。






 敵が人であったなら、屍を踏み越えて進むような作戦は取ってこない。



 敵が人であったなら、火をまかれれば撤退を余儀なくされる。



 ヘルカが長年培ってきた戦術は対人と兵器を混合させた戦術だ。 知能無き魔物の大群とは相性が根本的に悪かったのだ。



 もっといい作戦があれば....。 どうしてこんな大切な時に、あの一任された貴族様は『前の作戦をそのまま決行せよ』なんていう回答をなさったのだ。 長年国に尽くされてきた重鎮なる方々なら、私ごときが思いつく欠点に直ぐ気づくはずだろうに....。



 作戦が練り直されていれば、初めから(つまづ)くことなんて無かったというのに。

 司令塔役の男は、荒れに荒れまくる戦場を呆然と眺めながら...『何故だ、何故こうなった』と小さく呟く。 絶望のままに膝から崩れ落ちて、自分の人生を走馬灯のように振り返る。








「何故だああああああああッ―――――!!!」

 飛んできた飛竜に焼かれパニックになり、新兵たちが掘った穴へ転落するその瞬間まで、司令塔役の男は貴族を恨むような事を考えていたという。















「着いたぞ....我らが敵、ヘルカ軍事国家ッ!」

 そんなヘルカの事情を知らぬスピールトの大部隊が正反対の方向から進軍してきていた。





==☆次回予告☆==


46話の閲覧お疲れさまでした。

ヘルカと魔物の戦いを書きましたが、勘違いして頂きたくない事が一点。 別にヘルカは戦争は弱くありません、しかし戦争は喧嘩とは違います。 兵の質、兵器の質、作戦の質などなど...様々なモノが重なって強さになります。


ヘルカは本当にタイミングがよくなかったってだけです。

スピールトも近づいてきてますし、どうするんでしょうかねコレ。


そこらの展開も含め、お楽しみいただければと...思います。 



次回、47話......その大声 門を貫いて!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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