表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== スピールト編 == 【物語進行:疾風サイド】
36/238

33話 その国 酒造の国につき!

 あれから数日が経った、疾風達は人間とエルフやドワーフ、獣人と呼ばれる亜人住むこの国で、疾風率いる勇者たちはすっかり好かれる存在へと変わっていた。



「勇者さんよ~、ちょっとこの荷物荷車に乗せるの手伝ってはくれんかの?」


「任せてください!」

 ある時は、背の小さいおじいさんの積み込み作業を手伝ったり...。





「痛いよおー!」

 転倒し、泣きじゃくる猫耳を生やした獣人の子供に、怖がらせないよう笑顔で温井さんが近づいて怪我している場所に手をかざす。



「天賦『肉体再生』!」

 温井さんの手が【ポウ....】という音をたてて光り、たちまち子供の怪我を癒やしてしまった。 その光はポーションでの回復とは違い、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「わぁ凄い、動けるっ! 痛くな~い!」


「よかったよかった! 慌てないで帰ってね!」


「ありがとう勇者のおねーちゃん!」

 またある時は、怪我人の応急手当てをしたり...。





「キャーひったくりよ―――ッ!!」

 街中をフードを被った青年がバックを持って走る。 引ったくりに気づいた通行人が、大声で叫び助けを求める。 近場を歩いていた疾風が速攻で声に反応し、この数日間で国から支給された剣を腰に下げた鞘から引き抜く。


「俺が行きます! スキル『フラッシュアクセル』ッ!!」

 周辺に閃光が起き、その直後疾風がほとんどワープ並みの速度で屋根を伝い、引ったくり犯の元へとすっ飛んでいく。


「疾風...使い方飲み込み早すぎてヤバー」


「流石疾風くんだわ」

 置いてかれた連中が、口々にそんな事を呟くのを閃光と共に吹き飛ばし、引ったくり犯の元へ複数回の『フラッシュアクセル』を使用して距離を詰めていく。


 この数日...いや、たった数日で疾風は自身のスキルの使い方をある程度理解し始めていた。



 驚異的な学習能力である。



「もう諦めろッ引ったくり犯め!」

 徐々に距離を詰める疾風に、軽い悲鳴をあげて再び逃げようとする引ったくり犯。 疾風はすぐにスキルを連続使用し、ひったくり犯の()()()()()()()()()()に動いた。


 ひったくり犯を地面に押し付けるように取り押さえ、荷物を取り返す。 駆け寄ってきた被害者の女性に荷物を返す。


「ありがとうございました、勇者様...この御恩は....」


「い、いやいや気にしないで下さい! 勇者ってのも照れくさいですし」

 イケメンにしか許されない爽やかな笑みを浮かべながら、疾風はそういった。


 こんな感じで街の治安維持に協力したり...と、疾風たちはすっかり勇者として受け入れられていた。




 街の人の頼みごとを片手間で聞きながら、疾風はそれとは別に自らのスキルを知るための訓練も欠かさずに行っていた。




 ここは郊外、弱めの魔物出現する平地...疾風の日課である訓練をする場所だった。 今日はそこに、監督役のファンキー先生と共にやってきていた。


「スキル『フォトンストレイヤ』」

 疾風の持っている剣に光が集まり強化される。 その技の見た目は、RPGとかに出てくる光の勇者の技といえるようなエフェクトを纏っていた。 疾風は幅を太くして大剣にしてみたり、細長くして槍のようにしてみたりしてスキルを器用に動かす。


「なんともまぁ、見事なもんだな」


「少し暮らしてみて思いましたけど、すっごいファンタジーな世界ですよね」

 疾風は『フォトンストレイヤ』を解除しながら言う。 剣を鞘に慣れない手つきで戻しながら、ファンキー先生が待機している場所へと歩いて戻る。


「先生今年で45になるが、生きている間にこんなヘンテコな経験することになるとは思わなんだ」

 笑うファンキー先生に、疾風は尋ねる。


「...先生は、怖くないんですか?」


「それは、帰れないかも...という話か?」


「はい」

 ファンキー先生は少し悩んだ後答える。


「...そりゃ、思う所はある。 でも先生、天涯孤独の身だからお前らよりかは帰還を急がなくていいって、心が許している所があるのかもな.....。 帰還を急いでいる生徒には悪いとは思ってるが、今の所、この国に居る生徒を守ることで先生は精一杯だ」

 ファンキー先生は続けるように『こんなこと、他の奴らには言うんじゃないぞ』と、疾風に向かって苦笑しながら言った。


「先生....聞いてもいいですか?」


「なんだ改まって」


「俺は、俺は帰りたいんでしょうか?」

 疾風は思う、この考え方は誰かの思考に引っ張られた末の考えなんじゃないかと。 これは本当に自分の考え方なのかと...。


「何故疑問形なんだ、お前ほど好かれる人間なら帰りたい意思が強いんじゃないかと、勝手に思ってたんだが」


「それが()()になることもあるんですよ」


「....正直、お前が何に悩んでいるかは先生には分からん。 だが、少なくとも街でお前がやっている人助けに関しては正しいと思うぞ」


「そうですかね」


「相談ならいつでも乗ってやるから遠慮するなよ」

 ファンキー先生は、訓練を始めた疾風に対し優しい言葉をかけた。


「ありがとうございます」

 そう礼を言いながら疾風は剣の練習をする。 ファンキー先生は、そんな訓練を少し辛そうな表情で見つめていた。



「先生はな、誰にも傷ついて欲しくないし、誰かを傷つけて欲しいとも思わないんだよ」

 疾風に対し、半ば愚痴るように呟いた。


「.....でも先生、それは」


「大人だし理解はしてる、でも教師として学年主任として...そして一人の大人として、ソレだけはどうしても容認できん」

 剣と魔法の異世界にやってきて、誰も傷つかない傷つけないピース・オブ・ピースの精神を持ち続けることは不可能に近い。 なんせ環境が違いすぎる、環境や文化が違えばそれによって衝突が生じ、同時に争いも生まれる。


 争いが生まれれば、人は必然的に武器を取る。 


 自分を守る為。


 大切な何かを守る為に。




 ここは日本じゃない、自分たちの世界の法律はここに居る生徒たちを守ってはくれない。 中学生や高校生で、周りを見れる人間ならすぐにその考えに至る。



 だが....。



「それでも先生は、お前らが武器を取ることに対し首を横に振り続けるだろうな」

 極めて強い意思がこもった言葉を疾風にぶつけた。 言葉の意味の裏側に、天賦を悪用するな、この世界に生きる人を下に見るなという想いが隠されている気がした。



 その後、周辺にいる魔物を数匹狩った後二人は『勇者基地』と、街の人から呼ばれている...勇者達が普段暮らしている屋敷へと、()()を使いながら歩き始めた。



 しばらく歩いていると......。

 見慣れぬ路地に出てしまった。




「迷いましたね先生」


「あぁ、迷ったな」

 メインストリート周辺以外は区画整備の進んでいないスピールト他民族国家。 土地勘のない者が裏手を少し歩けば、簡単に迷子になるくらい道が複雑に入り組んでいた。


「だがまぁ幸いここら辺はアルコールがあんまり飛んで無いな。 これなら酔っ払う事も無いだろう」


「本当にあるんですねそういう場所」

 周辺を嗅ぎながらファンキー先生はそんなことを言ってくる。


 そのまましばらく歩いていると、2人の居た場所のすぐそばの酒造工場が一瞬紫色の光のようなものを周辺に放った。




 気になった二人は、開けっ放しになっている両開きドアの隙間から中をのぞくと...。




「だれだべ! 覗いていやがるのはぁ!」

 ドアがバンと外側に強めに開き


「いでぁっ!!!」

 覗いていた疾風が後方に吹っ飛ばされる。 それと同時に、中から3頭身ほどの小さな小人のようなお爺さんが出てきた。




 ...........で。



「いやーすまんかったべ、勇者様だとは思わんかって」

 あの後、疾風が軽く倒れパニックになった小人が作業場の事務所へと通してくれた。 作業場には数人の小人が居て、木箱に入れられた妙な黒っぽい水晶があったり、作業場の地下から流れてくる赤ワインのいい匂いが広がっていたりした。


 事務所のソファーで寝込む疾風を尻目にファンキー先生が


「いやいやこちらも悪かった、突然光り輝いたもんでビックリしてしまって」


「始めてん人はみんなびっくりするべ、勇者さもそこら辺は一緒なんだなぁ」

 しかし体が小さい、それに従って家具も小さい。 


 バリアフリーという奴だろうか?




 しばしの沈黙の時間が訪れる。 

 お互いこんな状況になってしまった為、少し気まずい。 

 ファンキー先生も口が上手い方では無いのだ。




「....ここはワイン作ってらっしゃるんで?」

 沈黙に耐えかねたファンキー先生が小人の人に聞く。


「んあぁ、まぁ勇者なら言っても大丈夫だべな。 ここはワシ達ドワーフが作る『魔力酒』の酒造工場だべよ」

 小人では無く、ドワーフだったようだ。 小人のような3頭身も、聞きなれたドワーフという単語で全て俺の中で理解ができた。


「ワハハ、聞きなれんって顔してー。 まぁ無理もね、ここ最近市場に出せるようになったばっかのシロモンだべ」

 テレーダさんから酒造の国と聞いたとき、新しい酒の製造もやってるとは聞いていたが、実際にどんな酒なのかまでは聞いていなかった。


 魔力酒というのか。


「赤ワインに魔力さ入れた石ころ入れて3年寝かせるんだべ」

 ドワーフの人が簡単に説明をしてくる。


「石というのはあそこに積まれてる黒っぽい?」


「んだ、場所によっては魔石なんていう呼ばれ方してるべ」


「魔石....」

 子供時代にやった、なんちゃらクエスト(※ゲームソフト)の中に出てきそうな名前だ。 


「正式名称は『インストロニウム』ってんだべ、ドワーフの独自技術だけがこの石に魔力を込められるんだべ」

 魔石だとか魔力だとか....。 俺はあまりゲームをやらないので単語に正直ついて行けない。 スキルの説明の際に言われた、魔法・物理系統スキルとは別物なのだろうか?


「本来なら鍛造とかに使ったり、兵器の魔法的機構へ組み込んだりするんだべ」


「兵器....」


「ん、勇者さどしたべ?」


「いえ、あまり聞きなれない単語なもんで」

 日本で普通に暮らしている大人なら、兵器なんて物騒なモンに関わることもないだろう。


「噂聞いてたが、本当に戦いに関わりない世界から来たんだべなぁ」

 そんな話をしていると、寝かせられていた疾風が起き上がった。 ぶつけた後頭部をさすりながら、寝ぼけ顔で周囲を確認している。


「んん....」


「おぉ疾風起きたか、災難だったな」


「ホント悪かったべ....」

 ドワーフは申し訳なそうに頭を下げる。


「いやっいやいや、覗いてた俺らが悪かったですから頭上げて下さい!」

 お互いにしばらく謝りあった後、疾風は軽く魔力酒の話を聞いた。





 数分後.....。




「じゃ、これ以上仕事の邪魔するのも悪いからおいとまするか」


「そうですね」

 ファンキー先生と疾風は席から立ち上がり帰宅の準備を始める。 するとドワーフの人が疾風とファンキー先生に向かって口を開いた。


「勇者さ、魔力酒を...どうか戦いには使わんで欲しいべ」


「「??」」

 困惑する。 

 戦いに使うとはどういう意味だろうか?


「それは...どういう...」


「作り手としては、()()()()()()()()()()()()()ということだべ」

 それ以上はドワーフの人は何も言わなかった。 疾風とファンキー先生は疑問を残しつつ、当初の目的であった勇者基地へと帰宅することにした。



 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


【その夜、スピールトの埠頭...倉庫付近では】



 夜が更け、街灯の薄明かりが道を照らす時間帯。 国で制作した酒類を保管する、国の心臓部ともいえる倉庫周りでは夜間担当の警備が巡回していた。 夜間警備の巡回量....セキュリティの強さを活かすために、この近辺にはホテルなどもある。 無論倉庫近辺には、許可が無いと立ち入れないよう壁や警備で強く守られているのだが。


「あー暇だ―」

 倉庫の裏手をランプを持ちながら警備していた男がぼやく。 男の腰には拳銃や剣が下げられ、有事の事態に対処できるようになっていた。


 壁の外側の警備も相当数居るのに、壁の内側のこんな所にまで侵入された例なんて無いので男は完全に気を抜いていた。




 すると目の前からゴソゴソと妙な音が聞こえてきた。


 そちらの方にランプを向けると、見慣れぬ黒いローブが倉庫の裏口ドアの位置などをマッピングしていた。 黒ローブはフードを深く被り、男か女かの区別がつかなかった。


「そこのお前ッ何をしてる!」

 警備の男は、懐に下げていた剣を鞘から抜き黒ローブに向ける。


「チッ!」

 黒ローブは、舌打ちをしながら投げナイフを警備の男の手のひらに投げ、刺す。 痛みで剣を落とした警備を尻目に、黒ローブは何故か()()()()()()()()()()


「こん畜生が!」

 逃がさないという意思を込めて黒ローブの背中へ拳銃を数発発砲する。 一発が肩に当たったのか、ローブの男がよろけるが直ぐに体勢を戻し走り出す。

 周辺に発砲音が響き、騒ぎが拡大する。 


「正面に向かったぞ! 逃がすな追え―――ッ!!」

 警戒用の鐘が鳴り、警備が慌ただしく動き始める。 弾丸やスキルが男に向かって無数に飛んでいくが、スライディングやカバーなどを使ってかわしながら突き進む。


 男は正面ゲート付近の壁に、懐から取り出した四角い物体を投げつける。 四角い物体はカチカチと音を立てて爆発し、壁に大きな穴を開ける。


 その穴から男は外へと飛び出し、海に向かって走り出す。


「海に入れるな! スキルで逃げられるぞッ!!」


「酒造管理役所に直ちに連絡しろッ!!」

 慌てふためく警備達。 黒ローブはフッと笑い、スキルによってダッシュを加速させる。


 警備の数人が対抗するように加速し、海岸線付近で黒ローブを追い詰める。 6人近くの人間に剣やスキルを向けられて、黒ローブは動きを止める。


「両手を上げ、地面に膝をつけ!」

 黒ローブは言われた通りに動く。 膝をつきながら、手を上に上げようとし....手に持っていた丸めた書類を空中に投げ捨てた。


 軽くおもりをつけているのか、風に流されることなく空中に浮きあがる紙を、どこからともなく飛んできたフクロウが回収し持ち去る。


「「「は!?」」」

 すぐさまフクロウを撃ち落とそうとする警備、そんな動作を妨害するが如く黒ローブは懐から武器を取り出し、警備の6人と斬り合う。 


「なんて頭のいい鳥だよ! セカンドプランって奴か!?」


「付近にこのローブの仲間が居るぞ! 探し出してとっ捕まえろ!」

 その場に居た数人が怪我を負いながら、黒ローブを捕縛する。 



 その後、フクロウを追いかけた警備が方向を確認して見失い。 報告された情報に、酒造管理役所の役員達が頭を抱えることになるのだった。

==☆次回予告☆==


33話の閲覧お疲れさまでした。


今回のプチ話は、作中で出てきたダッシュ加速のスキルについてです。 

このスキルの名前は『ヘイスト』という名称のスキルです。 使用すると移動速度そのものが上昇する、シンプルなスキルです。


そのシンプルさ故、結構人気のスキルなようです。



次回、34話......その国 勇者冒涜なり!


※注意※ 次回、少し胸糞展開になる...かも?

正直あんまり胸糞展開は好きでは無いですが、物語の展開上書くしかないので仕方がないね。 あんまり胸糞になるようなら対策入れたいと思います...。


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ