31話 そして兄貴 妹を想う!
そして...暴動の翌朝、夜空は借りているいつもの部屋で目覚めた。 起き上がろうとするが全身が痛みを訴えてくる。
「うっわ、筋肉痛すごっ!」
脱力し動けなくなった俺は、恥ずかしながら12歳の少女に肩を貸してもらいながら...なんとか屋敷までたどり着き、そのままこの部屋で飯も食べずに爆睡してしまった。
痛む体を無理やり動かしてベッドから降り、部屋を見渡す。
「イェーガーを倒した以上、これ以上ここに留まる理由も無いか」
結局、国を出るのが少し惜しくなってしまった。 なんだかんだでリリスと仲良くなってしまった手前、必然の感情ではあるのだが。
妹を見つけ、このふざけた世界から脱出する。
その目的だけは揺らぐことはない。
「荷物まとめて挨拶して....国を出るとするか」
夜空は独り言を呟いた後、ストレッチをしてから荷物を整理する。 といっても持ってきたモノなんてほとんど壊れてしまい、この部屋から使えそうなモノを持ち出す...という言い方のほうが正しいのだが。
壊れているが、一応銃は持っていくことにした。
それにそろそろ国を出ないと少しマズい。 トニールの関係だ、あの銭ゲバ野郎が大陸線を抜けるのを手間取っていたとしても、流石にそろそろオニキスに着く頃合いだ。 それまでに現在地から移動しないと、最悪の場合イスカルがセブン国へカッ飛んできて即詰みもあり得る。 それが出来てしまうからイスカルは恐ろしい。
「はぁ、人気者は苦労するな」
自虐っぽい独り言を呟きながら。 カバンから壊れた銃と空っぽの財布とメモ帳以外を捨て、腐りにくい食料を棚から適当にとって詰める。
「しばらくはクルミとかを齧る生活になりそうだ」
間違いなくコンビニ弁当生活より不摂生だろう。
...あと、金どうしよう。
リリスにせびるか? いやでも、流石に年下から金を恵んでもらうってのも...なんか人間として色々終わってる気がするし...。
「はぁ、背に腹は代えられんよな」
決めた、カイルに貰おう。 アイツには悪魔みたいなポーションを押し付けられたからな、少し位は文句を言う権利はあるはずだ。
夜空は自分の冴えわたる脳にガッツポーズを決めると、カイルの部屋へと行く。 ノックもせずにカイルの部屋を開けると。
ベッドに横たわるカイルと、黒いローブをつけた年配剣士がそこには居た。
「なんだノックもせず、やかましいぞ」
年配剣士が言葉を紡ぐ。
「いや、迷惑料をカイルに貰いに来たんだが」
「こ、小僧...見て分かるほどの怪我人に金を要求するのか?」
年配剣士がドン引きしている気がする。
「え?」
夜空は(それが何か?)というような声を出し
「え?」
それがドン引きに繋がったのか(こいつマジかよ)みたいな声を返してくる。
極めて遺憾である。
俺は何も間違っていないハズなのに...何故だ。
「小僧と話せば頭が痛くなる気がしてならん、これやるから大人しく去れい」
年配剣士はそこまで言うと、夜空の手に3金を渡してきた。 日本円にして3万円相当...悪くない、旅をする分には心もとないが、まぁいいだろう。
「言いたいことはあるけど、まぁいいや...じゃ失礼しま~す」
「待て、カイルに何か言う事は無いのか!?」
え?
「あ、あ――――――ねぇな」
年配剣士がコイツマジかよみたいな顔を向けてくる。
「人としてどうなんだソレは」
「だって、このシスコンが簡単にくたばるわけ無いしな」
夜空はそこまで言うと、カイルの部屋を後にする。 あの時、戦闘していたみたいだし...カイルにもきっと色々あるのだろう。 なら俺みたいな余所者はソレに深く立ち入るべきじゃない。
部屋に戻った夜空は、財布に3金を突っ込んでポケットに財布をしまう。
一応部屋のシーツのしわを気休め程度に直して部屋を閉めた。
「またしばらくは野宿か~」
嫌だなぁ。 腰痛いんだよなぁ...早く寝袋が欲しい。
しばらく歩き、普段リリスの両親が居る居間に到着する。 一応挨拶位はしておくべきだろう、出会いこそ最悪なものであったが、色々世話になったのも事実だ。 それに出会いの件は100%俺が悪いので、あまり文句を言うのもよろしくない。
ドアを数回ノックし、中から許しが聞こえたので扉を開ける。
「おぉ夜空君か、無事でなによりだ」
「おかげさまで...ありがとうございました」
夜空が部屋を見回してリリスを探していることに気が付いたのか。 リリスの母親が夜空に対して口を開いて
「娘なら今頃、知り合いのお見舞いに行ってるわ」
そう言ってきた。
「そうですか、最後に挨拶位と思ってたんですが」
両親が『最後』というワードにピクリと反応する。
「え、娘から立派な剣士にするって...」
あの銀髪少女、そんなこと言ってたのか。
「俺は頼んでませんね。 それに、もう国を発ちます」
「そんな急がなくても...娘も貴方のことを気に入ってるみたいですし」
夜空はリリスの母親の言うことを首を振って否定する。 そんな会話をリリスの母親としていると、リリスの親父さんが横から口をはさんできた。
「しばらく屋敷に残ってもいい、もし君が遠慮してるならそれは考え過ぎだ。 幸い屋敷には部屋が余りまくってるのでな」
ある意味安全面という魅力はある。 ここで留まる選択をすれば、辛いトレーニングはあるが...セブン国が俺を守ってくれるハズだ。
だけど...。
「すいません、魅力的ではあるんですが、俺にも信念のようなものがありますから」
「...その信念、聞いても?」
「家族を探さなければいけません」
夜空が本心を告げると、親父さんは『そうか、分かった』と言ってそれ以上何も聞いてはこなかった。 リリスの母親が心配とは別の感情で寂しそうな顔を浮かべる。
「せめてリリスと話でも...」
「いえ、大丈夫です。 代わりによろしく伝えておいてもらえますか? 自分でいうのも何ですが、俺みたいな人間とは長く関わるべきじゃないですから」
リリスの母親はそう言われた手前、もう何も言い返せなかった。
夜空は失礼しますと、会話を一方的に切り上げて屋敷をさっさと後にする。 これ以上、引き留められたら本当に心が揺らいでしまいそうで怖かった。
夜空はすっかり晴れて、照り付ける日差しを手で防ぎながら。
「空が綺麗だな」
そう独り言を言った。
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【......10分後、セブンティア家屋敷では】
居間にお見舞いを終えたリリスが顔を出した。 その顔はどこか悲しそうな顔をしていた。
「おおリリス、どうだった?」
「...数名ほど知り合いだった方が重症でしたが、亡くなった方はいませんでした」
「そうか、それはなによりの知らせだ」
リリスの父親は安堵したように息を吐く。
「それでも沢山の方が...っ」
「それは違う、お前が気に病む必要は絶対にない。 お前は勇敢に戦い、国を脅かした悪を国から叩きだした。 カイル同様に他の貴族が褒めてぐらいだ...だから、もういいんだ」
事件の夜、貴族側で緊急集会が開かれ...ボアルの処遇や今回の功労者について話し合った。 ボアルの処遇については、今のところ未定...今後の市民を含めた裁判で改めて判決が下される決定となった。
それでもリリスが言うように、多くの命が散っていった事実に変わりは無かった。 勿論、リリスは何も悪くない。 むしろ国を守るために幼いながら尽力し、そしてそれが結果として残った...これを英雄的行動といわずなんと言おうか。
「...夜空さんは褒められて無いんですかっ?」
「夜空君は、なんというか立場が特殊でな。 軽めとはいえ、国に入って僅か一日で犯罪を起こしたのを含めて色々やってたからな。 我々国を預かる立場が、手放しで彼を誉めるわけにはいかなかったんだ」
そして、今回の功績から夜空の活躍はもみ消された。 実際の罪に関しては、裏工作でもみ消してはいたので、実質的に夜空は何もしていない感じになってしまった。
「夜空さんはまだ部屋で寝てますか?」
「今さっき国を発つと出発したよ」
「えっ!!!」
リリスが困惑したじろぐ。
「家族を探すために、また旅を....おいリリス何処へ!」
父親の話を遮り、リリスが夜空を追いかけるために屋敷を飛び出した。 と同時にリリスの母親が立ち上がり、使用人を居間へと呼ぶ。 妻の行動に理解が出来ず、リリスの父親はあっけらかんとしている。
「カリナ様お呼びでしょうか」
「...彼に出会って、なんとなくこうなるんじゃないかって思ってたわ。 あの子、この数日間凄く楽しそうにしていたから....。 だから、大至急用意して欲しいものがあるわ、お願いできるかしら?」
「何なりと」
カリナが発した一言で屋敷がバタバタと動き始めた。
(この国で一緒に剣士として頑張っていけると思っていた。 そしていつか、パートナーとして一緒に旅でも出来たらいいなと....そう、思っていた)
「も―――っ! 何処までも勝手過ぎますっ!!」
リリスは膨れっ面を作りながら、居住区側の首都の門へと急いで走って行った。
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夜空は居住区を歩きながら、この国で経験したことを思い返していた。
銀髪碧眼少女と出会い、何故か共に戦うことになり、危険な男との戦闘....オニキスに居た時間よりも短いハズなのに、なんだこのろくでもない出来事の数々。
「俺って天賦といい赤印といい、とことん神に愛されてねぇのな」
人に愛されないキャラなのは知ってるし諦めてるが、神にまで嫌われてるのは流石にたまげた。 生涯、俺が神に信仰心を向けることは無いだろう。
夜空は首都を出る門の周囲の本屋で、前々から欲しかった地図帳を探し購入しようと適当な物を手に取る。
冒険者ギルドのガイドブックに関しては屋敷に置いてきた。 日本でも、キノコの見間違いで実際事故とか起きてる事例がいくらでもある訳で、食べられる野草の情報なんて例えガイドブックありきでも、素人目で判断すれば絶対ロクなことにならない。
この世界じゃ、医療技術だってポーションなんていう便利な物がある以上そこまで発達していない可能性が高い。 そういうテーマの国があれば話は別だが。
「じゃあこれ下さい」
「24銀ね。 毎度」
意外といい値段するなと思いつつ、地帳図帳を開く。
【☆テーマの基本的な仕組みについて☆】
...地図帳には夜空の知りたかった情報が載っており、場所はもちろんの事...テーマの意味やその仕組み、各国の観光名所から気を付けなきゃならない事まで地図帳としての一連の機能を取り揃えていた。
「一部情報が載ってない国があるな。 えー何々...情報規制の為、情報制限がかかっています...行く場合はお気をつけください...か」
春...こんなあぶねぇ国に召喚されてないよな?
大丈夫だよな?
「じゃ行くか」
夜空は地図帳をバッグにしまい込み、門へ向かって歩き出した。
しばらく露店などに目移りしながら歩いていると、後ろから『七式のリリス様だ』とか『英雄が通るぞー-っ!』とか聞こえてきた。 振り返ると、見慣れた銀髪が後ろから走ってくる。
「夜空さんっまっ、待って下さい!!」
全力で走ってきたのか、リリスが息切れしながら呼び止めてきた。 先日の一件で、街から半英雄視されているのか人の注目をかなり集める。
「なんだ気を使ってやったのに結局来たのか」
「来たのかじゃないです――――っ! なんで黙って出て行っちゃうんですか!?」
いやだって忙しそうにしてたし、俺なりの気遣いのつもりで...。
「あぁそういえば言ってなかったな、パートナー契約は終わりだ。 だからもう俺に気遣いなんてしなくていい、もし友達としてとかそういう感じなら...それももういいよ」
リリスがその言葉に目に涙を浮かべ、周りの目が一気に厳しいモノになる。
....。
なんか前にもあったなこんなの...。
「勝手過ぎます...っ」
「今更だろ」
「なら私も勝手にしますからねっ!」
ん? あれ、流れ変わった?
リリスは指笛を使って【ピュイ――ッ】と吹いてから、周りの人たちに向けて戦慄の一言を放つ。
「こ、この人っ、私に酷い事、恥ずかしい事いっぱいしました!!!」
「あ、あー...最悪の一手すぎるぅ...」
自業自得とは正にこのことだろう、事実も含まれてる手前言い返しが思いつかない。 リリスは、これでどうだというような誇らしげな顔でこっちを見ていた。
付近の住民...老若男女が黙って夜空を囲み、後方の首都の門の扉が告知なしに閉められる。 夜空を捕えようと、住民たちが今にも襲ってきそうな目に変わる。
「なのでっ...しばらく拘束お願いしますっ♡」
「クソったれ――――ッ!!!」
その後、飛び掛かってきた住民たちに拘束され、付近の小さめの留置所にぶち込まれたことは言うまでもないだろう。
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どうしてこうなった。
「ロリコン野郎が、パンでも齧っとけ」
「うるせぇ!」
留置所の管理をしている執行隊にパンを牢の中に投げつけられる。 夜空は付近に落ちたパンを拾って齧っていると、バタバタとリリスの母親...カリナとかいう名前の女性が入ってきた。
「ご、ごめんなさいね...我が家の娘が...」
「ハハハ...男を牢にぶち込むなんて、随分とたくましく育ってますね」
夜空は鼻で、自分の言葉を嘲笑いながら皮肉めいたことをカリナにぶつける。 しかしカリナは動じず、その場にあった椅子に座り夜空を牢から出そうとはしなかった。
「あの、出してくれません?」
「ごめんなさいね」
「いやごめんで無くて、出してって」
「ごめんなさいね」
クソッBOTみたいにオウム返ししやがって。
いっそのことハイパーウェーブで出てやろうか? いや、そんなことをすれば本物の犯罪者になってしまう。 国に到着したばっかの時はともかく、今回俺は何一つ悪くないハズだ。
「もー少し、リリスの意思を汲んでやるべきだったかな」
頭を掻きながら独り言のように呟くが、それがカリナに聞こえていたようで...。
「それは友達としての考えかしら?」
「逆にそれ以外ないでしょう」
「あるかもしれないわよ、恋心とか...ね?」
そんな考えをあの年の少女に抱けば本気でロリコン認定されてしまう。 それに第一、俺には温井さんという想い人がいるわけで...そこら辺は一途になっておきたい考えを持っている。
「ハハハ、その冗談は笑えますね」
「親の私が言うのも何ですけどね、娘は優良物件だと思うんです」
「は、はぁ...」
よく理解して無かっただけで、考えてみれば貴族の娘の中でもリリスってかなり優秀な方なのかもしれない。 この年で銀階級だし、知識もある、それにまぁ、可愛い所もある。
....そんな優秀な愛娘を、こんなカス男に進めてる時点で鬼畜そのものだと思うが。
「.......俺っていつ解放されるんです? かれこれ1時間くらい勾留されてるんですけど、そろそろ出してくれませんかね?」
「話を逸らすのね?」
「......」
黙る夜空にカリナがため息をついた。
「そうね、多分もうすぐかしらね」
書類整理とかだろうか?
しばらく待機していると、執行隊がやってきて牢から出してくれた。 留置所からほっぽり出される前に執行隊の野郎に激しく足を踏まれ睨まれたが、どんだけ俺の事嫌いなんだろうか?
外がやたら騒がしい。
「えぇ...何事」
留置所から出てきた夜空の目の前には、某ネズミーランドのパレード級の人が集まっていた。 大通りの隅には人が並び、セブン国の国章の入った旗を掲げたり、涙を流していたりした。
門へ続く大通りの真ん中には、冒険者風の恰好に着替えたリリスが立っていた。 リリスの家に置いてきたのか、胸には階級章は存在せず。 腰から青脚光の剣を下げていた。
「じゃあ娘をよろしくね?」
「は!?」
疑問や反論する暇無くカリナに大通りの中央へと押し出される。 急に出てきた見知らぬ男に、周囲の視線が一気に集まる。 しかし戻っても仕方が無いので、夜空は門に向かって歩き始める。
リリスをスルーしようとするが服のすそを掴まれ止められる。
「ここまでしたのにスルーして、どこ行くつもりですかっ」
「国を出るって言ったろ、お前もとっとと屋敷へ帰れ」
リリスを突き離そうとするが、服のすそを強く掴んで離さない。 リリスがボソリと呟く『好きって言ったクセに』と。
「いや、アレは嘘って分かってるだろお前」
「一緒に行きたい」
呟いたそれは素朴な少女のワガママ。 しかし俺は、この提案を年上として、友達として首を縦に振るわけにはいかない。
「ダメだ、危険度が段違いだ。 俺の旅は普通の旅路じゃねぇんだよ」
まだ12歳の少女を世界の敵に回す? 少し大げさだが、俺が直面している一番大きな問題は赤印の差別文化だ。 それ程までに巨大で無駄で...そんな荒波に、12の少女を突き落とすような残酷な真似は俺には出来ない。
「私、夜空さんより強いです」
「うっ」
痛い所を突いてくる。
「夜空さんより常識を知っています」
「うっ」
「夜空さんより人に好かれます」
「うっ」
「夜空さん...よりも...」
リリスが声が徐々に涙声に変わり始める。 夜空はハッとしてリリスの顔を見ると、その顔は懇願するような顔へと変わっていた。 夜空の耳には、周囲から飛んでくる『泣かせてんじゃねぇ』『しばくぞボケッ!』『このウンコたれ野郎が!』といったような罵声は、既に耳には入らなかった。
「どうしてそこまで......旅がしたいなら、何も俺にこだわる理由なんてねぇだろ!? この国になら強い奴はごまんといる。 それこそお前の幼馴染にでも頼めばいいだろ!」
「私は夜空さんと一緒に旅がしたいんですっ、理屈とかそういうのは無いんですっ! 行きたいから行きたいんですっ!! 友達と一緒に何かをしたいと思うのは、そんなにも間違いなんですか!?」
今までで一番強く、リリスは自分の意思をぶつけてきた。
そんな会話をしていると、遠くからカイルが走ってきた。
群衆を掻き分け夜空の胸倉を掴んで押し倒す。 『何すんだ!』という文句が出る前に、カイルは涙を零しながら夜空に向かって叫ぶ。
「頼みがある!!」
「頼まれる程仲良くねぇ。 おいカイル、愛しの妹とやらに言ってくれよ、行くんじゃないってさ。 お兄様が言えばリリスも聞き分けるだろ」
「....夜空、リリスを連れて行け。 兄貴として命令する、ただし変な事したら殺すッ!!」
素直に驚いた。
もしかしたらこの小一時間の間に、リリスに強く説得されたのかもしれない。 カイルの赤く腫れぼった目を見れば、悩んで悩んで....悩みぬいた末に覚悟を決めたことが容易に想像がついた。 服の繊維が切れそうな程、夜空の胸元を強く捕まえる。
マジかよシスコン、お前からその言葉を言われたら...もう断れないじゃないか。
夜空はカイルの肩をポンポンと叩き、放せとジェスチャーする。
「降参降参、お前にそう言われたら...断れないじゃんか」
リリスの顔がパァッと明るくなり、一気に上機嫌になる。
「変なことをしたら...」
「殺す、だろ分かってるよ。 妹を想う気持ちはよく分かるからな」
カイルは『そうか』といって不満そうな顔で屋敷へと戻っていく。
少し歩いた後立ち止まり、リリスへと振り返り叫ぶ。
「俺の最愛の妹リリスッ! 俺達は必ずこのセブン国をいい国にしてみせる!!」
カイルは言葉を続ける
「次戻ってくるその時に、リリスがこの国をもっと好きになれるように!」
その言葉に民衆が一気に沸き上がる。 あちこちから『協力するぜ』とか『セブン国万歳』というような声が聞こえてくる。
「未来ある一人前になった剣士の門出ッ、これが俺達の望む...誇りの先だッ!!」
リリスが笑顔でうれし涙を流しながら手を振り、夜空と共に国を後にしていく。 夜空もリリスに手を掴まれて無理やり手を振らされる。
二人が街道沿いを歩いて行き、見えなくなるまで歓声は続いていたという。
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この世界に召喚されて、約2週間ちょいが過ぎ...
夜空に初めて仲間ができた。
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【☆現時点で夜空が把握している世界地図☆】
※星マークは各国の首都の位置です、首都名の記載は画像にはありません
==☆次回予告☆==
31話閲覧お疲れさまでした。
当初の予定より6話ほど長くなってしまったセブン国編、いかがでしたでしょうか? 個人的にですけど中々綺麗にまとまったんじゃ無いかと思います。 ボアルを含む暴徒剣士たちの処罰についても、また追々本編で触れていけたらと思います。 ちなみに、夜空がリリスに酷い事(笑)をした件はカリナが誤解を解いてます。 だけど、それを踏まえて気に食わなかった執行隊の奴が夜空の足を踏みました、不遇ですね。
おまけを挟んで、次回から夜空サイドは一旦おやすみ。
時系列を召喚直後まで戻し、疾風サイド....酒造の国編の方が始まります。 夜空とはまた違う、危険なチカラへの葛藤や、異世界人たちの動き方にも注目です!
次回、32話......その光 目覚めるべし!
是非次回もご朗読下さい!
ではでは~




