3話 その天賦 勇者の力につき!
「それはできないって! ど、ど.....っ、どういう事ですか!?」
いつもはおどおどしている大庭先生が、それだけは洒落になっていないと立ち上がった。 オニキス王に害をなそうとしたと見られたのか、付近の衛兵たちが一斉に大庭先生に向けて武器を構える。
「「「「「無礼であるぞ!」」」」
「よい」
すぐさまオニキス王が片手をあげ、武器をしまわせる。
「勇者よ、何故そこまで怒るのか分からぬ......教えてもらえるか?」
オニキス王のその言葉に、大庭先生はおどおどしながらも全員を代表して話し始めた。 我々は、全員同じ教育機関に居た生徒や教師であるということ、空が突然光り輝き気が付くとここに寝ていたこと、自分たちの世界でやるべきことがまだ沢山あるということ。 その上で帰りたいのだと、改めてオニキス王へと僭越さを込めて進言した。
オニキス王は、顎に手を当てて少し悩むとこう言った。
帰還の手段が我々も分からない....と
うなだれるように大庭先生は膝をつくと『拓さん拓さん』と、泣きながら呟き始めた。 周りでは食事をしていた他の女生徒や中学男子生徒たちが、いつの間にか食事中断して泣いていた。
こうなることは必然だった。 見知らぬ場所へと突然連れてこられ厳しい現実を突きつけられた。 異世界転生モノをよく見ていたとは言え、自分が当事者となると流石に俺も笑えない。
俺にだって大切にしている者があちらの世界にはまだある。 家族や知人...楽しみにしていたイベントごとや好きな漫画雑誌の新刊...ect、出し始めればキリがない。
が、しかし...流石に全員一人になる時間は多少必要か。
めそめそと泣く周りの人たちを見て、仕方がないとばりにため息を吐いた夜空は、オニキス王に手を上げ発言の許可を求める。 オニキス王は発言を許可し夜空が喋り始める。
「王様、この度は我々の為に素晴らしい場を設けていただき感謝致します。 しかし我々には、少しばかりの心を整理する時間が必要です...一人に一部屋とまでは言いませんが、個室を用意することはできませんか?」
「フム..そうだな、この状況では折角の馳走の味も落ちるというもの、爺..すぐに手配を」
夜空はオニキス王に見えないようにガッツポーズをする。
「畏まりましたイガルダ王...皆さまこちらに、王城内の客室へとご案内致しましょう」
友人の肩に手を回しながら泣く者や、辛そうに目を瞑る者、先生のように大切な人の名前を呟く者も、爺と呼ばれた人が案内を始めるとヨロヨロとその場から立ち上がり、歩き始める。
「テルテルは意外と平気そうだな。」
「我がこの程度でへばるわけないですぞー! そういう夜空氏も中々冷静ですなぁ」
「.....俺は、もともとそこまで感情表現うるさい方じゃないしな、...ショックを受けてないわけじゃないんだけど」
テルテルは夜空と軽く会話した後、爺と呼ばれた人の後について行ってしまった。 広間に一人取り残された夜空も、後を追うために歩き出すと一人の若い騎士とすれ違った。
「...ご苦労様だねキミも」
すれ違いざまにそんなことを言われたのだが....。
俺言うほどなんかしたか? 頑張ってたの全部先生だぞ。
夜空は若い騎士の言葉を無視して案内された客室へと向かう、客室は2人一部屋の構成になっており男子と女子で階層が分かれていた。
俺は当然テルテルと一緒に......ならなかった。
「なんでだよ!!!」
一人だけ国賓用の客間では無く、住み込み執事たち専用の空き部屋に通された。 別に汚いってわけでは無いのだが、あのデブちんが国賓待遇なのに一人だけコレってのは少し思う所がある。
「申し訳ありませんね...お部屋が足りなくて」
「いえ別に、寝床と机さえあれば十分ですからそんなに気負わないで下さい」
使用人歴の長そうな優しそうなお爺さんに、そんなに申し訳なさそうにされるとこっちの心が苦しくなる。 俺は子供やお年寄りには優しい男でありたいと常々思っている男なのだ。
「なんか暇になったな」
部屋にあった窓から外を見ると、すっかり外の日は落ち暗くなっていた。 軋むベッドにダイブし、少し埃臭い枕に顔を埋める。
色々知って、そしてこれから知って行かなきゃいけない。 考えろ最優先で知らなきゃいけないことを....さっきのパーティ会場の魔法?の事や、魔物の事.....。 仕事の内容、それにこの世界の売買...通貨についてや固有の文化なんかも.....。
とまぁ...最優先はこんな所だろうか。
考え終わると、俺は飛び起き先ほど謝罪してきたお爺さんを探すことにした。 しばらく探すと小さな食堂で、簡素な食事をとるお爺さんを見かけ声をかける。
「おぉこれはこれは勇者様...お部屋のほどはいかがですかの?」
「悪くないよ...実家を思い出す狭さで安心するよ。 枕の材質もいつも使ってるものと差異無かったしな」
「それはなによりですのじゃ」
笑顔で会話を返してくる....あぁいい人だなぁこの人。
こんなおじいちゃん欲しかったなぁと思いながら本題に入る。
「おじいちゃん名前は?」
「クルトと申します勇者様...周りの者にはクル爺と呼ばれておりますのじゃ」
「じゃあクル爺...まず勇者は止めてくれ。 実感無いからムズムズするし、かたくっるしい...そうだな夜空...夜空と呼んでくれ、敬語もいらないから」
「まぁ...夜空がそう言うならこうやって偉い人がいない前くらいではええかのぉ...」
ホッホッホと笑うお爺さんを見ていると、本当に自分におじいちゃんができたのかと喜ばしくなる。
「今からクル爺に少し質問するけど、俺から質問されたとか他の人に言わないで貰えるか」
「何故かの? 別に内緒にしないって訳じゃないんじゃが」
「んぁー場合によっては差別的な発言になる可能性があるから...かな」
文化を知らない以上、会話のどこに爆弾があるか分からねぇしな。 銃刀法違反が無いこの世界じゃ、道行く主婦がバリバリに武装してる可能性だってあるわけだし、保険は掛けておくべきだと思う。
いや....流石に主婦は無いか。
「なるほどのぉ...で何を聞きたいんじゃ?」
「じゃあ...まずは...」
こうして俺はクル爺に、通貨の在り方や固有の文化...言語形態ついて聞き始めた。
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この国...というより5大陸の話
東・西・南・北そして中央...この世界はこの5つの大陸から構成されるそうだ。 中央大陸が真ん中にあって、その周りを不格好な円になるような形で残り4つの大陸が存在する。 周りの大陸間の間は海がそこそこの太さで流れておりこれを【サークル海】と呼ぶ。 基本的に大陸を越えるためには、大陸線と呼ばれる検問を越えて船で移動するのが一般的だそうだ。 無論、緊張状態にある大陸同士の移動はできないが。
そしてここ、オニキス帝国は東大陸の中央からそこそこ南側に近い場所にある国だ。
東・西・南・北と中央の5大陸間で通貨は固定されている。 銅・銀・金・白銀の4種類のコインがあり、銅が10枚で1銀、銀が100枚で1金、金が100枚で1白銀というような通貨構成になっているらしい、だからもし市場でリンゴを買いたいとなったら、1銀5銅というような感じで要求されるそう。
そして世界中に点在する街には必ず固有の文化が存在する。 それは決闘のような過激なものから宗教や芸術といったもの、鍛冶や農家・酒造や芸術・友情や恋愛などの精神概念に関わることまで様々...文化の形態は多岐に渡るが、全てにおいて被っていることはないそうだ。
これを【テーマ】と言うらしい。
基本的に、国の首都が掲げたテーマを周りの街が達成できるよう補助するのだ。
そして最後に言語形態、コレに関しては何故か...世界共通で日本語OKだった。 試しに...漢字を書いて見せてみたのだが、クル爺はその意味をしっかりと理解していた。 何故日本語がこの世界にあるのかについては、クル爺も良く分かって無かった。
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「ここだけの話じゃがのぅ...この爺、長い事この国で暮らしてきたが、この国のテーマだけはどうも好きになれんのじゃい」
愛国心強そうな感じあったんだけどなクル爺...それかこの国が相当なのか?
「どんなテーマなの、ここは?」
「運送じゃ」
「それがテーマ? なんか想像がしづらいな...」
この時代間の運送っていうと馬車とか? あと列車...とかか?
「蒸気機関車と呼ばれる、物資運搬専用の乗り物が町の西側にあるんじゃがのう...」
「その列車が吐き出す煙が、都市の西側に長い時間をかけて深刻な被害を出しておってな。 おかげさまで町の西側は丸ごと貧民街に変わってしまった」
国の利益の為とは言えひどい話だ。 劣悪な環境を辛そうに語るクル爺を見て、こっちも心が辛くなってくる。
「この国の蒸気列車はそんなに排気がダメなのか?」
「使ってる燃料にブラウジーコニウムという可燃性の鉱石を使用しておるんじゃ、採掘量がもっとも多く、さほど採掘に手間がかからない鉱石じゃがその分、その鉱石が燃えた時に出す黒煙が人間には無害でも他のモノ、木製の建物や道のタイルなんかを劣化させるんじゃよ」
「...それを国は無視してんのか? 甚大な被害だろ...」
その言葉に、クル爺は首を数回横に振ると
「外から入ってくる利益が遥かにデカいんじゃ、東大陸で最もデカい都市に最短で物資を送れるから、オニキス帝国より、東一番の国の都と距離が離れてる国は、皆この運搬技術を使用するんじゃ」
なるほど関税や手数料か...本来なら運送手数料だけで国を回すことなんて不可能に近いが、国全体が運搬に趣を置いていれば、国内の仕事量を最小限にして最高効率で運搬できるってわけか。 それに様々な物資を流し流せば、国の物価も下がっていく。
実に理にはかなっている...最も、西側の人間の意見を度外視すればの話だが。
テーマ運送技術、オニキス帝国...なるほどね。
「少ししか居ないけどさ、俺...なんかこの国嫌いだな」
「夜空...不満は隠さんと早死にするぞい..」
分かってるよクル爺...忠告どうも。
「それに、貧困街に住んでいる人間たちは差別される理由を持っとる」
「理由...?」
爺さんは手に持っていたコップをゆっくりと机に置き、こう言った
「あんまり...詳しくは口では言いたくない内容じゃが...俗にいう忌み子....の...」
明らかにクル爺の口が重たくなった。 夜空は、直感でこの話題には今は触れない方がいいと悟る。
しかし忌み子ねぇ...こっちでもヨーロッパ中世に、魔女狩りというものが行われていたように、そういう未知なる脅威を排斥したがる、悪しき文化みたいなモノがあるんだろうか?
「あー言いたくないならいいよ...アンタみたいな良い奴の気分を害してまで知りたくない。 そこら辺は追々自分で確かめるから」
「すまんなぁ、お前さんは勇者じゃからな...もしかしたらこの国を変えてくれるかもしれんな?」
そういうクル爺の目は優しく...そしてどこか悲しそうであった。 クル爺にも過去に色々あったのかもしれないとその目を見て少し思った。
「勇者云々よりも先に、ただの人間さ、過度な期待はしないでくれよ」
それじゃあおやすみ、とだけクル爺に伝えて部屋に戻った。 勿論だが俺に、一国の在り方を変える方法なんて知らないやる気もない。
...だけどもし俺に国を変えるほどの力があったのなら、俺はそれでも今と同じ答えを出すのだろうか?
それはきっと誰にも分からないモノだ。
「そういえば春の奴...今頃どうしてんのかな...」
ベッドの上で呟いたその言葉がトリガーになったのか、それとも自分の気づかない所でいつの間にか限界を迎えていたのか。 それとも...ただ純粋に、未知への恐怖からのものなのか。
夜空の目からは涙が零れ落ちていた。
「あ...あれっ...泣く気なんて全然、無かったのにな」
自分は強い人間だと思っていた。 腕っぷしの話ではなく、心の在り様が他の人よりも強い人間だと...そう思っていた。
そう思っていただけだったのかもしれないと、今俺は初めて気づいた気がした。
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窓の外から日差しが差し込み、朝が来たこと知る。 泣きつかれた目をさすり、顔を叩いて自分に喝を入れる。
「夢じゃないんかい」
こうして俺達33名の葉日学園の各員は、未知なる世界での初の夜明けを経験した。 使用人用の各施設で、朝の身支度をしているとクル爺が声をかけてきた。
「どうですかな勇者様...我々使用人と同じような備品で申し訳ないのじゃが...」
今俺が持っている歯ブラシのことを言ってるんだろうか? 確かに日本の製品と比べるとアレだが、別に使えないって訳じゃないので気になっていないのだが....。
「大丈夫だよ、色々ドアの前に用意しといてくれてありがとう」
朝起きて部屋を出たら、扉の前に色々な備品を用意しといてくれていたのだ。 タオルやコップ、歯ブラシやヘアブラシなどなど...ホテルのアメニティかよとツッコミたくなるほどの充実っぷりだ。
「なぁクル爺...聞きたいんだけどさ。 やっぱ俺ってここで暮らしてるメイドさんとかに怖がられてる?」
昨日からクル爺以外の、主に他の執事やメイドからやたら距離を感じるのだ。
「言いにくいんじゃが...我々人間は皆、未知を恐れますからなぁ...」
「そっかぁー」
俺は少しショックを受けながら朝の身支度を進めていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。 ...テルテルだ。
「夜空氏~! ここに居たかぁー-探しましたぞー!」
やたらテンション高く夜空の元へと駆け寄ってくる。
「お前なぁ...ここに人たちが怖がるだろうがよ、少しは頭を使え頭を」
ポカッとテルテルの頭をチョップして落ち着ける。 ていうか運動嫌いのこいつがどうしてこんなに慌ててどうしたんだろうか。 表情から察するに悪い事では無さそうだが。
「異世界お決まりのステータスに関してですぞ! 昨日の夜、あの遺跡からここに案内してくれた宰相さんが教えてくれたんですぞー!」
やっぱあの爺高い位の人間だったか...昨日の話聞いた後だと、色々考えてしまうな。 てういか俺のとこ来なかったんだけど、最初の問答で嫌われたかな。
...やっぱ真意見抜かれてたかもな。
「へー、でどうやって開くんだよ。 昨日色々試して『ステータス!』とか叫んでも、恥かくだけで開かんかったぞ.....念じてもダメだったし」
あの後、人の居ないところで再度色々試したがどれもうまくいかなかった為、半分諦めていたのだが...。
「まぁ見てるんですぞー!!」
そう言うと、中二病のようなカッコいいポーズを取り叫ぶ!
「運命の神よ! 我が道を照らせ・知らせ・導けぇぇええええええ!!! 人生ッアァッ回ー--廊ゥゥッー--!!」
無駄に長ったらしい詠唱分を唱えると、テルテルの目の色が少し青く輝いた。
....おいマジかよ。
「さぁ夜空氏も一緒に!」
「絶対嫌だ」
夜空は即答した。 誰だよ詠唱分こんな恥ずかしくしたの...マジでふざけんなよ、もし本人が目の前にいるのなら近場にある水バケツを投げつける自信あるぞ。
「でもやらないわけにはいかんでしょうに!」
恥ずかしがることが分かっていたかのように、目の前でニヤニヤしているテルテル。
コイツマジ殴りてぇ!
「なぁコレ本当に他の生徒やったのか!? お前の嘘だったりしない?」
「みんなやりましたぞ! それはもうやる気を出して!」
みんなやったなら俺もやらない訳には...いかない...よなぁぁぁああ....。
夜空は深いため息をつき、中二病のようなポーズをとる。 あーやだやだ、出勤前の執事やメイドがすっげぇこっち見てるよ。
「大声で言うんですぞ~」
はいはい、もうどうにでもなりやがれクソが。
「運命の神よ! 我が道を照らせ・知らせ・導けぇぇええええええ!!! 人生ッアァッ回ー--廊ゥゥッー--!!」
俺は恥とプライドをドブに捨ててタスクをこなした。 詠唱を終えると目の前にメニューが表示される。 ...表示されると同時に人として大事なものが消え去った音がした。
だが...妙だ。
「おい...何笑ってんだおま....ハッ!」
目の前で笑い転げているテルテルを見て瞬間的に察する。 周りの執事やメイド達も、みんな笑っている。
あっ! 謀られた!!!
俺は無言で近場に置いてあった水バケツを手に持ち、笑い転げるテルテルにぶっかけてから腹を足で軽く踏みつけた。
「グェエエエエエエエエエー-------ッ!!!!」
「なぁにがみんなやってるだ、畜生めええええええええええええええええええ!!!」
夜空の絶叫が、使用人宿舎全体に響いた。
テルテルをひとしきり濡らした夜空は、外で実際にメニューの使い心地を確かめていた。
「人生回廊」
そう言うと、目の前に先ほどのメニューが表示される。 自分が出したメニュープレートは他人には見えず、自分だけが内容を確認することができるらしい。
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そしてクル爺に聞いた。
この世界の人間には、自分の才能を知る手段が存在するという事...それこそが人生回廊と呼ばれる、自分の得意なことが書いてあるプレートのことだ。 この人生回廊という魔法?は誰でも自我が生まれた瞬間から直ぐに使うことができるらしい。
クル爺から聞いた話をまとめると、人生回廊に記述されている項目に、勇者なら【天賦】と書かれた欄が存在し、分かりやすく言えばコレは神からのギフト...異世界チートという奴だった。 異世界人ではない一般人は、この【天賦】が【才能】という文字に変わっており、生まれつき人よりも効率的に使えるスキルの名称が表示されるそうだ。
ただし効率的に使えるだけで、異世界チートである『天賦』のように初めから使えるわけでは無く、その名前のスキルを自身で習得して初めて『才能』は効果を発揮する。 これが天賦所有者と一般人の違い。
もし才能が農業の水やりに役立つスキルとかだったら、その子は親から農家になるように勧められ・剣のスキルだったら国の騎士や冒険者にと、そんな具合に将来の行く道を決めるらしい。 無論、一概に全員が才能に恵まれるわけでは無いとも言っていたが。
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そして、夜空の天賦の欄にはこのように書かれていた。
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★天賦:アビリティースティール
★天賦詳細:人族以外の死亡した生命体から、死後30秒以内であれば保有していたスキルを強奪し自らで使用することができる。
★警告:スキル自動取得不可・スキル自動進化不可・その生物の身体的特徴を使用するスキルの使用不可
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★現時点保有スキル名
・なし
・なし
★警告:現在2枠以降はロックされています....
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天賦のアビリティスティールの文字だけは、何故か赤色で表示されていた。 クル爺の話では才能や天賦は青色で表示されているとのことだったのだが...。
まぁ赤色だろうが青色だろうが大した問題じゃないのでどうでもいい。 夜空は寝ているテルテルを蹴りで叩き起こして事情を聞くことにした。
「おい起きろ嘘つきデブ」
「見えますぞ...ハーレムを作るイケメンな自分の姿がぁー」
「ハーレム男に見合う体つきになるために、その腹を踏んで凹ませてやろうか?」
その言葉に、嘘つきデブは飛び起きた。
「で、お前天賦何だったの?」
「それを聞きますか夜空氏! 実は最強なんですぞ我ッ!」
「で、何?」
「我の天賦、震源点ですぞ! 夜空氏は?」
震源点ってなんだ、地震起こすとかそんな感じか? なんか聞く感じめっちゃ強そうだが。
「俺か...俺はなー...」
ここで俺はふとつまらん仕返しを思いついてしまった。 さっきコイツに嘘つかれたし俺も嘘をついてやろうと...。
だから俺はこう言った。
「...農作物強化だよ」
我ながら農作物強化ってなんだよとツッコミたくなったが、テルテルは哀れそうな目で俺を見つめると肩に手を当てながら、涙をぬぐい一言
「我が夜空氏を守る、だからめげないでくれですぞ」
コイツに同情されるくらいなら、対抗で嘘なんかつかなきゃ良かったと心の底から後悔した。
夜空はテルテルに少しやらなきゃならないことあるからと言って帰るように促す。 夜空は、クスクスと先ほどの奇行を噂する使用人を避けながら自室に戻り考える。
アビリティスティール...死体からの能力の強奪という響きだけで一見強そうに見えるが、多分俺の想像が的中すればそんなに強い天賦でもないのかもしれない。 が...テルテルの天賦のように、他国を脅かしかねない天賦も存在することを同時に理解した。
「国が俺達を囲いたがるわけだ、勇者の力はそのまま軍事力に繋がるってことか...。 クソッあのタヌキ野郎め、意図的に黙ってやがったな」
しかし...
「人生回廊」
そう呟くと目の前にメニューが表示される。 メニューに表示されている内容は二つだけ、天賦と所有スキル一覧のみだ。 体力とか魔力とか装備の状態とか持ち物とか、そういったゲームでは定番中の表記は一切なかった。 あくまでスキルを見るだけのモノって解釈で良さそうだ。
最も俺の場合は、スキルの保有数に絶対的な枷があるみたいだが。
「次は俺の天賦についてだけど、能力の詳細やら限界保有量に関しては分かるんだが、進化やら取得やらが不可になってるのはどういうことだ?」
そもそもスキルってのは自動で手に入るもんなんだろうか? じゃあ勉強したりしても手に入れるものも自動扱い?
「だーわっかんねぇ! こればっかりは実際にやって覚えるしか無さそうだなぁ...」
今頃、先生があの宰相と色々会議しているころだろうか? 流石に先生一人で行ったり...してない...よな?
「天賦テストもかねて外に出てみたいけど...丸腰だし、弱ったなぁ」
一瞬、剣でも借りてみようかと考えたが直ぐに無理だと諦める。 剣道すらやったことないド素人が、騎士が持ち合わせているようなあんなデカい剣を軽々振り回せるわけがない。
いいとこ魔物に齧られ泣かされて帰ってくるのがオチだ。
「この世界の技術力なら...セミオートピストルまでは無理でも、フリントロックピストル位ならあったりしないのかなー」
フリントロックピストルとは、16世紀の大航海時代のころ実際に使われていた小型銃。 この時代は、妙に技術が進んでいる。 国のテーマとはいえ、確か18世紀初めに開発されていた蒸気機関車があるレベルだ。 地球と同じように正しく化学が発展していれば銃もあると思う。
「少し探してみるかね」
夜空は立ち上がると、昨日すれ違った階級の高そうな騎士を探すために城内を歩き回ることにした。
==☆次回予告☆==
完全な説明回でしたね...。
今回、本編に記載した難しい情報はまた別途で説明を入れると思います。 今はそんな感じの概念あるんだー位の解釈でいいです。 理解してくれると作者的には助かりますけどね(笑)
で、今回のプチ話は通貨についてです。
この世界の1銀と表される通貨単位は、日本で換算すると100円に相当します。 1銅は10円ですね....1金は10000円、とまぁこんな感じになっています。
ここら辺も主人公の夜空君がいつ気づくかも見どころですね。
次回、4話......その国 運送の国にて!
是非次回もご朗読下さい!
ではでは~
(※2話から4話までは1/18に連続投稿します)