20.1話 執行隊
【※この物語は朝の騒動...その裏のお話です】
結構ガッツリと本編に絡んでいますので、ストーリーをより理解したい方は読むことを推奨します。
それではどうぞ....
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黒いローブを付けた金ノ下の二人が、朝っぱらから小規模の騒ぎがあった場所へと駆け付けていた。 その場所は居住区の裏路地で、既にその場には壁に叩きつけらてのびていた男が一人。
「カイルさん、コイツ...リストにあった階級裏取引の恐れのある人物ですよ」
「ここ数日で何回目だ、首都を駆けまわって処理するこっちの身にもなって欲しいもんだ」
カイルは懐から手錠を取り出して、男を拘束する。 黒いローブをつけた男は、スキルを使って近場にいる仲間と通信を取る。
しばらくして、近場の協力者がやってきて、拘束した男を布袋に詰め、近場の協力者の家に連れて行ってしまった。 その場に取り残されたカイルたちは話を続ける。
「そういえばカイルさん知ってます? 例のハゲが剣術研究特区の方に現れたって話」
「知ってるも何も、昨日リリス...いや、妹が被害にあった。 こっちから首を突っ込んだらしいが、それでも犯人は本当に許せん」
「す、すいませんっ無神経で...」
事情を知らなかった男が誤ってくるが、カイルは首を振ってそれを否定する。
「いや、いい。 知らないのも無理はない」
「ハゲの話に戻るんですけど、一体何が目的なんですかね。 ご都合的に階級章まで破壊してくれてますし、国から追い出したい我々としては助かりますけど...」
「情報源でも気にしてるのか?」
「だってどう考えても変じゃないですか! 昨日のハゲの事件に関しても、階級章壊された男は階級売買してたみたいですし。 そんな事件が続いてる時点で偶然じゃないでしょ! 明らかに執行隊か、内政に精通している貴族から情報が洩れてます!」
「どっちでもいいだろ、正当に階級章が破壊されたように偽装する手間が省ける。 どうせ国から叩きだされるんだし、結果は変わらん」
拘束した男が連れて行かれた方向を見ながら、カイルが言う。
「どっかの貴族が偽善でやってるんなら勘弁して欲しいですよ。 管理できない暴力なんて、現場の人間からしたら邪魔でしかない」
男はため息をつく。
「だが上も黙認してる以上、出来ることなんて俺達には何もない。 行くぞ...他のエリアで階級売買が発生したみたいだ」
伝書バトから報告を受け取ったカイルが、その事実を男に伝え、裏路地を音を立てずに走り出す。
「今日は昼前までに帰れますかね~」
そう愚痴を言いながら苦笑し、男もカイルの後を追うように走り出した。
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現場に到着した執行隊を待っていたのは、既に戦闘状態に移行した仲間の一人の執行隊と、銀ノ上と銅ノ上の二人だった。 階級を上げる権限を持っている人物は、既にその場を逃走したのか姿を確認できなかった。
「動くなッ、執行隊だ! 階級売買の容疑で拘束するッ!!」
「げぇっ! 執行隊ッ!!」
「「増えちゃったよォ!」」
悲鳴を上げるのも無理はない。 首都の治安や、階級の不正を正す執行隊を構成するのは、全員が厳しい審査の元【金ノ下】や【金の下】に通過した者達だからだ。
当然、そこら辺の剣士より遥かに強い。 実質的な国の秩序の維持組織なのだ
「大人しく投降すれば国を追い出すだけで済ませてやる」
カイルが威嚇するように叫び、剣を抜く。
「なめんなっ! 俺達は夢を諦めたくないんだ!!」
「誇りを金でやり取りした時点で国はお前たちを認めない。 努力や決断を怠った者が追えるほど、夢ってのは単純じゃないんだ」
カイルが諭すように言葉を発すると、ソレに激昂した3人が襲い掛かってきた。 彼らの剣には、スキルによって作られた炎や水が纏われていた。
「喜べ。 剣技の国らしく、最後は剣技で叩き潰してやろう。 セブンティア流七式剣技、1番 ソニックスラスト!」
推進力を纏った神速の薙ぎ払いを行い、彼らの剣と階級章を破壊し胸のあたりの皮を軽く切って倒す。 斬られた彼らは、何が起こったか分からないというような顔で泣き叫ぶ。
「あ~あ~カイルさん、階級章まで破壊しちゃってまぁ...。 公式試合だったって役所に申請出すの俺なんですよ...」
「拘束されて軽い拷問の末、役所に自分で提出させに行くよりマシだろう。 どっちが剣士にとって残酷なのかは....分からないけどな」
切り伏せられた彼らの顔や体つきを見るに28とか29歳とかだろう。 制限に引っかかることを恐れた剣士が、30歳に届く前に犯行に走る....この国じゃ珍しいことではない。
夢の為と、自身の誇りを売り払い...立場を手に入れる。 この国の闇だろう。
「お前ら良いよな...才能があって。 俺は10年努力しても、結局届かなかった。 手にマメができるほど剣を振り続けたのにっ!!」
悔し涙を流す男に、執行隊は誰一人として心は動かされなかった。 いつもの光景過ぎて見飽きているというのもあるが...それ以上に
「豆ができるまで...ねぇ。 そんなものを努力と呼ぶなら、やって当たり前だ。 豆ができてソレを潰し、血と汗が剣のグリップを汚すまで...そこまでやって、初めてこの国はそれを努力と呼ぶんだ」
才能でも努力でも...格の違いを思い知った男が項垂れたように目を閉じ...
「国から...出て行くよ...俺には無理だ...」
「それでいい」
執行隊は軽い後処理をしてから、カイルは妹のことがあるからとその場を後にする。 しかしカイルは、自分の家であるセブンティア家の屋敷とは真逆の方向へと走って行った。
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しばらく走り続けたカイルは、街はずれにある人気のない橋の下へと来ていた。 カイルは橋の下を歩き、しばらくして横穴のある場所で止まる。 明かりの無い横穴に向かって、懐から取り出したリストを渡すように伸ばす。
すると
横穴から筋肉質の手が伸びてきて、そのリストを受け取る。
「今回のリストだ。 いつもの通りに階級章を破壊しろ」
その場を去ろうとするカイルに、筋肉質の男......イェーガーが出てきてカイルを呼び止める。
「手ごたえがねぇぜ...話と違うじゃねぇかッ!!」
「それを言うならこっちだって文句があるぞ。 誰が関係ない人間まで容赦なく巻き込んいいと言った」
「介入してくるから潰しただけだが!?」
イェーガーが手をゴキゴキと鳴らしながら叫ぶ。
「妹を被害に負わせた時点で、俺の剣がお前に飛んでいかないだけ感謝しろ」
イェーガーは妹という言葉に対し気にも留めず。
「俺様はもっと強い男と戦う為にここまで来たんだッ! これじゃあ腕がなまっちまうだろうがよォォォッ――!!」
「とにかく仕事をこなせ、全て終わったら俺が貴様の相手をしてやる」
「今やってもいいんだぜェ!!」
その言葉にカイルが剣を引き抜き、神速の速さでイェーガーの首筋に当てる。
「あまり調子に乗るなよ。 俺達は、ただの利害の一時的な一致により動いてるに過ぎない...いわばビジネスパートナーだ。 利用できないと判断すれば、俺は遠慮なくお前を始末する」
イェーガーが今は勝てないと判断したのか、手を軽く上げて降参のポーズを取る。
そのまま再び暗闇の中に消えて行った。
「制御できない暴力とは言ったもんだ...まるで狂犬だ」
セブンティア家はこの国でも力を持った貴族だ。 カイルはそこの長男として、国を守り、誇りを維持する責任がある。
そんなカイルにとって、イェーガーという暴力装置は魅力的だった。
面倒な手続きや処理を踏まずに、この国から不正者を追い出せる理由を作れる。 公式試合という名目でイェーガーが勝負を挑めば、誇りを謡うこの国の剣士たちは大抵勝負に乗ってくる。
そこで負かして、階級章を破壊する。
だが現実は、確かに階級章の破壊までは上手く行くのだが、必ず正義感駆られた第三者の介入が入り、騒ぎが拡大する始末。 妹のリリスもその一例となってしまった。
正直言ってカイルは、今すぐにでもイェーガーとの関係を切りたかった。 しかしここ数週間で何故か不正の量が爆発的に増加した。 正直言って、全く執行隊の人出が足りていないのも事実だった。
「俺は兄貴失格なのかもな」
だが、綺麗事だけで国を守れるほど、この世界は甘くないことをカイルは知っている。
「セブン国は愛しい国だ、妹が生きていくこの国の誇りは...俺が守る」
カイルの背中は、国を守ることに対し覚悟を決めた男の背中をしていた。
==☆次回予告☆==
20.1話の閲覧お疲れさまでした。
今回は短め、20話とのつながりも考えてこうなりました。 次回からまた話数は通常形式に戻ります。
次回、21話......その混乱 火種となり!
セブン国の物語が大きく動き出します!!
是非次回もご朗読下さい!
ではでは~




