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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== 大陸外逃亡編 == 【物語進行:夜空サイド】
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13話 かの少年 海を越える!

 積み込み作業の後、夜になった。 当然泊まるための金の無い俺は、トニールの荷台に一晩泊めてもらう約束をしてその場で休んだ。 トニールに関しては、酒場つきの宿屋でのんびり宿泊していた。 


 実に憎たらしい野郎だ。


 翌朝、船に乗り込んだ夜空は純粋に感動していた。 日本でも、俺は船に乗ったことなんて無かったが、船がこうも素晴らしいものだというのは知らなかった。 



 頬に風を受けながら、僕は今、この異世界で...初めて船に乗っていた。



 スキルで指を火傷したことは、頭痛くなりそうなので放置した。 落ち着いて考えられるような環境でも無かったので、無駄に頭を使いたくなかった。


 そんなこんなで今、俺は無事?に南の大陸への一歩を踏み出していた。


「ギィヒャハハハハ! 夜空ん船は初めてかいぃ?」

 汚い音が耳に響いてきて、海への感動がぶっ壊れる。 夜空は振り向きながら、トニールへと心底嫌そうな顔を向けながら口を開いた。


「いいものだな船旅ってのは、アンタと一緒なのが酷く残念だよ」


「いつか女でも作って乗ってみるといいぃ! 私と別れるまで、命があればですがねぇぃ!?」

 お前だって女居ないだろというツッコミは飲み込んだ。


「今ぐらい金のことを忘れさせろ」


「嫌ですねぃ」

 トニールは即答した。 闇金関係者にドアを叩かれてる負債者の気分というのは、こういうものなのかも知れない。 


 夜空はハァと深いため息をつく。 隣にいるこのドワーフが、もし温井さんだったらどれほど素晴らしいことだろうかと、少し想像しようとして止める。


(現実に引き戻された時に泣くから止めよ)


「なぁトニール、その剣の街っていうのは正式名称なんなんだ?」


「情報料」

 本当にブレない奴だ、コイツは。


「いいだろうがそんぐらい、ケチくせぇな!」


「金は貴方より大事ですがねぃ?」

 トニールに『もういいわ!』と吐き捨て、船上に居る他の...近場に居るおばさん商人に声をかける。


「すいません、今少し時間大丈夫ですか?」


「えぇ大丈夫よぉ! 何か欲しいモノでも?」

 やっぱりこの人も根っからの商人なんだなと、少し関心するのと同時に嫌悪感が....。 この世界で初めて見た、旅商人が()()()()だから悪いんだと、自分は悪くねぇと心に言い聞かせる。


「いや、そうじゃなくて...暇だし少し話したいな、と」


「あら若いのにおばさんにナンパかしら?」


「違えー--よッ!!! 剣の国に関することを少し聞きたかっただけだ!!!」

 少し落ち込むおばさんを見てゾッとする。 



 どうしてこう、この世界の商人ってのは変わり者が多いんだ。



「で、何を聞きたいのかしら」


「待ったおばさん、あとで情報料とか要求してこない...よな?」


「??」

 夜空からの言葉に首を傾げながら『要求するわけないでしょ?』と言った。 なんていいおばさんなんだ....トニールに、このおばさんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。


「良かった、直近の知り合いがクソ野郎だったもんで警戒してて....」

 おばさんが辺りを見回し、トニールを見つける。 他にクソ野郎に該当する人物はいなかったようで、夜空に憐みの目を向けてくる。


「あぁ、あの銭ゲバの? まさか、一緒に行動してるのかしら」


「誠に遺憾ながら」

 アイツ有名だったのかよ...


 可哀想に、商人の間でも爪弾きにされてんじゃねぇか。 

 夜空は、お前が言うな的なことを思いながら憐みの目をトニールに向かって向けていた。


「話変わりますけど、南の大陸にある剣の街って正式名称はなんなんですか?」


「剣の...? それってどっち?」

 いや、どっちと言われても...剣の国っていう情報しかないんだが。


「今から行く港に一番近い場所で考えて欲しいです」

 そう聞くと、おばさんは手を叩いて思いついたように頷く。


「あぁそれなら()()()()ね...元はセブンティア王国って名前だったんだけど、数年前に政治体制が大きく変わって、その上で名前が変更されたのよ」


「王政が民政に変わったの?」


「あら、詳しいのね? その通りよ」

 ていうことは小国家なのかな...デカい国なら、そう簡単に政治体制なんて変更できなそうだ。


「ちなみにテーマは?」


「どーだったかしら...私は色々な場所を回ってる雑貨商だから、あんまり行った先の国のテーマとか興味なかったりするのよね。 深入りするとロクなことにならない国も多いから」


「ソーナノカー..」

 オニキス帝国とかいう国を思い出しかけた。 確かに深入りすると闇が見えてくるあたり、このおばさんの考え方の年季の入り方が分かる。


「確か...確かよ? 剣士の技...そんな感じのを研究することがテーマだった気がするわ」


「つまり剣術ってこと?」


「あぁそうだわ思い出した、剣技よ剣技っ! テーマは剣技よっ!」

 どうやら向かっているセブン国のテーマは剣技らしい...どっかの街は運送で、次は剣技...クル爺も言っていたけど、本当に被ってることは無いんだなと痛感する。

 その後、おばさんと他愛もない話をしていると、おばさんの方から自分が何を売っているのかという話を振ってきた。


「私はね...雑貨、ロープとか薬・薬草とか、火薬に匂い袋、それからコンパスや食料なんかを売ってるわ」


「うーん、どれも冒険者の消耗品って感じだな」

 夜空は目の前に出された商品箱の中を物色していた。


 しかし、どれも今の俺には大して必要もないモノばっかりだった。


「私のターゲット層は、冒険者だからこうなるのも無理ないわよ」


 おばさんと話していると、船に取り付けられた鈴が鳴る。 船首の先には既に南の大陸が見え始めていた...浜辺には東の大陸では見られなかった木々が見られ、インコのようなカモメのような生物が鳴き声で船上にいる人間たちをもてなしてくれる。


 あぁ旅してるなぁ異世界で...と思わせる風景が目の前にはあった。


「そういえば貴方、しっかりご飯食べてるの?」


「なんでいきなりそんなこと聞いてくるんです?」

 おばさんは夜空の腹の辺りに目線をやってからため息をつき、商品箱の中からパンをいくつか取り出して差し出してきた。


「こ、これは...?」


「会話中ずっとお腹を鳴らしてたことにぐらい気づくわよ...トニールも可哀想なことするわねぇ、こんな子供に食べ物すら与えないなんて」


「なんかその...ありがとな、ここ最近辛いことが続いててさ...久しぶりに人の優しさに触れたよ」


「お金とかは要求しないから、ゆっくりお食べなさいな」

 優しいおばさんに貰ったパンを味わうようにゆっくり食べていく。 こんなに食べ物を美味しいと感じたのは久しぶりかもしれない。


 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


 港に着いた俺達は、おばさんと別れて船から荷物を下ろす。 トニールは、南の港に置いてあったサイ車を引っ張ってきて、夜空に荷物を運ぶように指示する。


 肝心のトニールは手伝いもせずに酒場へと行ってしまった。


「ふざけやがってトニールの野郎、借金消えたら一発ぶん殴ってやる!」

 文句を言いながら、無駄に重い木刀たちをサイ車に積み込んでいると...


「なぁ聞いたか、さっきの東大陸の商人の話...あれヤバくね?」


「このままいけば、情報提供だけで40金の報酬が出される予定だってよ、オニキス帝国も太っ腹だよな...どれだけ勇者強かったんだよ」


「俺も探してみようか...()()()()()()()()

 酒場の方から来たであろう若者たちが...耳を疑うような話をしながら通り過ぎて行った。


 間違いなく俺のことだ。 

 だが言い回しが妙だ...『このままいけば』とか『出される予定』だとか。


 まるでまだ確定していない情報...噂話程度みたいだ。

 夜空は話を聞くや否や、考える暇すら自分に与えず走り出し、港町であのおばさんを大急ぎで探す。 しばらく走っていると、荷造りを終えたおばさんが木陰で休憩している所を発見する。


「あら...さっきの男の子じゃない。 そんなに急いでどうしたの?」


「ハァ、ハァ...おばさん...藁紐と火薬をくれ、大至急だ」


「でも貴方お金が無いって...」

 あまりの迫力におばさんがたじろぐ。 


「服でも靴でも髪でも、なんでも担保としてくれてやるッ! だから頼む、時間がねぇんだ!!!」 


「......分かったわ」

 もうそれ以上、おばさんは何も聞かなかった。


「そのボロボロの上着を置いていきなさいな。 足りないけれど、知り合い価格ってことにしといてあげるわ」


「感謝するよ、おばさん!」

 夜空は深々と頭を下げて、火薬一袋と藁紐を少し買った。 


 サイ車に急いで戻った夜空は、トニールが返ってくる前に夜空は急いで仕掛けを始めた。 火薬袋の中に藁紐を突っ込んで、導火線の代わりにする。 作った火薬袋を、積み込まれている木刀の奥深くにねじ込む。  導火線代わりにした藁紐は、先端部分を自分の手で握って隠しておく、これで仕掛けは終わり。


 できることなら俺の杞憂で終わって欲しいが...多分無理だろう。


 あの守銭奴が、金の話に飛びつかないわけが無いのだから。


 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


 帰ってきたトニールが酔いで少しフラフラしながら、サイ車の御者席についてサイ車を走らせ始める。 



 いつもは口うるさいトニールが、夜空に対して何も言わない。 



 夜空は既に沸々と嫌な予感を感じ始めていた。 そのままサイ車を走らせること早15分、トニールが街道を逸れて林道(はやしみち)へと入っていく。


「なぁトニール、道こっちであってんのか?」


「夜空ん、心配すんなぃ」

 なるほどね、これは黒だわ。


「...サイ車を止めろ、トニール」

 覚悟を決め、冷たい口調になった夜空がトニールに対して命令する。


「何故だぃ? 私たちはこれから商売にいくのだよ?」


「黙れ銭ゲバ野郎、お前の腹の内くらい既に読めてるに決まってるだろ」

 トニールはニヤつきサイ車を止めてから降り剣を抜く、と同時に夜空はスキル『火種』を使って導火線に着火しておく。 時間差で爆発するように....。


 夜空も同様にサイ車を降りて、腰に下げていたショートソードを引き抜く。 トニールと直線状で対面しお互いがにらみ合う。


(引火までまだあと少し時間がかかるか...時間を稼ぐぞ。)


「酒場で聞いたのかアンタ、勇者の特徴について」


「えぇえぇ! 金の生る勇者様♡ 40金の勇者様よ!」


「罪悪感とか無いんだな...いや、あるわけ無いか、アンタクズだもんな」


「情報じゃ帝国は夜空んを失って悲しんでる...みたいだったけどねぃ? これ違うねぇ...命を奪われそうになって逃げてきたんだねぇぃ?」


「そうでもなきゃ川でドンブラコするわけねぇだろうが」


「じゃあ今死のうが、後で処刑されようが一緒だよねぇぃ!?」

 そう叫びながら飛び掛かってきたトニールは、引火した火薬による爆発で吹っ飛ぶ。 低品質の火薬の為、威力はそこまででも無いが...バラバラになった木刀の破片が炸裂弾のようになって、トニールの皮膚を裂き、刺さる。


 トニールは商人であり、騎士ではない。 


 なら俺にだって勝ち目はある。


「フゥ...フゥ...覚えてろぃッ!! 必ず、必ず帝国に居場所を告げ口してやるからなぃ...ッ!」

 トニールはボロボロの体を引きずりながら、回復ポーションの入ったバックに手を伸ばそうとする...が、夜空がそのバックを足で踏みつぶして、ポーションを無慈悲に破壊する。 


「勝手にしろよ、今の俺は別大陸だしな。 どうせ追跡なんかできやしねぇ」


「じゃあなトニール、帝国についたらあの宰相によろしく言っといてくれ」

 夜空は自分を見上げるトニールに淡々と言葉をぶつけ、最後にかかと落としで気絶させた。 夜空は今までの仕打ちの仕返しができて酷く嬉しそうだ。


 気絶したトニールから財布と、割れずに残ったポーション一瓶...そして冒険者ガイドブックを盗んでその場から去る。


 そして


「お前は嫌な奴だからな、俺もお前が困ることを全力でやってやらぁ!」

 夜空はトニールの胸元にある通行証のペンダントをむしり取り、少し歩いた茂みに隠すように投げ捨てた。 せいぜい再発行に時間と金を取られてしまえ。


 憎しみをこめて投げた通行証は空高く舞い、トニールではとても届かないような木の上に、過失で引っかかってしまった。


「あっやべ...引っかかった」

 笑いで肩を震わせながらその場を足早に後にする。 人をコケにするからこうなる、ざまあみろだ。


 この世界に来て、少し考えたことはあった、旅をしたいと。 ...創作物の中で描かれるような、勇者らしいことをしながら仲間と共に旅をしてみたいと。


 一人さみしく街道沿いを走る今の俺は、勇者では無くさしずめ足軽だろう。 こんな夢の無い旅があっていいのだろうか...。


「俺の目的は、この世界に来ているであろう春の発見...それだけを目標に突っ走ろう。 今後自分が道に迷った時はこの信念を元に判断しよう」

 夜空は自分の胸の奥深くに言葉を刻み込むと...再び走り出す。


 バッグの中にある、壊れかけの銃やノート・奪った財布やガイドブックがガチャガチャと音を立てる。 





 そしてトニールへの仕打ちを思い出してふと気づく。


 今の俺、勇者でも足軽でもねーわ.....

 ただの山賊じゃんか...と。

==☆次回予告☆==


13話の閲覧お疲れさまでした。 


今回で海を渡りましたが、ここだけの話...約2話分を丸々削って今の話にしてたりします。 当初は検問で引っかかってオニキス兵との戦闘....という流れだったのですが、どうにもね、今の夜空の戦闘力で生き残るのは流石にご都合が過ぎるかなと。 よってオニキス兵たちにはご退場頂きました、本当にありがとうございました。 まぁ別に、オニキス帝国がこれで終わる訳ないのでまた何処かで動くとは思われます。



ではでは、今回のプチ話はセブン国についてです。


セブン国の詳細説明は、今後本編にて載るので今は国土地理の話です。 セブン国はオニキス帝国とは違い、国土が非常に狭い事が特徴です。 そのため、補助テーマを持つ街が一つも存在しません、首都で完結している....3話だか4話だかで書いた、テーマの基本の例外という形ですね。 剣技というテーマなので、補助テーマが必要ないというのもあったりするみたいですよ?





次回、14話......その旅路 困難極まれり!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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