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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== アルテーラテルト編 == 【物語進行:夜空サイド】
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96話 その広場 声は響いて! 

 

「コレム君は混ざらないのかな?」

 一緒についてきたプラスが、夜空にもリリスにも聞こえない程の声でコレムへ囁いた。 その言葉を聞くや否やコレムが顔を赤くしながら振り向く。


「なっ、ななななっ」


「おやっ、不躾な事を言っちゃったんだよぉ....痛ッ」

 コレムは無言でプラスを小突いた。



 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


 それから少し経ってから、リリスはやっと夜空を離した。


「3番姫さんもごめんなさいっ」


「いいのよ、仲間は大切に....ね?」


「はいっ!!」

 いつも通りのリリスで安心した。



「それはそうと...その袋なんですか?」

 リリスが3番姫が抱きかかえる袋を指さす。 流石の3番姫も、『これはお父様の死体ですわ』なんて言えるはずも無く、罰が悪いような目で夜空に助け船を求める。


「.....詮索するなよ。 さぁ、広場に行くぞ」


「いい加減に....アンタはアタシと病院に戻るのッ!!」


「いででででッ、服を引っ張るなッアザが痛ぇ!!」

 コレムに服を掴まれ病院の方向に引っ張られそうになる。



「.....夜空さんは....隠し事ばっかりです」

 ボソッと悲しそうにリリスが呟いた。


「嘘も隠し事も...全部が全部悪い事だとは思わねぇ」


「そんなの分かってますよっ! でも、時々仲間として不安になるのですっ....信頼されてないんじゃないかって...めんどくさい女だとは分かってますけどっ! 全てを信じて待てるほど、(わたくし)は寛容な女じゃないんですっ、不安にだってなりますっ!!」


「そうよそうよ、嘘空!!」


「ツケが回ってきたみたいだねぇ」


「...お前ら....寄ってたかって散々言いやがって....」

 リリスとコレム、それに便乗してプラスまでも糾弾してくる。



 当然の帰結だな。

 嘘を嘘だと見抜けないマヌケは多いが、嘘が嘘であると理解した時、それを知ろうとするのは人間としての本能ではなかろうか? 全てを疑わない奴なんて、そんな便利な奴...現実世界に居る訳ねぇ。


 俺は目を逸らしてきた、リリスの不安から...コレムの怒りから。

 説明する責任を放棄した...いつか言おうと自分に言い訳して。



「......分かったよ、ちゃんと言うよ。 これが全て終わったら」

 夜空は皆に背を向けながら、3番姫から布袋を奪い取る。 リリスやコレム、プラスに持たれては、感覚から人が入っているとバレるかもしれないから...。 重さでズキンと痛むアザを、自分の罪であると認めるように受け入れる。


 別に俺が殺したわけじゃないけど。

 自殺をほのめかしたのは俺で.....。


 きっとこれは、俺が背負って行かなきゃいけない問題なんだろうな。

 落としどころなんて...きっと無い。




 夜空一行は、傘を差しながら広場へと歩みを進める。 夜空は、途中服屋によって3番姫の服を変えるように提案するが、3番姫自身がそれを拒否した。


「.....なんで?」


「この服だからこそ、出来る事があるのです」


「.......そうか」

 夜空は先ほど立案した作戦を思い出してため息をついた。

 広場につけば、夜空やリリスのバックアップは出来なくなる。 3番姫がしくじれば、そのまま拘束されて首を飛ばされるだろう。 しかし、今からやることは3番姫自身の力で乗り越えなくては意味が無いのだ。 



「作戦を立てておいてなんだけど、出来るのか? 十年くらいまともに人と話してこなかったんだろ、無理なら....逃げる手だってある。 どっちにしろお前の人生だし、好きにすりゃいいとは思うけど」

 夜空は3番姫に近づき、歩きながら話しかける。


「自分はあんなに苦しんでおいて...優しいのね?」


「...そんなんじゃねぇ」

 夜空の照れ隠しに3番姫がくすくすと笑う。


「心配感謝ですわ。 正直に言うと、怖いです...凄く。 鋼鉄搭に入れられてた時、搭の僅かな隙間から人々を見るのすら億劫になっていましたから。 でも、リリスや貴方を見て...逃げてはいけないと思いました」

 3番姫は決意を込めて言葉を続ける。


「私はまだ芸術がしたい、この国で...芸術を愛す民たちと...。 また昔のように、誰にも縛られることなく歌を歌いたいのです。 だから、私はっ、前に進みますっ!」


「それだけの覚悟があるなら、きっとうまくいくさ。 神様は俺には優しくないが、お前はずっと不幸だった..不幸にしかなれなかった。 今日ぐらいは、神様もお前に祝福って奴を授けてくれるよ。 それぐらいの.....救いはあってもいい筈だ」


「あら、意外にも信心深いのかしら?」

 は、冗談だろ? 何度祈って裏切られたと思ってるんだ。


「都合がいいだけさ。 俺は、俺を助けてくれない奴は嫌いだ」

 夜空は、3番姫の言葉を鼻で笑い飛ばしながらそう言った。




 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


【一方その頃、広場では】


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」

 広場に無造作に置かれた牢屋に姫が投獄され。 その姫たちに向かって、反乱の声やプロパガンダポスターに感化された民衆が怒りの声を上げる。 雨音をかき消す程の怒りが広場を包み込んでおり、カオスな空間と化していた。


 倒された王宮兵士は縄で拘束され、ペンキをぶっかけられていた。



「ゴーストさん、収拾つかなくなってます。 どうします、これもし話し合いで王族連中生かすことになったりしたら...逆に内乱起きるレベルっすよ」


「んぁー。 ある程度は予想してたがぁ、ここまで怒りが蓄積してたとはなぁ」

 牢屋の中で泣き続ける姫たちに向かって民衆は指を指しながら怒鳴る。 ゴーストがその様子を遠巻きに見ていると、ふと広場の隅の方で...気になる人影を見つけた。


「んぁー...? すまん、少し任せていいかぁ?」


「一服っすか?」


「....まぁまぁ、なんでもいいじゃねぇか」

 ゴーストは、その人影を追うように広場に降り立ち人の波を掻き分けていった。





「お前が親父の彫刻を踏みつけたせいで! 親父は心が壊れちまった、どう責任取ってくれるんだァ!?」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「私のママを返して! 死んだママを返して!!!」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「なにが完成された作品だ! 目指すべき場所をお前らが決めてるんじゃねぇよ!!! 完成された作品作りたきゃ勝手にやってたら良かったろうが!!」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「「「「「俺たち平民を巻き込むな!!!!!」」」」」

 出来のいい作品だけを優遇した王宮と、たとえ出来が悪かったとしても、それを笑い話や戒めとして次に繋げる芸術がしたかった民衆。 王が勝手に押し付けた()()が....民衆を犠牲として計算された、欲望の押し付けが怒りとなって姫たちに襲い掛かっていた。






 そんな様子を夜空達は広場の端で見ていた。 3番姫とは広場に入る前に別れた、一応その際に布袋と銃だけは手渡したので何とかなるとは思うが。


 あとは3番姫の頑張り次第なのでなんとも言えない。 対応を間違えれば......恐らく、明日の朝日を拝む事は叶わないだろう。


「ひ、ひどい....」

 リリスが辛そうに呟いた。 

 夜空はそんなリリスの様子を横目でチラ見してから視線を広場へ戻した。


「まぁ人によっては...そういう感想もあるだろうな」


「あのっ、あのお姫様たちは...どうなるんでしょうか?」

 .....非常に言いづらい事を。


「ここまで民衆が動いている以上、『はい止めます』は通用しない。 そんな事すればどうなるか位、元王族だったお前なら分かるだろ」

 プラスが夜空の【元王族】という言葉を聞いて、驚いた様子でリリスを見る。 そういえば、プラスはリリスと面識が無かったんだっけか。


「分かってます...けど、けどっ」


「心優しい奴だな。 だけど...アレは無理、絶対に無理。 3番姫なら立場や経歴的(けいれきてき)にワンチャンスあるけど、アイツらは違う。 実際に品評に関わり、数多くの芸術家の人生を破壊した張本人だ」


「......うぅ」


「やるだけ無駄の偽善なら、やらない方がいい...身の為だ」

 助けたい奴を全て助けられるのはスーパーヒーロー。 だけど、俺達はスーパーヒーローにはなれない、その力が無い。 なら、身の丈にあった立ち回りをするしかないのだ。


 それに、たとえ助けられる状況でも俺なら見捨てる。 

 自分たちがこんな下らない内乱に巻き込まれてる発端は、あの王族共のワガママのせいってことになるわけで....。



 熱がヒートアップし、今にも民衆サイドから姫に向かってスキルが撃たれようとしていた時! 広場を一望できる建物のベランダから....3番姫と何故かゴーストが一緒になって姿を見せた。


 ゴーストが放つ眩い電流が広場に居る人の目を集める。 


「んぁー。 目は集めたぞぉ?」


「感謝しますわ」

 3番姫はゴーストに感謝を告げてから、民衆の方へと向き直る。 何年も人前に立っていなかった女性が、小さな勇気を振り絞って...ベランダに立っていた。


「「ね、ネイディア.....?」」

 姫たちがその様子に驚き、自分たちに浴びせられていた罵詈雑言を無視してネイディアに救いの目を向ける。 なんとも都合がよく、実に図々しい連中だ。


 ネイディアは自分の血族の愚かしい姿を見てため息を零した。 


「私は、王族....アラブレイ王家、3番目の姫。 ネイディア・ルゥ・アラブレイ、皆様に拝聴して頂く言葉があり...ここに参上した次第です!」

 膝を少しこぶるいさせながら、ネイディアはそう言った


 その声は『やまびこ』のように広場を駆ける。 民衆は一瞬戸惑う、アラブレイ王家に3人目の姫などいなかった筈だ....と。 しかし、一部の過激派は...王族であったという事実に衝撃を受け、ネイディアを拘束しようと建物に罵声を上げながら詰め寄り始める。 



「あの人たちっ!!」

 リリスが怒り狂ったように飛び出そうとするが、夜空とコレムが懸命にそれを止める。 夜空がリリスの腰を掴んで止め、コレムが『飛行』でリリスの前に立ち通せんぼする。


「行ってどうするつもりだお前! 意外と喧嘩っぱやいのなんとかしろッ!!」


「リリス行くんじゃないわよッ!」


「でも、でもッ、あのままじゃ!!」

 なんというゴリラパワー。

 3歳も年下の少女に引きずられていく....情けない事この上ない。



 今更感はあるけど。



「ゴーストがなんで協力してんのか分かんねぇけど、近場にアイツが付いている以上今は大丈夫だ。 うん、多分、大丈夫だ....うん」


「なんでそこで煮え切らないんですかっ!? 行かせてください―――っ」


「行くなァァァーーーー!!!!」

 リリスとコレムがもみ合いになる。



 だってしょうがないだろう。

 ゴーストはビュアインパクトの古参。 いわばあの連中の幹部だ、3番姫が下手をこけば、その場でスキルを使って首を飛ばされる可能性も捨てきれないんだ。



(....頼むから俺の頑張り無駄にするなよ。 お膳立てはしてやったんだから)



「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「降りてこい、ぶち殺してやる!!」


「王族の生き残りかァ!? 根絶やしにしろ!!」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


「「「「「「殺せッ、殺せッ、殺せッ、殺せッ!!!」」」」」」」


 押し寄せる悪意....いや、殺意が3番姫を貫く。 

 だけど、3番姫の心に恐怖はもう無かった。


()()()()()?...今も貴方この国で、貴方なりの正義を貫いているのでしょう? 罵倒されることを恐れず突き進むことの怖さ、今ならそれがよく分かります)

ここには居ない、親友の背中を思い浮かべながら.....


(いつか平和になったこの国で、貴方と並んで歩けるように...)


(私は....私の戦場で.....私なりのやり方でッ....!)



 3番姫は、一世一代の大勝負に出ようとしていた。


==☆次回予告☆==


96話の閲覧お疲れさまでした。

随分と足早な展開ではありますね、自覚はしてますが....あんまり国内部のゴタゴタを描きすぎても....なぁという感じも。 そこら辺は上手い事調節していくつもりです。


アルテーラテルト編も残りわずか! 

最後までお付き合いくださいませー!




次回、96.1話......その声、いずれ届いて


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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