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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== アルテーラテルト編 == 【物語進行:夜空サイド】
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94話 その少年 不本意の最中へ!

 

「仲間の頼みしな、助けてやるよ」

 夜空は、アザの痛みを無理やり鎮痛ポーションで和らげながら外出していた。 病院では.....何処に行った、何処に行った!!と医者や看護師、そしてコレムまでもが捜索を開始していた。


「助けるってっ....貴方誰なの!?」


「はぁ、めんどくせぇ。 リリスに頼まれなきゃ見捨てるんだがな」

(リリス? ということはこの方........例の.......)


「もしかして...夜空さんというお名前ですか?」


「.....あぁ。 お前は?」

 夜空は、3番姫を警戒するように睨みながら名を聞く。


「3番姫と言いますわ。 .....その....変な名前ですわよね」


「.......名前なんて今はどうでもいいな」

 夜空は何故、水車小屋の中に3番姫が居ないのか不審に思う。 この状況で、呑気に外を散歩するような頭の悪い女には見えないのだが。


「あ、あは...はは...」

 3番姫の歯切れが悪い。 何か言いたい事でもあるような感じがする。 夜空は少し頭を捻った後、3番姫が言いたいことがなんとなく分かってきた。


「本当に信用できるのかとでもいいたげだな....無理もねぇけど」


「うぅ...リリスさんの友人を疑いたくは無いのですわ。 でも、やはり自分の命がかかっていると考えると、どうしても慎重にならざる得ません」


「いいんじゃねぇの?疑えば。 なんでもかんでも信じますって奴より、知らねぇ相手をしっかり警戒できる奴の方が....()()信用できるがな」


「リリスさんの言っていたあの言葉の意味がなんとなく理解できました」

 リリスは、トランプをやっていた時に3番姫に夜空のことを話していた。 出会った経緯だとか、何をしてくれただとか、自慢しずらい人であるだとか...少し気の難しい人だとか。


『最低だけど最低じゃ無い人ですっ』

 その言葉の意味だけがよく分らなかった。

 だが、自分が怪我をしているのに約束を果たそうとする姿勢が、リリスの言葉をしっかりと裏付けているような気がした。 例え間違っていたとしても、自分の中の正義を押し通そうとする心の力を彼から感じた。


「なんだよ、不躾に人の顔見て...。 イケメンじゃねぇって文句は受け付けねぇぞ、俺はお前の白馬の王子様でもなんでもねぇんだから」

 3番姫は期待してないとばかりにクスクスと笑うと


「いいえ、仲間に愛されてるなと思いまして」


「はぁ、いきなり何言ってんだ? ....王族ってのは調子狂うわ」

 ボリボリと頭を掻きながら『行くぞ』と言って3番姫を誘導する。 とりあえず、夜空は雨風を凌げる場所へと移動する。 少し歩き、人が避難していなくなったであろう店舗の鍵のかかったドアを蹴り飛ばして破壊し、強引に中へと押し入る。



「あぁそんな強引に、店主様に謝罪をっ!」


「別に誰がやったなんて分かんねーよ! 自分の命があぶねぇってのに随分とお優しいんだな、あのまま外に居続ければ馬鹿を見るのはお前だけだ」

 夜空は店の中に置かれていた果物を手に取り齧る。 ....大量に出血したせいか、何故か妙に腹がすくのだ。 肉や魚を食って血液を回復させたいが、そんな豪勢な事も言ってられない現状、そこら辺にある果物で代用するしかない。


「あぁ...万引きまで....っ」


「こんな軽犯罪...今更咎められてもなぁ」

 トニールのサイ車吹っ飛ばしたり、喧嘩して金ぶん捕ったり...結構ろくでもない事今までしてきてるので、今更、人のいない店の商品少し齧る程度ならなんとも思わないのだ。


「だ、だめよ...だめなの...おねがい...」


「あー、あー! 分かったようるせぇな、ほらッこれでいいんだろ!?」

 夜空は、渋々財布から1銀取り出してカウンターの上に投げた。 投げられたコインはカウンターの上でコロコロと軽く転がってから倒れた。


「持っているなら初めから....」


「店主も居ないのに別に...ねぇ? 全く、世渡りがヘタクソな奴だ」


「誠実に生きている人は犯罪しません」


「へいへい、どうせ俺はクズですよーだ。 それよりお前、リリスと一緒じゃないのか? 別の仲間からリリスがここに向かってる旨を聞いたんだが」


「???」

 3番姫は『なんのこっちゃ』というような顔を浮かべる。


「マジかよ、何してんだアイツ...まぁいいか。 それよりお前、王を見なかったか?」


「お父様? 先ほどお会いして....その」

 3番姫が再び言いよどむ。 物言いや声のトーンからして、何か言いたくない事でもあったような...そんな気がして、振れない方がいい面倒事の匂いがした。


「場所は?」


「裏路地の奥...水車小屋の中に...」


「へー...」

 避難していたハズの水車小屋に居なかった姫、居座る王、ずぶ濡れになった姫....悲し気な表情と声のトーン。 はぁ、なるほどね....クソ野郎が。


「....どうしてお父様の場所を?」


「お前の選択次第では必要になるからだ。 今現状、この首都内で王族はまさしく袋のネズミだ。 見つかれば問答無用で拘束されて、ビュアインパクトたちが待機する広場に連れて行かれる」


「処刑...ということかしら?」


「さぁな。 少なくとも、王が捕まるまでは処刑されないだろ...だが、お前は例外だよ3番姫。 まず顔が知られていない、一般市民はこの国の姫は2人だと思ってるからな」


「......幼少の頃から、鋼鉄搭に監禁されていましたから」

 3番姫は寂しそうに呟く。


「今なら混乱に乗じて国を出られる。 これがお前を助ける最も安全な方法だ、だけど...もし海外に逃げる選択を取ったなら、お前は二度と芸術は出来ない」


「え...?」

 3番姫が『なんで?』、『おかしい』というような感情が籠った声を上げた。


「目ざとい人間の目を欺くための処置だ、これは徹底してもらう」


「そ、そんなッ、そんなのって.....」

 3番姫がショックのあまり膝から崩れる。 やっと自由になれると思ったのに、大好きな芸術が出来ないと言われたのだ。 その衝撃は大概では無いだろう。



「.....もう一つだけ、方法がない事も無い。 だけど」


「方法があるならそちらを!! 私はもう、一人で歌いたくないのよ....。 誰かと歌を歌って、その歌に合わせて踊って....、そういう事をやりたかったから、私は...私は....」

 3番姫が涙ながらに訴える。 

 夜空はため息をつきながら『テーマってのは厄介だ』と言った。



「....楽な道にはならないぞ」


「今までが楽すぎたの....。 抵抗することも無く、私は鋼鉄搭で生活することを飲み込んでしまった。 抵抗すれば、何かが変わったかも知れないのに」


「.......」

 夜空は茶々を入れることなく黙って聞いていた。 きっとコイツにも、鋼鉄搭で何かあったんだろうなと...そんな事を心の中で考える。


「だから、だからッ」


「.......現状に抵抗する気持ちは分かるよ」

 俺にだって叶えたい夢がある。 その為に、俺はこの世界で旅をする。





「作戦は....こうだ」

 夜空は3番姫に対して、作戦を言い放った。



 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



 ひとりで水車小屋までやってきた夜空は、表情を柔らかくするために顔を少しマッサージする。 武器に関しては何も持っていない。 フリントロックピストルは3番姫に護身の為に持たせた....ショートソードに関しては、王宮の中庭の何処かに転がってるか、あるいは瓦礫の下敷きになっている...どちらにせよ、今、手元には無い。 それに、もし銃を持っていたとしても銃撃戦になれば恐らく王に軍配が上がる。 地球の銃とは違い、こちらの銃には火薬を入れる、弾を込める、火をつけて、狙って撃つ。 という動作が必要になる。 火薬皿に着火してから、弾が銃口から弾き飛ばされるまでタイムラグだってある。 先に構えている王の方が早く撃てる。


 引き金を引いて撃つ、という単純動作で銃は撃てないのだ。

 こればっかりはオートマチックじゃないし、文句を言ってもしょうがない。



 だから、俺が勝負するのは...()()()()()()

 無害でか弱い一般市民に装う為、水車小屋の扉を恐る恐る開け中へと入る。 錆びついた扉が音を上げ、王に侵入が気づかれる。


 遠くの明かりが点いた部屋から『誰じゃ、名を名乗らんか!』という声が聞こえてくる。 声は、威厳を保とうとしながらも震えており、誰しも『あ、コイツ怖がってんな』と分かるような声質をしてた。


(逃亡中なら明かり消して黙っときゃいいのに...馬鹿野郎だな)

 夜空は恐る恐るという感じを装いながら部屋へと入る。 


 そこには....恐怖を押し殺して鬼形相になったクズ野郎。 もとい、アルテーラテルト首都アラブレイの王...天賦の所有者がそこには居た。 王はこちらに銃口を向けながら、小動物よろしく懸命(けんめい)に威嚇してくる。


「あのビュアなんちゃらとかいうグループの手の者か!! ワシは許さん、許さんぞッ!! それ以上近づけば、貴様の命は愚かに散ると知れうつけ者が!!!」

 夜空は両手を上げ、無抵抗のポーズを取る。 


「あ、貴方様の事は存じ上げております。 ...........お、王よ....我らが芸術の王よ......は、発言よろしいでしょうか......?」

 銃に怖がる一般人を装い、夜空は自身の声を目いっぱいに震わせる。

 恐怖を演技する。


「!?!?」

 この状況で、見知らぬ人間から急に王として扱われたことに、王は心底困惑する。 しかし、ずっと自分の存在を疎ましく思う人間から逃げてきた為、王の中に必然的に安堵と生まれ、それと同時に承認欲求が芽生える。


 咳ばらいをした王が『そこに直れ』というような仕草をしてくる。

 夜空は一切の躊躇すらすることなく、くそったれの王に跪いた。


「これは失礼しました、愛しき王よ。 先に名乗らせて頂きます、(わたし)この首都に住まう平民で、名をヨーと申します。 以後、お見知りおき下されば幸いです」

 必要ないとは思うが、偽名を語ることにした。 

 コイツはリリスを拉致った連中のトップ。 そんな野郎に、自分の名前を呼ばれることすら吐き気を覚えてしまう。


「ほう、ヨーとな? しかし分からぬ、何故逃げぬ」


「私は、王と姫の理想、追い求める完成された芸術に感銘を受けた者。 貴方様がこの世界から消える事は、世界の損失に他ならないと存じます」


「ほぅ、広場のサル共とは違うと...なるほど、なるほどなるほど....その考え方は素晴らしい。 して、ヨーとやら、其方は何の芸術を追求する者か?」


「踊りです」


「ならば踊るがよい、見てやろうぞ」

 明らかに王の機嫌が上機嫌になる。

 しかし、夜空は顔では笑顔を浮かべながらも、自分の口から思っても居ないようなお世辞がペラペラと出てくることに、怒りを通り越して憐みしか感じない。



 嫌だな、こんな時まで心を殺せないなんて。



「王、僭越ながら私の芸術は修行中の身。 神ごとき心眼をお持ちの王の目を腐らせてしまうのは、私としても不本意でございます」


「とても見せられる出来では無いと?」

 王が呆れたように夜空を見る。


「.......それについては申し訳なく」


「はぁ、踊れぬ民とは情けない。 が、ワシを崇拝せんその想いは素晴らしい物だと褒めておこう。 勝ち馬に乗れる才はあるようだ。 其方の踊りが完成する日を期待せず待つとしよう」


「ありがたき幸せにございます」

 何様のつもりだ....コケにしやがって。 

 そんなに天賦が偉いのか!? あんな力より、努力で紡いだ力の方が何倍も....何倍も偉いに決まってるだろ!! だから俺は天賦が嫌いだ、自分を苦しめたのも...全部全部天賦のせいだ!!


 その天賦で、他人の人生を滅茶苦茶にしているコイツは...もっと嫌いだ。


「踊れぬ民よ。 其方に命じよう、ワシを生かすのだ」


「.......身命を賭させて頂く所存にございます。 が、しかし」


「生かすことに不満があると!?」

 人を信じられなくなっている王は、自分の提案に少しでも異を唱えようものなら怒り、叫び散らかす。 その姿にもはや品性など感じられなかった。


「お、落ち着き下さい。 そうではございません...」


「ならばなんだというのだ!! ワシを生かすのだ!!!」


「率直に申し上げても?」


「くどい言えッ、言うのだッ!!」

 夜空は覚悟を決めて息を吐く。



 ここから先は、言葉を誤れば撃たれて死ぬだけだ。

 身長に行こう、頭を回せ、今こそ地頭の良さを生かすんだ。




 そんな考えに、夜空は酷く...酷く嫌気がさした。




==☆次回予告☆==


94話の閲覧お疲れさまでした。

ここだけの話、本編に王様と夜空の駆け引きは作らないつもりでしたが....話を入れないバージョンだといかせんせんシックリこなかった為、急遽書き入れました。 以上、クソどうでもいい裏話でした。


次回、95話......あの王 究極の芸術へ!


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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