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そのチカラ 危険につき!   作者: ゼロ先輩
== アルテーラテルト編 == 【物語進行:夜空サイド】
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93話 その雨雲 光を覗かせて!

 

(い、意識がッッッ、持っていかれる!?!?)

 背中を貫かれたイスカルが膝をつく。 と同時に、スキルを乱発した負荷が今になってやってくる。 体をごまかしていた分の疲労感が大波となって自分に鞭を打つ。


 目の前にターゲットが居るのに、その拳は届かない。


「夜空さんを安全な場所へお願いしますっ!!」


「アタシに任せなさいッ!」

 コレムが夜空を抱えてその場から飛び立つ。 今のイスカルは体に無数の太刀を受け、電撃を受け、打撃を受け....爆発を受け。 なんで立っていられるのか不思議なくらいだ。



 その場に取り残されたプラス、リリス、ゴースト。 それに、王宮からこちらに向かってくるイェーガーがイスカルを包囲する。 だが、イェーガーだけはゴーストに睨まれて少しだけ様子を見るような形で後退する。



 どうやら本能で危機を悟ったらしい。


「チッ、どうしてこう...好敵手狩りに邪魔がッ!」

 悔しそうにしながら、イェーガーはその場から去っていった。



「んぁー。 終わり終わり、逆になんで動けんだぁ?」


「強すぎますっ、どんな訓練すればこんなッッ!」


「訓練の類でどうにかなるかぁ? だが、まぁ....一人の力でどうにかなるほど世界は甘くねぇさ」

 近づいたゴーストがイスカルの後頭部へと手を当てる。




「脳みそ抑えたぞぉ? 通電して死にたくないなら、情報を吐いとけぇ?」

 ゴーストにためらいは無い。 必要なら遠慮なく命を奪い取る目をしてた。



「.....何が聞きたいんだい?」

 息切れ交じりにイスカルが問う。


「何処の国から来たか? 何の為に夜空を襲うのか....それだけよ」


「.......」


「隷属の首輪もしてるし、何処かの国の奴隷上がりの工作員とみるのが妥当だぁ? だが、少なくともどこの国から来たぐらいは言えるだろ?」


「....正直に答えると思ってるのかい?」


「猶予は無い。 ささっと言えよぉ?」

 ゴーストがイスカルに当てた手のひらに力を入れる。 脅すようにイスカルの頭に軽く衝撃を加え、いつでも電流を放てるぞとアピールを行う。


 が


「.......」

 だが、それでもイスカルは忠義で何も話さない。


「そうか....。 見事な忠義心だ」

 イスカルの態度に何かを察したゴーストが、覚悟を決めたように()()とため息を吐いた。 ゴーストの腕に電流が走る....その電流の流れる矛先がイスカルの頭に向く。


 プラスがリリスに近づいて、抱きしめるように耳と目を塞いだ。


【バチバチィッ!!!】

 鈍い音が響いてイスカルの脳に致死量の電流が流された。 バツンッとブレーカーが落ちるようにイスカルの意識が途絶し、そのまま死亡した。


 だが、何故か死亡したイスカルの体が光の断片となって消えていく。


「「!?」」

 ゴーストとプラスは驚く。


「ゴーストこれ、マルチクローンだよぉ!?」


「んぁーマジかマジか、分身!? あれほど大暴れしといて、その上で常に分身を発動し続けてたってか。 おいおいおい、戦闘力が異次元ってレベルじゃねぇ」

 ゴーストは心の中で(恐らく大陸最強クラス....)と疑問を抱く。 そんな化け物が夜空を追ってた?なんか腑に落ちんなぁ....。


「あの~、見えないですっ、聞こえないですぅ!!」

 リリスが放して下さいと、プラスの腕を優しく2、3回叩く。


「あ、あぁごめんね。 流石に....その....見せるべきじゃないと思ったんだよぉ?」


「いえいえ、お気遣いありがとうございますっ!」

 こうして若干腑に落ちない形で、イスカルの襲撃は幕を閉じたのだ。



 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=


【一方その頃、オニキスでは....】


 イスカルは、宰相から与えられた自室でベッドに腰をかけ。 スキル『マルチクローン』によって生み出した女性分身体の方の動きに集中していた。


「....分身体の気配が消えた? まさか、殺された?」

 宰相様からの話に聞く限り、夜空君と呼ばれる悪魔勇者は決して高い戦闘能力を有してはいないそうだ。 せいぜい小手先の技であがく程度だと聞いていたのだが....。



 いや、違う。

 彼もまた道を歩む。 仲間を作ったのではないだろうか?



 分身体の感覚情報が得られないのが、とても惜しい。

 任務の達成有無も、分身体がこの場に戻ってこなければ不明だ。 分かるのは、オニキスから放った自分の女性分身体が、相当の激闘を繰り広げた末死亡したという事だけだ。


「分身体とはいえ、この僕が後れを取るほどの相手が南に居るという事か」

 今から分身体を再生成するには時間がかかりすぎる。 南大陸のアルテーラテルトから、迷宮の国ザドラまで余裕で逃げきれてしまうほど時間を与えてしまう。


「....悔しいけど、今回は完敗だね。 はぁ面目ないね、宰相様にドヤされそうだ」

 イスカルの決意に反応するように隷属の首輪が妖しく光った。


 その後、今回の結果報告に行ったイスカルの言葉に、宰相が怒りとも悔しさともいえない、苦虫を嚙み潰したような顔を隠さずに浮かべたのは言うまでも無く....。



 ()2()()()のオニキスとの抗争は夜空側の完全勝利で幕を閉じた。




 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



 暖炉にくべられた薪がパチパチと音を立てる。 夜空は、とある施設のソファーに寝かせられながら品質の低い鎮痛ポーションをしみこませた包帯を巻かれて治療されていた。


 .....暖かい。

 夜空は夢見心地のまま、近場で夜空では無い誰かに話しかける医者の声に耳を傾ける。 声を上げようにも、体の疲労が勝り声を出すのすら億劫(おっくう)になるほどだった。


「....先ほど『透視』を使って体内の状態を確認しましたが、折れてる...とまでは行かずともあばら骨や背骨に相当な負荷がかかったと思われます、あと少しでも動いていたら背骨やその下の骨盤や神経が壊れていたかもしれません。運が良かったとしか言いようがありません。 こちらの怪我に関しては治療済みです。 ...それと、背中も...そうですが、特に()()()()の内出血が酷かったですね」

 背中や手のひらにはポーションによる治療が完了しているのか痛みすらない。 寝ている為、出血しているのかどうなのかまでは分からないが。


「わき?」

 コレムの声が聞こえた。 

 近場にはリリスの気配はない。 別件で席を外しているようだ。


「スキル...ですかね? 打撃とは違う、なんでしょう...風船を破裂させたような感じの強い衝撃が、()()()()脇腹に加えられています。 この怪我に関してはポーション治療が出来ますが.....怪我の度合いから見ても品質のいいポーションを使わないと....」


「お金がかかるって事?」


「あぁすいません、少し難しい話でしたね。 そうですねその治療を行った際は、治療代はかなりの額行くとは思われます。 しかし、多少の治療期間は必要ですが....安静にしていれば2週間も必要ないでしょう。 その間、痛みは少し残るとは思いますが」


「なら、お金かかるし治療?はいいわ。 どうせ自業自得だもの」

 おいこら、勝手に決めるな。 ....まぁ、金がかかるってのは同意見だが。

 本人の同意なしであれこれ決めるのはダメだろ全く。


「分かりました。 ....彼が起きましたら、近場に常駐しているナースにお声がけ下さい。 包帯などを取った上で個室に移動させますので」


「分かったわ」

 医者が遠ざかっていく足音と、窓の外から聞こえる雨音が鮮明に聞こえ始める。 霞がかった夢心地の世界から、現実に引き戻されるように徐々に意識が晴れていく。



「こ...ここは?」


「あっクズ空ッ、目が覚めたのね!?」

 心配そうにベッド近くの椅子に腰をかけていたコレムが、夜空の声に反応して椅子から飛び降りパタパタと駆け寄ってくる。


 夜空が起きようとすると、脇腹に鈍く痛みが走る。

 自分で『ハイパーウェーブ』を使った場所には大きくアザが出来ていた。 ポーションによる治療が出来なかったのは、外側より内側のダメージの方が酷いからなのかも知れない。


「あっ、起きるなバカ空! ね、寝なさい!!」


「むぐっ!」

 コレムが夜空の顔面に枕を押し付け、無理やりベッドに押し倒す。 というか、なんでコレムが俺の使ってるベッドの枕を持ってるんだとツッコミたい。


 夜空の頭には、毛布が畳まれて枕代わりにさせられていた。

 ...いや、別に枕で良くないか?



「お前....枕返せよ」


「嫌よ、汚らわしい」


「えぇ...なんでだよ」

 枕を頑なに放そうとしないコレムを放置して周りの状況を確認する。 窓の外に見えるのは半壊した王宮、雨降る続ける地上からは何かを捜索するような声が聞こえてくる。


 病院と思わしき建物の内部には、今回の反乱で怪我をした人たちが運び込まれ治療を受けていた。 壁にはビュアインパクトのアートチックなワシのマークが描かれていた。


「なるほど、ここはビュアインパクト関係の施設か」


「そうよ、中々鋭いじゃない」


「いや、枕返せお前」


「嫌よ」


怪我人(おれ)を休ませないのは嫌がらせか?」


「ちがっ! ...そんなんじゃ」


「えぇ、よく分らんのだけど」

 コレムは、年相応に気恥ずかしさと怒りで少し頬を染めながら否定する。 夜空は知らない、コレムだって言えるはずも無い。



 夜空の匂いが....安心できるなんて。



「と、とにかく寝なさい!!」

 人族の子供位の力に加減して、コレムが肩をポカポカと叩いてくる。


「分かった分かった。 そういえばリリスは?」

 まさかとは思うが、イスカルにやられてたりしないよな? 正直、イスカルに最後襲われた記憶が曖昧...というかほとんど存在しない。 あの瞬間、色んな事を考えてた筈なのにひとつも思い出せないのだ。



「例の」


「あぁ、なるほど....」

 夜空は休むように目を閉じながら答えた。 コレムは、夜空が起きたことをナースに伝えるためにその場を離れて行った。



 ふと、その時。

 付近で治療を受けていた軽症者の数名の会話が聞こえてきた。


「あのキュレーターの犬共め、王はまだ見つからねぇのか!?」


「いや、キュレーターの連中はほとんど無力化したって話だぞ? 王が首都内の何処かに潜伏してるって話は事実らしいが」


「なら、なんで早くぶち殺さねェ! あのクソ野郎....」


「怒りは分かるが落ち着けって...ここ病院だ。 それに、見つかって捕縛しても処刑するかどうかまでは、一構成員が決められる話じゃないだろ」


「幹部連中が生かすなんていう甘ったるい選択すんなら、この俺があのクソ野郎を吊るし上げて火炙りにしてやる。 俺の親友の人生を壊しやがった野郎に生きる資格なんてねェ!!」


「みんな、同じ気持ちさ。 怪我が落ち着いたら捜索に参加しよう」


「今から剣が疼く。 早く王族の泣き顔が見てぇ」

 怒りの中に笑みを浮かべながらビュアインパクトの構成員が呟く。 かなり好戦的で感情派な人のようで、会話の所々に汚い罵声が聞き取れる。



 王が逃げた?

 .......もしかしたら、利用できるかもしれない。




 正直面倒この上無いが、約束しちゃったしな....。




 10分後、他の患者の移動補助を行っていた看護師と共に、コレムが戻ってきた。 しかし病院のベッドには夜空の姿は無く、もぬけの殻となったベッドがあるだけだった。


 近場に置いてあった鎮痛ポーションの包帯が無くなっていた。




 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=



【一方その頃.....とある汚い裏路地では】




「はぁ、はぁ....踊れぬ民共がッ!! くそぅ、どうしてこうなったのじゃ!」

 アラブレイの王が大雨に打たれながら走っていた。 物音や人の気配に細心の注意を払いながら、裏路地の奥へ奥へと進んでいく。


「たまるかッ、捕まってなるものかッ! ワシの芸術は潰えぬ、誰にも奪わせぬ!! 天賦もワシが持ちうる最高の美徳も...全てワシの物だ!!」

 負け犬の遠吠えが雨音にかき消される。 雷鳴の音が、まるで王の怒りを象徴するように首都内に落ちて、その場所から火の手が上がる。 が、すぐに鎮火する。


(娘も兵も、何もかも捨てて逃げてきたのに! ワシを待つ暖かな声など無い、なぜじゃ、なぜなのじゃ...ワシは世界の目線、神の目線から正確に芸術を図ってきただけだというのに!!!」

 その足は、とにかくビュアインパクトたちが集まっている広場から離れようとしていた。 不幸中の幸いともいうべきか、この雨脚のせいで捜索がかなり難航していた。


 街の排水が不完全なせいか、至る所に大きな水たまりができ...場所によっては完全に浸水を始めている所も多々あった。 水たまりの上には、芸術大祭の影響で持ち込まれた誰かの絵画が浮かんでいる。 ぼやけて汚いその絵を見るたびに、王は怒り心頭でその絵を踏みつけて破る。


「見せるなッ、このワシに、汚い、汚い汚い汚い汚物を!!!」

 狂ったように吠える王の先には....古くなった水車小屋があったのだった。

==☆次回予告☆==


93話の閲覧お疲れさまでした。


やっと一息つけるかと思った矢先に...最後の大仕事の為に夜空が病室を抜け出す始末。 それに気づいたコレムは心配でキレてます。 当然ですね。


夜空とコレムのいびつな信頼関係....いいですよね。

次回、あの名前の本当の意味が明かされます。 芸術の国アルテーラテルトも最終盤!

物語の結末はバッドエンドがハッピーエンドか....。


最後まで頑張って書きますよー♪


次回、93.1話......ネイディアの意味


是非次回もご朗読下さい!


ではでは~

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