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夢装のアルドラ  作者: 扉の向こう
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第一話 夢無双




20XX年 12月5日(月) 朝



小鳥の囀り、カーテンの隙間から刺す日差し、朝の匂い…


朝だ、朝が来た。



「おい…マサ、朝だぞ。さっさと起きろや…」


父の呆れきった酒焼け声が、焦ったく響き渡る…。



「…お前高校2年にもなって何してんだよ」


…布団をかぶり、体を丸め、必死に耳を塞いだ。


「…はぁ……、俺今から会社行くから…、お前も学校、行けよ」



朝は嫌いだ。人を夢から無理矢理現実に引き戻そうとするからだ。そして、既に現実は僕を見放しているらしい。


…とりあえず、外に出ることにした。


ーー


「…マサトくんおはよう」


   「今日も汚ねぇ面だなぁ、おい」


  「机に寄せ書きしといたぜ〜」


重たい足取りで歩く通学路…。そして教室の隅に捨てられ、汚された僕の机を横目に、僕は俯きながら席に着いた。


「なんも喋れねぇのかよこいつ』「…お前キモいんだよ!近寄んな!」「お前、母親に捨てられたらしいなw まぁ捨てられて当然か!」「びょ院行ったら?学校じゃなくてさ」「今日殴られに来たのかぁ?」「おい、そろそろ喋れやインキャメガネ」


「おい、喋れっつってんだろうがよどォ!」


鈍い衝撃が顔から全身に走った。


意識が揺らぐ…




気づいたら僕は、保健室のベッドで寝ていた。とりあえず、顔の傷があまりにも酷いため、すぐに病院に行くよう伝えられた。


ーー


これが僕の日常だ。


学校に行って、殴られ、帰る。


暫くして怪我が治り、


学校に行って、殴られ、帰る。




そんな空虚な日々における細やかな希望、それが夢を見ることである。夢といっても将来の夢のようなものではなく、睡眠時に見る夢だ。



ーー最近、僕は「明晰夢」を見るようになった。


ーーーー

ーー






12/6(火) 朝  【夢】



「おいマサ、朝だぞ」


「はーい」


ここは夢の世界である。つまり、ここから起こること、行動の全てが茶番なのだ。


ひとまず、ガーゼの上から頬をつねってみた。


「じゃあ会社行くからーー」「あれ!!昨日殴られたとこ、つねってんのに痛くないぃ!!」


そう、ここは夢の世界。つまり、僕のためだけの世界なのだ!


「…は…?マサお前…」


布団を吹き飛ばし、全力疾走でカーテンと窓を全開にした。そして、全身で光と風を浴びる…。これほど気持ちが良いことが他にあるだろうか…!


「じゃあ、行ってきまーーす!」


そのまま窓から飛び出し、パジャマ姿で道路の真ん中を駆け出してみた。


ーー


「おはようみんな!」


家から学校まで全力疾走したが、全く疲れないことに気づいた。そう、夢の世界なら不都合なことは何も生じないのである。


「気持ち悪…」「お前メガネかけてねぇから誰かわかんなかったぞ」「昨日見てぇにボコボコにしてやる」「…マ、マサトくんおはよう…」「さっさとくたばれやゴミが!」「ゴウさん…これ以上は殴らない方が…」



「うるせええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」


今世紀最大の叫び声を上げてみた。周りは呆然としていたが、数秒後、いつも僕を殴るヤンキー達がこちらに向かってきた…!!


「またぶちのめしてやる!!」


拳が届くその瞬間、僕は左手で耳をほじりながら、右手を軽く前に出した。


「ど〜〜〜ん」


やる気のない声とは裏腹に、ヤンキー達は目にも止まらぬ速さで教室の三分の一とどこか遠くに吹き飛ばされた。


「うわ〜目ぇ悪いから分かんないんだけど、いじめてないやつも吹き飛ばしちゃったかなぁ」


愕然としていた3分の2の生徒達は、悲鳴を上げながら一斉に逃げ出した。 


「え〜授業受けんの僕かよぉ」


ーー


「え…えっと…あのじ、授業を始めます」


「せんせー、寝そべりながら聞いててもいいですか〜」


「はい、えっとあの、えっと今日は二次関数の…」

「なんだよそれ!知らねぇよ!!」

「あっ、申し訳ありませんんん……ん?」


窓側を見ると、大量のヘリコプターがこちらを包囲していた。


「警察だ。今すぐその人質を解放しなさい。」


「えぇ…人質じゃないんですけど」


さて、ここからどうするかだ。

大人しく捕まってみるか、警察を敵に回すか、逃げるか…。


「よし、めんどくせぇから逃げよう」


そう口にした瞬間、横になった状態のまま体が浮き、超速度でその場から勢いよく飛び出した。


風を切り、神になったような気分で街を見下ろす。


ここは夢の世界、僕が望むことはなんでも出来る。この世界があるからこそ、僕は心の均衡を保つことが出来ているのである。


頬の傷が癒えていたことに気づいた頃には、もう夜になっていた。結局、ほぼ一日中飛び回っていただけだった。


そして幸せな気分に浸りながら、眠りに落ちたのだった。


そして僕はまた現実(ゆめ)を視る。




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