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眠り姫の歌  作者: 龍空 有王朱
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⑴眠り姫の苦痛 ②

 ”codaコーダ”ー。それが彼らのバンド名。メジャーから二年で疾風のごとく現れ、若者に人気を集めている注目若手ポップスロックバンド。ギターリスト・アキ(酒田明貴(さかた あき))とダッチー(阿立祥太(あだち しょうた))、ベーシスト・(しん)村神龍也(むらかみ たつや))、ドラマー・きぃ(木本(きもと)ゆう)、そしてボーカリスト・いばら(美岬(みさき)いばら)で成り立っている。アキとダッチーは同じ高校出身で一緒に軽音楽部で活動していた仲間で、卒業後バンドをやるにあたって声をかけたのがダッチーの同じ中学校出身の後輩だった神。その神がドラマーとして、きぃを連れてきた。そしてしばらくボーカルを探していた。その本人がヒットの鍵だったわけだが、それと同時に問題も抱えていたというわけだ。


 アキはリハスタジオに戻ってきた。セッションをしながら待っていると言っていた三人のうち二人はすでに自分の楽器から手を放している。テクニシャンなフレーズを弾き続けているのは神だけだ。ダッチーにいたっては部屋に置いてあったソファに寝っ転がっている。眠っていたらしくアキが帰ってきたのを察し、短い金髪をかき分けながら片目だけで見すえた。



「あ、おかえりよ」


「いばらは?」



 続いてドラムのバスドラに片足を乗っけてスマホをいじるきぃが聞いてきた。アキよりももっと薄めの茶髪をした少し年上の青年で、お洒落にこっているのかライブでもお洒落をしないのか、普段からワックスをつかって髪をセットしている。シャワーを浴びたら今のアキと同様、髪がぺったんこになるのは知っていた。



「今日、ボーカルなしで」


「美岬そんなにひどいのかよ」



 ダッチーが重ね重ね聞いてくる。アキの返答に神もベースを弾くのをやめて顔を上げた。


 ため息をつきながらアキは椅子に座り、ギターに触れる。



「いつもより最悪」


「マジかよ・・・」


「アンコールが効いた?」


「さすがもとゆう、正解」



 きぃを指差してアキはまたため息をついた。木本ゆうを文字って、アキはきぃのことを”もとゆう”と呼んでいる。これと同じ原理で神のことを”かみたつ”と呼ぶ。


 ダッチーがソファから起き上がって座り、前かがみになる。



「そんなに心配なら家にいりゃあよかったじゃねえか」


「リハがあるだろ」


「え〜、ボーカルいないんじゃ俺たちもお休みでい〜じゃーん」


「バカ。いばらが復帰してからやったんじゃ効率悪いだろ」


「あんら〜! 素直にいばらを支えようって言えばいいのに〜」


「・・・うっせぇよ」



 きぃに茶化されてアキはうなだれた。ダッチーも一緒にニヤニヤ笑う。



「じゃあしっかりリハやって、このあと皆でお見舞いにでも行くかねぇ」



 勢いよく立ち上がって神の隣に立ててあったギターをつかんだ。それに乗じてきぃもスティックを回す。



「あれじゃない? そんなにダメなら、ご飯まともに食べてないんじゃ・・・」


「そりゃいかん! 行きましょリーダー! 愛のこもった食事を作ってやってくださいよっ」


「・・・お前なに面白がってんだよ。リーダーはお前だろ」


「本当の恋のリーダーはアナタです!」


「わけわからねぇよ・・・」



 勝手に盛り上がって話を進めていく二人はアキにとって不愉快だった。ずっといばらに片思いをしているのをいいことに、なにかとこの二人はちょっかいを出してくる。


 その様子をいつも黙って見守るのが神であった。

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