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第5手


 何であの娘が馬車レーンにいるんだよ!

 驚いているのは父親も同じか。

 後ろで腰を抜かしていた。

 ちょっと目を離した隙にってやつか、畜生。

 

 「シレン、応急処置の検索急いで!」


 フリーズしていたオレを横目に、冴香は真っ直ぐ、女の子に向かって駆け出していく。

 あのバカ、ここが異世界だってことをもう忘れたのかよ。

 誰もが、お前の味方をしてくれるとは限らないんだぞ。

 心の中で悪態をつきながら、検索を開始する。

 同時に、強烈な嫉妬がオレの心を焼いていた。

 冴香は極限状態でも瞬時に、最善手を見つけ、行動していた。

 オレは、周囲を観察し、第一に保身を選んでいた。

 本物と偽物との差。

 自力だけではなかった。

 人としての格そのものが違った。

 永劫に縮まらない距離の正体を知って、胸が怖気で一杯になった。

 オレがのろのろ検索しているうちにも冴香はテキパキと周囲の人間に指示を出し、気付けば、人垣ができていた。

 冴香のやっている人工呼吸と心臓マッサージが珍しいのだろう。

 だが、AEDもないし、救急車もこない。

 そもそも、搬送する病院もない。

 容態は刻々と悪くなっている。

 完全に手詰まりだ。


 「まったくよ〜ガキが余計なことをしやがって。衛兵まで、ガキの面倒を見てるせいで、順番が進みやしねえ〜」


 だるそうな声で男が1人、こちらに近寄ってくる。

 ひょろ長い体型をしているが、筋肉はしっかりついている。

 従軍経験でもあるのだろうか、男の存在に周囲の門番達が萎縮している。

 鋭い目で、周囲を威嚇しながら、ゆっくりと歩いてくる。

 問題なのは少女を轢いた馬車から出てきたのだが、コイツ、頭おかしいのか!?


 「仕方がねえ、オレが治す。どいてろ、歩兵共!」


 男がそう告げると、腕に光が集まっていく。


 「この規模なら、5手詰めぐらいか…全く、何で、この俺が…」


 男がそう呟くと腕に更なる光が集まっていく。


 「我は請う棋界の主に 一瞥即解の後に 御身の奇跡を賜らんことを」


 呪文!? いや、祝詞か!?

 祝詞を唱える瞬間、これまでの男の軽薄さが一切、消える。

 

 「5手詰め!!!」


 男がそう叫ぶと、光が集束し、長方形を形作る。

 9×9の特徴的なあの図表。

 歩、香、桂、銀、金、角、飛、王と馴染みの文字が盤面に描かれる。

 これは正しく詰みまでの手順を問うパズル。

 将棋の5手詰めだ。

 男は顎に手を当て、空中に描かれた盤面を3分ほど睨みつける。

 そうして、突然、解答を叫ぶ。

 正解だ。

 すると盤面がまた、光へと戻り、女の子を包みこんだ。

 光が消えると少女の傷は完全に癒えていた。



 読んで頂き、ありがとうございました。次回の投稿もなんとか頑張ります。

 ブックマーク、感想、評価、メッセージなど有りましたら何でもお待ちしております。

 分量少なくて申し訳ありません。ストックが切れたのと暑さとメンタルダウンのせいです。もう少し、分量厚めで投稿したいとは思っています。

次回も、日、月、火、どこかで投稿したいと思いますので何卒よろしくお願いします。

最後に渡辺先生、名人位の獲得おめでとうございます。やはり、今が最強状態だったんですね。その状態の勝てる藤井先生が異常すぎるという話だったのか…


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