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勇者は神父の末路を聞く(コレット視点)

新章始まります

今回は幕間のコレット視点

「ええ?! ザニス神父、除名になっちゃったんですか?」


「ええ、残念ながら」



 勇者コレットは、ザニス神父が教団から除名になったという報告を教皇の口から聞いた。

 ザニスがあまりにもユーマの首根っこを掴んでやってこないので、イライラしていた所に飛び込んできた報告である。


 コレットは内心舌打ちしながらも、作り慣れた笑みを浮かべながら教皇の話を聞いている。

 ユーマやザニスに見せるような、悪魔の形相は今は浮かべない。


 教皇の前に出る時は彼女は決まって、この外面の仮面をつけている。



「いったい、どうしてザニス神父が?」


「それがなんでも、独断で学園の学生の暗殺を計っていましてね。そのせいで学園との関係にもヒビが入る所でしたし、あろう事か我ら教皇のせいだなんて妄言を吐き始めましたのでね」


「あら、そんなことが」



 教皇はわざとらしく首を傾げ、コレットは大袈裟に話の内容に驚いてみせる。

 どちらもこの事件の当事者であり、ザニスはその企みに巻き込まれた駒の1人だ。



「それで、ザニス神父は今どこにいらっしゃるのですか?」


「さあ、除名された者の行先は私たちには分かりかねます。ただまあ、教団を追われた以上はどこか遠い場所でひっそりと暮らしているのではないでしょうか」


「遠い場所……」


「ええ。我々も手の届かないような、遠い遠い場所です」



 ゾーマ帝国の中で教団の手の届かない場所などない。

 有色の魔導師たちが教会に反感を抱いているとは言っても、教団を追われた人間を匿うような義理はない。


 このゾーマ帝国で生きている限り、教団の手の届かない所などありえない。

 それでも、手の届かなくなる場所といえば……



「はあ」



 コレットはもう二度と会うことは無いザニスのために、ため息をついた。

 憂いのためではない。

 苛立ちを吐き出すための溜め息だ。



「ザニス神父は良いお方でしたのに。残念です」


「そういえば、コレット様は彼とも()()があったのでしたね」


「ええ。私の相談を聞いてくださる、()()()()でした」


「我々の方で新しく神父を用意致しますので、ぜひ、その者にも悩みがあれば打ち明けてください」


「ええ、そうさせてもらうわ」


「それでは」



 それだけ言うと、教皇はビジネススマイルを見せながら部屋を出ていった。

 客間にはコレット1人だけが残された。


 ようやく、彼女は大きく息を吸う。



「あのクソ野郎が!!!」



 景気づけの1発。

 コレットは目の前にあった椅子を蹴り飛ばした。

 椅子は、音を立てながら砕け散ってしまう。



「散々自信ありげに言っておきながら失敗ってどうなってるんだよ!! しかも、いちばん惨めな形で死にやがって! てめえのせいで、教皇たちの息のかかった神父が生まれちゃったじゃねえかよ!」



 ザニスはもともとコレットが推薦して神父になったようなものだった。

 教団側の人間でありながら、コレットの傀儡として入り込んだスパイ的な存在だった。


 しかし、ザニスは最大のヘマをしでかしてしまった。

 黒魔道士暗殺の命令自体は教皇達から出ていたとしても、やらかしたのはザニス自身だ。


 ザニスの地位の崩落と共に、彼を押していたコレットの立場もまた危ぶまれる結果となった。



「せっかく教会の中で好き勝手できる駒だったのに。これじゃ教会の人間を動かしにくくなっちゃったじゃない」



 ザニスを通して、コレットは教団側からユーマに関与できた。

 学園長のガードを超える為には回りくどい手が必要だった。


 しかし、今はそれももう見込めない。



「何とかしてユーマと接触できる瞬間を作らなきゃ。接触さえ出来ちゃえばあとはこっちのものなのよ」



 ユーマは自分のおもちゃ。

 いくら歯向かわれようが、彼女の中でそれは変わらない。

 今度会ったら、力技でも彼を押さえつける気である。


 もちろん、ユーマのために戦う護衛が出来つつあることなんて、彼女は知る由もない。



「なんか学園行事でも使って、強引にでも出会えないものかしら……って、そうだ」



 コレットは何かを思い出したようにニヤリと笑った。

 教皇には絶対見せては行けない悪魔の笑みである。



「ちょうどいいものがあるじゃない」



 コレットは新たな悪事のために計画を練り始めたり.

お読みいただきありがとうございます!

誰も知らないところで勝手に危機迫るコレットさん

次回はユーマ視点


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