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つながる点と点

「ザニス様……?」



 霧の中から突然現れた男の姿を見て、アーニャは偉く怯えていた。

 俺たちと喋る時より更にか細い声が聞こえてくる。



「なんで?」


「なんでって、お前がいつまで経ってもあのゴミ虫を殺さないから、わざわざてつだいに来てやったんだろうが」


「い、いゃ……」


「なんか言ったか?」



 ザニスと呼ばれてる男はアーニャに対して怒鳴っている。

 それにしても「殺さない」、か。


 まあ、そうなるよな。


 謎の刺客。

 白魔法の殺気。

 教会が育成しているという暗部。


 そして、偶然と呼ぶには出来すぎたタイミングの編入生。


 頭の中では繋がっていた事実。

 でも、あえて言葉にはしていなかった。


 まだ、捨てられない希望があるから。




「なあ、お取り込み中悪いんだけどさ」


「なんだ!」



 イライラしているザニスは、俺の言葉にも怒鳴りかけてくる。

 神父として人々から崇められている者がこんなんだとはな。


 でも、やっぱり。

 俺はこいつを知っている。



「お前、ザニス神父だろ? いっつもコレットに好きなように従わされてた」


「貴様、なんでそれを……!」


「なんでって、俺の命狙ってるならそれくらい分かるだろう……それにしても、お前が出てきたということは、これもあいつの差し金ってわけか」



 ザニスのことは俺も少しだけ知っている。


 勇者コレットの権力のおこぼれを狙って、擦り寄ってきてた、下卑た笑いの上手い男だった。

 俺もコレットに連れられながら何回か一緒の場にいた事があった。


 コレットの権力を借りて周りにでかい態度を取っていた記憶がある。

 そうか、いつの間にか神父にまで成り上がっていたのか。



「どうせコレットに頼まれて、俺を動けない状態にして連れてこいとか言われたんだろ?」


「ち、ちがう! 私はあんなクソ野郎の言うことなど」


「それか、黒魔道士が嫌いな教会から命じられて殺害にアーニャを差し向けたって所かーーどちらにせよ、都合のいいしっぽ役を任されちゃったわけだな」


「貴様ああ! 黙って聞いていれば!!」



 ザニスの咆哮。

 図星みたいだ。



「もう殺してやる!!」



 ザニスの怒鳴り声と共に、俺の周りに漂っていた魔力の霧が体にまとわりついてきた。

 この中で感じていた魔力、ザニスのものだったみたいだ。


 アーニャもこれをうっすらと感じていたのだろう。


 白い霧は全身にまとわりついてくると、身動きを取らせないように締め付け始めた。

 おかげで、完全無防備の状態で棒立ちすることになった。



「ギャハハハハハ! どうだ、身動き取れないだろう? 残念だったなゴミ虫め!」


「いや、」


「おっと、抵抗は辞めておくことだな。さあアーニャよ、早くあのゴミ虫を殺すのだ」



 アーニャは俯いたまま動こうとしない。



「何してるんだ、アーニャ!」



 ザニスの怒鳴り声が響く。

 その度に、俺を縛る魔力が揺れる。



「何を気にしてるんだ? あいつに自分の正体が明かされるのでも気にしているのか? 今更いい身分だな」


「いや……」


「お前が嫌ならおれの口から言ってやるよ!」



 震えるアーニャを差し置いてザニスがどんどん突っ走る。



「いいか黒魔道士、お前が友達だとでも思ってるアーニャはな!」


「……知ってるよ」


「そう! 知っての通り……って?」


「アーニャの正体くらい知ってるさ」


「……なんだよ。じゃあ話が早いじゃないか。やれ」



 再び押し出されるように、俺の目の前に立つアーニャ。



「ユーマ……」



 俺の目の前に立っているアーニャは、前回の襲撃の時ほどの殺気はもう放っていなかった。

お読みいただきありがとうございます!


次回、アーニャの選択は?

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