4話 俺は才能無しではないのかもしれない
「さあ、さっさと手続きを済ませてしまいましょう」
ルミアは事務室にまでやって来るとウキウキでそう言った。
よほど、俺をこの学園から追い出したかったらしい。
しかし、どれだけ気を急かしていても、やるべきことはしっかりとやる。事務員らしいまじめな部分が現れていた。
それくらいの性格じゃないと、これだけ重要な機関の事務員なんて勤められないのかもしれないが。
「ええっと、名前はユーマさん。学年・クラス共になし。備考として、コレット様の特別許可により入学、と」
ルミアはなにやら退学届のような紙に俺の情報を記載していく。
俺は彼女の書類の記載が終わるのをただじっと待っていた。
学園の生徒であるのに、学年もクラスもなし。あらためて考えてみると特殊過ぎる。
よくこんな変な条件が許可されたものだと思うが、それもこれもアイツのわがままだったのだと思うと頭が痛い。
アイツのわがままは国の秩序までもいつか変えてしまうのではないのだろうか。
「ええっと、才能は無し……ってあれ?」
書類を書き進めていたルミアの手が急に止まる。
そのまま書類とにらめっこし続けていた後に、ふいに顔をめんどくさそうに顔を上げる。
「あの、あなたの才能欄が“不明”ということになっているんですが」
「才能無しってことじゃないのか?」
「才能無しの場合はしっかりと“なし”と記載されるはずなんですけ……ユーマさん、あなた鑑定を受けていますよね?」
「そりゃ、まあ」
鑑定の儀式があったのは6歳の頃のことだ。
俺たちがすんでいた村にまで、国の人間がやってきて、1人1人の才能を鑑定していた。
もちろん俺だってそこに参加していた。
あの日にコレットの勇者としての才能が認められ、俺の所有物としての生活が決定したのだ。
鑑定の儀に参加していないわけがない。
……いや、待てよ。
「もしかしたら、俺は鑑定を受けていないかもしれない」
「……え?」
ルミアがよくわからないといった表情を見せる。
よく、幼い頃の記憶を思い出してみる。
たしか、コレットの鑑定は俺の一つ前だったんだ。
そこで勇者としての才能が見つかって、周りの人間皆が沸き上がっていたんだ。
鑑定士もみんなそっちの方に気をとられていた。そしてそのどさくさの中で、俺は彼女の所有物になることが決定したのだ。
『ユーマはこれから私のものね!これからはどこまでも私と一緒に来なさい!』
『でも、コレットちゃん……まだ僕の鑑定が終わっていないよ……?』
『そんなものどうでもいいでしょ!これからあなたは私のものって決まったんだから、才能なんて関係ないでしょ』
確かに思い出した。
俺はあの時、鑑定を受けることなく、コレットに手を引かれて行ってしまったんだ。
アイツの理不尽なわがままによって、俺はこの10年間、本当の才能も知ることなく生きてきたということか。
「はあ……まあ、コレット様のせいでしたらしょうがないですね」
ルミアは諦めたようにため息を吐いた。
俺にはちょっとしたことでも厳しいくせに、あいつが絡んでいるとなると急に甘くなる。
同じ人間のする対応とは思えない。
「それじゃあ、このまま才能不明で退学にして後で面倒ごとになっても嫌なので、ここで鑑定をしてしまいましょう」
「そんなことできるのか?」
「一応、私の才能は鑑定士ですので」
なるほど、彼女は鑑定士の才能を使って、学園の生徒たちのデータを管理しているということか。さすが魔法学園。事務員の一人にしてもしっかりと才能持ちの人間を起用している。
「どうせ、鑑定しても才能無しなんでしょうけど」
ルミアは俺に聞こえるように毒を吐きながら、宝玉を持って来る。
10年越しにしてようやく、俺は本当の才能を知るときがやって来た。
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次回はルミアをギャフンといわせましょう