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襲撃

 やつの襲撃は、本当に突然のものだった。


 リベルガの時のように喧嘩を吹っ掛けられることもない。

 まるで、そんなものは必要がないというかのように……




「今日のところはこれくらいでいいでしょう」


「俺の話は満足できたか?」


「はい。不安なところはありますが、とりあえずユーマ様がクラスの人達とも仲良くなれたという話を聞けて安心しました」


「そっか」



 ルミアは俺の学園生活初日の報告をすべて聞き終えると、満足げな表情を浮かべてあくびをした。

 リベルガの一件のおかげで、いつの間にか報告会というよりかはお説教になってしまっていた。


 それだけルミアも俺の生活に心配してくれているということだし、俺がいない間も不安で仕方なかったのだろう。

 彼女は、今日あった出来事を細かいところまで気にしてくれて、話を聞いてくれていた。


 おかげで、全て話し終える頃にはすっかり夜も更けてしまっていた。

 辺りからは何も音が聞こえてこない。

 この寮の中で起きているのも俺たちだけなんだろう。



「ふあ~、ユーマ様がとりあえず無事だったと分かってやっと安心できました」


「そんなに心配してくれていたのか」


「あたりまえじゃないですか。ただでさえ、ユーマ様の力は反感を買いやすいんですから…………!!」



 眠い目をこすりながらホッと胸をなでおろしていたルミア。

 しかし、何かに気が付いたのか急にその目を鋭く光らせて、俺たちの反対側、窓側の方へと振り返った。



「どうしたんだ、ルミア?」


「…………」


 ルミアは何かの気配を探るようにずっと集中している。

 明らかに、さっきまでとの穏やかな空気とは違うことがわかった。


 そして、次の瞬間、ルミアは大きく体を飛び上がらせて俺の方へと覆いかぶさって来る。



「危ない!!!!」



 ルミアが俺を押し倒すように飛び込んできた。

 あまりに突然の事態に、彼女のなされるがままに床に倒れこむ。


 何かの冗談かとも思ったが、ルミアの声色からはとてもふざけられる様子はなかった。


 何が起こったのかと頭が混乱しているのもつかの間、ルミアが察した”危険”が俺たちを襲って来る。

 正確に言えば、俺たちではなく、”俺”を狙った危険だ。



 ルミアに覆いかぶさっている部屋の中を、まばゆいほどの白い光が突撃してくる。

 光は閃光となって窓ガラスを貫通し、そのまま部屋を破壊する勢いで飛び込んできた。


 ルミアにかぶさっている視界の中で、一本の白い矢のようなものが襲撃してくるのが俺の目にも見えた。

 その矢は、確かにおれが座っていた場所を狙って撃ち込まれていたものだった。


 やがて、部屋の中を轟く爆発音が聞こえてくる。


 俺は、ルミアの体で直撃を避けているが、当のルミアの体が心配だ。



「大丈夫か、ルミア?!」


「だ、大丈夫です。防御壁は貼ってあります」



 ルミアは険しい表情はしているものの、言葉の通り怪我自体はしていない。

 俺の知らない間に、誰かからの襲撃に備えて防御壁を張ってくれていたようだ。


 部屋の中に投げ込まれた白い矢は、全部で10本近くはあった。

 どれも全て、俺が最初に座っていた一めがけて一直線に討ちこまれている。

 執拗に、集中的に。


 もし、あの一本にでも俺が当たっていれば間違いなく無事では済まなかっただろう。


 その予感が頭の中によぎり、急に血の気が引くような感覚に襲われる。



 襲撃がひと段落付くと、すぐにルミアは起き上がって攻撃があった外の方へと目をやる。

 それと同時に、矢が飛んできた方向へめがけて、白魔法の閃光を飛ばす。


 ルミアの攻撃は勢いよく夜空の中へ飛んでいったが、手ごたえがあるようではなかった。

 反撃をされないようにするためか、その後も何度かルミアは反撃を試みる。

 しかし、もう敵側からの応酬があるわけではなかった。


 おれは、その様子をただ見ているだけだった。



「逃がしましたか……」



 ルミアはそう言って、すっかり静かになった夜空をくまなく見渡す。

 俺には最初から敵の姿など見えていなかったが、ルミアの方にも、もう気配が感じ取れなくなってしまったのだろう。


 しかし、その攻撃の主が確かに存在していたことは間違いない。


 だって、その証拠に……



「大丈夫ですか、ユーマ様!!」


「あ、ああ」



 俺は震える声でルミアに答える。

 大丈夫とは言っているが、手の震えが止まらない。


 これまで受けてきた攻撃と、明らかに違う恐怖が俺の中に居座っていた。

 コレットから受ける攻撃ともちがう、別の感覚だ。

 本気で俺のことを狙って、俺だけを殺そうと放たれた一撃。


 俺はそれを間近で感じていたわけでもないのに、体が震えてしまっている。


 きっと、これが殺気というものなのだろう。



 静けさに包まれた部屋の中で、ルミアはずっと俺の震える手を握ってくれていた。

お久しぶりです。投稿が遅くなってしまい申し訳ございません。


次回、襲撃の主は?

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