勇者は作戦の失敗に怒り狂う(コレット視点)
ユーマがリベルガとの戦いに勝ち友達ができている一方で、1人悔しさに暴れまわっている少女がいた。
「なにやってくれているのよアイツはあああああああああ!!」
リベルガがユーマに負けたという情報を聞いたコレットは、だれもいない部屋の中で暴れまわる。
最近はコレットの部屋にプライベートで入って来る人は居ない。
どこかに不満をぶつけたいコレットだが、それをぶつけるための大事なおもちゃももう近くには居ない。
その事実がさらにコレットのイライラを加速させていた。
「そもそも、あの男がしくじらなければ今頃うまく言っていたのよ。何のために、わざわざ声をかけてやったと思っているのよ!!」
コレットはユーマが学園に編入すると決まった日から、彼を再び手中に収めるために動き始めていた。
そのための第一の作戦が、今回のリベルガを使った奇襲作戦だった。
「私の親衛隊の中でも、一番実力のある人間だって言うからわざわざ声をかけてやったっていうのに……あんな才能無しに負けるなんてゴミ以下じゃない!!」
自分にとって都合のいい駒であった親衛隊たち。
コレットのことを盲目的に信奉している信者はたくさんいる。
学園で幅を利かせようと思えば、コレットの影響力があればいくらでも手があった。
リベルガはそんなコレットの親衛隊たちの中でも、今回の作戦に都合のいい人物だった。
1年生の中で特に実力のある1-Cに所属。
さらに、そこにはユーマが入ることになっているではないか。
独自の情報網から、ユーマの情報を手に入れたコレットはすぐに行動に動き出していた。
わざわざリベルガに声をかけ、ユーマが才能無しなのに学園に入りたいから無理やり話を進めてしまったと虚偽の情報を流して見せた。
あとは怒りに満ちたリベルガがユーマをぼこぼこにすればそれですべて解決するはずだった。
しかし、ふたを開けてみればボコボコにされていたのはリベルガの方だった。
「あり得ない。あり得ないわ!!」
ユーマが結界を一撃で破壊したという噂はコレットの耳にも入ってきては居た。
しかし、彼女はそんな情報を全く信じようとはしなかった。
彼女にとっては、ユーマは都合のいい「才能無し」でなければならないのだ。
「あいつは……ユーマは才能無しなの。勇者である私の所有物であるということ以外なんのとりえもない人間なの。だから、私がしっかりと可愛がってあげないといけないのよ」
コレットは自分に言い聞かせるように何度もつぶやく。
ユーマに対する感情は、歪んだ愛情というよりも所有欲として形を変えつつあった。
「彼が才能を持っているですって? ありえない!! 結界を壊したのだってきっと、教師か誰かを脅して適当な魔道具にでも頼ったのでしょう。アイツはそういうやつだもの」
コレットの中で都合のいい仮説が組み立てられていく。
魔道具を使えるものなど、相当な魔力を持っていなければいけないというのに、そんな事実すら彼女の頭の中にはもう入ってこない。
ユーマが才能を持っている。
それはすなわち、彼女が今までやって来たことの否定にもつながってしまう。
それだけは許すわけにはいかなかった。
「彼は私のものなの。私が持っていなければどうしようもないものなの!!」
怒りで彼女の形相はますます厳しくなる。
いま、この姿の彼女を見れば、誰もそれが勇者の輝きを持つ者だとは思わないだろう。
勇者とは名ばかりの悪魔が、暗い部屋の中で呻いていた。
「……そうよ。彼は私のものなの。迷子になってしまったのならどんな手を使ってでも取り戻さなさなくちゃ」
現実を受け入れられないコレットは新たな作戦を考える。
もう情けはない。
覚悟を決めた悪い顔を前面に輝かせていた。
「見ていなさい。ユーマ。必ず私のもとから離れたことを鳴いて謝罪させてやるんだから」
コレットは意気揚々と部屋を立ち去っていくのであった。
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コレット視点。
彼女は新しい作戦へと歩き始める
次回は後日談と次章へのつなぎ




