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サキちゃん先生のお説教

「まったくもう! 何してるんですか!!」


「……ごめんなさい」


「本当ですよ!! ユーマ君はもっと自分の力を自覚してください!!」



 リベルガとの戦い(?)が終わった後、俺は1人職員室に呼び出された。


 リベルガが気絶したことにより、午前の授業はすべて吹っ飛んだ。

 気絶したリベルガを保健室に運ぶために、先生たちはみんなで担いで彼を連れて行った。

 他のクラスメイト達は、目の前で破壊された結界を興味深そうに眺めていた。


 皆の口がぽかんと空いてしまっているのが見て取れた。

 もちろん、張本人の俺だって開いた口がふさがらないでいる。

 だって、魔法学園の結界なんだからそんな簡単に壊れるとは思わないじゃん?


 壊れた結界と俺の顔を何度も見合わせたクラスメイト達が、正気に戻るころには俺はサキちゃん先生に職員室に呼び出されていた。

 なんだか、とにかくせわしない一日だったな。



 そうして職員室に呼び出された俺は、プンプンに怒っているサキちゃん先生に怒られている。


 頬をぷくっと膨らませているサキちゃん先生は、相当怒っているようだが、怒り姿もなんだかかわいく見えてしまう。

 きっと、クラスの生徒たちを怒っている時もこんな表情なんだろうな。



「……それで、先生。どうして、僕との間に謎の結界を張っているんですか?」


「そ、そんなの、特に意味なんてないわよ!」



 そう言って、結界の影に隠れようとするサキちゃん先生。

 透明な結界なんだから、身を隠したってバレバレなのに……やっぱり、この先生はどこか抜けている。


 先生と俺との間には透明な防御結界が張られていた。

 多分、至近距離の俺の攻撃を少しでも防ごうとしているのだろう。

 俺に攻撃の意思なんてないけどな。



「別に、俺は先生に攻撃なんてしませんよ?」


「そ、それはそうと信じたいけど……ユーマ君、自分の体からあふれ出てる魔力に自覚はないの?」


「魔力ですか? 別に意識したことなんてなかったです」



 先生は疲れたようにため息をつく。


 魔力があふれ出ているなんて初めて言われた。

 ルミアに魔法を教えてもらった時にそんなことがあれば、迷わずルミアから言われているはずだ。

 それに、クラスメイト達と話していたときだって、先生ほど魔力に畏れている人は居なかったと思う。


 もしそんな量の魔力があふれていたらリベルガも気づいているはずだしな。

 あいつ、あれでも結構強そうだし。



「多分なんですけど、先生が特別敏感だった……みたいなことなんじゃないですか?」


「そうなのかな……はあ、嫌な体だわほんとう」



 先生は自分自身の話題になると怒ってることも忘れて悲観的になる。


 サキちゃん先生、きっと苦労体質なんだろな。

 それなのに、編入初日からトラブルばっかりで申し訳なかったな。


 リベルガの件もそうだしそうだし、結界もそうだし……



「あの、壊しちゃった結界って大丈夫なんですか?」


「大丈夫じゃないわよ~。これから報告書を提出しないといけないじゃないの」


「ごめんなさい」


「ほんとうよ~。競技場の結界を壊した生徒だなんて前代未聞の大事件よ。学園長になんて言い訳すればいいのよ~」



 どんどん先生の生気がなくなっていく。

 あの学園長に謝りに行くのか。

 ルミアの件もあったし、怒らせたらかなり怖そうだよな、あの人。



「あの先生、俺も一緒に謝りに行きますよ……」


「いいわよ。生徒にそんなことさせられないわよ」


「でも、」


「いいって。ユーマ君がどうしてか学園長と繋がっているのはわかったけど、そんなことしたら後がもっと怖いから」



 サキちゃん先生は遠い目で何かを見ている。

 きっと、過去にその恐怖があったのだろうな。


 先生の話ぶりから、きっと俺よりあの人のやり口をわかっていそうだし、ここは先生に従っておこう。



「ま、今回はしっかりとリベルガ君に攻撃を外してくれたことに免じて許してあげるわ」


「あれ、やっぱり気づいていたんですか?」



 なんと、先生にはわざとリベルガを外して攻撃したことがばれていた。

 これでも、結構すれすれのところを狙ったはずだったんだけどな。



「あんな余裕な顔して攻撃外す人なんていないわよ」


「そういうものですか?」


「あたりまえでしょ。それにこれだけの魔力を持っていて、人ひとり攻撃を命中させられない魔法使いなんて、即退学よ」



 サキちゃん先生はこれだけの短期間でおれの実力まですべて把握しているようだった。

 俺ですら知らなかった情報までサキちゃん先生はもう把握している。


 さすがは学園の担任を持っている人ということだ。

 クラスメイト達からはなめられているのはかわいそうだけど。



「とにかく、今回はこれで許してあげるけど教室に戻ったらちゃんとみんなと仲良くするのよ?」


「みんなって、リベルガももういるんですか?」


「もう起きて教室に戻っているみたいだから。また喧嘩なんてしないでね?」


「わかりました。できる限りやってみます」


「うう……本当に頼むね? リベルガ君はあれでも根はいい子だから」



 先生はまだ不安そうな表情を浮かべている。

 これでまた喧嘩なんて起きたら、次に気絶するのは先生の方かもしれないな。


 今回は謎に喧嘩を吹っ掛けられたが、きっともう誤解も解けたしなんとか仲良くすることにしよう。

 せっかくの学校だ。

 仲悪い人ばかりじゃ嫌だもんな。



「わかりました。仲良くなります」



 俺がコレットに連れ回されていたことを、きっとこの人ももう知っている。

 しかし、サキちゃん先生はそれでも変わらず先生として接してくれている。


 優しい先生のためにも、俺も頑張ることにしよう。



 そうして、午後の授業の始まる教室へと戻るのだった。

お読み下さりありがとうございます!


サキちゃん激おこ、でも優しい。


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