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11話 自分だけの部屋ができました

「……ふう」



 誰もいない部屋の中で、俺はようやく一息つくことができた。

 もうすっかり外は真っ暗になっている。

 コレットと絶縁をしたのが、朝の出来事だったはずだから一日中こんなドタバタに巻き込まれていたわけか。


 あまりにも多くの出来事があった一日を振り返りながら、俺は1人ベッドに横たわった。


 ここは、俺のためにあてがわれた寮の一室だ。

 俺の入学の手続きが終わった後すぐに、俺専用の一室を準備してくれたらしい。



 学園長とのやり取りで俺の学園の入学が決まってしまうと、そこからはとんとん拍子で入学手続きが終わっていった。

 入学の手続きといっても、俺は特にこれといって何かをしたわけではない。


 もともと、俺の名簿は存在していたわけだし、あとは学園長の一声ですべての手続きがパスされて、気が付けば俺はこの魔法学園の1年生として編入することが決まった。

 コレットの学年が2年生なので、あえて学年をずらしてくれたみたいだ。


 一応、あの人も約束は守ってくれるらしい。

 まあ、そうしてくれることが俺の入学の条件だからな。



 学園長が入学の手続きを始めてしまうと、俺は少しの間事務室の中で1人待たされることになった。

 ルミアも学園長に呼ばれて外に出て行ってしまったが、その後にすぐに戻ってきた。


 学園長が入って来た時点で顔が青ざめていたルミアだったが、改めて部屋に戻って来た彼女からは、さらに元気が吸い取られているように見えた。



「大丈夫だったのか?」


「ええ、大丈夫です。心配してくださりありがとうございます……」



 あまりにも大丈夫そうではない雰囲気だったが、俺も彼女の恥ずかしい姿を目の当たりにしてしまっている以上、あまり深くは掘り下げられなかった。

 とにかく、何事もなかったことを祈ることにしよう。



 その後にルミアに案内されるままに、この寮までやって来て今に至るわけだ。



「本当は、SSランクの部屋も用意することもできたのですが……」



 部屋まで案内してくれたルミアは申し訳なさそうにしていた。

 俺としては、部屋のランクなどどうでもいいのだが、理由を聞いてみると、どうやらこの学園の寮にはそれぞれランクがあるらしい。


 それぞれ成績順に分けられて、下はCランクから、上はSSランクまで。

 各ランクによって受けられるサービスや、部屋の間取りも違うらしく、Sランクだと一部屋でCランクの間取り1フロア分は幅があるらしい。


 今回俺に用意されたのはAランクの部屋。

 ちょうど中間の部屋だ。

 それでも、学園の中では上位の成績をとっている者にしか入れない部屋だというのだから満足過ぎる程だ。



「SランクとSSランクの部屋は同じ建物の中に入っていまして、特にSSランクの部屋には勇者様が住んでおられますので、黒魔導士様にとっては大変かと……」


「なんだ、そう言うことか」


「もし、こんな部屋では満足いただけないようでしたら、すぐに新しい部屋を手配しますので!!」


「いや、あいつと会わなくていいのなら、それで十分だ。アイツと一緒に居た時はこんないい部屋には入れさせてもらえなかったからな」


「え? そんなことされていたのですか?!」



 コレットの所有物だった時は、俺はあいつの住んでいる部屋の中には住まわせてくれなかった。

 屋外に立てられた小さな小屋に毎日閉じ込められているだけの毎日だったからな。

 外に出れば、あとでひどいしつけをさせられることもわかっていたし。


 こうやって一人でのんびりすることができて、自由にできる空間があるだけでもありがたいものだ。


 ルミアは、衝撃の事実を聞いているかのように、目を丸くしている。

 コレットは、外面だけはよかったからな。

 周りから見ている分には、そんなことするようなやつには見えなかったんだろうな。




 あらためて、自分がコレットと絶縁したのだという実感がわいてくる。

 まさか、こうしてゆっくりと眠りにつける日が来るとは夢にも思っていなかった。


 あの時の決断は絶対に間違っていなかった。

 これ以上コレットのおもちゃにされていたら、俺は間違いなく自分自身を失っていただろう。


 これからは、もっと自分の思っていることを言えるようにならなくちゃな。



 ……そんなことを考えていると、ふいにドアを誰かがノックする。



「あの、黒魔導士様。まだ起きていらっしゃいますか?」



 ルミアの声だった。


 こんな夜中にどうしたものか。

 無視するのもかわいそうなので、扉を開けることにする。



「どうしたんだ、こんな夜中に?」


「突然のことで申し訳ございません……実は黒魔導士様にひとつお願いがありまして……」


「なんだ?」



 ルミアは言いにくそうに、ずっと下をうつむいている。

 こんな夜中に来るお願いということは、相当緊急の事態なのだろうか。



「その……私を黒魔導士様の僕として、部屋においていただきたいのです」


「……はい?」



 なにやら、長い一日はまだ終わらないらしい。

お読みいただきありがとうございました!

2話投稿なのです。

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