1話 いじめっこな幼馴染にはもう耐えられない
「どうしてユーマはこれくらいの攻撃でボロボロになっているのよ。私のサンドバックならもっと頑張りなさいよ」
ボロボロになって部屋の壁に倒れている俺を見下して、幼馴染であるコレットが苛立たしい声をかけてきた。
ここは勇者であるコレット専用の稽古場。
その中で、俺は彼女の特大の攻撃を食らって一瞬で壁にまで飛ばされていたのだ。
長年攻撃を食らい続けている俺だからまだ耐性も付いているが、俺でなかったらきっと身体がこなごなになっているだろう一撃だ。
こいつは勇者の称号を持っている幼馴染
現在はゾーマ帝国直轄の魔法学園の中で勇者としての立派に育つように保護されている。
肩まで伸びた金髪の長髪に、魔物との戦いの中で磨き上げられたしなやかな体。
国民全員の羨望の的としてふさわしいスタイルを兼ね備えた彼女は、まさに完璧な勇者だった。
それに対して、俺は何の才能も与えられていない、単なる一般庶民。
本来なら才能無しはこの学園の中に入ることすら許されていない。
そんな俺がなぜこの学園の中にいるかというと、俺はこの幼馴染の所有物という扱いになっているからだった。
国の中でも勇者という存在は100年に一度訪れるかどうかという存在だ。
魔物たちと戦うためにも、勇者の存在は何よりも重宝される。
そのため、勇者が放つ大体のわがままは通されていた。
「ユーマはこれから私のものね!これからはどこまでも私と一緒に来なさい!」
彼女の勇者としての才能が発見されてしまった時、彼女は迷いなくそう言った。
この日から、俺は人間としての生活をなくされ、幼馴染のおもちゃとしての生活が始まった。
同じ村で育ち、幼馴染だった俺たち。
もともと俺に対して高圧的だった彼女は勇者としての自覚を持った後、さらにその本性を表すようになった。
勇者として目覚めたコレットはどんどん新しいスキルを身に付けていった。
そして、新しい力をつけるたびにそれを俺にまずは試した。
「実践で使えるようになる前に、試してみないといけないじゃない」
そう言ってその日覚えたスキルを最大火力で俺にぶつける。
攻撃の後にはいつも体が引きちぎれるような痛みが全身を襲う。
しかし、彼女の持っている、勇者の加護とやらで俺はどれだけ攻撃を食らっても死ぬことはなかった。
そして彼女はそれを良いことに何度も何度も攻撃を俺に浴びせた。
力のない俺には、それになすすべもなく、ただ毎日耐えることしかできなかった。
いつの間にか、俺は彼女の立派なサンドバックになっていた。
もう多少の痛みなら何も感じない。
最近、勇者としての職務が増えるようになったこいつは、そのストレスを俺に発散するようになった。
俺がボロボロになれば、無理やり回復魔法を使い、また攻撃を再開する。
彼女の気が収まるまで、地獄のような痛みにじっと耐えなければならなかった。
彼女の気が収まると、ボロボロになった俺のもとにやってきていつも言うセリフがある。
「あんたなんて、本当は才能無しの生きている価値もないのに、私が拾ってあげたんだからね。こうやって勇者様のそばにいられるだけでも感謝しなさい」
ボロボロになった俺の姿を見て、彼女は気持ちよさそうに笑っている。
俺を見て、優越感に浸っているのだ。
この勇者におれは守られている……?
こんなに痛めつけられているというのに。
こんなの、ただの体のいいおもちゃじゃないか。
俺はこのまま一生彼女の所有物のまま終わってしまうのだろうか?
……そんなのは嫌だ!
「俺は望まれてあんたに拾われたわけじゃない」
「は?」
突然の俺の反論に、幼馴染は露骨に嫌な顔をした。
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